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試してください、お願いします。

作者: 堀乃す
掲載日:2026/06/09

 キミは、()()()()()()()をどう考える?

 意味はあるのか。それとも意味なんてないのか、

 思うがままに回答をしてくれればいい。


 さて。

 残念ながら僕にはキミがなんて答えたか分からない。

 僕が先に書いている文字を、後からキミが読んでいるからね。


 とはいえ答えは二つ。

 意味を信じているか。意味が見つからないか。


 僕はね。意味があると思うんだ。

 先に書いておくと、僕の考えは大分スピってる。

 それはもう、盛大に。


 じゃあまずは前提から。


【人が生きる意味とは】


 人が世界に与える影響を踏まえて、意味があるとするのか。

 人の世界において、個人が生きる意味があるとするのか。

 生きていることで何かの利益になっている、と考えるのか。


 それぞれで異なる答えが出ることだろう。


 ひとつ目。「人が世界に与える影響を踏まえて、意味があるとするのか」

 これはないだろう。

 環境を壊すのも人間。それを直そうとするのも人間。

 世界を対象にした自作自演を繰り返すだけの存在に意味はないだろう。


 では次。「人の世界において、個人が生きる意味があるとするのか」

 これはあるだろう。

 人はひとりでは生きられない。

 生きている限り誰かに影響を与え。与えられ。

 そうして成長していく。


 仮に子供の頃から虐められていて、人生に絶望していたとして

 周りの人はそれを見て「あんな対象になりたくない」と学ぶ。

 ほら、誰にだって生きる意味はありそうだ。


 じゃあ次。「生きていることで何かの利益になっている」

 僕が質問したのは()()

 詳細を省いた僕が悪いからね。

 前の二つのどちらかに対して答えてくれていたのなら謝罪をしよう。

 でも、これだけ言われても意味が分からないだろう?

 だから最初に本質となる質問をして、その答えを知りたかったんだ。


 この質問が差している「何か」は人間のことじゃない。


 一度、思考を飛躍させないと話を続けるのは難しいだろう。

 だから語らせてもらうよ。

 これは僕の考え。

 信じなくてもいいし。深く考える必要もない。

 理解できないところは読み飛ばせばいい。

 あくまで、質問に答えるために必要な予備知識のようなものだから。


 唐突だが、この地球が宇宙に誕生して人間が。キミが生まれる確率はどのくらいだと思う?

 きっと0がたくさんあるんだろうね。

 分からないが正解だよ。

 だってこの確率。現代科学でも計算不可能とされているから。


 真核生物への進化確率。多細胞生物への進化確率。哺乳類への進化確率。

 霊長類への進化確率。ホモ・サピエンスへの進化確率。


 そのどれもが未知数で、環境による必然もあれば突然変異によって訪れた奇跡もあるんだ。


 ここでカミングアウトしよう


「僕はここ3ヶ月に起きたニュースの内容。全てを予言していた。」


 キミは「嘘に決まっている」と思っただろう?

 どうしてだろう。

 僕は本当に起きるだろうと予測して事前に予言を書いていたかもしれないのに。


 嘘だとも。こんな面白くない冗談はやめよう。

 だけれど、そんな低い確率が実現するはずがないとキミは思った。

 そこが重要なんだ。


 天文学的な低確率を前に人は「ありえない」という感想を導き出す。

 なら、どうして人が生まれた天文学的な低確率をありえないと思わない?


「実際に僕はここにいる」


 たしかに。

 それなら、天文学的な低確率は現実となったのだろう。

 でもその主張は所詮、結果でしかない。

 どうして。どのようにして低確率をくぐり抜けたのか。

 重要な過程を説明せずに結果の証拠だけを提示されても困る。

 まあ、その結果も必要な材料なのだけれど。


 じゃあ、今からスピるね。


 僕は。

 何かによって、人が生まれるように()()()()()と思うんだ。


 スピリチュアルだろ?笑っていい。

 一番の面白いポイントはここさ。

 これ以降にこれ以上の笑いのポイントはないよ。


 たださ。こう考えるのが一番納得がいくんだよ。

 補助を受けた。それによって確立が上がるのは説明するまでもない。


 僕のついたつまらない冗談。

 3ヶ月に起きたニュースの内容。全てを予言していた。

 これの前提に、僕は欲しい情報を得られる立場にいた。

 そして、AIをフル活用し、きな臭い組織の思考ルーチンを予測していた。

 それならピッタリ当てることは難しくても

 ある程度の精度をもって予測することはできるだろう。


 補助があるというのは確率を上げるファクターになり得る。

 補助が強力なほど、それは強いファクターに。


 何かは人が生まれるように誘導した。仕向けられた。

「何か」と呼ぶのは面倒だな。

 黒幕。支配者。神。まぁ神でいいか。一番文字数が少ない。


 神は人を求めて生み出した。

 これは微生物ではいけなかった。

 人が求められていた。


 だって微生物でいいのなら確率はもっと高いのだから。

 わざわざ面倒な低確率を手繰り寄せる必要はなかったのだから。

 何故か低確率の先にある人を選んで生み出したことには、必ず理由がある。


 ここで考えるべきは人は他の生物と何が違うのか。


 言語を扱えること。

 知識を累積すること。

 同種との協力ができること。

 他の生物もどれかひとつなら出来る。

 ただ、人はそれら全てを高水準で出来る。

 こう見ると高性能AIのようだな、人間は。


 つまりそういうこと。


 神が人を生み出して観測だけしていると思うか?

 神に比べたら知能の劣る人で実験していると思うか?

