僕、再開する
※今後の調整のためステータス由来の防御力を下方修正。1/2 → 1/5
僕は始めにつれてこられたような白い空間にいる。周りを見回すと豪華なソファーが置いてあるので体を勢いよく預ける。
(く、人を駄目にするたぐいのソファーかっ。)
座り心地に二度と立ち上がれないような気持ちにさせられつつ今回の反省を考える。
(ゲームだと野生動物に殺されるなんてそうそうなかったから油断してたなー。そもそもキングが現場にいたままってのを失念してたね。キングよっわw)
キングが自分なので自虐でしかないのだが、そう何度も死ぬわけにはいかないので真面目に自分の安全と強化を考えなければいけない。今まで建てられる施設を鑑みてどうすればいいか考え、本で生産可能だった装備を見ては自分の筋力の低さを嘆く。
(鉄装備重っ。僕筋力なさすぎw)
装備にはいくつか推奨筋力が記載されている。強そうなものはどれもこれも筋力が足りない。自分を鍛えないと本当に引きこもるしか無い。拠点の見える範囲から開拓なんてたかが知れているのでそれは避けたい。
(そういえばHPが減るかと思ってたけど異常状態が増えただけだったな。)
異常状態を思い出し本で確認する。
裂傷:体の表面から損傷している状態。主に出血を伴う。
出血:持続的に裂傷を増加させる状態。
欠損即死:生命機関を維持できなくなりHPに関わらず死亡する。
おー、怖。続けて死亡条件を調べると、
『打撲、裂傷、刺傷の累計がHPを超えた場合意識を失い[-HP]分後に死亡する。HPがマイナス分超過した場合死亡する。』
やだー、最初の噛みつきで2回は死んでるじゃないですかー。あまりの酷さに逆に笑えてくる。
打撲:体の内側を損傷した状態。腫脹、骨折を伴い行動を阻害する。
腫脹:持続的な痛みを与え行動、意志を低下させる。
骨折:特定部位の行動を著しく制限し、意志を大きく低下させる。
刺傷:体の表面から内部へ深く損傷した状態。主に出血、時には欠損即死を伴う。
(これ、装備でどうにかなるものなのかね。VITまんせー、みたいな?)
そう悩んでいるうちにチェイス様が目の前からにじみ出てくる。
「どうだい?初日に随分凄惨な死に方をしたようだけど立ち上がれそうかい?」
チェイス様は少しだけ心配そうに声をかけてくる。
「今はソファーが気持ちよくて立ち上がれそうにないです。」
僕はソファーでごろごろしながらだるそうに答える。チェイス様はそれを見て少し吹き出した後、自分用のソファーを呼び出して座る。いつの間にか僕との間に出てきたテーブルにはお菓子とカフェオレが置いてある。
「心が折れて無いようで何よりかな。人によっては数日休むかリタイヤしてしまうのでね。」
チェイス様はテーブルのクッキーをつまみながらにこやかに話しかけてくる。
「正直あまり期待していなかったのだけど、今現在では君がMVPだよ。目をつけられた最有力候補でもある。ゲームとは恐ろしいものだね。初日からこうも開発を始められるとは思わなかったよ。」
チェイス様の言にうへっと舌をだし、棒状プレッツエルをぽりぽりつまむ。
「だからといってすぐに目の敵になることはないよ。こちらから選定者にアドバイスできる機会は限られるからね。」
僕はほっとしてカフェオレを一口飲む。心が落ち着く暖かさに思考を放棄してくつろぐ。
「さて、こう眺めていても君が不正要素のある存在とは見えなかったので次の話に移ろう。死亡時の際、戻る戻らないの選択とあとは少しのアドバイスを与えることが出来る。聞きたいことがあったら確認したまえ。」
チェイス様、今しれっと僕が不法なものだと疑ってたような物言いをしましたね?
「私は選定原理に自信を持っているけど当事者が関わっていると不正を疑われるものだよ。不正していないと証明するのも仕事みたいなものだ。さ、聞きたいことを考えなさい。」
僕に促して素材に関することを聞こうとすると。
「世界の知識に類することは本を確認したまえ。こちらから言うこともできるが少しということからアドバイス出来る量と質は有限なんだ。むしろシステム的な調べられないことを確認すべきだ。」
チェイス様は発言しようとしたことを遮るように忠告してくる。僕はそう言われて少し考える。心読んでくれるなら発言しなくても良くない?
