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勇者パーティーのナンバー2でいたいのにみんな明らかに俺の方を頼ってくるんだけどしっかりしろ勇者!!

作者: 司真 緋水銀

ふと思いついて久しぶりに、復帰へ向けて書いた作品です。

連載版も現在、執筆中ですが気力がゼロなのでいつ投稿まで至るかはわかりません。


2024/3/19追記

いつも読んで頂き誠にありがとうございます。

近日中に読み切りとして短編投稿をした作品を連載版に移行してまとめようと思います。つきましては短編投稿した作品は削除させて頂きます。

一度短編投稿してしまうと連載版に変更できない事を知らなかったため、ブクマ及び評価してくださった方には大変申し訳ないですm(__)m

宜しければ連載版にて再度評価等して頂けると嬉しいです。



『ナンバー2』


 現世の役職で言うところの〈(ふく)〉にあたるポジション。創作物なんかで言えば主人公の頼れる相棒、頭脳役──主役にはなれないけれど……主人公不在時なんかには主人公の想いを汲み取り、理解し、進むべき道に導いてくれる存在。

 主人公からは無条件の信頼を獲得しており、むしろこっちが真のヒロインじゃね? と思われる事もしばしば(仮に男であろうと)。


 俺は昔から主役よりもそんな【ナンバー2】に憧れていた。

 みんなが主人公を選ぶ中、必ずナンバー2のキャラを選んでいた俺はさぞかし奇異な眼で見られていた事だろう。主人公の争奪戦となるガキのごっこ遊びではむしろありがたい存在に思われていたかもしれない。


 だが、それでも俺は【ナンバー2】を支持し続けていた。青年期になってもそれは変わらず、そして……俺もそんな【ナンバー2】な存在にいつかなりたいと願っていた。


 小学生のころのクラス役員決めではいつも2番手のクラスの副会長に率先して立候補した──何もした憶えはないが。

 テストやかけっこではいつも2番だった──いや、2番でいた。学年トップになって目立つ訳にはいかないからだ(今思えば2番でも充分目立ってた)


 勿論、2番でいるためのたゆまぬ努力も(おこた)らなかった。

 そして……それは大人になった今でも変わっていない。2番ポジでいるための大事な100ヶ条を常に心に持ち続けている。


 その甲斐あってか、遂に俺のナンバー2人生を最も輝かせる時が巡ってきた──『異世界転生』だ。いや、異世界転生自体は別にどうでもいい。この物語の本質はそこじゃない。


 大事なのは転生した俺が【勇者】である男の【幼なじみ】として産まれ変わったという事実だ。


 どういうわけが現世の記憶を有したまま(そこもどうでもいいし、この先関係ない)だとか、【ツウ・バンナー】という冗談みたいな名前の話などは……全て俺のナンバー2人生の始まりを告げる福音の鐘でしかないのだ。


 大事なのは幼なじみの【勇者】がテンプレの【魔王討伐】を命じられ、相棒として俺も同行する事になった事実のみなのだ。


 これからが憧れた俺のナンバー2人生の本番なのだから。補佐役として、決して突出しない二番手として俺は必ず勇者の手助けをして魔王を討伐してみせる──


---------------

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「──ツウッ!!! このモンスター異様に固いんだけどどうすればいい!?」

