僕、繰り上げる。
お預けされていた進軍の再開である。歩調を合わせるように言われているが全体の歩調さえ早めてしまえば問題無いと言わんばかりに速度を上げる。僕を第一軍、菫を第二軍、桔梗を第三軍としている。第一軍の計画速度は遅く、距離的にはともかく目標の王都前にたどり着くのは最後となっている。取りあえず第二軍と第三軍が周辺を制圧してからとなっているためである。まずその速度を上げてもらう。メッセージで指示しつつ進行速度を速めさせる。近場の都市に対する勧告は実に到着一時間前である。近隣の事なのでリブリオスが陥落したことはさすがに知っているようだが、どうにも返事の手応えが悪い。信憑性を掴みきれず軍が到着後一時間の時間を与えても回答がなく。結果、出発四時間後には北のミーファイル、南のフォーセスが陥落。都市政治機構を制圧し監視として軽戦士、斥候兵、魔術師、医療術士とミーバを四体残して次へ向かう。次の都市に向けて降伏文書を送りまた進軍を再開する。次の都市は更に混乱に包まれる。確認も取れない状態でもう二、三日先の都市が陥落したと降伏文書で告げられてしまったからである。この位置になると三日前にリブリオスの陥落を知り事実確認をしているさなかでありそんな中で隣の都市方面からの降伏勧告なのである。そんな馬鹿なと言って一蹴している所、一時間と少ししたところで都市を半包囲される。日が沈む少し前の時間に北のハラガルは包囲され最後通牒として降伏勧告を行われる。南のテラトルも少し遅れて東門前方に布陣される形で降伏勧告が行われる。ハラガルは降伏勧告を拒否し門を閉じ抗戦の姿勢を見せるも常備兵が配置につく前に門が内側から開かれ抵抗らしい抵抗をすることも出来ずに領主邸を制圧され降伏する。約二十分の出来事であった。テトラルは降伏を受諾したため戦闘は行われなかったが、制圧した後の小規模な暴動や暗殺未遂のほうが多かった。
「行軍速度がとんでもないのう。坊やが無茶を言ってるかとも思ったがあながち不可能という訳でもなかったということか。」
サレンが与えられたファイの上でぼやくように言う。
「あら、ご主人様はいつも出来ることを前提に話しておられましたよ。」
桔梗がクスクス笑いながらぼやきに乗る。
「これだと調略が無駄だというのも分からなくもないが・・・それでもちと早すぎるのう。」
サレンが頭を悩ませ始める。グラハムやサレンにも計画があったのだろう。
「坊やは一体どうするつもりなんじゃ?」
「ご主人様は早く次の段階に進みたいということで計画ペースを三割強速めるつもりのようです。南側はそれほど早くは出来ないでしょうが。」
サレンが桔梗に尋ね、桔梗は素直に答える。
「わしが行軍の足かせということか。」
「お食事も睡眠も必要ですしねぇ・・・」
サレンが気持ち悔しそうにしている所に桔梗はそういうものといった風に話す。
「どうしてわしの従軍を許可したのじゃろうな。これなら正直いるだけ邪魔であろうに。」
「そこまではお聞きしていませんわね。途中制圧範囲も増えますし、指揮官が多い方が全体的に早くなると思われたのかもしれません。」
サレンと桔梗は和やかに話しているがサレンの悩みは深まるばかりであった。夜になり桔梗とサレンの行軍速度は低下するが、北側の菫は監視のためのミーバを町に残しさらに進軍を行う。真夜中の内に次の町タウントラに到着。暗がりの中あえて明かりをつけ軍の存在を知らしめ、斥候兵を使い町の管理官らしい者に直接降伏文書を届けるという半ば脅しのようなことを行い、抵抗する気力を失った管理官は降伏を決めた。桔梗たちは緩やかに進軍を続け明朝に次の町セッケルに到着。門番に降伏文書を丁寧に届け、時間になっても返答が無いため門を吹き飛ばしたところそのまま降伏という流れになった。サレンが目覚めた時にはすでに次への移動が始まっており引きつった顔が戻ることはしばらく無かったという。両端の制圧が進んだところで隣の都市ガランダル周辺に到着していた僕ら一軍は朝一で高圧的に降伏文書を叩きつける。リブリオスからの避難領主から話を聞いていいた当市の領主は籠城を決め耐えしのぐつもりでいた。しかし結局斥候兵の侵入を防ぐことはできず門を内側から開けられ、常駐兵は蹂躙された。
