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真冬のショート・ホラー小説劇場 第10話 「ラヂオ怪異譚・こちらはYBX深夜放送局です」 

作者: 舜風人


その1   深夜、ふと目覚めて、、。




誰にだって寝付かれない夜はある。


あるいは


いったん寝たんだけど、、


ふと深夜目覚めて、、そのご、どうしても、何となく眠れない、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、


そんなときは


あれこれと忘れていた苦い思い出なんかが頭をもたげてきて、、、、、、、、、、、、、、


わたしを悩ますんだ。


そういう時あなたならどうしますか?


私は枕もとの携帯ラジオをつけるんですよ。


そして例えばNHKの「ラジオ深夜便」なんかを聴いたりするんです。


そういうラジオを、でも、なにげに聴いてるとやがて知らぬ間に眠り込んでいたりして、、、。


この間の夜も、、いったん寝たんですがふと深夜に目覚めてしまって


それからどういうわけか寝付かれなくなってしまって、、


こういう時は電気スタンドをつけて、、あたら読書なんか始めると


より一層寝られなくなるので、むしろ目を閉じて暗いままで


ラジオでも聞いた方が良いのです。




で、、、




早速、枕もとの携帯ラジオを、つけたのですが。


なんか雑音ばかりで、いつものようには


受信しないんですよ、


いつもと違う?変だなあ?


チューニングダイヤルを回してもどこも雑音ばかりで、、


何も受信しません。


おかしいなあ


でも。


今日は日曜日の深夜帯の放送休止時間でもないし、、


というのは、


日曜の深夜1時から5時まではラジオはNHK以外は放送休止なんですよ。


(つまり正確に言うと月曜午前1時から5時まで)


民放ラジオはほぼやってません。(ごく一部はやってるようですが、、、、、)


でも、、今夜は日曜でもないし、、で、、NHKに合わせてみたんですが


そこも雑音ばかり、、、変だなあ。


今度は根気よく暗い中で枕もとの携帯ラジオのチューニングダイヤルを静かに


全波帯に静かに合わせ続けてみました。


すると今まで聞いたこともないような日本語の放送局からの電波をただ一局だけ、受信したのです。


えーと暗いので、、たぶん1600キロヘルツあたりだと思うのですが、、、。


でも、、そもそも、、そこらの周波数帯には日本語放送局なんかあるはずないんですよね。


よく、韓国とか中国とかロシアの日本語放送ってあるじゃないですか。


でもそれらはそこの波帯じゃないしね。


さてどこの放送局なんでしょうか。結構明瞭に受信できます。


コールサインはこうです。



HOQR


HOQR


こちらはYBX深夜放送局です、


周波数16○〇キロヘルツ


出力100キロワットで


ヘルポリスのハデス送信所からお送りしています。


HOQR


HOQR、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、




聞き耳を立てていると。


そのラジオはこんなことを言っています。



「深夜お目ざめのあなただけにお届けする、


極上のしあわせ情報


それがYBX深夜放送局の「闇夜通信」なのです。


さて今夜はどうやらあなたがお目覚めのようですね?


そこのあなたですよ、あなた、」



そう言われると、、私もちょっとドキッとして


なんか見られているような視線?を感じましたね。



その深夜ラジオはさらに続きます。



「そういうわけで今夜はそこのあなただけのために放送することになるようだね。


あなた一体何歳なんだい?たぶん60代だろうな。白髪だらけだし、しわだらけだしさ


ところでよーく聞くんだよ、


あなたのためだけの今夜は放送なんだからね。」



え?これって一体?なに?


不可思議なラジオですよね?



「そんな詮索はどうでもいいんだよ、もうあまり時間も残されてないんだからさ、


眠れないから深夜ラジオ聴いてるんだろ?



でもさあ眠れないって、、人生そのものがすでに「夢」そのものだしさあ。


永遠の眠りがやがて来るってことだし。


そんなに悩むことないんだよ、



第一、生命ってのはというか生き物すべてに言えるんだが、、


燃え尽きる寸前はバーッと一時的に燃え上がるんだよ、


それはまるで消える寸前のろうそくが、ぼーっと燃え上がってその後シュンと消えるようなものなのさ、、、、、、、、、、、、、」



、、などと、、いかにもくだけた物言いで、、普通のアナウンサーの語りではないのですね。


一体このラジオ、何なんでしょう?



