剥落
顔も名も知らぬ男たちの裸が送られてくる。
特に、陰茎を大写しにした写真が。それを必死に扱き上げる動画が。
自分だけに向けられた、交尾相手を狙う変態の欲望。
配信を終えたばかりだと言うのに、また、疼き始める。
ある動画は、名前を呼びながら腰を振り、屹立した雄を扱いていた。
またある動画では、どこかでプリントアウトしたのであろう、
配信中の『チョモラちゃん』を切り取った写真に、溜まった白濁を吐き出していた。
いまならと思い、まだ乾いていないアナルプラグを再度手に取った。
直径は約8cm、長さは10cmなのだという、黒い、シリコン製のアナルプラグ。
今日の配信で、初めてコレを飲み込めた。
気分の高揚で、いつも以上に思い切りよく腰を沈めたからだろうか。
想像していたよりも深くまで捻じ込まれ、呼吸が出来なくなる程に自分の雌が孕まされる感覚が背筋を這っていった。
これまで届くことの無かった場所での快楽に、深く沈めたはずの腰はビクンと跳ね、アナルプラグが雄液と共に吐き出された。
目まぐるしく更新されるコメントに犯されながら、ふたたび挿入し、そのままピストンを始める。
2人に犯されるとこんな感じになるのかな、と、考えながら。
配信の時も気持ちよかったけど、今なら。
あの時コメントしていたみんなの、妄想のそれではない、ホンモノが、ちゃんと見られる今なら。
「んくっ……ふうっ、ふぅ……んあ……っ、はあ……っ」
黒い暴力が、飲み込まれる。深い所まで犯される。
限界まで深く挿入し、搔きまわし、自傷行為の様に腰を振った。
ローション追加した方が良かったかなと思ったが、そんな事はすぐに気にならなくなった。
肛門は熱に犯され、そして、モニタには自分に性を吐き出さんとする欲望。
―お前がそうやって誘惑してくるから
―本当に可愛いよ、だから、壊しちゃっていいよね
―レイプされといてこんな変態に求めてきやがって
―君みたいなマゾメスの事をね、便器って言うんだよ
かつて、荒々しい体液と共に投げかけられた言葉が再生される。
車の中で。ホテルの部屋で。自室のベッドで。ショッピングモールで。図書館で。バスや電車の中で。
乱暴な雄の臭いに包まれて、雄の欲望を注ぎ込まれて。
だって仕方ないじゃん、そう教えられて、そう仕込まれたんだから。
目の前の誰かが「チョモラちゃん」と熱の籠った言葉を吐き出しながら、絶頂を見せる。
同時に、下腹部の奥がきゅっと締まり、淫猥な刺激が身体全体を駆け巡る。
それは初めての絶頂だった。
あぁ、これを、求めてたんだ。
これなしじゃ、もうダメだ。
いや、もっと大きくて、もっと暴力的な……それこそ、怪物の様な。
それとも、また、ホンモノを……。
痺れた身体をゆっくりと動かしながら、今の姿を撮影して<Peony>へ投稿した。
――みんなからのメッセージにいっぱい犯されて、すっごく気持ちよくなっちゃった。
――こんどは配信で、チョモラのメスイキ見せてあげるね~★
僅か数秒でリアクションの通知が押し寄せてくる。
雄の臭いが、漂ってくるようだった。
「ふうん。そっか……」
ひとり呟く。
「そんなに、チョモラの事、すきなんだ」