「んー、やっぱり戦争どころか戦いにもなってないな。」
報告を聞いても実際に自分でぶつかって見てもここらの騎士程度ならミーバがやられるレベルでもない。今度は逃げられないように真っ先に領主邸を監視させたため、逃げようとする領主を戦闘中に捕獲している。
「貴様は手配中の・・・こんなことをしてどうするつもりだ。」
ぐだぐだ高圧的に話してきたので一応弁明をしてみたけど、聞く耳持たない様子で権力を笠に威圧か助命かよく分からないことを言い出したので牢屋に放り込んでおいた。半日ほど時間調整で都市の政治をあれこれ聞く。書類を見ても聞き取りをしてもろくな事をしてなさそうなので腐敗まみれな連中を更迭し牢に投げ込んでおく。大きいから運営費用がかかるのは仕方がないがやり過ぎな面が目立ったので独裁者よろしく数字の指示と法律遵守を徹底させる。少し多めにミーバを配置し次の都市への移動を始めた。
「やっぱり相手になりそうなのは英雄様だけかね。」
僕はそう呟いて報告を聞きながら進軍指示を出す。北側の菫は僕の中では予定通り。計画としては三割と少し前倒し中である。この先二分割しての侵攻になるのでそこからどうなるかがちょっと読めない。戦力的には今のところ問題がないけど情報が伝わって敵がまとまってくると話が変わってくるかもしれない。南側はサレンの参入によりやや遅れている。それでも計画より二割ははやいが。サレンを指揮官に据えるかは桔梗に一任してあるが、指名された場合はさらに遅れが出るだろう。どこで出し抜くか考えつつ緩やかに歩を進める。
各地の侵攻状況は国からみれば圧倒的であった。通常の軍の五十倍を超える速度で二十倍以上の軍がやってくる。魔法で伝えられた一報ではただ膨大な数の魔物にやられたとしか分からなかった。翌日もたらされた報では相手には降伏を求める理性と知性があり完全に統率された軍であると告げられさらなる混乱が起こる。国境でも無い辺境からそんな膨大な軍をどこから連れてきたのか。ただ曰く付きの土地から進軍されたことが王家の反応を過敏にしていた。翌日北側の進行速度が予想より速く、かなり食い込まれていることが知らされる。南の軍も北ほどではないがかなりの速度で侵攻されている。それでいて歩調を合わせるように王都にまっすぐやってくる中央軍。王家の威光だけで貴族を押さえるのは難しい段階になりつつあった。
「続報です。サルードルのグラハム家が祖先と現代への扱いの不満とクァラルーンへの支援の不透明性を掲げて反旗を翻しました。」
王都の会議は騒然となる。王は予想の内の一つに当たったと思いながら参加者を一括して押さえる。
「彼の地にはそれほど軍を支える財も拠点も無いであろう。軍の規模が虚報ということはないのか?」
「過大に報告されていたとしても半分以下にはならないかと思われます。最初は魔物の集団と思われていましたから二足の魔物と交流ができた可能性もあります。」
王の発言に情報を精査している者が補足を足して意見を述べる。
「それにしても攻め込んでから四日後に声明を発するなど、田舎者は礼儀も知らぬと見える。」
ある貴族の発言に周りの貴族も賛同するように文句を言い始める。
「サルードルから王都まで伝書を飛ばせばそんなものであろう。恐らく侵攻と声明は同時だったと考えるのが自然である。ともかく主犯がグラハム家というなら王都にいるグラハム家を拘束し事情を聞き出せ。何も知らなくとも手札の一つにはなる。」
王の指示に兵が動く。年を重ねた王は相手の目的を考える。クァラルーン王家。そして過去の不名誉。強大な軍を手に入れたとしてもあの小僧が動くには理由が弱い。不満を抱えていたのは把握しているが機会は与えている。爆発するほど押さえ込んだはずはなかった。
