8.星の精霊の底力
「…夢か幻じゃなかったんだ」
「失礼な物言いね、私は転移しただけよ」
「え、転移ってあのバトル系の漫画とかでもだいぶチートな部類に入るあの能力?」
「何言ってたのか分からないけど、まあそういうことよ」
いやいやちょっと待て、さすがに魔法とかが存在するとはいえ転移が使えるなんて話聞いたことないぞ。
「私が精霊だからよ」
「あ、なるほど。…って、え?」
私、さっきの口に出してた?
「転移ができるのと同じ感じよ。あなたの運命の精霊なんだからあなたの思考が読めて当然でしょ」
「…いやいやいやいや。さすがにそれは魔法だけでは説明できない能力な気がするんだけど。あと、絶対に当然じゃない」
「じゃあ試しに何かいってみなさいよ」
えーじゃあ、「ンゴロンゴロ保全地域」。
「…なんでそれを思い付いたのかは知らないけど、ンゴロンゴロ保全地域でしょ?」
「え、あってる。すご」
ということは、少なくともセレンの言っていることは間違っていない?
…いやでもなあ。俄には信じがたい話ですわ。
ていうかそもそも魔法すらも日本、というか地球には無かったからね?前提の時点でファンタジー。
生きてれば不思議な体験もするもんなんだなあ。
ちなみになぜ「ンゴロンゴロ保全地域」にしたかだけど、んから始まる言葉を調べていたことをなぜか今思い出したからである。
なんで今思い出したか?知らん。
「…それでも私が精霊だと言うことが信じられないならいいわよ、私に触ってみなさい」
…いや、最初っから幽霊みたいな状態だったじゃん。さわれないと思うけど。
「いいから」
「はーい」
多分透けてるんだろうなあと思いながらセレンに触れてみると、意外にも肉体の感触が。
「…え、じゃあ足にあたる部分どうなってんの」
湧いてきた純粋な疑問。
「うるさいわね。…まあせいぜい覚悟でもしてなさい」
「え」
突然景色が変わる。
さっきまで温かな部屋の中だったはずなのに、今はもう強風ふき荒れる荒野のど真ん中にいる。
「いや、どういうこと」
セレンに触った直後だから、一緒に転移したみたいな?
体さえ触れていれば二人とも転移できるみたいなのは見たことあるけどさ。
しかし、セレンが転移したとして、なんの意味があるんだ?
ううむ、わからん。
ていうか、地面がゴツゴツしてたり向こうには谷や山が見えたり風が体を叩きつけていたり、五歳の体には負担が大きいって。
「さて、星の精霊の実力を見せてあげようかしら。防御、できるわね?」
「できるけど」
「じゃあさっさと自分の身を守りなさい」
なにがどうなってるのかよくわからないけど、とりあえずバリアを張った方がいいと言うのはわかった。
事前に本当に魔法創作できるか調べてるから、防御できるのも知ってるけどさ。
とりあえず言われた通りに防御しておく。
「防御100%」
ちなみにこの魔法だけど、防御って言えば想像通りの防御が出来るらしい。
最初に考えた魔法が透明だけどちょっとだけ黄色めに光っている自分を包む球体みたいな盾みたいなやつで、ザ・魔法みたいな感じだった。
そのあとは何回別のものを想像しながらバリアを張っても、同じ感じのが展開されるだけだった。
あと%だけど、これはバリアの強度みたいなものを指定する感じ。
10%くらいだと生身の人間はバリアの中に入れるけど矢とかの飛び道具系は入れない、とか。
100%は言うならば鋼鉄の球体で覆われているみたいな感じで、どんな生物でも入れないし魔法や武器とかも入らない。
まあ頑張れば入れるんだろうけど、それまでが大変というやつ。
ちなみに移動する時は転がって移動する感じなので、やっぱりまんま鋼鉄の球体の中にいるみたいな感じかな。
それはともかくなぜセレンは私にバリアを展開するよう言ったのか?
答えは数秒も待っていればわかった。
セレンが突然浮かび上がって空の彼方に行ったかと思うと、頭から強烈な衝撃を感じた。
「…いやどういうことよ」