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僕、やぶる。

「ああ、うれしいっ。当然の戦術とはいえ私に近づいてきてくれるなんてっ。」

 

 神谷さんは自分に都合の良いように解釈し頬を染めて喜色の声を上げる。対して僕は舌打ちしながら範囲を絞って神谷さんを中心に濃霧を発生させる。低ランクで視界阻害と湿気以外には特に効果もないなんの変哲もない霧である。

 

「もう・・隠れないでっ。」

 

 神谷さんも半アクションで暴風を纏い霧を吹き上げる。

 

「おいたもダ、メ。」

 

 背後から斬りつける菫の剣を無言でトウが回り込み勢いよく盾を振って菫ごと吹き飛ばす。前面が開いたことで僕は【瞬間加速】を用いて速度を上げて神谷さんに詰め寄る。しかし神谷さんに肉薄する前にトウが滑るように前面に戻り盾を構えている。歩かないその移動法が奇妙だと感じつつそうやって動けるモノだと再認識して盾に向かって剣を勢いよく振り最後に力を止める。低い金属音が響くが音は大きくない。軽い衝撃が剣に伝わりわずかに押し戻されるような力を感じる。感心するような神谷さんの顔を横目に見ながら邪魔なトウを強制移動させるために横から【鉄杭】を叩き込む。しかしトウはわずかながらも動かない。『物理反射』に『強制移動軽減』か無効とか面倒くさすぎる。トウと止まって打ち合う気は無いので一度離れる。吹き飛ばされた菫は体勢を立て直し再度移動を始めている。

 

「ん、終わりかなぁ?」

 

 神谷さんは僕が一瞬止まったのを見て不思議そうに目配せする。

 

「どうやって抜けるか考え中だよっ。」

 

 僕は軽口で返事を返す。

 

「悠長にやってると終わっちゃいますよ、ほんとに。」

 

 神谷さんはさも楽しそうに杖を振り柄で地面を叩く。神谷さんを中心に二重の円環を描くように雷光球が出現する。一円当たり50個相当かそれ以上か、僕は突然現れた莫大な魔力に驚く。

 

「そーれっ。」

 

 大量の雷光球が射出され通常よりも高速で飛来してくる。壁で防ぐかとも考えたが先ほど口走ったユウの言葉を思い出す。

 

「こっちのがいいのかっ。」

 

 わずかに遅れたがショットガンを取りだし散弾を広範囲にばらまく。小さな散弾は金属であることも功を奏してか意図通りに雷光球にぶつかり爆発を誘発する。

 

「むー、ユウみたいなことして。」

 

 輝く雷光の壁で視界を遮られるがその奥で魔力の集積を感じその場から離れる。離れた場所に白い光が通過し背後の地面を焼き焦げ臭さと熱を放つ。雷光の壁が収まると神谷さんがこちらに再度杖を向ける。杖の先端が光ったかと思えば即座に僕の腹部に突き刺さる。

 

「あっつ。」

 

 僕のコートの表面が焦げる。

 

「熱いですんじゃうんだ。硬いなぁ。」

 

 神谷さんはちょっと困り顔で呟いて杖を持ち上げまた杖をこちらに向ける。とっさにその場から離れるとその場を白い光が通過する。ちらりと後ろを振り返るとその先二mもしない内に光が消えていることが分かる。射程自体はそれほど長くないようだ。

 

「二度目で回避されるとか自信なくしちゃうなぁ。」

 

 神谷さんはぶつぶつといいながらもなんだか嬉しそうだ。

 

「予備動作がわかりやすいかな。」

 

 そのまま杖を向けたまま発射出来るなら問題なかっただろうが、魔法の発動に動作を組み込んでしまっていることにより杖を一度引き上げる必要があることが魔法の発動を予見させてしまっている。

 

「詠唱も無しに何気ない動作で最速で届くから便利なのに・・・連続しちゃうとバレバレなのか失敗失敗。」

 