「ところで、あなたは今までの人生振り返ってどうだった?


満足してるのかい?


それとも不満足?


でも私が見るところではあなたの分際にしては上出来の人生だったんじゃないかな?」



、、、などと勝手なことをべらべらまくしたてるのです。



ふつうは深夜ラジオと言えば語りの合間には歌謡曲とかかけるんですよね。



そう思うと、、その深夜タジオから



「おや?リクエストがあるようだね?


なになに、、石原裕次郎の「わが人生に悔いはなし」だって?



うーんどうだろ、お前の人生は悔いだらけだったりして?


まあ いいか  じゃあ  かけるよ、。」



そう言うと私がリクエストしてもいないのに


その曲がかかり出したのです。


もう私の頭は混乱しっぱなしで、とにかく、、、、


おかしな深夜ラジオなのです。



「さあ リクエスト曲が終わったよ。で、、お前に言っておかなくっちゃならないんだけどさ。


放送時間がもうすぐで終わるんだよ、


だからこれもなんかの縁だから


いいアドバイスしてあげるよ、



この放送聴ける人は実に恵まれた一握りだけなんだよ、



なぜって?それはこの放送が聴ける人は、いいところに行ける権利がもらえるんだからさ。


でも さあ


いいところってのは 高級温泉ホテル 宿泊券じゃあないんだよ。


もっといいところさ、



そういう意味ではお前は選ばれたんだよ。感謝しな。



ところでおまえに


実はもっといい知らせがあるんだよ。


お前の人生で今までで一番いいことが明日起こるよ。


きっといいことがあした起こるだろうよ


だから、楽しみにしてな。


それじゃあ


これで今夜の放送はすべてオシマイです


ご清聴ありがとうございました。



HOQR


HOQR


こちらはYBX深夜放送局です、


周波数16○〇キロヘルツ


出力100キロワットで


ハデス送信所からお送りしています。



HOQR


HOQR



これで今夜のすべての放送は終わりです


皆さまぐっすりとお休みください。」




そう言うとラジオはザーッと雑音になり、、、もう、、その後は、、、一切放送はなにも聞こえないのでした。




ふとレースカーテン越しに窓の外を見ると、、


大きな三日月が、、それにさわったら指が切れてしまいそうなほど 尖った


三日月が中天にかかっていました。



「ああ お月さん。こんばんは


今夜もまた寝付かれないであなたを見あげてる人がいるんでしょうね。


地上は今夜静まり返ってますよ。


お月さん


それではお月さん


おやすみなさい。」



そういうと、、、、、、


私も   いつの間にか   気が付かないうちに



深く   眠り込んでしまっていたようでした。









その2  次の日の朝、、、、、、、、、、、、、





「ねえ、ケンちゃん。お父さん、おこしてきてくれない、   朝の介助と装具交換しなくっちゃだから。」



ケンちゃんはママに言われた通りに 2階のお父さんのお部屋にゆきました。



すると間もなく、青い顔したケンちゃんが  あわてて二回から 駈け下りてきたのです。



「ねえ、おかあさん。大変だよ、お父さんが死んでるよ」



それを聞いたお母さんは急いで二階へ。。



介護ベッドに寝ていたお父さんはうっすらと細目を開いて、でも、、顔は青ざめて血の気もなく


ろうそくのような皮膚で、、明らかに 息もせず、、死んでいました。



でも  お父さんの目はなんとなく微笑んでるようで、


安らかな死に顔でした、。



そして右手にはいつも聞いてる愛用の携帯ラジオをしっかりと握っていたのでした。



「あなた、、、、あなたが寝た切りになってからもうかれこれ15年、



 何もできない。つまらないってあなたはいつも不満だらけでしたよね?。



でもやっと終わったのよ、あなた、



長い長い寝たきり生活がね、



だからあなた



そういう意味ではきょうはおめでとう」



お母さんはしみじみとお父さんの死に顔を眺めてそういうのでした。






おわり






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