6.己の力を知るものは
大変不満です。
赤ちゃんのほっぺは国宝にしてもいいレベルの宝物である。
かわいいかわいい妹のもうマシュマロのようなあれは今しか味わえない最高級の気持ちよさである。
しかも触る前はキャッキャキャッキャ言ってたのに触ってるときはちょっと嫌そうな顔を見せるツンデレよ。
しかし王族の赤ちゃん、過保護なんですよね。
親はともかくただの姉、つまりは長い間一緒に居られないわけよ。
一日にちょっとしかエレネと触れ合えないとか悲しくないすか?
うん、悲しいのよ。不満なのよ。そういう話。
ちなみに妹の名前はエレネです。いい名前ですねえ。
ということでエレネとの面会を終え自室に帰っている途中。
使用人とかがたくさんいるからなのか、サウァルミスコはでかい。
そこらへんの貴族の屋敷の比にならないくらいでかい。
…正直何に使ってるか分からない部屋しかないけど。
地球上の物に例えるとコロッセオと同じかそれ以上。
ただ、王城とかは高さも含めサウァルミスコの倍くらいあるっぽいし、公爵家とかのお屋敷とかお城とかはサウァルミスコより大きいものもたくさんあるらしい。
世界は広い。
ちなみに、今のところ私は母様とサファナと同じ部屋で暮らしている。
しかし母様はエレネの世話とかその他諸々の影響であまり部屋にいない。
まあ実質私とサファナと侍女の部屋みたいな感じ。
「ただいまー」
とは言っても部屋には誰もいない。
サファナは別のところで寝てるんかな?
つまり私は一人。
そう、一人なのだ!
前々からやってみたかったことをやれる機会!
しかし私は今五歳、変なことをやったらますますやばい子供扱いされる。
実際私に対するイリスの目が年々変化していっている気がするんだ。
私はあくまで普通の人間だ。危ない危ない。
ということで私の能力でどんなことができるのか探っていこうと思う。
風属性と言うことはまあ風を操れますと。
それは知っている。他の属性も同じ感じ。
やり方はまああれですよ、頭の中で風に命令すれば操れるんですよ。
びっくりするほど簡単。
ただ、具体的に考えれば考えるほど操る精度が上がっていくから想像力は大事ということだけに注意である。
そして大本命はそう、天啓である。
私の天啓は《空間操作》というなんか凄そうなやつである。ただ詳細は知らない。
準備がいい私なので当然天啓について書かれた本も持ってきている。
ちなみにこの本、王城の一部にある図書館にありました。
あの図書館は本当もうものすごくでかい。塔みたいな構造になっているから見上げると首が痛くなる程度には本が沢山ある。
多分アリスであそこより大きい図書館はあんまないんじゃないか?
さて、それは置いといてこの本で私の天啓を調べてみよう。
「えーと、風属性の…」
と調べていたら一分も経たずに《空間操作》の欄を見つけた。
「風属性で最も高いクラスの天啓である。その名の通り空間を操ることができる。…ん?」
結局詳しいことは書かれてないんか。マジですか。意味無。
じゃあなんだ?風とかと同じように念じれば操れるのか?
というかそもそも「空間」ってなんだ?何を操れるんだ?
ふぁ?
…まあ気を取り直して。
どっかで聞いた気がしなくもないけど、空間ってことはつまり時空とかそんなかんじなのか?
じゃあワンチャン時間を止めたりもできると。
まあ風属性の最上位天啓だからできると信じよう。
ということで風を操るのと同じ要領でやってみる。
えー、時よ止まれ時よ止まれ。
そう念じたすぐあとに誰かが何かを落とした音がした。
何やら騒がしいが、それはおそらく食器を落としたからだろう。
まあつまり時は止まらなかったと言うことでして。
「はあ…」
思わずため息をつく。
「何してんのよ、あんた」