 神谷さんが陽気に反省している。話の内容が真実ならなかなか恐ろしい不意打ち魔法である。そして菫が横から不意打ちを敢行するがトウに遮られて再び吹き飛ばされる。魔法戦だと菫の飛び込む隙がないので、どうにかして乱打戦にするかどちらかがトウを足止めしないと神谷さんには届かない。いままでのように適当にやっていては駄目な相手だ。僕は菫に意思を送り同時に走り出す。神谷さんは魔力を集積し始める。菫がトウに向かって短剣を投げ盾で弾かせる。盾で視線が隠れた僕が【瞬間加速】で踏み込み神谷さんを両側から挟みそのまま同時に斬りかかる。トウはため息をつくいて盾を地面に突き立てる。僕らの攻撃は同時に弾かれ吹き飛ばされる。『全周囲防御』もあるか。

 

「抜けてこれなかったんだ。一端保留と。」

 

 神谷さんはそう言って集中を解くがその魔力は拡散するでも無く消えるように無くなる。遅延発動を後付けできる?または本当に一時停止できるスキルか。さっきの雷光球の群れも仕込みだろうが魔法に対する修飾バリエーションが豊富だな。下手に近接しても対抗手段があるという事にもなる。

 

「様子見するならどんどん上げていくよ。」

 

 自信のなかった昔の神谷さんと違って陽気に次々と攻撃を繰り出す。定番の光の槍にしても本数は十倍に隙があるかと思えば『並列詠唱』で罠を仕込んでくる。魔法の合間に飛びかかれば当然トウが妨害を行う。五度、六度と試行と突撃を繰り返してもその牙城は破れる気配を見せないほど高かった。お互いまだ傷はないがこちらの防具は大きく削られ無謀な特攻ははばかれる状態になりつつある。

 

「んー、いつも高見から見ていた遊一郎くんが攻めあぐねていると・・・快感だなぁ。」

 

 心底嬉しそうに神谷さんが陶酔する。

 

「ご主人様自重を。彼はこの程度で諦めるほど能力も思考も低いわけではありません。」

 

「はいはい。その通りですね。」

 

 浮かれた神谷さんをトウが諫め、神谷さんもそれを聞き遂げ構え直す。

 

「ご主人様如何なさいますか?私は・・・もう覚悟は出来ております。」

 

 何度かの突撃の後寄り添って検討することが多くなり菫は僕の側に寄っている。

 

「まだ早いと思うけどなぁ。どっかこう崩せそうで・・・」

 

 リスクのある強化魔法を受け入れるという菫の意思が見て取れるが、僕は余力のある今のうちにまだ神谷さん達の防御を暴いておきたいと思う。弱体化前提の強力な強化魔法はあるが時間稼ぎをされたり解呪されてしまえばそれこそ詰んでしまう。最低でも必殺の道筋を作っておかなければリスクが高いと考える。

 

「まだ隠している余裕があるのですね。もっと攻めてあげないと本気になってくれないのですかっ?」

 

 神谷さんが狂気を見せながら魔法を打ち出す。これまでに僕の三倍は魔法を使っている。魔法攻撃力差があるとはいえスキルを考慮してもそろそろ負荷が心配になるところではある。その辺もなにかタネがあるはずなのだ。飛び交う魔法を回避し防ぎしのぐ。

 

「まさかMP切れを狙うなんて消極的な作戦なのですか?まだ私は二割も使っていませんよ。使い切るまでに確実に遊一郎君を追い詰められます。さぁ・・・さぁっ。」

 

「ご主人様っ、それ以上はっ。」

 

 神谷さんが僕が攻めあぐねいているのを見てじれているのか情報をしゃべるがそれをトウが咎める。神谷さんもはっとして口を紡ぐ。能力はともかく性格的には素直な二人が嵌めるために何かをしゃべったとも思えずそれ自体は何かカラクリがあるのだと認識する。とはいえそれが突破できなければ脅威であることには変わらず、僕が攻め手にかけているのも事実である。このままだらだらと戦っても動きが多い分僕が根を上げるのは目に見えていたのでテンポを上げていくことにする。竜の目を放ちマニピュレーターを動かし始める。神谷さんは目が輝やかせるように喜色の笑みを浮かべ、反してトウは警戒の色を強める。菫に目配せしてから意思を伝え先行させる。神谷さんは眉をひそめるが僕が動き出すと表情を和らげる。

