4.超常能力
泉の前に立つ。
漂ってくる神聖な雰囲気に緊張が込み上げてくる。
多分、これは何回やっても慣れないものだろう。
そして、突然頭の中に雷が降ったような衝撃を感じる。
少しふらついてしまう。うん、やっぱり慣れない。
「過去に苛まれし哀れな乙女、自ら道を切り開きし傲慢で美しい乙女、あなたには魔法創作と《空間操作》を授けます。このさきどんなことが起きてもあなたならどうにかなりますが、感情に囚われないように気をつけなさい。ゆめゆめ、忘れないように」
…ん?
なんかこの声聞いたことがあるぞ。
いや、シラルも当然天啓の間に来たことがあるから当たり前と言ったら当たり前なんだけどさ。
もっと直近で聞いたことが…。
「あ」
そういえばなんか生まれ変わる前に女神様と思わしき女性に会ったわ。
あの時に聞いた声と同じだわ。
なるほど、そういうことね。
なんてすっきりしたところで、先ほど言われた内容が改めて理解できて来た。
私の魔法は「魔法創作」で天啓が《空間操作》。
属性はなんだろう、天啓に”空間”が入ってるから風属性かな。
…ううむ、微妙、かもしれない。
いや、世界で二番目に生まれたらしい属性だからよくはあるんだけど。
ちょっと火とかほかの属性に比べたら地味かなぁって。
風の女神様に申し訳ないから別にいいけども。
ネガティブに考えてもだめだな。
風属性と言うことは風を操ることができる。
つまり、ものを運んだりできる。
ついでに台風みたいなのも魔力の消費が激しいけど、頑張れば起こせる。
…いや、普通に派手やん。すごいやん。
やっぱり偏見はよくないね。うむ、よくわかった。
さて、私が使える魔法だけど、どうやら魔法を自分の思い通りに作れて、さらに使える魔法らしい。
…チートやん。
どんな魔法でも魔力の続く限り自由自在に使えるわけでしょ?
チートやん。
すごいやん。何があった。
なぜ私がこんなにも恵まれているのかわからないが、これもあの神様の采配とかなのだろうか。
女神様万歳。
この国、アリスは女神崇拝である。
五つの属性をそれぞれ司る女神たちと、全てを生み出した「世界の母」とも呼ばれる全知全能の女神様。
彼女らがこの世界のすべてを司っており、それは信仰に値する。
これがアリスの歴史で一番最初に教わる部分であり、そんな国の王女である私も当然女神崇拝ではあるのだけども。
なんか、いい加減とかじゃなくてガチの信者にでもなろうか。
そう思ってもいいくらい恵まれている。
女神様万歳。
ちなみに、女神信仰である以外にも普通に宗教は存在する。
ここらへんで一番勢力が大きいのは「リイヌス教」とかだろうか。
教祖が「生まれ変わってもこの宗教にすべてを捧ぐ」みたいなことを言ってたのが有名だけど、正直それ以外はあまり知らない。
ちなみに私はあまり興味ない。
さて、それに加えて《空間操作》なる天啓、というか能力?を貰ったわけですが。
空間操作って具体的にはどんな能力なんだ?
なんとなく「空間」ってついてるくらいだから風属性の結構良い天啓ってのは分かるんですけどね。
そもそも空間とはなんぞ?
…目の前にある空間を切り取ることができたり?
それができたとしてどうやればいいの?
「空間切断」
とか?
「ん?」
何も起きないと思われたが、なんか風を感じる。
一ヶ所に吸い込まれるようにまあまあ強い風が吹き抜けた。
嫌な予感が。
風が集まっている方向に目を向けると、歪みが見えた。
なんと言っていいか分からないけど、歪みとしか形容できないそれは、しばらくして強い風と共に周りに溶けるようにして消えていった。
…見てはいけないものを見たような気分。
そして、周りの目が痛い。
周りの人々も不思議でたまらないような顔をしている。
まあそれでも私が超常現象を起こしたのは事実でして。
異変に気付いた侍女、もといイリスが近づいてくる。
「殿下、何があったんですか?」
「…私もわからない」