「過去何百回も言ってるだろ!! クールタイムじゃないとそいつにダメージは通らないんだって!!」


「──ツウさんっ!! ここの敵は私達と相性が悪いですっ!! 一度退きますか!? 突破しますかっ!? ご指示をっ!!」

「それ決めるの俺じゃないからね!? 俺に聞かないで!! 勇者そこにいるんだから勇者に聞いて!!」


「──ツウ君っ!! 魔王を倒すためには(ほこら)に行って『光の試練』を受けなきゃダメなんだって!! あんたなら大丈夫よね!?」

「なんで俺が受ける前提!? 俺の属性〈雷〉だし絶対受験資格無いからね!!? おいそこで他人ごと面してる光属性の勇者!! お前が受けるんだよ!!──」


………


……………


…………………



 どうしてこうなった。

 いや、薄々いやな予兆は感じ取ってたんだ転生した時から。


 明らかに勇者より俺の方が常にステータス高かったし。両親や街のみんなや王様や教皇までもが驚いて困惑してたし。勇者に剣の稽古で負けた事ないし。


 勇者は悪い奴じゃないし、とてもいい奴なんだけど壊滅的に優柔不断だし。めっちゃ明るくて優しくてとてもいい奴なんだけど──俺の指示待ちするし。


 道中出会ったパーティーメンバーもみんな初めは俺を勇者と勘違いしてやがったし。今でもなにかと言えば真っ先に俺に確認とるし。



 どうしてこうなった。

 俺が望んでたのはこうじゃない。

 これ異世界転生させた神の責任だろ。なんで俺にこんな高ステータス与えたんだよ。ていうかなんで勇者にもっと積極性とか与えなかったんだよ。


 勇者(しゅじんこう)と言えば、悪を挫き弱きを助け悪事を見過ごせずに我先に飛び込んでいく奴だろ。若しくは頭は悪いけど野性の勘で本質を突いて堂々としてる食いしん坊キャラとかだろ。

 この世界の勇者、基本的に凄く消極的なんだけど?

 各所のイベントでも『どうしたらいいかな?』とか人に聞いちゃう──まるで性格がなろう主人公なんだけど?


 勇者が勇者してくれないと、俺もナンバー2出来ないから仕方なく俺が前に出て引っ張ってきたけど……そのせいで俺が主人公みたくなっちゃったじゃねえか。


 敵幹部からも『勇者よりも警戒しなければならない存在』みたいに恐れられちゃったし。いや、ナンバー2でありながらそれ言われるんなら承認欲求くすぐられて気持ちいいんだけれどさ。

 けど戦闘前に会話する時とか明らかに俺に言ってくるし。俺と会話してるし敵幹部。勇者、空気みたいになっちゃってるし。


「……ツウさんって、本当に凄いですよね………たまにあの人が本当の勇者様なのではないかと錯覚してしまいます……」

「レミリア……まさか……ツウ君のこと………」

「へっ!? いえいえそんなっ!! わ、私は決まりで仕方なしにとはいえ勇者様と婚姻関係を結んでしまったのですからそんな不義理なことはっ……!!」


 パーティーメンバーのレミリア(王女、回復役のヒロイン的ポジション)の女の子がうっとりした瞳でこちらを見ている。


 ふざけんなよクソビッチが。

 王女で回復役でヒロイン枠なんだからお前はしっかり勇者見てろよ。俺に向ける感情は『私より勇者に信頼されてて……少しだけ()けちゃう』だろうが。俺に恋慕の眼差しを向けてどうする。


「そ、そういうリリザこそどうなんですかっ!? リリザもツウさんの事……その、好きなのですか……?」

「は、はぁっ!? そそそんなわけないしっ!! ほ、ほらっ! パーティーメンバー同士でそういうのは御法度っていうか……」

「そ、そうですよね……うふふ」


 ほら、なんかギスギスしてきたし。

 リリザ(ヒロインの友達、魔法使い)とは『主人公とヒロインを支える者同士』みたいな感じで好感度積み上げてきたのに台無しだし。昼ドラみたいな展開ファンタジー世界でするの勘弁してくれない?


「ははは……ツウは本当凄いよな。幼なじみとして……僕も鼻が高いよ」


 それ俺が言うべきSE・RI・FU!!!

 鼻が高いのは俺であるべきであって!!

 お前が勇者で世界を救う存在なんだからただの幼なじみである俺をナンバー1みたいに扱うんじゃねえって言ってるだろ!!!

 それは俺が言うんだよ!!『やっぱりお前には敵わねぇ……お前がナンバー1だ』って言ってみたいのに!!


「さあ! 行こうよツウ!! 最終決戦の地へ!!」

「今までいろんな事があったけど……ツウ君、あんたがいればきっとできるよ!!」

「行きましょうツウさんっ!! 世界を救いに!!」

「あっ……………はい……」


 ちくしょうっ!!

 最終決戦の決意表明イベントまでには何とかしようと思ってたのにもう魔王城まで来ちゃったし!! 案の定、みんな俺に決意表明してくるよ!!