 

【振動抑制】

 

 上空の竜の目を動かしそこを中心に空気の振動を減衰させる。これ自体には何の攻撃力もなく神谷さんもトウも飛来した竜の目の動きを意識しているがどういうことか認識していないようだ。対した気の散らしかたでもなかったが菫はその視線の外から神谷さんに襲いかかる。トウは油断せずに構えたままで菫を受け止め吹き飛ばす。その吹き飛ばしを僕は土壁を張って受け止める。菫は壁を使って受け身を取りある程度衝撃を殺しながら横に飛び出し再び気配を消す。トウの行動に合わせ反対側からトウと神谷さんに向けて逆方向から鉄杭を打ち出す。二つの杭の距離が近いせいもあったがずれるように動いたトウは器用に盾を横長に持ち二つの杭を受け止める。

 

【魔力隠蔽】

 

 振動抑制を中止し新たに魔力視覚を困難にする魔法を展開する。横に逃げた動きをした菫は引き返しており、また同じ方向から神谷さんに斬りかかる。

 

「貴方、邪魔ですよ。」

 

 神谷さんが手を向けて魔法を放つ。隠蔽効果を受けて非常に分かりづらいが何か衝撃を放つ魔法のようだ。菫がその魔法を一身に受けて吹き飛ばされ地面を転がる。追撃をされないように菫を隠すように土壁を立てて別の竜の目を上空に派遣しそこから火爆破を打ち込む。トウが素早く反応し槍を振りきり発射点から発動点への魔力線を切る。『魔法受け』の派生技術である飛来しない魔法への対処法である。偏向防御以前に何で攻撃したらトウを抜けられるかも怪しくなってきた。両側からの同時攻撃でも防がれる。巻き込むような爆破も中心にしてはならない。単純に力で押し切るのが難しいから小細工をしているのにその小細工の効果が見て取れない。いやでもさっきはちゃんと神谷さんが防御行動をとったではないか。トウも無限に動けるわけではないと確信し手数を増やす方向で検討する。平行してこのまま神谷さんの索敵方法を探る。ただ正直なところ確実に探知できそうな方法が思いつかない。熱に関わる魔法を多用しているので熱源感知は可能性が低い。ソナーやレーダー波でもなく魔力も見ていない。

 

「すっかりこの世界に染まってしまって・・・てっきり近代兵器で攻めてくると思ってたんですけど。」

 

 神谷さんがある意味予想を裏切られたように残念そうに呟く。

 

「やり過ぎたら焼け野原にしかならないと思って自粛してたんですよ。」

 

「やっぱりお優しいですね。」

 

 僕は近代兵器を推し進めなかった理由を告げる。それに対して神谷さんは少し笑いながら感想を述べる。

 

「私は・・・試してしまいましたよ。」

 

 神谷さんは薄ら笑いを浮かべて魔力を集中する。僕はこんな地下でバカかと思いながら半円状に鉄壁を立て内側にさらに氷壁を張る。

 

「それで防ぐつもりなの?神国日本を沈めた断罪の光を・・・秘呪三式【質量欠損】」

 

 彼女の不穏当な言葉と共に光が満ちあふれる。さすがに爆破だと自爆してしまうので前方噴出型なのだろう。そうであれば有り難いと願いながら追加の障壁を展開する。すさまじい光と共に音と熱を産む。止まらない光が目を焼き肌に突き刺さる。閃光は障壁じゃ防げないのかと困りながら視力を失い周囲を把握出来ない。ソナーも役に立たず溢れる魔力爆発が魔力探知も阻害する。状況も分からないまま乱雑に防御壁を張るがそれらも破られ体に衝撃を受ける。体が宙に浮き衝撃のまま吹き飛ばされる。一瞬で花畑の壁にぶつかり反動を体に受けるがそれを押し込むように衝撃がかかり続ける。熱いと感じる熱。防御力を貫通していないせいで未だその程度で済んでいる。やっぱりこのシステムはおかしいわと思いながら目の前に障壁を張り続ける。長い時間と思いつつも恐らく三〇秒も立っていないだろう。防具は灰になり障壁と一緒に素材を放りだし壁の代わりにし、体を治療しながら無理矢理耐えた。衝撃が光が収まったと閉じたまぶたを通して感じ目を治療しながら体に予備の防具をかぶせる。

