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債の剣  作者: ShizukuNotePt
第1巻 請求通知
16/18

第8話 『利息』(後編)

ヴェイル別棟には、どこにも書かれていない規則があった。

声に出して祈らないこと。引用できる形で感謝しないこと。名を強く呼ばないこと――名そのものが領収証になってしまうかのように。

修道女は、見られずに役に立つ術を身につけた者のように動いた。家族の腕から慎重に坑夫を引き取り、卓の上に寝かせると、恐慌が形を持つ前に布を裂き始める。

「押さえて。そんなふうじゃだめ。溺れるみたいに掴んだら、この人も一緒に沈むわ」

坑夫の妻は従った。手は震えているが、音は立てない。

少年は壁に近すぎる位置に立っていた。大きすぎる外套を着て、父の脚を見つめている。布の下で膨らむ肉。整おうとする血。

修道女が湯の入った鉢に手を伸ばしたとき、坑夫の唇が動いた。

言葉を出したかったのだ。この部屋を、人のいる場所に戻すために。

「だめよ」

修道女は顔を上げずに言った。「ここでは」

男の目が彼女を越え、少年へと滑る。

それでも、彼は試みた。

「エ――」

音が引っかかる。

喉を鳴らす。

「エ――」

今度は長い。困惑が眉間を締める。

少年は身を乗り出した。子どもはまだ、近づけば解決すると思っている。

坑夫の視線が少年に縫い止められる。必死に、次の形を作ろうとする。

「エ……ル――」

カエルは袖の下で契印が揺れるのを感じた。

発動ではない。

注意。

修道女の刃が一瞬、空中で止まる。裂かれかけた布が宙に留まる。

すぐに動きは再開された。値が揺れたときの商人のように、まだ起きていないふりをする。

「大丈夫」

妻が囁く。「無理しないで」

坑夫はもう一度だけ、言葉を取り戻そうとした。

「エ……ル――」

何もない。

空白。

劇的でも、騒がしくもない。

ただ、欠落。

部屋が一瞬、掃き清められすぎたように感じられた。小さくて必要な何かが、消し去られたように。

やがて男は荒く息を吐き、ひとつ頷いた。沈黙に同意するように。

少年の手が、長すぎる袖の中で拳を握る。

リスは少し離れて立っていた。手袋をはめた手は静止したまま。

喉の緊張、指の圧、欠けた言葉に合わせて口元がどう調整されるか――契印を読むときと同じ精度で、家族を観察している。

卓の端に置かれた木片に、リスの視線が止まったとき、カエルもそれに気づいた。

坑道の汚れが染みついた楔。

刻印が押されている。

ヴェイルの蝋ではない。契約庁の朱でもない。

鈍い灰褐色の印影が、木目に打ち込まれていた。

リスは近づかない。

ただ、温度がわずかに下がる。

「悪化させるなら外でやって」

修道女が刃を置きながら言う。

「悪化させるつもりはありません」

「みんな、そう言うわ」

リスは手袋の手を差し出した。「拝見しても?」

短い頷き。

楔を持ち上げ、灯りの下で角度を変える。

蝋は魔術ではない。

持ち歩ける権限だ。

匂いを嗅ぐことはしない。

圧痕を読む。

縁が浅い。表面にわずかな砂粒。

印章の頭部は削られ、使い回されている。扱いが粗い。

契約庁の印は刃のように切れ味がある。

帝国の印は重さで押し潰す。

これは引き伸ばされている。

節約。

急ぎの施行。

「これは我々のものではありません」

「誰のものかは知らないわ」

修道女が言う。

「知ってるだろ」

カエルは口を滑らせた。

否認が身体の縁に触れる――言葉は止めない。ただ、足をその場に縫い止める。

「あなたの戦争をここに持ち込まないで」

修道女が鋭く言う。

「もう入り込んでる」

彼女は彼をまともに見た。疲れている。無知ではない。

リスは楔を下ろす。

「鉱山管理局」

静かに言う。「レンヴァルト隊長の管轄です」

修道女の肩が落ちる。「なら、あれは彼らの言うものになるだけ」

リスは否定しない。

そこが一番、痛い。

カエルは腹の奥に何かが沈むのを感じた。怒りではない。理解。

リスは楔を、元の位置に正確に戻す。

「脚を高く。骨の下に腫れが溜まれば、痛み以上の代価を払うことになります」

「あなた、死を見てきた顔をしてるわ」

「死を決める書類を見てきました」

外で靴音が擦れる。

規則的。

読みやすい。

リスの視線がわずかに動く。

「支柱の記録を確認します」

カエルに言う。「修正される前に」

「何に修正される?」

「安定に」

修道女は笑いともため息ともつかない音を漏らした。「行きなさい。そして連れてこないで」

外に出ると、村はさらに狭くなっていた。

灯火は意図的な間隔で並ぶ。夜になっても列は消えない。書記は筆を走らせ、兵は見張り続ける。

薪を抱えた女が名を問われ、言葉を止めた。

「マ――」

間。

そして、作り慣れた笑み。

「どうでもいいの」

許可窓口の男は娘の名を言いかけ、止まり、

「娘」ではなく「子」と呼び直す。

小さな欠落。

反復。

