第13話 愛ちゃんとわたし
ヒロイン優菜ちゃんの語りです。
どうしよう。
どうしようどうしようどうしよう。
せっかくサンちゃんが「好きだ」って、「恋人になりたい」って言ってくれたのに。
「何で逃げちゃうの?わたし」
わたしはお母さんに挨拶もせず、自分の部屋に閉じ籠っています。
「どうしよう。きっとサンちゃん、フラレたって思う」
「それは無いわよ」
「だ、誰?」
わたししかいない部屋の中で、知らない声がします。
「あら、ごめん。姿を消していたね」
わたしの目の前に、天使様が一人現れました。
「あなたは?」
「私は恋愛神の使徒よ。主たる神の命令で、あなたの恋を応援していたの」
「わたしの恋を応援?」
この人が人間じゃないのは分かります。
ですが、言っている事が上手く呑み込めません。
「あなたがサンちゃんと呼ぶ男。佐鳴太陽。彼を好きになった時から、わたしは遣いとしてあなたの近くにいたわ」
「よく分からないけど、愛ちゃんはずっとわたしを見ていたって事?」
「愛ちゃん?……ええ、そうよ」
わたしの質問に愛ちゃんは頷きます。
「母親に料理を教わり始めた時も、」
あの時お母さんに「誰に食べさせるのかしら?」とからかわれました。
「彼と同じ高校に行きたくて勉強を頑張った時も、」
あの時のわたしはあまり勉強が出来なくて、蔵人さんや千愛さんに迷惑をかけました。
「脇目もふらず、一途に彼を想うあなたを私はずっと見ていたわ」
その想いがやっと届いたのに、わたしは……。
「後、彼を想って毎晩……」
「わーーー!」
それはダメです!
「優菜!大丈夫?」
「大丈夫!何でもない!」
お母さんが家にいる事、忘れていました。
「ごめんなさい。口に出さずに呼び掛けるようにしてごらん」
(こう?)
「そう。なかなか上手ね。」
褒められました。
……ではなくて、
(サンちゃんはフラレたって思っていないってどう言う事?)
「簡単よ。彼は私が見えているの」
(サンちゃんって、霊能力者だったの!?)
知りませんでした。
サンちゃんは見える人だったようです。
「違うわよ。彼もあなたと同じで神類が憑いているの。私のような使徒じゃなく、神そのものがね」
(サンちゃんが凄いって事は、同じだね)
「まあ、そうね。で!あなたのアプローチの度に、私がキューピッドの矢をこれでもかとあててあげたから、あなたが彼にベタ惚れなのは重々承知な訳なのよ」
(え!?だって、サンちゃん。そんな素振り全然してなかったよ?)
サンちゃんから見るわたしは、妹分のようなものだとずっと思っていました。
「何でも、「優菜に対して自分の価値が足りない」んだと。ヘタレと言うか、真面目と言うか。浮気の心配はなさそうだけど、男ならもっとがっついてもいいのに」
(サンちゃん。そんな事)
価値が足りないのは、明らかにわたしの方なのです。
「そう言う訳だから、彼は再びあなたに会いに来るわね。今度はきっと、逃がさないわよ」
言われなくても逃げるつもりはありません。
さっきのは、ただびっくりしただけです。
ピンポーン
「はーい。あら、太陽くん」
「ほら。愛しい彼の登場よ」
もう大丈夫。
わたしもサンちゃんも想いは一緒です。