 

「まさか無傷ですか?さすがにそんなことは無いですよね。」

 

 真新しい防具を見ているのか神谷さんがそんな感想を漏らす。声は近づいているようであるが対峙していたよりはずっと遠い。耳鳴りが正確な距離を測らせてくれない。

 

「あなた本当に邪魔ですね。先に・・・」

 

「ご主人様、目的を間違えないように。」

 

「そう・・ね。」

 

 菫が時間稼ぎに神谷さんに突貫したのか、それを苛立つように防いだようだ。その攻撃の手を菫に向けようとしたことをトウが咎めると神谷さんは考え直したかのように僕に向き直る。視界を回復させると近づいてくる二人の姿をぼんやりと収める。背中のマニピュレーターは仕事をしない内から吹き飛ばされ近くにはない。多少の外傷は放っておいて問題無く動けるようになったので立ち上がる。核爆発を受けても大丈夫とか防具様々である。自分で考えていたネタを自分で受けるとは思わなかったが。それにしても放射能は大丈夫なのだろうか。自分の体が今大丈夫なのだから影響は無いのだろうが。

 

「短気になってしまって半分以上殺すつもりで放ったのですが・・・意外とぴんぴんしてますね。本当に遊一郎君なんでしょうか。実は人間じゃないとか?」

 

 十m離れた所で歩みを止め失礼な感想を述べる。そう言われた後ふと神谷さんが口にした魔法名を思い出す。

 

「まさか直接質量だけエネルギーに変換したのか。」

 

「そうですよ?」

 

 僕の質問に神谷さんは不思議そうな顔をして答える。名称から核爆発を連想してしまったがそもそも魔法で再現するなら核分裂も融合も行う必要なく必要な結果だけを取り出したのだ。そりゃ放射能も出ないはずだ。形相なことをしているがようはただの爆発でありエネルギーの奔流だったわけだ。

 

「あらかじめ作っておいた鉱石の粉を適量消失させただけですよ。」

 

 種明かしがさも楽しいというように微笑む。

 

「あと・・・僕は人間だ。耐えきったのはこの世界のシステムのせいだし、正直大量殺戮するつもりじゃないならそんな大仰な攻撃は必要ないよ。」

 

 二度も三度も喰らいたいとは思わない。が一人を倒すのには無駄が多い攻撃とも言える。

 

「むー、そうですか。それなら遊一郎君ならどうしますか?」

 

 今までの攻撃を悠々と防ぎきった彼女はそれを戯れ言と言わんばかりにニヤリと笑い、煽る。トウはその行動に難色を示すように顔をしかめるが彼女には見えていないだろう。

 

「一つヒントを貰ったからね・・・切り崩していくよ。」

 

 神谷さんが何を持って僕や菫を感知していたか少し予想がつかなかった。ただ質量欠損をした結果に関しては魔法で感知するにおいては対した距離でないにも関わらず歩いて確認に来た。そういう意味では彼女は周辺の感知をあくまで元々持っている視覚や聴覚に頼っている。なぜ気がついてもいない不意打ちに対応できるのか。その確認を今から行う。生き残った三機の竜の目を神谷さんの方へ飛ばす。一瞬警戒を見せるがそれ自体の影響はないと見て目の動きを止めない。収納から予備を二つ出しさらに飛ばす。先ほどまでの素振りは何かと思うくらいトウが急に警戒を強めて目の動きを追う。僕はその仕草を見て概ね予想が当たったと確信し、そこから警戒できる時間を感じ取る。

 

【白色閃光】

 

