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7.運命の精霊





 聞き慣れない声にすぐさま振り返る。

 一応ここで働いている使用人たちの声や顔は把握しているはずだ、この声はやはり聞いたことがない。

 まさかとは思うけど不審者とか?だったらすぐさま魔法を使える準備をしないと。

 魔法創作で作った魔法は頭で念じたりすれば使えるはずだ。


 そう覚悟して振り返った先には、十歳ぐらいの見た目の少女がいた。

「え、誰?」

 存外に小さくて少し驚く。

 少し不満そうな顔の彼女は、しかし尊大な顔で口を開いた。


「私は星の精霊のセレンよ。覚えておくことね」


「…精霊?」

「そう。知らなかっただなんて言わせないわよ、私はあなたの運命の精霊なのだから」





 この世界には魔法ともう一つ、精霊という不思議な存在がいる。

 精霊は星の数ほどいると言われ、それぞれが何かを司っている。

 それは水や火などの物から音などの目に見えないもの、果てには『感情』や『純粋』『乙女』などという概念までもを司る精霊がおり、その数はもはや数え切れないほどである。


 そんな精霊だが、精霊と人間の間には「運命」なる繋ぎ止めるための糸のようなものが存在する。

 

 精霊の中には「運命の精霊」という特別な存在がいる。

 人によって「運命の精霊」は異なるが、大抵の場合、幼児期から思春期にかけて自分の運命の精霊と出会うことが多い。

 「運命の精霊」と出会うと何が起こるかと言われると定かにはなっていないが、魔法能力が上がったりするらしい。

 何が起こるかはともかく自分の運命の精霊と出会えると嬉しい、みたいな理由から精霊探しに躍起になる人もよくいる。

 

 なお、普段精霊はそう簡単に人間の前に姿を現すことはない。普通なら自分の運命の精霊以外はお目にかかれないのだ。

 その珍しさから精霊が半分神様のような扱いになっていることもある。





 まあそう言うことであって、まさかこうも簡単に運命の精霊と出会えるとは思いもしなかった私です。

 シラルも当然ながら運命の精霊と会ってみたいなあ、と思っていたが、悲しいくらいに会わない、会わないのだ。

 十五歳、十六歳になっても会わないのよ。思春期なんて終わってる頃合いになっても。

 目の前の少女の言うことが正しければ、その運が今世に回されたのだろうか。


「あなた、名前はなんて言うの?」

「あ、セーレっす…」

 突然名前聞いてくるからびっくりしちった。

 少し部活のめんどくさい先輩みを感じるけど大丈夫だろうか。


 改めて見ると、今の私の姿はともかくして随分と小さい姿だ。

 顔や体は大体十二歳あたりに見える。個人的に一番生意気そうな年頃。

 しかしよく見るとだいぶ端正な顔立ちだ。

 窓からの光を受けて淡く輝いている淡藤色の髪に、それこそアメジストよりもアメジストのような深い紫色の瞳が人外の雰囲気を醸し出していて、絵画のように整って見える。


「…いやそんな突然精霊って言われると逆に怪しいんだけど」

 信じきってた先程までの自分は棚にあげる。ふと冷静になって考えると色々怪しく見えたのだ。

「はあ?これだから人間は面倒くさいのよ」

「種族差別は良くないと思いまーす」

「そういうところよ」

「…ぐふっ」


「まあそんなに私の正体が気になるって言うなら、特別に私の精霊力(ちから)を見せてあげてもいいわよ」

「えっなにそれ見せて」

「…さては馬鹿ね?」

「違いますぅー」

 ちょっと好奇心が勝ってしまっただけですぅー。

 まあ命を狙われているわけではないとわかって少し安心したのもあるけど。


「せいぜい見ているといいわ」

 と挑戦気味に一言放った瞬間、精霊、もといセレンは目の前から消えた。

 物音一つ立っていないし、廊下の方にそれらしき気配はない。風を切ったような音はしなかったし、ものすごいスピードで移動したわけでは無さそうだ。


「…幻か」

 まあそう簡単に精霊に出会えるわけもないしな。

 と部屋に向かって踵を返した。


「わ」

 目の前にセレンがいた。






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