プロローグ 女神様は全てを見ていた。
俺は、トラックに轢かれて死んだ。
以上。
説明終わり。
……いや、もう少し補足するとだな。
「うわ、異世界フラグじゃん」
横断歩道を渡りながら、そんなテンプレ思考をした瞬間、全力疾走してきたトラックが俺の人生を横から消し飛ばした。
ブレーキ音? なかった。
走馬灯? なかった。
あったのは、圧倒的トラック力。
俺は空を飛び、回転し、「あ、これ死ぬやつだ」と冷静に分析しながら死亡した。
次に目を覚ました時、俺は白かった。
視界も白。
床も白。
天井も白。
無菌室か? それとも歯医者か?
「いえ、天界です」
声の方向を見ると、そこには金髪。
神々しい光。
いかにも**“女神テンプレート”**な女性が立っていた。
「おお……女神様……!」
俺は即座に土下座した。
俺の浅知恵だと、ここが勝負どころだ。
「俺、異世界転生ですよね!?勇者ですよね!?チートありますよね!?」
「あります」
即答だった。
女神は指を鳴らす。
「あなたには、勇者と同等……いえ、それ以上の力を与えましょう。異世界に行って《ステータス》と念じなさい」
視界にステータスウィンドウが展開される。
筋力:測定不能
魔力:測定不能
反射神経:バグ
運:おかしい
「勝ったな」
俺は確信した。
「これ、もう人生イージーモードじゃないですか!ありがとうございます女神様!!
一生ついていきます!!」
その瞬間だった。
女神の表情が、スッと真顔になる。
「……」
「?」
女神は、じっと俺を見つめる。
いや、違う。
見ているのは、俺の“中”だ。
「……あなた」
女神が、静かに言った。
「今、何を考えました?」
「え?」
しまった。
しまった、しまった、しまった。
さっきの俺の思考。
希望、妄想、下心、テンプレ展開への期待。
いろいろごちゃ混ぜだった。
「……なるほど」
女神は、一歩引いた。
物理的に。
「ちょっと気持ち悪いですね」
「え!?」
「いえ、人格がどうこうではなく、“思考の方向性”がです」
「そんな!?」
女神は腕を組み、しばらく考え込む。
「力を与えたのは取り消せません。
ですが……」
女神はニコッと笑った。
嫌な予感しかしない笑顔だった。
「代わりに、デバフスキルを一つ付与します」
「代わりって何!?」
「《ロリデス》」
「名前!!」
女神は、淡々と説明を始めた。
「効果は簡単です。私があなたを“ロリ”と判定した場合にと……」
女神は、俺を指差す。
「あなたの思考が一線を越えた瞬間、
心臓麻痺で死亡します」
「即死じゃないですか!!」
「はい」
「基準は!?」
「私です」
「独裁!!」
女神は満足そうに頷いた。
「これで安心です」
「誰が安心するんですか!!」
「私が」
俺は叫んだ。
「人権は!?俺の人権はどこですか!!」
女神は少し考え、こう答えた。
「次の転生で探してください」
「ロリコンに人権を下さい!!」
「不合格です」
女神が指を鳴らす。
「では、異世界へ」
「え、心の準備が……」
視界が暗転する。
こうして俺は異世界に転生した。
勇者並みの力と、女神の主観で心臓が止まる地雷を抱えて。
この時の俺は、まだ知らなかった。
この転生が、ギャグに見せかけた死にゲーだということを。
つづく?




