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異世界節分ライフ~外れスキル【豆まき】で荒野を楽園に変えたら、空腹の女騎士が住み着きました~  作者: 黒崎隼人


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第6話「ギルドマスターも唸る、黄金の輝き」

 赤鬼将オーガ・ジェネラルとの戦いは、一方的なものとなった。


 私の【鬼は外】による豆弾幕が牽制し、動きが鈍ったところを、セシリアの鋭い剣が切り裂く。そしてトドメに、私が作り出した巨大な「圧縮大豆爆弾メガ・ビーンズ・ボム」が炸裂した。


 鬼将は光の粒子となって消え、大量の経験値とドロップアイテム(主に高純度の魔石)を残した。


「……信じられん」


 剣を鞘に納めながら、セシリアがつぶやく。


「ジェネラルを、二人だけで……しかも無傷で倒すとは」


「マメゾウのサポートもあったからな」


 マメゾウは足元に蔓を絡ませて、敵のバランスを崩すというファインプレーを見せてくれた。今は「マメゾウ、ツヨイ!」と私の肩の上でふんぞり返っている。


 この勝利により、周辺の魔物の脅威は激減した。


 畑を広げるチャンスだ。


 数日後。


 私たちは収穫した野菜を荷馬車(修理したもの)に積み込み、最寄りの町へ向かった。


 目的は換金と、必要な物資の調達だ。


 町に入ると、活気があったが、どこか人々の顔色は暗い。食料価格が高騰している影響だろう。


 私たちは冒険者ギルドに向かった。魔石の換金のためだが、あわよくば野菜も売り込みたい。


 ギルドの扉を開けると、荒くれ者たちの視線が集まる。


 カウンターの奥から、岩のような大男が出てきた。ギルドマスターのガルドだ。


「セシリアか。生きていたか。あの廃村に行ったきり戻らないから、死んだと思っていたぞ」


「失礼な。見ての通りピンピンしている」


「ほう……以前より肌ツヤがいいじゃねぇか。何かいいことでもあったか?」


 ガルドはセシリアの変化に目ざとく気づいた。


「ああ。素晴らしいパートナーを見つけてな。紹介しよう、ハルト殿だ」


 セシリアに背中を押され、私は前に出た。


「どうも。農夫のハルトです」


「農夫? ひよっこ冒険者の間違いじゃねぇのか?」


 ガルドは鼻で笑った。


 私は黙って、袋から取り出したものを見せた。


 オーガ・ジェネラルの魔石だ。拳大の大きさがあり、深紅に輝いている。


 ギルド内が静まり返った。


「お、おい、そりゃあジェネラルの……!」


「これを換金したいんですが」


「……マジかよ。お前らがやったのか?」


「まあ、運が良かったんで」


 ガルドの態度が一変した。彼は私を別室に通し、商談を始めた。


「で、こっちの野菜も売りたいと?」


 私はテーブルの上に、自慢の大豆、キュウリ、大根、そして米を並べた。


 ガルドは怪しげにキュウリを手に取る。


「見たことねぇ野菜だな。毒じゃねぇだろうな」


「食べてみてください」


 ガルドは乱暴にキュウリをかじった。


 ボリッ。


 次の瞬間、彼の強面が崩壊した。


「!?」


 言葉を失い、二口、三口と食らいつく。


「なんだこれは! 水っぽいだけかと思ったら、とんでもねぇ旨味が詰まってやがる!」


「こっちの大豆もどうぞ。茹でてあります」


 枝豆を食べたガルドは、目頭を押さえた。


「酒だ……誰かビールを持ってこい! これは犯罪的な味だ!」


 大の男が枝豆で泣いている。


「気に入っていただけて何よりです。定期的に卸したいんですが」


「買う! 全部買う! 言い値でいい!」


 商談成立だ。


 しかし、一番の問題は「米」だった。


「この白い粒は何だ?」


「これは調理が必要です。厨房を借りても?」


 私はギルドの厨房を借り、塩むすびを作った。


 具はない。米と塩だけ。


 熱々のおにぎりを、ガルドと居合わせたギルド職員たちに振る舞う。


 結果は、暴動に近い騒ぎになった。


「うおおおお! なんだこのモチモチした食感は!」


「甘い! 噛めば噛むほど甘い!」


「腹持ちがいいぞ! これならダンジョンでも戦える!」


 異世界の人々にとって、パンや芋が主食だったが、米の衝撃は凄まじかったらしい。特に日本食に飢えていたわけでもない彼らがここまで反応するとは、【聖豆農法】による品質補正と、私の【五穀豊穣】スキルの力だろうか。


 ガルドは私の手を両手で握りしめた。


「ハルト先生! あんたは神だ! この穀物があれば、食料危機なんて吹っ飛ぶぞ!」


「先生はやめてください。ただのハルトで」


「いや、先生だ。なぁ、これをうちのギルド専売にしてくれねぇか?」


「それは構いませんが……セシリアの領地の復興が最優先ですから、まずは彼女を通して」


 セシリアを見ると、彼女は誇らしげに胸を張っていた。


「聞いたかガルド。ハルト殿は私の専属だ。手出しは無用だぞ」


 専属の意味が微妙に誤解されそうだが、まあいい。


 こうして、私たちは多額の資金と、強力なコネクションを手に入れた。


 帰り道、荷馬車には新しい農具や、建築資材、そして調味料が積まれていた。


「これで、もっと色々なものが作れるな」


 私の頭の中には、次のメニューが浮かんでいた。


 豆腐、味噌、醤油。大豆三兄弟だ。


 そして、それを使った日本食の数々。


 夢が広がる。


 だが、村に帰った私たちを待っていたのは、意外な来客だった。

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