第6話 初配信
「そろそろ配信始めるぞ！！最初はボクが出るから、呼んだら来てね！」
俺たちは胸元にはマイクを装着し、自動追跡型カメラの電源を入れる。小さな電子音とともに、カメラがこちらをじっと見つめてきた。まるで生き物みたいだ。
「よし！準備できたな！君たちの一挙手一投足が世界に配信されるぞ！」
「プレッシャーかけるのやめろよ！ほら、ユナが震え出したぞ！」
レイナが俺の様子を代弁してくれるが、賢者はニヤニヤ笑っているだけだった。震えを止めようと深呼吸している間にも、配信はすでに始まっていた。
「こんにちは！視聴者の皆さん。本日はお集まりいただきありがとうございます！」
【コメント】
・おおおおおおおお！配信きた！！
・賢者プロデュースってマジかよwwww
・どんなダンジョン攻略を見せてくれるかな
「本日はボクが作ったギルド『フェアリーテイルズ』のメンバー紹介&ダンジョン攻略だ！ちなみにメンバーは全員、元男の子だよ〜」
【コメント】
・えぇ！？www
・急にぶっ込んできたなwwww
・それはそれでアリ
・賢者の趣味全開すぎるだろ
「では早速きてもらいましょう。どうぞ！！」
号令と同時に、俺たちはカメラの前へ移動する。
「は、初めまして。フェアリーテイルズのリーダー、ユナです。白色の三日月のイヤリングが目印です。よろしくお願いします」
他のメンバーも練習配信でやったように順番に自己紹介していった。
【コメント】
・ユナちゃんマジ清楚系だな...
・レイナちゃん噛んでて可愛いwww
・ミアちゃんクールビューティ
・リオちゃん声デカすぎwww
・カレンちゃん癒されるなぁ
「俺たちは、今から賢者様が作ったダンジョンに潜っていきたいと思います。準備がありますので少々お待ちください」
自己紹介が終わり、心臓はまだバクバクだ。賢者に案内され、ダンジョンの前まで移動する。
「今日の配信はボス部屋の手前までだ。でかい扉の奥にいるから、その手前で終わらせてくれ、では、頑張れ！」
...とうとうダンジョン攻略が始まる。やるしかない。
「大変お待たせしました。それでは攻略を始めます！」
俺たちは円陣を組み、気合を入れてから中へと踏み込んだ。
「よし！お前ら、カメラがあるからってふざけるなよ！」
「逆に盛り上げなきゃダメだろ！」
リオはわざとらしいオーバーリアクションを連発。カレンは楽しそうに笑い、ミアはそんなリオをジト目で見ている。
【コメント】
・ユナちゃん緊張してるなwww
・レイナちゃん姐御感あるな
・リオ元気すぎて草
・ミアちゃん塩対応いいぞw
しばらく進むと、奥にゴブリンの集団が現れた。
「ゴブリンの集団です！リオは攻撃を受け止めてください。レイナとミアは続いて攻撃を！」
俺は指示を出し、カレンと一緒に三人に支援魔法『身体強化、剛鎧と猛撃』をかける。
剛鎧は防御力大幅上昇、猛撃は攻撃力大幅上昇する支援魔法だ。
「いいです！そのまま押してください！」
...と思った矢先、倒し損ねた一体が俺の方へ突進してきた。
「きゃああああ！？」
【コメント】
・悲鳴かわいいwww
・守ってあげたい（真顔）
・いい絵が撮れたな賢者www
・これも推せる
「油断するな、ユナ！」
レイナが素早く切り捨ててくれた。
「ありがとう...！」
「大丈夫、ユナちゃん？怪我してない？」
「うん、大丈夫...」
怪我はしてないけど、カレンの優しい声で緊張が少しほぐれた。...やっぱり癒し担当だな、こいつ。
モンスターを片付けて進んでいくと、ドカァァァァンと嫌な音が響く。
「あっはっは！落ちたwwww」
リオが罠に引っかかり落とし穴に真っ逆さま。本人はなぜか爆笑してる。
「ちょっと待っててください」
ミアが冷静にロープを取り出し、リオを引き上げる。
【コメント】
・リオ落下芸www
・ミアちゃん有能
・これ絶対バズるわ
その後も数回の戦闘をこなし、俺たちは一度休憩を取った。すると賢者から通信が入る。
「配信だから、コメントも拾ってみろ！」
それぞれ端末を見てコメントを確認する。
「''カレンちゃん癒される''って...えへ、ありがとう」
「''レイナ姐御かっけー''だってよ。ま、当然だな」
俺も画面を覗くと、自分の名前が何度も呼ばれているのが見えた。
「...俺、本当にみられているんだな...」
不思議と、その事実が少しだけ嬉しかった。
少し進むと、巨大な扉が現れる。
「ここがボス部屋ですね...今日はここまでと聞いているので、この辺で終わりにします。ご視聴ありがとうございました！」
「「「「ありがとうございました！」」」」
深く頭を下げ、配信終了。
「配信は大成功だ！コメントも伸びてるぞ！」
初配信は緊張だらけだったが、終わってみれば...楽しかった。自然と笑みが溢れていた。
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