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15.

 山神様の祠から戻ると夕日が尾根に沈もうとしていた。


 え〜と、師匠の世界から戻ってきた時間は?

いかん、もうわからなくなってきている。時空間を超えるのはチョ〜凄いけど、時間感覚がまったく狂ってしまうのはどうにかならないのか?

 毎回言ってるけど、時差ボケどころではおさまらなくなりそう。


 ま、確か夕方だったから師匠の世界に戻っても、大丈夫なはず。

 僕にとっては久しぶりになるけど、蒼さんが作ってくれる夕ご飯を食べに戻ろう。


 家に入り、戸締まりを確認して師匠の世界で着ていた服に着替える。朝着ていった服と違う服で戻ると蒼さんがビックリするからね。

 色々チェックの後、師匠の世界への入口、あのキンキラキンに輝く襖の中へ再び飛び込んだ。


 ゲートから出て、真っ直ぐ蒼の待つ屋敷へ向う。


 なるほど、他の人の世界に入ると、僕の世界との連絡がまったくつかなくなる。

 ゲートもたぶん開けないな。山神様との連絡も取れない。

 仙人の力は完全に使えない。


 屋敷に入ると、何時ものように蒼さんがお帰りなさいと挨拶をしてくれた。やっぱりお帰りなさいと言ってくれる人がいれば嬉しいもんだ。


 今日の夕ご飯は、豆乳鍋とのこと。

蒼さんに言って二人で鍋を囲む事にする。鍋料理を一人で食べるのは寂しいものだ。やはり、鍋料理は何人かで囲むのが一番だ。


 食べている時、蒼さんが僕の変化に気付いたようだ。

じっと僕を見ている。

「どうしたの?」

「何か雰囲気が変わって。 相良様から力の発露を感じます。」

「仙域を創造したからだと思うよ。まだまだ、ヒヨッコだけどね」

「いいなぁ~。 将来、私も修行を許してもらえるかしら」

「もし師匠が仙人修行を許さない場合でも、僕が地仙の階梯に上がれたら絶対蒼さんにギフトをあげるよ」

「え、私に?!」

「うん、じつは僕が一人前になった時に、師匠に蒼さんを弟子にする事を許してもらおうと思っているんだ」

「なんで私?」

「美味しい食事は全てを超越するし、 働き者の蒼さんは二人といないから」

「食べ物なんだ、呆れた」

いつの間にかタメ口になっている。

やはり蒼さんはいいなぁ~。


恋愛感情じゃないよ、タブン。


 翌朝、なんか新婚夫婦の朝みたいな感覚なんですけど、気のせいですよね。


 なんとなく蒼さんの顔が赤い。

気のせい、気のせいなんだから


朝食をいただいて、武道場へ向う。


 勝右衛門さん、ケサガメさんに挨拶。


結城さんは今日も元気だ。


 師匠の指導で体術の教練。

前日と同じメニューだ。


 素振りしている僕の横で、結城さんが師匠に相談をもちかけた。

 ふたりの話を漏れ聞いたところ、さっきの狐小僧の件にも関係している。


 結城さんにストーカーしてくるやつがいるとのこと。

 そいつとは、まったく接点がなかったのだけど、最近急に粘着されはじめた。


 で、気配を探り相手を確認した所、近所に住む一人暮らしの青年だった。結城さんを目にとめストーカーが始まったらしい。

 怖いもの知らずの結城さんだから、ストーカー中の彼を捕まえて、直接近づかないようにきつく言ったらしい。


 それから、奴の生霊からなる魑魅魍魎が、夜な夜な寝ている結城さんに被さってきて金縛りにかけてくるようになった。

 舐めるように押さえ付けられる気持ち悪さはたとえようがないらしい。

 なんとかならないかとの深刻な問題だった。


 師匠が僕の素振りを止めて、話に参加するよう促した。

「泰光にも関係する事だ、一緒に聞いたほうが良い。 生霊や死霊などの障りに関しては仙術では対応する術がない。 私達には、それらを祓う力がないからね」

「妬み、恨みなどの負の感情からなる魑魅魍魎に対しては、仙術では自身に向けられているものを他所に逸らすか、呪詛返しといって元の相手に返すことが出来る程度だ。

ただ、他所に逸らす方法は関係ない他人に災難を送る事になるので、それは最悪の場合に限るべきだと思ってくれ」


え、祓えない?!


「師匠、では呪詛返しの他には対策は無いのですか?」


「神々にお願いするしかない。下位の神、たとえば山河におわす八百万の神々の、どなたかにお願いすれば祓っていただける。

神々の領域内の気の流れの調整などを持ち掛ければ、たぶんやっていただけるはずだ」


「どのような神様でもよいのですか?」

と、結城さん


「山々には大体山神様が、また、ある程度以上の大河には川神様、海の入江や内海には海神様など、特定の領域を受け持つ神がおられる。

上位の神々とは話が通じないが、山や田畑などある程度小さな領域を管理する神様であれば助けてもらえる」


 結城さんは、異次元日本の福岡市に住んでいる。

 福岡かぁ、油山、背振山、宝満山、等々、それほど遠くに行かなくとも立派な山々があり、川もある。

 神様も選び放題だろう。


 とりあえず結城さんは、町中の神社を回って神様を探すつもりらしい。

 助けてくれる神様が見つかればいいな。


と、半分他人事に考えていた僕を師匠が見て

「泰光、瞳美ちゃんの恋人になってやれ」


「えっ?!」「えっ?」

僕と結城さんが同時に声を上げる


「瞳美ちゃんが独り身、恋人なしなのが問題だ。 ストーカー野郎も独り身だから期待する。思いがつのるのはつきあえる可能性があると奴が思っているからだ。だから二人の熱いデートを見せつけてやれば諦めるさ」

「もちろん、呪詛返しの方法は教える。 奴の呪詛が泰光に向かえば、瞳美ちゃんが金縛りで苦しむこともなくなるはずだ」


「師匠! 僕はどうなってもいいんですか!」

「かまわん!」

「そりゃない! ヒドイ! 可愛い弟子をイジメないで下さい」


「呪詛返しで、相手に呪詛は返せるから、ほぼ大丈夫なはずだ」

「四の五の言わずについて来い!・・・面白そうだ」

最後の一言?!


 と、言うことで結城さんの時空(現し世)に行くことになりました。

 ま、師匠もくるからいいかぁ。

いや、良くないわ! 絶対、楽しんでるし!


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