 奥に飛ばした竜の目と今まさに飛ばした竜の目からおびただしい光が溢れ周囲を光り輝く空間に変える。視界に頼る感覚を完全に遮断する単純ながらも回避の困難な魔法である。竜の目は神谷さんを中心に緩やかに動き光源を絞らせない。二方向から浴びせることで影を作ることも難しい。当然僕らも視認が出来なくなるが、視覚以外の感覚で周りの様子を見ることが出来る。神谷さんもきっと出来るだろうが、それをすぐに使用できるか、使うという知識があるか、そして使うとしてもその一瞬で菫が攻撃を加える。甲高い音が響き菫の攻撃が防がれたことが分かる。続けて菫が別方向から攻撃を加える。それもトウが丁寧に盾を動かし防ぐ。僕は菫が離れたタイミングで全周囲から金属の針を生やして攻撃する。トウはそれを全周囲防御で防ぐ。針が防御に負け障壁に沿ってうねって曲がる。全周囲防御が切れたタイミングで上空の竜の目から【暴威纏雷】を打ち込む。それを神谷さんが察知し魔法がたどり着く前に障壁で受け止める。輝く光の中でバチバチと電撃音が鳴り響く。

 

「チェック」

 

 僕は懐から【超重縮】を封じた魔法石を投げ込むと同時に【氷結】を神谷さんに打ち込む。基点を指定するこの魔法は動きが回復したトウが切り伏せ不発に終わる。未だに神谷さんは追加の視覚魔法を使っていない。予知を行う魔法自体が視覚に類する魔法で重ねて使えないのかもしれない。そう神谷さん達は五秒程度先の未来を見ながら行動している。起こりうる結果を見てそれに対応するように動いているのだ。菫の動きを追えないのに攻撃には対応出来るのはそういった理由がある。だからこういった光の中で相手が見えなくても対応ができる。でも予見した結果だけ、その結果を起こす行動まで見えていないのでスキルや魔法の対応が間に合っていない。

 

「さぁどっちを防ぐ?最もトウは菫を止めるしかないよね。」

 

 飛来する魔法石と神谷さんの後ろに迫る菫。菫は戦いを終わらせるために神谷さんの首を飛ばすだろう。だが超重縮では少なくとも即死はしない。主が死ぬ未来が見えればトウは菫の攻撃を防ぎ吹き飛ばす。そして神谷さんは見てしまった未来に対応するため超重縮の基点を壁で覆ってしまう選択をした。しかしその選択では違う基点で魔法が発生することを知ってしまう。もう一度、そしてもう一度。放物線を描いて飛ぶ魔法石が見えないというだけで無駄な行動を繰り返してしまう。

 

「どうして止められないのっ。」

 

 神谷さんの悲痛の声が響く。

 

「対処が間違ってるからさ。・・・チェックメイト。」

 

 聞かせるでも無くぼそっと呟きドームの頂点に当たった魔法石は破裂し超重縮を展開し、神谷さんとトウを吸い上げる。あとは基点を指定する魔法【白炎】【暴威纏雷】を並列発動、竜の目から周囲に向けて【棘片衝撃】。全周囲防御では基点を防げず、基点を切り捨てても片方は防げない。そして神谷さんは瞬間的に使用しうる魔法を使い切った。すべてを防御する手段は無いが追撃を防ぐ為にトウは全周囲防御を選択する。重力に圧縮され、熱に焼かれ、電撃が身を焦がす。すべてをまるまるその身に受ければ死は免れないだろうが魔法使いたる者命を守る最後の防御があるはず。神谷さんは最後の保険であろう遅延発動に守られ防具も服もずたぼろのあられも無い姿で花畑に投げ出される。トウもついでに助けられたのか神谷さんの近くで倒れている。菫が動けない神谷さんの首に剣を突き立てる。トウが何かをすれば菫は躊躇無く神谷さんの首を飛ばすだろう。出し惜しみで多少追い詰められたとはいえ結果的に最後の切り札を切ること無く余裕と油断の積み重ねで僕らは勝利した。


菫「斬ってもいいですか?いいですか?」

菫「駄目ですか・・・」

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