4.
仙人には、知っているか? 尸解仙、地仙、天仙の階梯がある。
では最初の入口、入門レベルの尸解仙になるにはどうすればよいか?
修業や仙薬などで成れるか?
いや、いや、それだけでは無理だ。
我々、仙人と自称している存在の大元は仙域にある。 各自、独立した小宇宙、異次元世界を創造、安定確立することにより、その仙域に蓄積される力(仙力)を自在な神通力に変え、俗に言う仙術として使用する。
ま、自分の創造世界・・・仙域、桃源郷、次元界、なんと呼ぼうが自由だが・・・では、実質神に近い存在になれるが、その代わり創造世界が安定すればするほど、自分の世界に縛り付けられ外の世界、現し世には簡単には出られなくなってしまうデメリットはあるが、、、
仙人の第一歩は、地仙以上の仙人から己の魂に力の付与をもらう事だ。
それにより、最初の創世が行えるようになる。
力の付与、ゲーム的には、ギフトをもらうと言えばいいのか。
後は、その世界を広げることで自身の力が増して行く。 精神的、肉体的、霊的修行などでそれを行うことが出来る。
自身の仙域を作りつつある段階の仙人が、尸解仙と呼ばれる階梯の者達だ。
現し世にこの身を置き、自分の仙域へはまだ遷移出来ないレベルのものが大半だ。
使える神通力も微弱。
自身の仙域へ己を完全に遷移して不老不死となったものを地仙と言う。
一般人が認識する仙人は、ま、この地仙階梯の者だな。自身の仙域においては、ほぼ自在な神通力をふるうことが出来る。
尚、地仙は、まだ現し世との関係を切っていないため現し世へ干渉する者も少なくないが、下手に干渉すれば自分の身の破滅を招き自滅する恐れがあるので十分考えて行動する必要がある。
自身の仙域が完全に現し世から切り離しても存在できる強度、大きさとなり、自立した宇宙の支配者となった者を天仙と言う。
天仙の階梯まで上りつめた者は、現し世のしがらみから自身を切り離し、より高みの神を目指したり、自身の仙域の完成度をより高める事を求めるので、ほぼ例外なく現し世へ干渉する者はいなくなる。
そう云うわけで、素質ある新人へ付与を与えるのは地仙レベルの階梯者に必然的になる。
また、我々原則単独で動く者達を仙人とよぶが、仙人の世界にも派閥がある。
日本の仙人達には三つの派閥が存在するが、大体師匠と弟子の関係が派閥となったもので大して結束が強いものでもないがね。
他に尸解仙程度の力だが、集団で動く一団が道士だ。
道士は、一人ひとりの力は弱いが集団で法力を練り上げるので、天仙レベルの力をふるうことがある。
彼らはいくつもの集団に分かれている。
現し世へ干渉して荒らしているのは大体彼らだ。
道士の上位者を法士と言う。
大体、地仙と尸解仙の間程度の法力を単独でもふるえるが、道士を配下としてその法力をまとめ利用することで、強大な力を発揮する。
その彼らの一部は、現し世における現し身を狐や狸、カワウソなどの動物の形にして、稲荷信仰や新興宗教などにまぎれて人間の信仰心を吸収、これを己の力に変えている。
全く鬱陶しい奴らだ。
尚、人由来以外の仙として、有名どころは鴉天狗だな、彼らは自然霊という神々がこの世に生み出した世界に生じた歪から生じた魂魄が昇華した者達だ。
人由来の仙人からの離脱者、所謂天狗と呼ばれる者達の下に集まり一団をなしている。
「と言うわけで、君に仙力の付与をしてあげるために来てあげたのに、拒否するんだもんな~」
と、雷光氏
と、そこへ奥の納戸の襖が突然開かれた。
納戸の襖を引き開けて入ってきたのは、妙齢の女性。アルバムで見た若い頃のばっちゃんと瓜二つの女性だ。
彼女は僕を見て微笑んだ。
「やっちゃん、久しぶり! あはは、そういえば私、死んだ事になってるんだった」
そして、後ろを振り向いて声をかけた。
「おじいちゃん、やっちゃん弄るのは此の位にしないと・・・ほら、出ておいで」
その声に、ひょっこりと懐かしい顔が襖の影から顔を出した。
死んだはずのじっちゃんだ。
「え!?」
僕はもう何がなにやらわけがわからず、フリーズ状態で思考が追いついていなかった。
じっちゃんが雷光氏に声をかけた。
「師匠、泰光に付与は終わりましたか?」
ちなみに、僕の名前は、あいらやすみつ、漢字では相良泰光。
古風だろう、じっちゃんがつけてくれた。
学校時代、どこぞの武士か、とからかわれたっけ。
熊本県の前身肥後国の大名、相良氏や、同じく肥後国の古刹、相良寺とはまっつ〜たく関係無い、SNSに出現するアライさん達とも勿論まっつ〜たく関係ない。
一応、田舎郷士の子孫らしいけど。
師匠?
「じっちゃん、もしかして、もしかして、じっちゃんもばっちゃんも仙人なんか?」
「おう! 雷光師匠から付与をもらい、儂ら二人は今では立派な地仙だぞ、泰光も早く追いついてこい!」
「ばっちゃんも、凄く若返ってる!」
「あはは、おばあちゃんの姿にもなれるけどね、やっぱり女は若いほうがいいだろう? おじいちゃんも、こちらが良いと言ってくれてるし」
そこで、雷光氏が頭を掻いた。
「いやぁ、まだお孫さん説得中で・・・」
じっちゃんとばっちゃんが同時に僕に向かって言った。
「何してる。早く師匠から付与をもらわないか!」
「でも・・・」
じっちゃんが続ける
「なにも怖い事なんかないぞ、師匠の仙域にお邪魔してチョチョイと付与を付けてもらえば、もう立派な仙人だ。 そうすれば儂らの仙域にも泰光は入れる様になるし、本当に良いことばかりなんだから善は急げだ」
で、結局僕は三人に言い負かされ、付与をもらうことを了承させられた。
雷光氏の仙域への入口(門、ゲート)という輝く襖に手を触れる・・・驚く事に、指先は輝く襖の中に沈み込んでゆく。
思いきって足を踏み出した。
一瞬光が全身を包み、眩んだ目が再び視力を回復すると、そこは城下町だった!
江戸時代頃の城下町の風景の中に僕は立っていた。
正面にはこぶりな山がありその山頂には小さな天守閣がそびえている。そして麓には石垣に囲まれた御殿の姿が!
御殿の石垣の下には川が流れ、優美な曲線を描く木の橋が向こう岸とこちらを結んでいる。
こちら側には橋に向かう道の両側に漆喰壁の塀に囲われた武家屋敷が立ち並び、その横手には脇道を挟むように町家が並んでいた。
遠くには、一面の田圃が拡がり黄金の稲穂が稔っている。
僕の立っている場所は前後に鳥居で囲まれた広場といったところだ。
すぐ、じっちゃんとばっちゃんが光に包まれて姿を表した。
雷光氏は?
キョロキョロと周りを見まわしている僕の隣に、いつの間にか人が立っていた。
姿かたちはあの雷光氏なんだけど、身長は見上げるほどの偉丈夫。2メートル超えてるんでないかい?
「やあ、やっと来たね」
「雷光師匠?」
「もちろん。 あちらに出してる現し身は維持するエネルギーを少なくするために、小さく作ってるんでね。 驚いたかい。 さあ、こちらだ」
雷光氏が、僕らを誘って御殿へ繋がる橋の方へ向かって歩き出した。