第10話 覚醒とバズ
自然ダンジョン発生の翌日。
昨日の出来事はSNSやニュースで大きく取り上げられ、冒険者界隈で話題沸騰していた。ギルドを統括する本部では緊急会議が開かれ、賢者もその場に参加している。しばらくすると、机の上のスマホが震え、着信が入った。
『やぁ。今、会議が終わったところだよ。昨日発生したダンジョンは――結論から言うと、ボクたちフェアリーテイルズとB級ギルド〈シルバースパーク〉で合同攻略することになった。この後すぐに出発する。準備しておいてくれ』
C級の俺たちとB級のギルドで本当に攻略できるのか不安はあった。だが、A級以上のギルドは日本各地を飛び回っており、突然のダンジョン発生に即応できるわけではない。今回も、現場に最も近い俺たちが選ばれたのだ。
「了解しました」
俺は全員を集め、事情を説明。急いで装備を整えた。
ダンジョンがある商業ビル前。そこには既に賢者とシルバースパークのメンバーが到着していた。
「来たね。こちらがシルバースパークのリーダーだ」
前に出てきたのは、背が高く引き締まった体格の男だった。肩まで伸びた銀髪を無造作に束ね、片方の耳には青い宝石のイヤーカフ。瞳は落ち着きのある琥珀色で、背筋の通った姿からは歴戦の冒険者の風格が漂っている。
「よろしくお願いします。フェアリーテイルズ、リーダーのユナです」
「こちらこそ。俺は〈シルバースパーク〉のリーダー、グレイだ」
シルバースパークは剣士、ハンマー使い、タンク、魔導士、僧侶がいる。
軽く握手を交わすと、賢者が口を開く。
「では作戦を説明する。総勢10名、前衛と後衛に分かれて進む。攻略の様子は記録のため配信するが、気にしなくていい。――それと、ユナ。君にはまだ眠っている魔力がある。あとはタイミングだ」
賢者から、手のひら大の透明な魔法石を受け取った。魔法石はモンスターの核から採れる貴重な素材で、魔道具の動力にも使われる。何故これを渡されたのか、その時はまだ分からなかった。
攻略は順調だった。最下層に辿り着くまで、大きな被害はなし。
「……これが、巨大な亀裂……」
グレイさんも息を呑む。
「中に入るぞ」
彼の指示で、ハンマー使いの前衛が亀裂を叩き割る。その奥から、地鳴りのような咆哮とともに姿を現したのは――
「マナイーター・ベヒモス……っ!」
ミアの声が震える。全長10メートルを超える巨体、紫黒の毛並み。目は狂気に染まり、体表を走る魔力の稲光が空気を焦がす。
「前衛、攻撃開始!後衛は援護!」
剣戟と魔法が飛び交う。だが一撃の重さが桁違いで、前衛が次々と弾き飛ばされる。
「くっ……まずい!」
「カレン!回復に専念して!」
残る前衛はレイナ、リオ、そしてグレイさんだけ。俺は焦りながらも指示を飛ばす。
「ミオ!天雷降で動きを鈍らせろ!」
「了解!」
「天を裂く光よ、嵐を呼び、地を貫け。神鳴りの轟き、我が敵を粉砕せよ--恐る天よ、今こそ裁きを!『天雷降』!」
雷鳴が轟き、ベヒモスの動きがわずかに止まる。だが、致命打には程遠い。回復の間もなく、ついに前衛が全滅。
「……やばい……」
残っている戦力は俺とミオ、後衛の魔導士一人のみ。その時、ポケットの中の魔法石の存在を思い出した。
「……賢者、なぜこれを……」
必死に石に願いを込める。
――皆を守りたい。力になりたい。
瞬間、体中を奔る熱。世界の色が薄れ、時間が引き延ばされたように感じた。
『……君はスキルを手に入れた。あの魔法石は願いを形にする石だ。君の望みは"力になること"――それが形になったのだ』
スキル。それは一部の人間が操ることのできる能力だ。
脳裏に自然とスキル名が浮かぶ。
「スキル、幻滅の領域」
能力が理解できた。味方の移動速度上昇、敵の動きの鈍化、そして範囲内の視覚・音響の操作――
「スキル発動、幻滅の領域!」
鮮烈な光と轟音がダンジョンを満たし、ベヒモスが動きを止める。
「今だ、畳みかけろ!」
前衛が復帰し、一斉攻撃を仕掛ける。俺は全員の速度を上げ、ベヒモスの動きをさらに鈍らせた。
「押し切るぞーー!!」
「おおおおおっ!!」
刃と魔法が重なり、巨体が崩れ落ちた。
「……やった……」
膝から力が抜け、座り込む俺。その様子は全て配信されており、コメント欄は歓喜の嵐だった。
【コメント】
・ユナちゃん覚醒!?
・新スキル強すぎwww
・「今なら勝てる」ここ泣いた
・賢者、ガチで逸材拾ってるじゃん
SNSでは「#ユナ覚醒」「#幻滅の領域」がトレンド入り。
帰還後、ギルドは一気に評価を高め、冒険者ランク・ギルドランクともにA級へ昇格。コラボや依頼のオファーが殺到する日々が始まった。
最後まで読んでくださりありがとうございます。よかったらブックマークよろしくお願いします。




