第14話 優菜と僕 その2
「や、やあ。優菜。来ちゃった」
「う、うん。さっきはごめんね」
太郎さんに背中を押され、優菜の前にやって来た。
けど、さっきの勇気がもう一度振り絞れない。
「ほれ、何をしておる!同じ台詞を繰り返すだけではないか!」
「そうよ!答えは決まっているのだからさっさとしなさい。男でしょ!」
太郎さんと見知らぬ天使さんが発破をかけてくる。
「「あの……」」
優菜と言葉が被り、尚更空気が重くなる。
「えっと……。優菜、何?」
「ううん。サンちゃんから、どうぞ」
しまった。
今、言えるチャンスだった。
互いに機会を失い、お見合いが続く。
「優菜。お母さん、買い物行って来るから留守番頼むわね」
その空気を破るように、おばさんが扉を開ける。
「う、うん。行ってらっしゃい」
「太陽くんもゆっくりして行ってね」
「はい。ありがとうございます」
去り際、おばさんはウィンク一つ。
分かっているな、あれは。
おばさんに隠し事は出来そうにない。
「優菜!」
「は、はい!」
「付き合ってくれ!」
「喜んで!」
そして優菜と二人、吹き出して笑う。
「さっきまでの緊張感、何?」
「まったくだ。僕なんて一世一代の告白だったよ」
あまりにあっさりした結果に、二人して笑いが止まらない。
「でも、ありがとう。僕の事を永く想ってくれて」
「わたしの方こそ、だよ。サンちゃん優しいから、皆に好かれているんだもん。わたしを選んでくれて、ありがとう」
「天使の優菜には負けるよ」
我ながら現金なものだ。
告白する前は恥ずかしくて言えなかった事が、するすると出てくる。
「良かった良かった。さて、私達は退散しますか?」
「そうじゃのう。後は若い二人に任せようぞ」
「「太郎さん(愛ちゃん)!え?」」
和やかな雰囲気が、また静寂に包まれる。
「そっか。優菜も見えるのか」
「さっき、愛ちゃんに話しかけられてからね」
神と天使|(眷族の方、遣いが成長した姿らしい)は、既に部屋の外。
(と言うか。離れられるんだね)
(うむ。契約下でも、互いの同意があれば別行動が可能じゃ。一定の距離までだがの)
会話も可能のようだ。
優菜の方も使徒さんとなにやら会話中だ。
(ほれ、太陽。両想いになった男女がする事は一つじゃろ。さっさと押し倒さぬか)
「な!何言うんだ!」
思わず声が出てしまった。
優菜を見ると、顔を赤くしている。
示し合わせているな、この二柱|(眷族含む神類全て、柱と数える)。
(婚前交渉は反対か?古いのう)
(学生の身で妊娠が問題なだけ!僕だって、そりゃ、優菜と……。でも、避妊の道具持ってないし)
「わーーー!」
今度は向こうが変な事を言ったらしい。
優菜の顔は更に赤くなる。
(フムフム。子が出来るの事がの。それが解決するならば、優菜ちゃんとヤりたいのじゃな。……のう。……じゃ。それ……お……)
(太郎さん?)
何か企んでいる様子の太郎さんに、嫌な予感がする。
「サンちゃん……」
優菜が不意に抱きついてくる。
「優菜!?」
「サンちゃん……」
赤い顔で、僕の名を呼ぶ。
(太郎さん!これは!?)
(こんな状況でも理性を保つとはの。いかにも、儂と使徒が共謀しておる。元より恋愛感情の行き着く先じゃ。恋愛神一派の権能の範疇と言える)
(言ったでしょ!僕らに子供は早い!)
(更に、受精もしづらくしたらしいぞ。完全に止めるのは、生命の神秘に抵触するからの。周期にさえ気を配れば、いくらヤろうと出来る事はほぼ無いそうじゃ)
本当に神とは便利な物だ。
(さて、お主も我慢の限界じゃろう。デバガメは去るとするかの。……おっと、そうじゃ。ほれ!)
モノの高ぶりが上がり、頭の中が優菜でいっぱいになっていく。
(鼈があるように、儂の側面の一つにも性の権能があるのじゃよ。お互い初めてじゃろ?失敗はしたくなかろう。願いその2じゃ)
太郎さんの気配が去り、五感全てが優菜に染まる。
この後、僕らは……




