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チーズケーキ

作者: 二葉一葉

チーズケーキは、レアかベイクドか。


あたしはレア。アイツはベイクドだった。

けんかの原因だ。

有名なパティシエのケーキショップの前で、あたしたちはけんかした。と、言っても、痴話げんかをしてますわよ、あそこ。って周りから見られるほど派手なけんかじゃない。

アイツは怒ると喋らなくなり、あたしは怒ると声が小さく低くなって口数が減る。

しかし、喋らない相手に怒るほどその怒りが増すことはない。


「お決まりですか?」と、こっちの状況に気づいてるのか知らないが、店員が営業スマイルで聞いてきた。

相手が喋らないからといってここであたしの我を通すのもフェアじゃない。

あたしは低く小さい声で、「決まらないのでやめます。」と極めて平静を保って店員に告げる。

よく友人たちからは、「青火のようだ」と言われる。一見、そこに火がないように見えて、赤々と燃える炎よりも熱く燃えている青火。


あたしとアイツは黙ったまま電車に乗り込む。

行き先はもう決まっている。

家に帰るのだ。

あたしは空いてる席に座って、アイツはドア付近に立つ。

あたしの右も左も空いているというのに。

たった、一駅。

会話もなければ視線もあわさずに、電車を降りて、改札を出る。

人は疎ら。

前を黙って歩いてくアイツがふらりと横にそれて行くのを、あたしは黙って眺めてた。

その先に、全国チェーンのケーキ屋さんが、『本日20%OFF』とポスターが貼ってあった。

「レアチーズケーキとベイクドチーズケーキを1つづつ。」

パティシエのケーキより安くて、大きなチーズケーキは、あたしたちのお気に入り。

「ここのケーキ、好きだろ?」

聞くまでも、ない。

あたしがレアが好きなのも、アイツがベイクドが好きなのも、聞くまでもないこと。

青火が小さく静かに消えていくのがわかった。

仲直りは、チーズケーキで。

「好きだよ。」

差し出された手を握って、あたしたちの家に帰る。


さてと。

チーズケーキに、コーヒーか紅茶か。

なんとなく、譲ってあげてもいいかな、と思う。

今日だけ、ね。

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