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逢魔が刻

オリの中〜モラル〜

作者: 名月らん

俺は2年前、自分の不注意で彼女を事故死させてしまった。


付近の防犯カメラや加害車両のドライブレコーダにより俺は過失致死罪で不起訴となった。


彼女の両親と彼女を引き電柱に追突し亡くなった加害者親族には口汚く罵られたが、司法が決めたこと…俺にはどうすることも出来ないと伝えた。


あのあと俺は会社に異動届けを出し忌まわしい街から離れ新天地でバリバリ働いている。


本当に彼女には申し訳なかったが、優しい彼女もでき順風満帆とまでは行かないが落ち着いた毎日を送っている。


今日はその彼女にプロポーズをする予定だ。


俺はこの日のために用意したスーツを着て玄関を出ると声をかけられた。


「久しぶり」


女性の声に振り向くと


「忘れちゃった?」


と言われ驚いた。


「最後にあったのは鍋パーティかしら?」


亡くなった彼女と最後に行った先輩の家での食事会。

その先輩の彼女だった。


「わたし、待ってたんだけど…いつまでも来ないから来てあげたわよ」


そう言っていたずらっぽく笑う。

俺は用事があるのでと去ろうとした。

そんな俺の腕を掴んで


「あの日ね、鍋の用意をしながら貴方が頼んだことを実行してたのよ」


頼んだこと?


「料理もまともにできないから別れたいって何度も相談受けてたの。でも出来るようになったら別れなくても良いかもしれないから、今日は出汁から練習しましょうねって言ってあげたの。そしたら彼女ね物凄く怒った顔をしていたわ」


そう言い俺の腕に自分の腕を絡めてくる。


「彼の理想は私なんですって、って言っといたわ」


俺は腕を払いながら


「あんたは先輩の彼女じゃないか」


と言うと彼女は


「あら、私と何度も浮気したくせに!忘れたの?それに彼女を殺したのは貴方じゃないの」


と大声でいうので部屋に入ってもらった。


それから1時間ほどして、俺は今の彼女との待ち合わせに遅れそうで慌てて向かった。


店に入ると慌てていたせいか乱れている服装に周りの人達が驚いたように俺を見ている。


彼女も驚いたように俺を見る。


「どうした?」


と彼女に声をかけるが彼女は驚いたように目を見開いている。


そんな彼女の横に見覚えのある縫いぐるみが


「それ」


彼女は恐る恐る


「大好きだった従妹の形見よ」


俺はカッと目を見開き縫いぐるみを取り上げ手に持っていたナイフでその縫いぐるみを滅多刺しにした。


彼女は慌てて席を離れお客も店を出ていった。

そこに警察官がなだれ込み俺を押さえつけた。


「何をするんだ」


と言って顔を上げるとガラスにうつった自分の顔を見て驚いた。


俺の顔も手も真っ赤に染まっていた。


何が起こったか分からずにいると彼女が


「また殺したのね、穂香が事故にあったあと貴方があやまっているところを見ていた。でも貴方は土下座をしながら笑ってたニヤリってね」


驚く俺に彼女は


「貴方は上手くやったと思ったのよね。でも私は許せなかった。だからその熊をわざともらったの…やっと貴方の本性が暴けたわ。貴方が来るのも実況中継してくれてたしね」


そう言いスマホの画面を俺に見せる。


たくさんの人間が俺を写し呟いていた。

警察にも電話が殺到しこの店の店主も連絡していた。


俺に逃げ道はない。俺はたまらず彼女を睨みつけ


「覚えてろ!出てきたら殺してやる!」


とどなると


「あんたは一生オリの中だよ」


と言われた。


あれから何年たっただろう。

俺は今でもオリの中だ。

時々俺の拘束をときに奴らはやってくる。そしてわけのわからない薬を飲まそうとする。

俺はいつかこのオリを抜け出しあの女に復讐してやるんだ。

でも、もうどんな顔だったのか思い出せない。


そして今日も白い部屋の中で俺は眠りにつく。




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