「クァラルーンに対する支援の動きを詳細に調べておけ。」
王は紙に走り書きをして近衛に渡す。十分な支援をしたわけでは無かったがこちらも倒れられては困る相手である。途中で意味を理解していない者が不正をしている可能性が大きい。貴族達はあーだこーだと他人の軍を動かす算段をしている。王は見苦しい争いにため息をついて声を出す。
「近隣の貴族に緊急招集をかけ、王都に軍を集めよ。そこから奪回を行う。分散している今がチャンスと心得よ。あとはアリアに北を押さえよと通達しろ。」
王の言葉を聞いて貴族達は一旦安堵する。かの英雄が動けば軍相手では問題がないであろうと。王は周囲ににらみをきかせるための英雄を初手で使わざるを得ない状況に歯がゆさを感じている。この情報が漏れれば場合によっては他国からの侵攻もありえるのだ。動かした以上は早急に片をつける必要がある。
「私も近衛の招集から再編成を行う。貴殿らも早急に軍の招集を行うように。」
王は立ち上がり会議は閉会される。貴族達が慌ただしく動き始め会議室から出て行く。
「何もかもが今更過ぎる。どこの差し金だ。」
確認することは多かったが敵の侵攻速度を考えれば時間が足りなすぎた。王は苛立ちながらも指示を繰り返し脅威への対処を進めた。
僕らは五日間かけて予定の制圧の七割を完了させた。全行程の予定から三割と少し早い。菫の前倒しもさることながら、南の侵攻速度低下が予想より少なかったからだ。そろそろまとまった王国軍の反撃があるのではないかと考えているのだけど、王都の様子を聞く限りでは再編に手間取っているようだ。一度はぶつかって叩きのめす予定なのに早く来てもらわないと困る。国軍を招集しないまま制圧すると、そろってればまだ勝てると思い込んで抵抗が長引くことがあるそうだ。だから一度は大半を招集できる状態でぶつかって欲しいと注文があった。分からなくは無いがそういう手合いも含めてぶちのめせばいいのに。今僕は敵が来るのを待っていた。そして危機は密かにやってきていた。
「私達の工程もあと一つですね。」
菫はいつもだらけている鈴に何とも無く話しかける。先日まで鈴にも一軍を持たせ二方面侵攻していたがミーバを駆使して危なげなく攻略していた。北方の予定制圧箇所はあと一つ。その一つも敵軍が動くのを待っている段階である。対した抵抗もなく都市に置いてきたミーバを除いて倒されたミーバは軽装兵と重装兵の二体だけである。必死の抵抗をした一人の勇者の戦果を思い菫は眉をひそめる。鈴は蟹の上でごろごろしながら話を聞き流す。菫もいつものことと返事を期待しているわけでは無い。だがその鈴が急に予備動作も意識させないように急に立ち上がった事に違和感を感じる。
「鈴?どうかしましたか?」
菫がその気配を感じて振り返る。気怠そうではなく無表情。人を不安にさせる感情の無さ。ただ虚空を見つめるその姿にただならぬ雰囲気を纏う。
「鈴、何をしているのですか。」
菫は鈴に体を向け、その感じる怪しい気配を捉える。
「お前は一体何をしている。」
菫は警戒段階を引き上げ鈴に問う。鈴は壊れた人形のように首を曲げかたかた笑い出しそうに口角をつり上げる。
「あなたは本当に面白い。でもまだです。まだまだ楽しませて欲しい。これが、こんな愉快なことが、たかだか数年で終わって良いはずが無い。」
無表情に淡々と言葉を紡ぐ鈴。
「ご主人様の行動を否定したと見なしますよ?」
鈴からの敵意を感じないまま、ただ直感だけで菫は襲いかかる。菫の突進による空気の層に泳がされるように鈴はゆっくり回避する。菫はすれ違い様に鈴の手を掴む。両者共に鼻で笑う。菫は突進の勢いを乗せそのまま鈴を投げる。鈴は投げに合わせて跳躍し飛ばされる意図を回避する。菫は手をつかんだまま自分の体を回転させ鈴の腕をねじり上げる。鈴は腕のねじれに眉をひそめながらも足を振り回しねじれを解消しようとする。そして菫はひねり上げた手から触手を伸ばし鈴の首に剣を差し込む。しかし剣の先には鈴は無く手の中からも重さが消える。
