『壱の噺:疳の虫』
オレは小さい時から異形のモノを見聞きした。そのモノ達との体験談を語っていこうと思う。
まず、オレは大のばあちゃん子だった。毎日オレを連れあちこちに連れて行ってくれた。
3歳の時、ばあちゃんの友達の家へと月1ぐらいだったか、連れられて遊びに行っていた。
そこは、古い木造アパートのような所で、階段を上がり2階が部屋になっていた。
そこには祭壇があり、ばあちゃんの友達がお遍路さんのような白装束で、輪袈裟をして座っている。
うちのばあちゃんと同じくらいのばあちゃんで、旦那さんは星を見る易者のような人だったらしい。
遊びに行くと、いつも祭壇の前にばあちゃんと正座し、祝詞?なのか?祭壇に向かって拝んでいた。
それが終わるとこちらを向き、輪袈裟をはずすとその輪袈裟で、オレの頭をそっと撫でてくれる。
それがまた気持ち良かったりもした。
それが終わると、ばあちゃん達は談笑し、帰りがけにお供え物のお菓子をもらえた。
それは3才のオレにとっては、大変有意義な事だった。(笑)
ある日、ばあちゃんに手を引かれ訪ねて行くと輪袈裟のばあちゃんが、
「あ~タマさん。この子疳の虫だね。」
と開口一言。
「お願いするよ~。」
ばあちゃんも何か頼んでいる。
オレは訳が判らず、2人のばあちゃんの顔を交互に見た。
オレは祭壇の前に座らされると、輪袈裟のばあちゃんが硯と筆を持ってきた。
「ちょっと手におまじないを書いて追い出すからね。」
「うん。」
判ってなかったが大きな声で返事をした。
利き手の右手を出すと、墨汁で変な絵を書かれた。書き終わるとおまじないを唱えはじめる。
オレの右手薬指の指先から、何か白い紐状のモノが出てきた。
オレはそれが、何かは知らなかったが、くねくねと出てきて見てて楽しかった。
すると、輪袈裟のばあちゃんがおまじないを唱え終わると、その白い糸状のモノが四散し消えていった。
それは、幼稚園に通うまで何度か行われた。後から聞いたんだが、どうも癇癪もちだったらしく
癇癪をおこしたら、連れていかれたらしい。その輪袈裟のばあちゃんも特にお金も取らず毎回おまじないをしてくれた。
幼稚園になると友達と遊ぶのが優先され、その輪袈裟のばあちゃんの所には行かなくなっていた。
しかし、たまにうちにも遊びに来て、店でばあちゃんと談笑してると、「どうだい。元気かい?」と声をかけてくれた。
フィクション・ノンフィクション織り交ぜ書きました。
何処までが、本当で、何処までが作り話かな?