表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界節分ライフ~外れスキル【豆まき】で荒野を楽園に変えたら、空腹の女騎士が住み着きました~  作者: 黒崎隼人


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/15

第7話「ようこそ農園へ、空腹の珍客たち」

 村の入り口に、数人の人影があった。


 ボロボロの服を着た、痩せこけた人々。近隣の村から逃げてきた難民だろうか。


 彼らは、再生した畑を見て呆然としていた。


「おい、あれを見ろ……野菜だ」


「嘘だろ、こんな荒野に」


 彼らは空腹のあまり、今にも畑に飛び込みそうだった。


 セシリアが前に出る。


「待て! 勝手に取ることは許さん!」


 人々はビクッとして縮こまる。


「お、お慈悲を……子供が飢えているんです」


 見れば、小さな子供を連れた母親もいる。


 私はセシリアの肩を叩いた。


「いいよ、セシリア。食べる分には構わない」


「しかし、それでは規律が」


「働かざる者食うべからず、だ。タダではやらない」


 私は人々の前に進み出た。


「俺はこの畑の持ち主、ハルトだ。あんたたち、飯が食いたいか?」


 全員が必死にうなずく。


「なら、働いてもらう。この村の復興を手伝ってくれ。家の修理、水路の整備、畑の拡張。やることは山ほどある」


「は、働きます! 何でもします!」


 代表らしき男が叫んだ。


「よし。契約成立だ。まずは腹ごしらえと行こうか」


 私は荷馬車から大鍋を降ろした。


 今日のメニューは、町で仕入れた肉と、畑の野菜をふんだんに使った「豚汁」と「炊き込みご飯」だ。


 大鍋で具材を炒め、水を注ぐ。煮立ったら、今回新しく作成に成功した「試作味噌」を溶き入れる。


 芳ばしい香りが漂うと、人々の目から光が消え、野生の輝きが宿った。


「並んで! 順番だ!」


 セシリアが列を整理する。


 椀に注がれた豚汁と、おにぎりを受け取った人々は、涙を流しながら貪った。


「あったけぇ……」


「こんなうめぇもん、初めて食った」


「母ちゃん、お肉が入ってるよぉ!」


 その光景を見て、私も胸が熱くなった。


 農家冥利に尽きる。自分が作ったもので、人が笑顔になる。これこそが農業の醍醐味だ。


 その夜、廃村だった場所には、久しぶりに人々の笑い声と、焚き火の明かりが戻った。


 セシリアが私の隣に座り、お茶(大豆を煎った大豆茶)をすする。


「貴殿は不思議な人だ。魔法使いのように作物を育て、商人のように交渉し、聖人のように施す」


「買い被りすぎだ。俺はただ、自分の畑を大きくしたいだけさ。人手が増えれば、それだけ多くの作物が作れるだろ?」


「ふふ、そういうことにしておこう」


 セシリアは柔らかく微笑んだ。その笑顔は、最初に出会った時の騎士の顔とは違い、年相応の少女のように可愛らしかった。


 こうして、私の領地経営……いや、農園経営が本格的にスタートした。


 だが、問題がないわけではない。


 人手が増えれば、それだけ食料も必要になる。そして、この奇跡の農村の噂は、すぐに広まるだろう。


 良からぬ連中が目をつけないはずがない。


 私は夜空を見上げた。


 北の空に、不気味な赤い星が瞬いているのが見えた。


『警告:季節外れの【大厄たいやく】が接近中』


 脳内アナウンスが不穏なことを告げる。


 大厄? なんだそれは。


 節分の敵といえば鬼だが、まさかそれ以上の何かが来るというのか。


 私はポケットの中の豆を握りしめた。


 何が来ようと、守り抜いてみせる。この畑と、ここの仲間たちを。


「マメゾウ、明日は忙しくなるぞ」


「マメッ! マカセロ!」


 小さな相棒の頼もしい返事を聞きながら、私は眠りについた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