第15話 両親と僕
終わって冷静になると、幸福感と恥ずかしさとほどよい疲労と、他いろいろな感情に包まれる。
「ありがとう」
「何でお礼?」
腕の中で、優菜は笑う。
僕は「なんとなく」としか言えない。
「体、大丈夫?」
「うん。だてに陸上部で鍛えてないよ」
半分朦朧とした意識の中、結構無理をさせたが問題ないようで安心する。
今日は両親が遅い事もあり、有部家で夕飯をご馳走になる。
「今日は全部、優菜が作ったのよ」
「ほう。なるほど、卒業試験か」
おばさんの話を聞き、僕を見ながらおじさんは言う。
「どうかな?サンちゃん」
「うん。美味しいよ」
素直にそう答える。
優菜は喜び9割安心1割と言った感じだ。
「及第点だけど、太陽くんのが上だな」
「そうね。後一歩及ばないわね」
おじさん達は辛口に、そう評する。
「十分だと思いますが?」
「後々、一緒に暮らすようになった時。食の差は結構重くなるぞ」
「いずれ解決する範囲内だもの。これからの努力次第ね」
僕の反論は一蹴。
あくまで、優菜の実力不足を主張する。
「わたし、頑張る!」
優菜は気にしていないので、これ以上は僕は何も言わない。
「その意気よ、優菜。想い叶って男女の関係になったからって、油断は禁物よ」
「な!」
「え!」
なぜバレた?
そう顔に出ていたのか、おばさんは言う。
「母親ですもの。見れば分かるわよ」
「そうかそうか。やっと貰ってくれる気になったか」
明言していなかっただけで、おじさんもおばさん同様僕と優菜をくっつける気だったようだ。
「恥ずかしいけど、何か良いね」
笑いの絶えない優菜の両親。
僕の理想の夫婦像だったりする。
「じゃあね、サンちゃん」
優菜に見送られ、僕は有部家をでる。
「優菜。そのサンちゃんっての、もう辞めないか?」
「なんで?」
「幼馴染みの気安さはあるけど、僕らは、ほら、恋人だしさ」
僕自身、上手く説明出来ない。
けど、優菜はなんとなく分かってくれた。
「じゃあ、これからは。……その、た……、太陽」
優菜の顔は真っ赤だ。
僕も似たり寄ったりだろう。
「月曜日までに慣れておくね!」
それだけ言って、優菜は家の中へ。
「あ、母さん?今、大丈夫?」
『大丈夫だけど。珍しいわね、太陽が電話してくるなんて』
家に帰った後、僕は母に連絡をとった。
「うん。報告が二つあって。一つは、優菜と交際する事になったよ」
『そう』
意外に素っ気ない返事。
『わざわざかけてくるんだもの。妊娠させたって位じゃなければ驚かないわ。もしかして、もう一つの報告がそれ?』
「違うよ!僕ら高校生。先生している母さんが何言うのさ!」
『あらそう。お母さんとしてはそれで構わないけど。優菜ちゃん可愛いし』
母親としても先生としても、その発言はどうだろうか。
『最も、その可能性は皆無だと思っていたけど。太陽に限ってありえない話だし、優菜ちゃんあなた以外見てないし』
これもこれで信頼、なのだろう。
『それで?もう一つは?』
「うん。進路についてなんだけど」
獣医大進学とその後の構想について説明する。
母さんは静かに耳を傾けてくれた。
『大変さも承知の上のようね。応援するわ。存分にやりなさい』
「うん。ありがとう、母さん」
『優菜ちゃんは知ってるの?お父さんには?』
「優菜には一番に話した。父さんにはこれから」
『そう。お父さんの答えもお母さんと同じだと思うわよ』
『話は分かった。優菜ちゃんについてもその目標についても、決して投げ出すなよ』
「うん。分かってるよ」
母さんへの報告をしてすぐ、父さんにも連絡をとる。
『お前も父さん達の子だ。器用な分、一人で決めがちだからな。父さん達はあまり見てやれないが、何かあったら有部さんを頼れ』
「うん」
『後、すまんが……』
「分かった。年跨ぎそうなんだね。母さんもだって」
『お前にとっては、家に優菜ちゃんを誘いやすいか?孫の顔も早そうだな』
「母さんもだけど、気が早いよ」
あまり揃わない僕ら佐鳴家だけど、ちゃんと家族だと分かる。
『じゃ、またな』
「良い大人達じゃな」
「うん。尊敬できる人達だよ。」
いつも側にいる優菜の両親も、離れていても繋がっている僕の両親も。
共に「こうありたい」と思える夫婦の形だ。