「困ったなぁ。そんなに怒らないで欲しいですよ。」
鈴は音も無く路地に降り立ち棒読みに言葉を紡ぐ。
「まだ何か持っていますか。神速は拘束を解除しないはずですが。」
「いやだなぁ、逆立ちして歩いたらそれを妨害することは出来ないじゃないですか。」
「踏破もそのようなスキルではないっ。」
菫は冷石短剣を構えながら取り出し一気に三投する。鈴はその短剣をいとも容易く回避する。菫は存在を希薄化し短剣と共に詰め寄り回避した側の死角から斬り込む。それも空を切り鈴はあらぬ距離に退避している。
「もー、怖いなぁ。でも見えてますよ。」
「今度は正真正銘神速ですね。」
鈴の意識が短剣に集中した隙を狙ったつもりだったが動きを捉えられたままのようだ。
「このまま私達で潰し合っても主様が困るだけですよ?」
「お前がご主人様に害をなさない保証がどこにある。」
「信用無いですねぇ。」
鈴は付いたかも分からない埃を払う動作をしながら菫の怒りを受け流す。菫の目の前から鈴が消える。菫は反射的に前に走る。
「よっと。んー、まあばればれですよね。」
菫の元々居た位置にすっと鈴が着地する。お互いが振り返って視線を合わせる。
「さて試練は始まりますよ。二人は無事に戻れるかな?」
鈴が実に楽しそうな笑みを浮かべて糸が切れた人形のように崩れ落ちる。菫はなおも警戒し動かない。十秒もしたころ鈴がごろっと転がり仰向けになる。不安を感じる気配はない。鈴の中に何かよくわからないものがいる。安全の為に今どうにか出来る内に滅ぼすべきではないかと考える。武器を構え少しずつ鈴に近づく。子供のように泣きじゃくる鈴がそこにいた。
「ごめんなさいごめんなさい。良くないものを呼んでしまいました。あの子達を残してでも逃げてください。きっと許してくれますから・・・」
「あなた何を言って・・・」
ひんやりとした空気が足に触る。天候が急変したわけでも無く物理的に温度が下がったかのような空気。そして突風。力強いその風は砂利や小石をあたりに散らかす。菫は小石から目を守るように手を掲げわずかな隙間からその先を伺う。
「お願い、逃げて。」
なおも懇願する鈴。蟹を呼び鈴を抱えさせる。
「少し離れていなさい。」
菫は鈴を後方に送る。莫大な魔力が立ち上がり周囲が乳白色の冷たい空気で満たされる。自分の足下さえ確認出来なくなるほどの濃い霧。奥から感じる強い殺意。しかしその殺意も霧に埋もれるように消える。
「霧の剣士・・・」
菫がそう呟くと右からの一閃。剣を出すことも間に合わず脇腹を斬られる。深くではないが確実に斬られた。防具ごとHPに割り込む攻撃を加えられた。
「これは厳しそうですね・・・」
菫は集中し周囲の気配を探る。わずかに砂利がきしむ音。菫が軌道に剣を置き金属音が響き攻撃をはじくことに成功する。自分も相手も見えない中どうやって感知しているのかわからないが、敵は確実にこちらの位置を把握している。相手の方法はわからないが、自分にも知る手段があると体を希薄化し斥候兵と魔術師を呼び寄せる。試しに魔術師に灯りをつけさせたりしたが三十cmも遠くを見通せないようだ。地面を爆発させても霧が晴れることは無い。更に魔力視覚、超音波視覚を試させるも霧に阻害されてうまく感知出来ないようだ。敵は的確にこちらを追いかけ攻撃を加えてくる。踏み込む音を頼りに攻撃をはじく。斥候兵を周囲に配置し敵がよってくれば知らせさせる。斥候兵の知らせを受け一足飛びに斬りかかる。こちらが見えているが斬りかかられると思っていなかったのか焦ったかのように剣で受け止める。
「貴方が霧の剣士ですか。」
