第12話 将来と僕
「楽しかったね。わたし、サンちゃんと同じ高校に入って良かった」
「勉強、頑張ってたもんな」
「蔵人さんには、本当に感謝が尽きないよ」
放課後、僕達は家までの道を共に歩いている。
僕から「今日、一緒に帰らないか?」と誘ったんだ。
「よく誘った!儂は嬉しいぞ!」
太郎さん、泣くのは早いよ。
キューピッドさんまで「押せ押せ」と言わんばかりに、身振り手振りで応援(?)している。
「昨日はありがと。動物達の今後の幸せは優菜達の協力のおかげだよ」
「そんな事ないよ。サンちゃんが頑張っていたから、わたし達も協力したんだし、動物達も幸せになれたんだよ」
「千愛さん達や先生も、きっと同じ思いだよ」と優菜は言う。
「生物係も今日でおしまいか。楽しかった。本当に楽しかった」
「来年度からは、花壇の世話も美化委員の仕事になるんだっけ?」
「そう。園芸部も廃止さ。一気に暇になるよ」
道中たわいもない話で盛り上がる。
クラスの事。
部活の事。
先輩・後輩の事。
中学生の頃の事。
小学生の頃の事。
「サンちゃんって、ずっと隣にいてくれるから凄く安心するの」
僕も優菜が側にいる事が当たり前に思っている。
けど、
「優菜。僕、大学は県外になると思う」
「え?」
足も話も止まる。
近隣の家々から聞こえる生活音が周りを震わす。
「昨日、お客さんと動物の橋渡しをしていて思ったんだ。こんな感じの仕事がしたいって」
優菜は黙って聞いてくれる。
「飼えなくなった動物を引き取って、訓練してペットを望む人に譲る。人の側にも世話の仕方について指導したり。そのためには、やっぱり獣医の資格は必要で。でも、そんな大学近くに無くて」
昨日の夜、遅くまで調べたんだ。
案の定、狭き門だった。
「だから外に出て、勉強して来ようと思うんだ」
「サンちゃん器用だし優しいから、絶対大丈夫だよ!わたし応援する!」
優菜の曇りのない笑顔には、いつも救われている。
「ありがと。僕はこの町が好きだから、この町でそれをしたいと思うんだ。だから、いずれ必ず帰ってくるよ」
「うん!わたしも好きだよ、この町」
僕らは再び歩を進める。
「勉強で忙しくなるね」
「普通の受験生と違うからね。かといって、籠りきりも問題だから人の集まる場所にも顔を出さないとね」
最適なのはリヴァンネ先輩の集まりだろう。
結果、僕は僕の夢のために先輩の仲間になる事に。
「あの娘の言う通りになったの。さすが、縁結びの属神憑きじゃな」
(太郎さん!それ聞いてないよ!)
「聞かれてないからの」
先輩の周りに人が尽きないのは、その属神が関係を最適化しているかららしい。
その上、どの縁がその人をより良く導くかもわかるらしい。
恋人のマッチングが捗る訳だ。
「サンちゃん?」
「ん?ああ、リヴァンネ先輩からの誘いに乗るべきだよな。とね」
「人気者だよね、リヴァンネ先輩。カッコいいし、面倒見がいいし」
その先輩に匹敵する人気を集めている優菜と二人きり。
慣れている事のはずなのに、意識してしまうとやはり緊張。
「優菜」
「何?サンちゃん」
一言。
ただ一言言えばいい。
「これから僕は忙しくなる」
「うん。さっき聞いたよ」
「一緒にいられる時間も少なくなる」
「わたしも陸上部があるから、お互い様だよ」
違う。
そうじゃなくて。
「それでも良かったら、これからも側にいて欲しい」
「いるよ?わたしとサンちゃんの仲は変わらないよ!」
「そう言う意味じゃなくて」
今だ!
「好きだ!恋人として、側にいたい!」
思わず声が大きくなる。
優菜の様子は……、
「え……」
「え?」
「えええええぇぇぇぇ………………」
叫びながら逃げて行った。
「これって、フラレたって事?」
「な訳あるか!びっくりしただけじゃて。ほれ!呆けてないで、さっさと追いかけぬか!」
そうだ。
何度でも言おう。
今度は逃げないよう、手を握って。
優菜の行き先は、自分の家だ。




