第18話 正月と僕
何度も言うが、蔵人の家(千愛もだが)は金持ちだ。
そんな真羅グループの新年会には、著名人が多数集まる。
学生のクリスマスパーティーなど比較にならない。
「毎年毎年。なにソワソワしてんだよ」
「だって、周り見れば全員テレビの向こうの住人だらけ。一般人には落ち着かないに決まっているだろ!」
蔵人の友人として毎年新年会に招かれているが、僕には不釣り合いな空間に、一向に慣れる事が出来ない。
「蔵人が僕と同じ学校に通ってきたのは、一般の感覚を知るためだろ!こういう場で堂々と出来ないのが、一般人なの!」
蔵人が側にいるから多少は大丈夫だけど、一人にされたら固まって動けない。
過去に一度あったんだ。
「お!太陽。俺達の女神が来たぜ!」
聞いていないのはいつもの事。
蔵人は何より千愛優先だからな。
「お待たせ。どうかな?」
「やっぱり、千愛には和服だな!凄く似合ってる」
「ありがとう。蔵人もカッコいいよ」
ナチュラルに褒めあう二人。
「太陽。…………変じゃ、ないかな?」
「問題ないよ。うん、似合ってる」
優菜が千愛の後ろから心配そうに顔を出してきた。
「良かった。太陽も似合ってるよ」
「ありがとう」
真羅家御抱えのスタイリストは優秀だからね。
客を見られない格好には絶対にしない。
「やあ!今年もよく来てくれたね」
「お久しぶりです。広志さん」
やって来たのは、真羅グループ次期総帥。
名は、真羅広志。
お偉いさんとの挨拶を終えて、様子を見に来てくれた。
「うん。優菜さんとやっとくっついたんだって?おめでとう」
「あ、ありがとう、ございます」
蔵人が話したのかな。
優菜共々お礼を言う。
「聞いたよ。獣医を目指すんだって?良い夢だね」
「そんな事まで蔵人が!」
「そうさ。蔵人の話の六割は千愛さんで、三割が太陽くん。他はたった一割さ」
蔵人を見る。
下手な口笛を吹き、他所を向いている。
「その夢に、一つ出資しよう。獣医になれたら、連絡を頂戴」
そう言って差し出してきた名刺を、
「待った、広兄。出資は俺の仕事。手を出さないでほしいな」
蔵人が横から奪い取る。
「ははは。了解。真羅の利益になるなら、どちらでも構わないさ」
「広志様。そろそろ」
秘書さんの言葉に従い、次期総帥は再び人の中に消える。
「出資の話、マジ?」
「大マジ。だから太陽には成功して貰わないとな!」
「グループ内の俺の立場のためにも」と、蔵人は言う。
照れ隠しだな。
全くありがたい友人である。
その後も蔵人・千愛ペアの付き人的立ち位置で会場を回る。
外国人の方に英語で挨拶したら、日本語で間違いを指摘されたのは笑い話。
学校のテストと、同じようにはいかないな。
それでも芸能人相手に話が出来る度胸はついた。
リヴァンネ先輩ファンクラブでの仕事の賜物かな。
会も大詰め。
なんとか乗りきった、と安堵していると、
「太陽や。これ見ろ、猫神の遣いじゃ」
(え!いつから?)
気付いたら、僕にもう一柱眷族が憑いていた。
「あの広志と言う男と話した後ぐらいからかの?」
(そんな前から。なんで今まで言わなかったの?)
「人との話を邪魔するのは悪いじゃろ」
(確かに)
猫神の遣い(見た目、三毛猫そのもの)は、少し膨らんだ縁結びの遣い(毛糸玉サイズ)にじゃれついている。
見ていて和む。
「む?喜べ太陽。こやつ、オス三毛じゃぞ」
(遺伝子的な理由で、あまりいないらしいね)
「そのようじゃの。猫神の権能は動物に好かれる事、そして金運じゃ。成長が楽しみではないか!」
(人の努力が必須でしょ?頑張るよ)
これ程の支援。
真剣にならなきゃ、もったいない。
(でも、簡単に集まり過ぎてない?)
「そりゃそうじゃ。儂が神々に推薦したからの」
亀神の太郎さん。
古株らしいけど、神様業界にどれだけコネがあるのだろ?