ノクスに告げられなくても、カエルにはわかる。

礼拝堂と窓口の間の中庭に着く。

レンヴァルトは、いつも全体を見渡せる角度に立っていた。

「セラフィーヌ監査官。まだ起きているか」

「書類は眠りません」

「義務もだ」

適切な距離でリスは止まる。手は見える位置に。

「南側支柱に押された補強印の認可を求めます」

レンヴァルトは書記を見ない。

「それらは契約庁の印ではありません」

リスが続ける。「登録もない」

「偽造だと言うのか」

「誤帰属と申し上げます」

小さな頷き。

「機能している。それが重要だ」

「二人、死にかけた」

カエルが言う。

否認が足をその場に固定する。

「最小限の損失だ」

レンヴァルトが訂正する。「崩落の代価を知っているか。無秩序だ」

「機能は、土地に請求を回します」

リスは静かに言う。

レンヴァルトの目がわずかに鋭くなる。

「説明しろ」

「いたしません」

一拍。

「あなたの監査は有用だから続いている。権限と取り違えるな」

「手続きと無垢を取り違えないでください」

沈黙が伸びる。

やがて――

「本件は制御逸脱として記録」

レンヴァルトが書記に命じる。「安定化実施。氏名記録」

「印は?」

リスが問う。

「記載しない」

筆が走る。

「安定とは、ぬくもりではない」

視線は逸らさない。

「沈黙だ」

霜のように、言葉が降りる。

「次は器具を使うな」

「安定化しました」

「次は、お前が安定化される」

リスは正確な角度で礼をした。

そして背を向ける。

窓口の列の端で、カエルは場違いな男を見つけた。

泥のない外套。汚れのない手袋。

低い声で坑夫と話している。

坑夫の顔が青ざめる。

折り畳まれた紙が渡される。

硬貨ではない。

紙。

坑夫は手首をちらりと見る。

頷く。

男はリスの徽章に視線を向け、短く鋭く笑った。

そして列に溶ける。

市場が形を取り始めている。

まだ、静かに。

別棟に戻ると、坑夫は浅い眠りに落ちていた。

少年がリスを見る。

「ありがとう」

リスは少年を見下ろす。

「お父さんは生きます」

正確。

事実。

重みはない。

少年は一瞬ためらい、それでも頷いた。

リスは卓につく。

先ほど置いた日誌がある。

契約庁支給の野外記録帳。背には登録繊維が縫い込まれ、中央名簿と結ばれている。記憶より安全だ。記憶は改変できる。紙は編纂できる。

ページを開く。

筆は滑らかに走る。

素早く、整然と。

修道女が湯を運ぶ。湯気が立つ。

一瞬だけ筆が遅れる。

だが止まらない。

「見ただろ」

カエルが低く言う。

「取引です」

「何の?」

間。

「霊です。刃の外の」

カエルの胃が落ちる。

「どうやって?」

「まだわかりません」

だが、誰かは知っている。

蝋燭が揺れる。

一瞬、リスの傍らの空気が薄くなる。

冷たいのではない。

薄い。

ミラの気配が、言葉も慰めもなく、かすかなぬくもりを残して引く。

リスの喉がわずかに締まる。

筆は動き続ける。

修道女が茶を置く。

「飲みなさい」

リスは杯を持つ。

湯気。熱。識別できる。

飲み込む。

何も変わらない。

「感じるか?」

カエルが問う。

「識別はできます」

「それで?」

小さな間。

「欲していません」

劇的ではない。

ただの事実。

カエルは先の記述を見る。

――今日は、パンが温かい。

リスはその一文を見つめる。

眉がわずかに寄る。

「匂いが思い出せない」

声は空気にほとんど届かない。

修道女が温かい布を手に押し当てる。

「持っていなさい」

リスは従う。

革越しの熱。

内側に反響はない。

扉が叩かれる。

公的な音。

書記が通知を差し出す。中には入らない。

カエルが開く。

登録された刃の外に現れた未承認の霊に関する情報に報奨。

支払いは硬貨、または許可特権。

債権の譲渡は審査対象。

取引、公式化。

カエルはリスを見る。

彼女はすでに日誌に手を置いている。

守るのではなく。

確認するために。

ページを開く。

止まる。

視線が走る。

蝋燭にかざす。

新しい墨。

まだわずかに光を帯びている。

彼女自身の筆跡。

整然。

制御された。

だが、書いていない。

――登録するな。

――封じ込めよ。

背の登録繊維が、灯りを受けてかすかに光る。糸が引っかかるように。

魔術ではない。

手続き。

カエルの内側で何かが落ちる。

「誰が書いた」

リスは答えない。

手袋越しに、強くページを押さえる。

カエルの奥で、ノクスが静かに言う。

――名簿は叫ばない。編集する。

外で再び靴音。

規則的に。

村は整列し続ける。

リスは掌で文字を押さえたまま、次の修正を拒むかのように動かない。

カエルは理解する。

冷たく、正確に。

利息は、彼女の紙にまで届いた。

徴収は、もう扉を叩く必要がない。


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