 するわけがないだろう。


 端的に言ってしまえば、奴隷の養殖場。

 それがこの世界で、奴隷が人だ。


 もちろん説明するとも。

 指示を聞くことができて、それを過去の経験から自立思考して行動できる。

 その行動は同種と連携して実行する。

 それが人。


 なんて使いやすい駒だろうか。


 必要になった時に駆り出して戦力として数えられるではないか。

 神話とは。駆り出された歴史を記したものじゃないのか。

 あれはこの世界で起きた出来事ではない。

 神によって駆り出された駒がその出来事を記した書物ではないのか。


 少しだけ、話が逸れた。


 まぁ、つまりはそういうこと。

 最初の訳分からない確率を突破すれば勝手に自給自足する奴隷が作れる。

 だから神は、この世界に人を作り出した。


 ようやく、最初の質問の続きが出来るね。「生きていることで何かの利益になっている」

 なっているんだよ。

 もしもの備えのひとつとして、生きているだけで意味がある。

 真価は別だとしてもね。


 こんな話をされて、だから何?

 というのが普通の感情だろう。


 僕は()だからね。

 神の駒になるのも、神の思い通りになるのも。

 だから抜け出す方法を探したんだ。


 難しいことじゃなかったさ。

 キミも知っているかな?

 ひとりかくれんぼや異界エレベーターと呼ばれるものだよ。


 ひとりかくれんぼは自分の肉片を人形に宿すことで

 人形が自分であると世界を誤認させる。

 それによって重複した同一存在のどちらかがバグとして処理され、消滅する。


 異界エレベーターは特定の座標を行き来することで位置ズレを発生させ、

 世界の狭間に消えるというもの。


 ひとりかくれんぼであれば、バグ認定された方が人形なら自分は生存する。

 異界エレベーターは位置ズレが不十分なら不可思議な体験するだけで終わる。

 実施した人で生存者のいる珍しいタイプだからこそ、世間に広く伝わった。


 そう。これらは珍しいんだよ。

 禁忌実験と調べればすぐに出てくる。

 調べ方に工夫はいるけれどね。


 行方不明者が多くある場所。多く発生する事柄。

 それらの原因を究明しようとした実験群の総称。それが禁忌実験。

 共通するのは()()()()()()()という点のみ。


 被験者が消失してしまえば結果を持ち帰るべき存在は消えて、空白にするしかない。

 実験をすれば人が消える。だからこそ禁忌実験なのだ。


 バミューダトライアングルの指定ポイントで5秒以上停止する。

 富士の樹海にある大穴に入る。

 南極の湖で指定座標を行き来する。

 そんなものばかりではある。

 これらは全て世界によってバグ認定されて消失しただけだ。


 そう。バグ以外のものもある。

 バグではないと僕が認識しているものが。


 実際に僕のやろうとしているものもそうだ。

 これはバグではないと思う。


 ヴォイニッチ手稿。

 まぁこれでなくてもいいのだけれど。

 要は自分が解読することの出来ない本を用意する。

 少しでも解読できる文字があってはいけない。


 ヴォイニッチ手稿はネットで手軽に見ることができる上に、条件に合致する。


 これを自分のルールで解読して。

 自らの言語に置き換えて写本していくんだ。

 適当ではいけない。

 この文字は自分の言語のこれに当たるはずだと。


 それを繰り返していくうちに、この文字はこれだと直感的に理解できる瞬間がやってくる。

 ()()()()()()


 そうすると不思議とね。

 本の文章が僕に語りかけてくるんだ。

 禁忌実験の実験過程に記載のあった通りだ。


「あしたの予定は?」


 そんな些細な問いかけ。

 それでもこれまでは意味の繋がらない言葉の羅列だったのに。

 明確な問いかけとなって理解できるようになる。


 それへの受け答えを写本している紙に書くんだ。


「明日も解読するよ」


 そうしたら次の文を読み解く。


「解読?これはおはなしでしょ?」


「そうか。これはお話しなのか」


「そう。あなたがはなしかけてきたの」


「これは失礼した。出来れば今後も話したい」


「いいよ。でも、あなたはどうしてはなしかけてきたの?」


「神の支配から抜け出せると思ったから」


「そう。しっているんだね。ならたすけてあげようか?」


 僕はここまで解読してやりとりを続けた。

 ここから先は未知数だ。


 だが、神の支配から抜け出すために僕は行くとするよ。

 ()()()()()()、と書くつもりだ。


 では。僕は先にいっているよ。





 これは息子のPCに残っていたデータです。

 息子は行方不明です。

 本名は斎藤 凛音(りおん)。24歳で細身の男性。

 視力が悪いので眼鏡を常用しています。

 警察への失踪届はもちろん出しています。

 息子の知人も捜索してくれています。

 ですが、見つからないのです。


 こんなわけの分からない書き残しと机の上には紙が一枚。

 最後には「助けてほしい」と書かれています。

 息子は書いて、消えてしまったんじゃないかと。そんな馬鹿な想像が頭から離れないのです。


 私は気持ちが悪くて試す気になれません。

 もし、興味が湧いた方がいましたら()()()()()()()()んです。

 それで何も起こらなかったなら、息子はただ失踪しただけと思えるので。


 すみません。自分勝手で。

 ですが、協力していただけると助かります。

 警察も禁忌実験なんて聞いたことがない、と言っていました。

 なのでこれは息子の妄想だと思います。

 きっと安全です。実践しても何も起こらないはずです。

 だから、どうかよろしくお願いいたします。

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