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SmileJapan参加作品集

何も持たずに歩こう

作者: 想 詩拓

歩くことは慣れている。

毎日のように歩いている。


背中に背負った鞄は、肩にずしりと重く、

足に履いた革靴は、足をゆるく締め付ける。

家に帰って、荷をおろし、靴を脱いだ開放感が好きだった。


久しぶりに買い物に出た。

肩の荷はなく、足には軽いスニーカー。

自分の体の軽さに驚いた。


買い物に行くのはやめた。

どこかに着くのが惜しくなった。

行く当てもなく、ただ歩けるだけ歩いていく。


雨が降ってきたが、構わない。

濡れて困るものなど持っていないのだ。

あれほど雨を嫌がっていたいつもの自分が嘘のようだった。

体いっぱいに浴び、水溜りを蹴飛ばして、

ずぶ濡れになってもまだ帰ろうとは思わない。


夕方になり、夜になった。

もはや見たこともない場所を歩いていた。

どこをどう歩いたかも憶えていない。

歩いてこれるはずの近所なのに、不思議と胸の高鳴りを覚えた。


電車に乗って帰った。

一時間もしないで家に着いた。

一日歩いた体はすっかり重くなっていた。

足は棒のようになってきしみ、

そして、頭の中は空っぽになっていた。


心が軽くなっていた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 染み入る散文。。。 わかる! わしも原付を廃車して、バスと歩きになったが、 確かに心が軽くなってる気がする。 不便もまた快なり!
2012/11/24 22:52 退会済み
管理
[一言] むしゃくしゃした時って、そういう気持ちになりますよね。 とても共感できました。 素敵な詩をありがとうございました。
2012/01/24 22:41 退会済み
管理
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