第7話 初めてのボス
「続きは明日やるから、今日はゆっくり休んでくれ!では、テレポートするぞ!」
このダンジョンは人工だから、テレポートは自由にできる。つまり、明日はボス部屋の前から直接スタートできるということだ。
翌日――
「準備はできたか?今日はボス討伐だ!気合い入れろよ!」
俺たちは装備を整え、ボス部屋の前にテレポートした。緊張感が一気に押し寄せる中、配信が開始される。
「こんにちは。フェアリーテイルズです。今日はボス討伐をやっていきたいと思います!」
俺は挨拶をし、深呼吸をした。
「……ボス部屋か」
レイナもわずかに声が震えている。俺も手のひらにじっとり汗が滲む。
「よっしゃ!配信で見せ場作るぞ!」
「油断するなよ。ここからは慎重に」
「みんなで帰ろうね!」
【コメント】
・ボス戦きたー!
・ユナちゃん大丈夫か?震えてね?
・レイナ姐御も緊張してるっぽいな
・リオのテンション高すぎて草
リオはやたらテンションが高いが、ミアは冷静に注意を飛ばす。人工ダンジョンは死ぬことこそないが、危なくなれば入り口に強制送還されるだけ。しかし、怪我が勝手に治るわけではない。油断すれば後が大変だ。
準備を終え、重い扉を押し開ける。中では、巨大なオークが咆哮を上げ、地面が震えた。
【コメント】
・デカすぎwww
・レイナ姐御頼んだ!
・オークの声やべぇw
「では、いつも通りで行きますよ!」
リオが前衛でオークの一撃を盾で受け止め、レイナが素早く側面に回り込む。ミアは後衛から魔法で援護、カレンは回復の詠唱を開始する。
「おりゃぁぁぁ!」
レイナの剣が唸り、オークの肩口を斬り裂く。
「天地を焦がすは、燃え盛る紅き獣。その牙を持って敵を喰らい、その咆哮をもって灰へ還せ――いざ、紅蓮の裁きを!『紅蓮裂破!!』」
ミアの炎魔法がオークを包む。炎に包まれたオークは苦しそうに身をよじるが、まだ余裕を見せていた。
俺も支援魔法を詠唱しようとする――だが、恐怖で体が固まる。そうだ……俺はボス戦の経験がほとんどない。前のギルドでは、ひたすら雑魚狩りしかしてこなかった。
「ユナ!バフを!」
レイナに叫ばれ、呪文を唱えようとするが、口がうまく動かない。その間に、リオがオークの強烈な一撃を受け、吹き飛ばされた。
【コメント】
・リオーーーーー!?
・ユナ落ち着け!!
・放送事故はやめろwww
・でもこれがリアルな冒険ってやつか
やばい、また足を引っ張ってる……。視界が滲む。そのとき、賢者から通信が入った。
「ユナ、深呼吸!君の魔法でみんなが生きるんだ!」
その声で、少しずつ呼吸が整う。
「……やれる。やらなきゃ!」
震える声で呪文を紡ぐ。
「血潮は燃え、筋は唸る。一撃必滅、敵を打ち砕くは腕なり――『猛撃!!』」
赤い光がレイナを包む。その瞬間、ミアが再び紅蓮裂破を放ち、炎が爆ぜた。
オークが一瞬たじろいだ隙を逃さず、レイナが渾身の一撃を叩き込む。
【コメント】
・ユナちゃん頑張った!
・バフ入ったのデカい!
・いいチームワーク!
・泣きそうなのにやるの尊い…
「おりゃぁぁぁ!!!」
レイナの剣がオークを真っ二つにした。
「……や、やった……」
全身の力が抜け、俺はその場に座り込んだ。
「……初ボスがこれかよ……」
「でも勝ったな!」
リオはカレンの回復で立ち上がり、笑いながらやってくる。
「ユナちゃん、よく頑張ったね!」
カレンの言葉に、胸がじんわりと温かくなる。
「……みんな、ありがとう」
再び賢者の通信が入った。
「大成功だ!コメント欄も称賛だらけだぞ!」
【コメント】
・初メンバーでボス討伐はすごい
・ユナちゃん泣きながら戦うの良かった
・全員推せるwww
・次回も絶対見る!
「ボスも討伐したことだし、配信終わらせていいよ!」
賢者に言われた通り、終わりの挨拶をし、配信を終了した。
「はぁ……怖かった。でも……俺でも役に立てたんだ」
小さな自信と、次への期待で胸が高鳴っていた。
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