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天使の梯子に沈みながら  作者: れるり
5/9

扇動する情欲

四方(よも)智里(ちさと)は、男の劣情に無自覚に触れてしまうような男だった。


記憶の中で最も古い相手は、叔父だった。

まだ小学校に通っていた頃だったか、いつかの親族で集まる日。

辺りを焦がすような熱を、太陽が放っていたのをよく覚えている。

父親や祖父たちはいつものように酒を飲み、付けっぱなしのテレビに対し大声で文句をつけ、かと思えば歓喜の声をあげ、智里の事など気にも留めていない様子だった。

酒の臭いが苦手だった智里は、つまらないテーブルから離れ、ぬるい風を吹かせる扇風機のそばで、すっかり氷の解けたお茶を少しずつ飲んでいた。

身近な大人たちの明るい声に取り残された智里は、もう家に帰りたいと思いながら、また一口、お茶を飲む。テーブルまで継ぎ足しに行かなくても済むように、ゆっくりと。


そんな見るからに詰まらなそうな智里の姿を見かね、声を掛けてきたのは叔父の吉嗣(よしつぐ)だった。

父親の弟にあたる吉嗣は、昔から智里を気に掛けていた。

家族で叔父を訪ねた時には「秘密のお小遣い」を、ポケットに忍ばせてくれたし、誕生日には智里の好きなヒーローに関連した玩具をプレゼントしてくれた。


「どうだ、おっちゃんと、こっそりオヤツでも買いに行くか」


智里は顔を輝かせ、叔父の後について行った。

叔父が向かった先は、車だった。あれ、と思う。確か、叔父も酒を飲んでいたはずだ。

ちょっとまって、車は駄目なんじゃ……。

言おうとしたその刹那、智里の身体は叔父に抱かれていた。


「くるし……ど、どうしたの」


「言っただろ、オヤツでも買いに行こうって。これはな、その準備なんだよ」


狭い車の中、荒い息が聞こえる。ごくりと、つばを飲み込んだ音が聞こえた。

叔父の手は、智里のシャツの中に強引に潜り込み、汗ばんだ素肌を撫で始めた。


「智里は本当に可愛い男だよ。おれはずっとこうしたかったんだ。いいだろ、おれは、お前によくしてやってたじゃないか。そうだろ、智里」


智里は、叔父が何を言っているのか分からなかった。押し付けられる体重が苦しかった。

夏の暑さのせいだったのか、酒のせいだったのか、叔父の身体は、やけに熱く感じた。

小柄だった智里の身体では、何もできない。叔父は智里を抱いたまま、ゆっくりと体勢を変えた。

叔父は自らのズボンの膨らみを、智里の()()()()に押し当て、腰を動かしていた。

()()()()()、と思った。


叔父は腰を痙攣させながら呻き、にまりと笑いながら、自身の下着の中に指を突っ込んだ。

智里の顔に突き出された指先には、嫌な臭いのするゼリーが付着していた。


「舐めなさい」


いつもの優しい声だった。智里は叔父の言う通り、目の前の指を咥えた。

嫌な臭いが広がるのに耐えながら、指にこびりついたゼリーを、舌で舐め取り続けた。

やがて口を離すと、叔父の指と自分の口との間に、唾液が糸を引いている事に気付いた。

不快だったはずの叔父の指が、たまらなくいとおしく思えた。


もっと、ください。叔父さん。


肉親としての一線を越えたのは、その時だった。

熱と痛みと、そして、頭から溢れ出すような快楽の痺れを知った。

それ以来、智里は大人の男の目を気にするようになった。

ある時は通学中に。またある時は、電車の中で。様々な施設の中で。

すれ違う男性の何人かは、()()()()()()()()で、智里の身体を眺めていた。


始めは不快に思っていたが、それは間違いだった。

()()()()()()()()なんて、こんなに気持ちのいい事が、他にあるだろうか。


――今日の配信では、皆さんから頂いたオモチャで遊んでみますね!


机上に並んだ男性器の形を模した玩具に触れる。

()()が、『チョモラちゃん』に向けられた()()なんだ。


<Herbarium>のカウントダウンが『0:01』から『0:00』へと更新される。


智里に『チョモラちゃん(メス)』としての、スイッチが入る。


「こんチョモっ★ みなさんお待たせしました、チョモラです~!」

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