うっすらと見える女性の顔を見て菫はそれとなく話しかける。見失うと不利なためそのまま足を引っかけ地面に降りて剣技でたたみかける。それほど高度な剣技ではないが守りに徹して負傷を許さない。その技術で見えない剣をどう対処しているかと思えば霧や水滴のせいで剣の姿が浮き彫りになっており利点を引き出せていない。それならばと大きく右から斬りかかり防御を誘導し、逆側から触手と剣で斬りかかる。女剣士から苦悶の声が漏れわずかに手応えを感じる。
ー睡蓮ー
凜とした声と共に下から水の流れが菫の剣を押し流す。距離を詰めなければと思う菫の足下をがく片のような薄い土の構造物が一瞬動きを邪魔する。女剣士はまた霧に消えた。また同じようにと考えたが次々とミーバ達が狩られ始める。狩られる順を追いかけ剣士に追いすがろうにも剣士は巧みに接敵を避け、ミーバ兵を斬って回る。大半のミーバが切り倒され残り四体を残すのみとなった。追加で呼び出してもよいがまた追いかけっこになるのはよろしくない。鈴の言うとおり倒すにしても生き残るにしても確実性がなければ撤退すべきだと菫の中では決めていた。あとは逃がしてくれるかである。全軍には撤退指示をだしておき鈴もそのまま連れ戻すように指示をする。鈴の不安定さは危険だが主人はそれを知って使っている。そう信じて戻させる。残った一体の魔術師に障壁を周囲に作らせ、干渉したら方向を指示するように指令をだす。待つこと数十秒。障壁の干渉を知りそこに斬りかかるが誰もおらず、そこには水たまりがあるだけだった。菫はその場をすぐさま離れたが女剣士の狙いはあくまでミーバだった。ミーバの悲しい悲鳴を聞きながら一瞬躊躇するも主人の感知出来る方向を頼りに撤退すべき方向に走る。剣士も全力で駆けてきている音がするも菫のほうがわずかに速くその距離が縮まることは無かった。迫り来る霧は消え風景が蘇る。この日第二軍は大きく戦線を戻し支配権を失った。損害自体はミーバ兵が百体程度と少なかったが英雄相手では菫でも相手が出来ないと証明され厄介な問題だけが残った。
その後鶸の指示でタウントラ前に砦を建築する方向で進め残軍の資源を使用し砦(大)を建築。敵軍の侵攻に備える。南の第三軍はそのまま予定を消化し、中央第一軍は一工程戻すことになる。僕が一旦リブリオスに戻り、菫の話を聞くことになったからだ。
「濃霧の魔法か・・・そんな便利な魔法だったかね。」
「濃霧だけならそんな阻害効果はありませんわ。恐らく魔法的な感覚も含めて見られないようにするために用意したのでしょうよ。」
僕らは少々リストとして魔法を知るが、通常構築式を覚えて行使するのが普通である。そして構築式さえ理解出来るなら自由に魔法を作ることも出来る。この世界の魔法はそうやって発展しているのだ。僕らもそれの乗って構築式を知ればそれと同じ魔法を行使できる。
「最も見えないというだけなら桔梗が広範囲を吹き飛ばせばそれまでだと思いますけど・・・その程度の対策でなんとかなるなら英雄ではありませんわよね。」
鶸がため息をついてだらける。
「あとは鈴の急変も気になります。」
菫がぼそっと呟くように発言する。
「懸念事項ではあったけど、確かに悪さをしているように感じるね。ただ、たぶん鈴自体は悪くない。それと知って対処する必要はあると思う。」
僕はそう見解を伝える。
「貴方は何か心当たりがあるんですの?」
鶸が怪しむように聞いてくるがむしろ鶸が心当たりがないのが気になる。
「そりゃ、上の神様が何かしてるに決まってるだろう。」
僕は当然であるかのように答える。
「それは無理な話ですわ。盤面は必要以上の干渉は全会一致が原則ですし、不正するにも監視があるはずですわ。」
なんか妙に具体的な話が出てきて僕は戸惑う。選定者が疑問に思ったときに答えるルーチンになっているのだろうか。不幸が連続で起こりすぎたら神様に邪魔されてるんじゃないかとかってね。
「監視がどうであれあの神様がどうにかしてるのは確定だと思うけどね。ただ仮にも競争なんだから邪魔してくるってのはちょっとなぁ。」