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「───がはっ………」

「……ぅぅ…………なんてつよさ………」

「…………」


 モンスターを蹴散らし、魔王の元にたどり着いた俺達は……圧倒的な魔王の力を前に窮地に立たされていた。思ったよりも強い……仲間達は全員が息も絶え絶えに地に伏している。


 そんな中で俺だけは無傷だった。


あれ? これ……もしかして負けイベント?

いや──もしかしてこれ……勇者だけが最後に立って魔王との一騎討ちするやつ?

パラメーター上げすぎたのかナンバー2(自称)である俺だけが普通に立っちゃってるんだけど?ていうか魔王の攻撃、痛くも(かゆ)くもないんだけど?

やべ、これはあかん。今からでも死んだふりしとくべきか?


【………ほう、我の攻撃に耐えるとは……貴様がツウ・バンナーか………】


 死んだふりをする間もなく、俺と魔王との会話パートが始まってしまった。

 勇者一行のナンバー2の名前を魔王が普通にご存知というだけで違和感が凄いんだけど。


【我の配下も(ことごと)く散り……我だけとなってしまったな………だが、我の野望が潰えることはない】


 どうしよう。

 ここで勇者が立ち上がったりしてくれればいいんだけど……見るからに再起不能になってるし……これ、俺がやらなきゃいけない流れ?

 このまま一人で倒せなくもないんだけど……それをしたら最後、完璧に俺が勇者と化してしまう。

 何か策はないか。


【貴様のような者を待っていた。我から貴様に提案があるのだが……】


 お?

 流れ変わったな。

 もしかして──『世界の半分をやるから我が配下となれ』的なやつか?


 ………それもいいかも知れない。

 この世界ではナンバー2である俺を(あが)(たた)える準備がもうできちゃってる。人類は既に俺を勇者と認識しちゃってるし。


 いっその事、魔王軍ナンバー2として世界を牛耳るのもいいのかもしれない。

 勇者パーティーを生かしたままにしておけば、世界は今度こそ勇者を崇め、闇堕ちしたナンバー2(俺)の目を覚まさせるために勇者も本物の勇者になってくれるかもしれない。


それいいな。よし、ここは一つノッてみるとしよう。


「………提案とはなんだ?」

【貴様が我の意志を継いだ新たな魔王となるのだ。そうすることにより魔王軍は……】

「誰がやるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!! トップの座じゃねえかああああっ!!!! どいつもこいつもよぉぉぉぉっ!!!簡単にトップの座を空け渡すんじゃねぇぇぇぇ─────」



---------------

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──こうして俺は、世界を救った勇者として一国を任される帝王となった。俺が王の座に君臨してからは国力は世界屈指となり、今や全てにおいてトップの座を走り続けている。


 どうしてこんな事になってしまったのだろう。なにを間違えてしまったのだろう。

 本来なら俺は隠居生活をして、次なる勇者が現れた時になんかしらの指南役的に窮地に駆けつける『元勇者の相棒』って立場か、勇者の栄光を語り継ぐ語り部としてひっそり暮らすはずだったのに。


「ツウ様……あの………今宵は私を愛して頂けると……」

「あー! レミリアずるいっ! 昨日も一晩中してたんだから今日はリリザの番っ!!!」


 なんかハーレム築き上げちゃったし。

 結局ヒロインと結ばれちゃったし。

 しかもリリザも第2夫人になっちゃったし。

 これじゃあなろう主人公だし。俺がなりたかったのはこうじゃないんだよ。

 俺がなりたかったのは勇者を支えるやつでさぁ……


 すると、室内に見慣れた顔が入室してきた。


「ツウ、いや、皇帝。ちょっと話があるんだけど」

「あっ、元勇者っ……じゃなくて統合指令長官!! すっかり帝国ナンバー2が板についてきたね!」

「はは、それほどでもないよ」

「なんでお前がそのポジションにいるんだよ!! 俺とそこ代われえぇぇぇぇっっ!!!」



〈完 本編に続く〉

少しでも面白いと感じてくれた方は↓↓

評価や感想、イイね等をつけて頂けると執筆する気力が湧くかもしれませんので宜しくお願い致します。

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