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第1話 太郎さんと僕

前作をご存知の方は、ありがとうございます。

そうでない方は、初めまして。


このお話は暗さも深刻さもない、日常系物語です。

ご都合主義満載です。


まずはこの1話だけでもお読み下さると幸いです。

広い日本の、海に面した小さな町。

特に目立った特産も観光地もないありふれた町だけど、僕はこの生まれ育った町が大好きだ。


僕こと、佐鳴太陽(さなるたいよう)

夏場は週に一度、故郷の海で泳ぐのが日課だ。

本当になにもない町だけど、この綺麗な海は密かな自慢だ。

僕は今、進路に悩む高校2年の夏。

今日も、子供の頃から変わらず海に来ている。


(ん?亀?珍しいな)


一泳ぎしてそろそろ帰ろうとした時、この辺りでは見かけない小亀が一匹、岩場に挟まっていた。


(これは大変!助けねば!)


小亀を岩場から外してやると、途端にスイーと行ってしまった。


(レスキュー完了!さて、僕も帰ろう)






「先ほどは儂の眷族を助けてくれてありがとうのう。お礼に儂が願いを叶えてやろう」


なんだこれ?

海からあがったら、突然見知らぬお爺さんにそんな事を言われた。


「聞いておるのか?返事ぐらいせんか!」

「あっ、はい。突然だったものでびっくりしていました。お爺さんは……、誰ですか?」

「これはすまんの。儂は神様じゃ」


僕はお爺さんに不審な眼差しを送る。

そんな僕を、誰が非難出来るだろう?


「やはり、そう簡単には信じぬか。さて、どうしたものかの?」


首をかしげるお爺さん。

いい加減この場を離れようとすると、


「失礼します、主様。奥様より言伝(ことづて)を預かって参りました」


海面から魚が顔を出し、あろう事か話し出す。


「魚と、会話してる」


魚と話す老人と言う、間違いなく現実離れした光景に、お爺さんが人じゃない事を認めざるをえない。






「ほっほっほ。ようやく信じる気になったか!善きかな善きかな」


お爺さんは手のひらを返した僕を気にする事なく笑う。

懐の深い人(?)で良かった。


「では、話を続けようぞ。儂の眷族を助けてくれた礼に願いを叶えてやろう。さあ、遠慮せずに言うが良い!」

「特にありません」


キッパリ断る僕に、お爺さんは食い下がる。


「……本当にないのか?」

「はい」

「富でも良いんだぞ?」

「僕のような歳で大金を貰っても困ります」

「女が欲しくないのか?」

「恋人は確かに欲しいですが、他人に頼むものではないでしょう?」

「地位や権力はどうだ?」

「将来の僕に要期待ですね」

「無欲だのう。このような人間はいつぶりかの?」


お爺さんはそれでも意地と立場があるらしく、僕に恩返しがしたいらしい。


「そうだ!お主、儂の名を当ててみよ。外したら儂はこのまま立ち去ろう。だが、もし当てたら叶える願いを増やしてやろう。気に入ったお主に課す、神の試練じゃ」


僕としてはどちらでも良い事だけど、勝負事には真剣に対応しないと相手に失礼だ。

しばらく考えて、僕は答える。


「お爺さんの名前は、浦島太郎ですね?」

「ほうほう。して、どうしてそう思う?」

「亀を助けた恩返し。日本では誰でも知っているおとぎ話です。それに、先ほどお爺さんと話をしていた魚。図鑑でしか見た事ないけど、リュウグウノツカイでした。つまり、お爺さんの奥さんが竜宮にいると言う事です」


状況証拠ばかりで確実性はないけど、僕の精一杯の答えだ。


「ほっほっほ。いやいや、お見事。正確にはその概念を纏った亀の神なんじゃが、間違っておらん。お主の勝ちじゃ」


黙って耳を傾けていたお爺さんが、拍手付きでそれを認めた。


「とは言うものの、お主にさしあたっての願いも無いからの。しばらくお主に憑かせて貰おう」

「はあ、分かりました」


こうして、僕と亀の神様の太郎さんは出会った。


「言い忘れておったが、儂は一般の人には見えんし聞こえん。声を出すと、独り言と受け取られるぞ」

「そういうのは、一番最初に教えて下さい!」

お読み頂き、ありがとうございました。

宜しければ、評価や感想を頂けると嬉しいです。


これからもお読み頂けると、より嬉しいです。

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