第2話 賢者のギルド募集
賢者――ダンジョン研究の第一人者にして、世界屈指のダンジョン権威。
...なのだが、妙にマイペースで、突飛な発言を繰り返すことでも有名だ。
「また変なことでも考えているんじゃないか...」
俺は半信半疑で、その''賢者''が新たに立ち上げるというギルドの応募要項を見てみた。
【応募要項】
・ダンジョン攻略経験あり(自然/人工、どちらも可)
・配信活動に興味がある方
・年齢・性別不問
どうやら賢者は、''ダンジョン攻略''と''配信''の両立を目指すつもりらしい。
...とはいえ、今の俺にはそんなことを言ってられる立場じゃない。
俺は今、無職だ。かつて所属していたギルドから追放され、パーティーメンバーもいない。このままじゃダンジョンにすら潜れないし、貯金もそこをつくのは時間の問題だった。
「俺みたいな落ちこぼれでも、ワンチャンあるかな。でも配信って...顔出しとかするんだよな、恥ずかし...」
もはや手段を選んでいる余裕はない。ギルドに所属するか、パーティーを組んでくれる誰かを見つけなければ、明日はない。でも賢者ギルドなんて、どう考えても人気殺到だ。俺みたいな''その他大勢''が受かるわけがない――
そう思って30分。悩み続けて、考えがまとまらないまま。気づいたら、勢いで応募フォームを送信していた。
...送ってから後悔が押し押せてくる。
「やっぱり落ちるよな...そもそも、俺に何の強みがあるっていうのだよ...」
でも、心のどこかで――ほんの少し、''変わりたい''って思っていたのかもしれない。
数日後。
一通のメールが届いた。
[合格通知]
おめでとうございます。あなたは新ギルド『フェアリーテイルズ』のメンバーに選ばれました。
「...は?」
ありえない。いやいや、俺が受かったのか?噂では5万人以上が応募しているって聞いたぞ...!?
震える手でメールの続きを読む。
「三日後、都心の''賢者タワー''へお越しください。詳細は当日ご説明します。地方にお住まいの方には交通費が支給されますのでご安心ください。」
''賢者タワー''――
それは賢者自ら建てた、研究施設兼ギルドの拠点だ。
「都会か...俺、場違いじゃないか?」
俺は地方暮らしだし、都心なんて滅多に行かない。
でも――これで、とりあえず無職は卒業できる。少しだけ、ホッとした。
「俺が賢者のギルドに...?夢みたいだ」
けど、不安が消えたわけではない。また誰かの足を引っ張ってしまったらどうしよう、って気持ちが胸の奥にずっと居座っている。
希望と不安がごちゃ混ぜになったまま、俺はその夜、一睡もできなかった。
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