第5話 初配信決定
「え!?まだ慣れてもないのに!?」
「大丈夫!視聴者は成長過程が好きだから!」
賢者は満面の笑みで断言するが、本当にそんなものか...?俺は配信なんてほとんど見たことがない。ましてや''バズる''なんて、どうやってするんだか見当もつかない。
「君たちの目標は──『攻略しながらバズること』だ。攻略だけじゃ埋もれる時代なんだよ!」
「バズるって...俺、そういうのに向いてないのに...」
小声で弱音を吐くが、賢者は全く聞く耳を持たない。気づけば俺たちは配信用スタジオに連行されていた。
「今から練習用の配信を行う!コメントは流れてくるが、全部この賢者タワーに勤めている人たちだ。安心してやってくれ!」
安心できるわけないだろ!と心の中でツッコむ暇もなく、カウントダウンが始まる。3、2、1 ──配信開始。
「こ、こんにちは...俺たちは、フェアリーテイルズです。リーダーの...ユナです」
自分の声が震えてるのが分かる。こんなに人前で喋るのが怖いなんて...。
「お、俺は...け、剣士をや、やっているレイナだ!」
レイナはさらに緊張しているらしく、噛み噛みだ。
「私はミア、魔法使いです」
ミアはいつも通りの無表情。緊張感ゼロ。
「オレはタンクをやっているリオでーーーす!!!」
なぜかカメラに向かって意味不明なポーズを連発。...本当何してんだ。
「僕はカレンです!僧侶です!」
カレンはふんわりとした笑顔で手を振り、画面越しでも癒しを振りまく。
コメントが次々と流れる。
【コメント】
・新ギルドキターーーーー!
・全員かわいいじゃんwwww
・リオちゃんうるせえwwwww
・ユナちゃん緊張してて守りたくなる
・賢者、絶対趣味で集めただろ
──俺...見られてる?画面の向こう側に確かに''誰か''がいて、自分を見て名前を呼んでいる。それだけで胸がドキッとして、頬が熱くなる。
「コメントで名前を呼ばれるのは不思議な気分だな」
「これが配信...恐ろしい世界だ」
リオとミアは全く動じずにしゃべり続けている。練習だから許されるとはいえ、自由すぎる。
「よし、自己紹介できたね!これは配信に慣れてもらうためだから今日はここまで。じゃあ明日について話すよ」
練習配信はあっけなく終了した。
「明日はにボクが作った人工ダンジョンに潜ってもらう!本番配信だ!早めに休んでコンディションを整えるように」
賢者の言葉に従い、俺は部屋へ戻った。シャワーを浴び、鏡の前に立つ。映るのは、まだ見慣れない''ユナ''という少女の姿。
「俺...人に見られるのは苦手なのに...でも、みんなと一緒なら...」
少しだけ前向きな気持ちが胸に灯る。
「やるしかないよな」
そう呟き、鏡の中の自分と目を合わせた。
──翌日。
「今日は君たちの配信デビュー!世界が君たちを見てるぞ!」
賢者の号令とともに、俺たちは装備に着替え、初めてのダンジョン配信に向けて準備を進めていった──。
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