第9話 自然ダンジョン発生
ボス討伐配信から数日後。俺たちはギルドルームに集まり、配信の反省会をしていた。
「次はもっと派手に行こうぜ!」
「落下芸はもう十分」
リオはいつか炎上しそうだな……と思っていたら、突然、賢者がドアを開けて駆け込んできた。いつもの飄々とした顔ではなく、緊迫した表情をしている。
「自然ダンジョンがこの街に発生した。ランク不明だ。ギルド全員で対応する」
聞けば、それはこの近くの商業ビルの真ん中に突如出現したという。俺たちは慌ただしく準備を整え、現場へと急行した。
「……ここですね」
そこには、空間を裂くようにして開かれたゲートがあり、瘴気のような濃い魔力が溢れていた。すでに通行人は避難し、周囲には誰もいない。
「近くのギルドは他の任務中だ。ボクたちだけで対応する。これは配信じゃなく、あくまで”任務”だ。……だが、記録用に配信は続ける。気をつけてくれ」
【コメント】
・街中で自然ダンジョン!?
・やばいやばいリアルタイムで見れるのか
・これマジで危険だろ
・フルメンバーで突入ってことはガチだな
すでに配信には大勢の視聴者が集まり始めていた。
「命優先だ。ユナ、お前は絶対に無理するな」
「……わかった」
自然ダンジョンは人工ダンジョンと違い、本当に死ぬ。油断は許されない。
「では……行きましょう」
俺たちはゲートをくぐった。
中に入ると、そこはC級ダンジョンとは比べ物にならないほどのモンスター密度だった。足を踏み入れた瞬間、獣臭と金属臭が入り混じった空気が鼻を突く。
「これは……下手したらB級以上だな」
「笑ってる場合じゃねぇぞ」
【コメント】
・これ絶対C級じゃないって!
・レイナ姐御かっこよすぎ!
・ユナ泣いてる?(かわいい)
・これ放送事故になるやつじゃ…
俺たちはC級ギルドだ。ギルドランクはメンバー全員の冒険者ランクで決まる。
俺も最近D級からC級に上がったばかりだ。
「よし、行くぞ!」
次々と押し寄せるモンスターを、いつもの連携で撃退していく。だが、俺の体はまた動かなくなっていた。脳裏に、あのアンチコメントが蘇る。
『泣き芸で人気稼ぐとかキモい』
……泣いたら、また笑われる。俺は唇を強く噛み、必死に耐えた。
「ユナ! 支援を!」
レイナの声にハッとする。俺は深呼吸し、詠唱に入った。
「風よ、我が足を導け。時を追い越し、影すらも置き去りにせよ――《疾駆》!」
「血潮は燃え、筋は唸る。一撃必滅、敵を打ち砕くは我が腕なり――《猛撃》!」
レイナにバフがかかり、彼女は高速でモンスターを斬り伏せる。ミアの魔法が敵を焼き払い、リオは盾で攻撃を受け流す。なんとか窮地を脱した。
【コメント】
・ユナの詠唱きた!
・バフ連携神すぎる
・リオの盾受けかっこよすぎ
・手汗やばい、見てるだけで緊張する
このダンジョンは妙だった。普通なら5階層以上はあるはずが、3階層しかない。
しかもモンスターは最初の階層で密集していただけで、その後はほとんど遭遇しない。
「……何かがおかしい」
ミアが足を止め、指差す。そこには空間そのものが裂けたような巨大な亀裂があり、不気味な咆哮が響いていた。
その瞬間、賢者から通信が入る。
『撤退だ。今の君たちでは危険すぎる』
【コメント】
・逃げるのかよ!?
・いや、死ぬよりマシだろ
・この亀裂やばすぎる、なんだこれ
・これ後で絶対ニュースになるやつ
視聴者の間でも緊迫した空気が走る。俺たちは賢者の指示に従い、速やかに撤退を開
始した。
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