「まだ楽しみたい。数年で終わるのはもったいない。というのはそういうことかもしれませんね。」
「えー、僕が速く進めすぎってこと?勘弁してほしいなあ。」
神様の娯楽で邪魔をされるのも困ったものである。邪魔するなら排除・・・といっても届く場所じゃないしな。
「ぼちぼち調整するしかないか。でも当面の戦争もどうにかしないとね。」
戦闘状況を確認して相手がどんなことをしているか考えている内に扉が開いてグラハムが入ってくる。
「遊一郎君速すぎるよ。こっちの予定が全然追いつかないじゃないか。」
「そりゃグラハム氏の都合で動いてないですからね。」
グラハムは勢いよく乗り込んできたものの僕の返答でがっくり方を落とす。
「攻略都市の調略はぼちぼち進めてるけど・・・北の敗戦が痛いね。表ではハイハイ従って裏切るときは一瞬って感じになりそうだ。」
「そりゃ悪うございました。」
僕も英雄がどんなものかと思っていたが前の雷光の騎士よりずっと癖が強い。種が分からないと勝てないかもしれない。お互い渋い顔をしながら今後をどうするか検討する。最終的にはどう進めるにしろ英雄アリア嬢を倒さなければ勝利はない。
「しょうがない。相手の兵力は大体しれたし、一旦全軍をリブリオス周辺まで戻そう。」
「はぁ?ここまで侵攻しておいてかい?」
僕がそう言って立ち上がるとグラハムがストップをかける。
「正直個々の能力差が圧倒的だし、直属兵も同等かそれ以下という見込みしかない。突出させた第三軍と王都軍がぶつかったら一旦手元まで戻してしてもさほど問題はないかな。籠城するなら都市に五百くらいのこしてもいいけど。指揮する人がいないし市民も協力的かはちょっとね。再侵攻は一瞬だよ。」
僕のプランにグラハムが唸る。
「それよりも僕ら総出で英雄をなんとかしないと。早めに手を打たないと無駄な被害もでるし、相手の勢いも止められない。」
「かといって菫と同じレベルの貴方が行ったところで解決するとは限らないあげくにリスクのほうが高いですわ。」
鶸が断固として反対する。
「それでもどうにかしないと。この戦いどころか盤面すら勝ち上がれないよ。」
「まだ・・時間はありますわ・・・」
僕は諭すように言うが鶸はそれでも難色を示す。そしてグラハムを見捨てて逃げれば時間も作れると言う。
「さすがにそこまではね。桔梗がいれば出来ることにも幅が広がる。また前みたいに全員で解決しよう。」
「貴方の命は本当に安いですわね・・・わーかりましたわ。まずは国軍を一度足止めしないといけないですわね。桔梗にはさっとやってもらいましょう。」
鶸が諦めて考えを翻し、進むべき方向を作り始める。
「今後の防衛もあるのでお手柔らかに・・・」
グラハムの声が寂しく響いた。
二日後、第三軍四千五百と国軍六千がぶつかり合った。国王率いる親征とあって指揮も高い。だが第一突撃は銃撃に阻まれ、迂回戦闘もサレンに読まれ効果を発揮する間もなく各個撃破。国軍が策を考えている内に正面軍に巨岩を五発落とし撤退に追い込んだ。撤退先にサレンが親書を送りそれを確認した国王は一旦王都に撤収を指示。程なくして第三軍も大きく後退を始めた。第三軍の被害はミーバ兵十七。国軍の被害は重軽傷者一千四百名死者二百九十名となった。第三軍は撤退したものの兵力の差は明らかであった。
視点がうろうろしてしまって読みづらいかもしれません。一次侵攻終了です。
サ「あの奇っ怪な生き物がどうしておぬし等のようになるんじゃ。」
桔「強化体になるときは自由に姿を変えられるようですが主人の姿に合わせるのが通例ですので。」
サ「そういうどうしてじゃなくてどうやってじゃよ。」
桔「さなぎが蝶になるみたいなものなのでは?私もシステムに関してはちょっと分かりません。」
サ「人型なのに壁を歩くわ、物は食べんし、寝もしない。」
桔「ミーバですしね。」
サ「納得いかーん。」
撤退時能力値
紺野遊一郎 グループなし 戦術師Ⅴ
