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10.

幕間・・・山神

 山を治める仕事を仰せつかり、イチイガシの木霊共を友として、楽しく過ごしてきたわたしであったが・・・昨今、雲行きがおかしくなってきているのを感じていた。しかし、我が身にそれが降りかかるとは、低き階梯のわたしではその時点ではまったく判らなかった。


 近在の同僚達が少しずつ少なくなり、かっては山奥まで入って来なかった人間の女子供の姿をよく見かけるようになってきた。

 人間共が作る道が、山の中、奥深くまでのびて、トンネルという山を貫通する道がいくつも穿かれてゆく。


 動物達も人間を無視する事ができなくなり。渡りの大型動物達がその影響だろう、不自然な増減を繰り返し、幾つかは滅びていった。


 人間達の手はついにわたしの管理領域にまで伸びてきた、ある日、数名の人間が何が機械を持ち込み、山を歩き回った。

 程なく、麓から幾つかの峠を超えて道がわたしの山まで伸ばされてきて、あれよあれよという間に見たことのない多数の機械が山を削り、木々を切り倒しそこら辺一体を更地にしてゆく。


 わたしは無力だった。

神としての制約の為、人間共を懲らしめることはできず、わたしは唯、嘆くだけだった。

 われわれはなんと制約多きものであろうか。力振るえたら簡単に、あの者共ふるい落とせるものを!


 多くの動物達が住処を追われ、木々の悲鳴が響きわたった。


 わたしの依代たる祠も巨大な鉄の爪でバラバラにされ谷底に投げ込まれた。

友たるイチイガシ達も、尽く切り倒され、他の木々、草花も刈尽くされた。


 更地になった地面に打ち込まれた基礎の上に黒いパネルが取り付けられ、ケーブルという線で結ばれてゆく。


 メガソーラーとやらの施設との事。

毒の板が敷き詰められてゆく。木々の悲鳴が耳に痛かった!


 そして、イチイガシの切り株も、切り倒された木々も、土砂と一緒に谷底に投げ込まれた。


 木霊の生きる切り株だけは、わたしの力で命をたもったが、それも長くはない。


 わたしたちは、人間や生き物の信仰心(われわれを信じる心)が力となるが、人間がわたしの祠を訪れなくなってから久しく、また、渡りの獣達の訪問もめっきり少なくなっていた為、わたしは、自身の存在自体保てぬほどに力が低下していた。


 わたしは決心した。避難場所を提供できる者に助けを求めることを。

 わたしの同僚達は皆同じようなもの、頼みにならぬ。

 上位の者に支援を求めたが、反応は芳しくなかった。

 特に避難場所を提供できるほどの上位者は、わたしたちとは思考方法が異なりすぎるのか意思を通じる事ができないのだ。どれほど交渉しようとしたことか、だが結局無駄に終わった。


 急速に力を失っていくわたしにとって、時間は残されていなかった。

 少し離れた場所に、仙人の気配を見つけたのは行幸だった。

 虎穴に入らずんば虎子を得ず。

飛び込んでいくしか無かった。

 わたしだけでなく、眷属、木霊達、動物達のために!


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