STR:567 VIT:515 DEX:547
INT:602 WIZ:615 MND:642 LUK:11
MV:10 ACT:1.4|1 Load:1699 SPR:1162
HP:1180 MP:1317 ATK:891+97|856/1105 MATK:1319+346 DEF:262+126 MDEF:276+114
スキル:木造建築、貴石研磨、装飾品作成、皮革加工、魔獣皮革加工、髭加工
騎乗Ⅴ、強行Ⅴ、隠密Ⅲ
魔法陣作成、魔導変換、魔法物質化、魔石加工、魔石付与、魔力付与
剣Ⅱ 弓Ⅱ、軽盾Ⅳ、銃Ⅵ、体術Ⅴ、貫通撃Ⅱ、貫通射撃Ⅴ
攻勢魔術Ⅴ、守勢魔術Ⅵ、強化術Ⅵ、回復術Ⅴ
条件発動Ⅴ、並列発動Ⅲ、詠唱短縮Ⅵ、消費軽減Ⅴ、貫通術Ⅴ
(剣Ⅳ、軽盾Ⅴ、守勢魔術Ⅴ、強化術Ⅵ、回復術Ⅳ)
装備:冷石剣、冷魔式狙撃銃、冷式ショットガンS、龍眼魔法増幅腕防具、龍布防具、重龍鱗鎧、真銀円盾
特典アビリティ:本
菫 護衛 急襲斥候兵Ⅴ
STR:524 VIT:468 DEX:664
INT:490 WIZ:506 MND:462 LUK:18
MV:25 ACT:1.7|3 Load:1566 SPR:1220
HP:1148 MP:996
ATK:931+488|976 MATK:952+226 DEF:226+126 MDEF:192+114
スキル:機先、精査、希薄
短剣Ⅶ、体術Ⅵ、隠密Ⅶ、捜索Ⅵ、必殺Ⅶ
貫通撃Ⅵ、貫通射撃Ⅵ、障破撃Ⅵ、障破射撃Ⅵ
料理Ⅱ 軍指揮Ⅱ
装備:神涙滴の小剣改、冷石短剣、龍布防具、重龍鱗鎧
萌黄 護衛 銃兵Ⅴ
STR:465 VIT:468 DEX:564
INT:457 WIZ:464 MND:472 LUK:44
MV:20 ACT:1.5|3 Load:1448 SPR:1028
HP:1016 MP:921
ATK:747|797 MATK:929 DEF:206+126 MDEF:187+114
スキル:先制、索敵、危機感知、活殺
銃Ⅶ、体術Ⅵ、隠密Ⅵ、捜索Ⅵ、速射Ⅶ、狙撃Ⅶ
貫通射撃Ⅶ、障破射撃Ⅶ
装備:冷魔式スナイパーライフル、龍布防具、重龍鱗鎧
桔梗 護衛 魔術師Ⅴ
STR:406 VIT:375 DEX:674
INT:673 WIZ:655 MND:638 LUK:5
MV:18 ACT:1.6|3 Load:1237 SPR:1329
HP:800 MP:1508
ATK:743|877 MATK:1411+346 DEF:210+88 MDEF:309+96
スキル:先制、索敵、血操魔
攻勢魔術Ⅶ、守勢魔術Ⅴ、強化術Ⅴ、治療術Ⅴ、瞑想Ⅶ
条件発動Ⅴ、詠唱短縮Ⅴ、消費軽減Ⅴ、貫通術Ⅶ、障破術Ⅶ
料理Ⅲ 軍指揮Ⅰ
装備:龍眼魔法増幅腕防具、龍布防具
鶸 グループなし 医療術士Ⅴ
STR:342 VIT:324 DEX:654
INT:745 WIZ:725 MND:744 LUK:34
MV:12 ACT:1.0|4 Load:1008 SPR:1379
HP:748 MP:1620 ATK:669|825 MATK:1565+346 DEF:246+126 MDEF:369+114
スキル:並列作業、集中、緊急治療、精密演算
統合生産Ⅶ、体術Ⅴ
守勢魔術Ⅶ、強化術Ⅴ、治療術Ⅶ、瞑想Ⅶ
条件発動Ⅴ、詠唱短縮Ⅶ、消費軽減Ⅶ
戦略Ⅲ 軍指揮Ⅱ
装備:龍眼魔法増幅腕防具、龍布防具、重龍鱗鎧
鈴 グループなし 職なし
STR:13 VIT:1842 DEX:18
INT:12 WIZ:1856 MND:11 LUK:1987
MV:38 ACT:0.3|15 Load:1704 SPR:1688
HP:3684 MP:1868 ATK:22|24 MATK:23 DEF:372 MDEF:373
スキル:迎合、神託、踏破、神速
回避術Ⅶ、魔力受けⅦ
装備:なし