「先程の私の言葉もアドバイス点を少なからず消費しているから重々考えることだ。」
チェイス様はニヤリと笑ってゴブレットの何かを飲む。
「死んだときの建物とミーバ達は。」
僕は残してきたモノの心配をする。チェイス様はふむと首をかしげてから答える。
「建物に関しては中立化して次に支配下に置いた者の所有物になる。選定者なら機能は変わらないが、現地生命体ならそれらが使うような機能になる。『逆』もまた然りだ。ミーバ達に関しては所有者は変わらない。ただ指示がなければ彼らは何もしないことは変わらない。そのうち現地生命体に駆除されるだろう。」
「そうですか。」
僕はつぶやいて残してきたもの達に詫びる。次はきっと守ってやろうと。
「次の移動先と資源は?」
「最初と同じランダムな位置から選択になる。ただし元拠点から一定範囲の地域は除外される。資源類に関しては時間経過で変化するが、まあ今回は歴代三指にはいる速さだからね。最初と同じだよ。」
なんか不名誉な称号をもらった気がする。
「選出地域の難易度は?」
「んー難しいのが来たね。さてはて。」
チェイス様は少し悩んでいるようだ。
「平原、川、街道沿い、丘陵、湿地帯、森、山岳。の順が基本かな?その人の性向にもよるけど。これに加えて資源と危険地形の有無よって上下する。重い質問が来ちゃったからこんなもんかな。」
ん?大した話じゃないと思ったけど世界情報は情報料が高いのか。
「そんなとこだね。さて次の場所を選んでもらおうかな。初期支援としてミーバ三体と資源が与えられる。」
見える景色は街道、川、森。じゃ、街道で。
「川を選ばない辺りが君らしいね。復帰ペナルティがあるので死んだタイミングの42時間後から開始だよ。では健闘を祈る。」
聞いてない。けど真夜中スタートよりはいいか。正直さっきの経験があるから森でもよかったんだけど、この世界自体の情報も自分で集めたかったんだ。なにせ『本』だけだと時間がかかりすぎる。と考えていると白い世界は暗転し視界が開けた時にはそこは戻ってきた世界。
「よし、がんばっぞー。」
気合を入れるために叫び、それに続くようにミーバ達が『ふぁいとっ』『がんばっ』などと看板を掲げている。君らもがんばるんだよ、とY型を軽く小突いて街道を見に行く。C型とM型に街道の反対側の10分ほど地形調査に向かわせる。街道は石で舗装された道路だ。結構平らにみえるけど車輪で走るとどのくらいがたがたするものなのかね。道路を横切りつつどんなものか調べる。4mぐらいの幅で足から帰ってくる感触は硬い。歩くなら地面のほうがいい気がするけどよくわからんね。Y型と一緒に街道沿いに歩いても本当に街道しかない。草、道、たまに木。川より難易度が高い理由はなんだろうと考えつつ来た道を戻ってM型C型と合流する。
(おー、頭の中に地図が入ってくる。)
俯瞰視点で周辺地形を眺めつつ小規模な林と岩場の近くに拠点を建てることにする。全員に指示して自分と全員で拠点を建築。拠点にミーバ1の作成を指示して三体にむかって伐採を指示する。2回ほどC型Y型が往復してきた所で林の側に倉庫の建築を指示自分も加わって作業する。拠点から出てきたY型に追加で伐採に加わるように指示する。倉庫が作り終わる頃STRとVITが1増える。少しでも早く建築できればと思って手伝っていたがステータスが上がるのは嬉しい誤算だ。一本目の木が切り倒され資源が回収されたらY型M型、Y型C型に畑の作成を指示する。畑は拠点から2面分離して4枚一セットで3セットを拠点後方に作る予定でいる。更に奥側に食料倉庫の建築を一人で始める。できればめっけもんくらいだ。地球で一人でやるのとはわけが違う作り方だし。時間はかかるがさほど問題ない。前回畑を踏んで荒らしてしまったことを反省して1セット単位の畑の間を少し開けておいたのだがミーバは畑を荒らさずに歩けることを知って少しショックを受ける。畑から食料が回収されると例によって全力でミーバ作成に回す。新しく来たミーバ3体に対して岩場の採掘を指示。畑を優先して余り始めたら岩場の近くに倉庫をつくる。さらに細工所から順番に加工施設の建築を計画。
4時間後
木11000布5000石14250金属3000魔石0燃料5000食料390財貨0
最下級拠点1 畑12 麻畑1
木材倉庫2 石材倉庫2 食料倉庫1
細工所1 木工所1 石材所1 金属加工所1
M型24 C型22 Y型23
「復旧したどー!」
前回で大体手順が分かっていたとはいえ、概ね同じ状態に戻せたことに僕は喜びのあまり両手を上げて叫ぶ。近くにいた手の空いたミーバ達もノリに合わせて触手を掲げている。ういやつういやつと足元にいたM型の頭を何気なくわしゃわしゃする。なんか嬉しいのか結構な勢いでぐるぐる回りだしたが三半規管とかだいじょうぶか?あるかも知らんけど。深呼吸をし少しテンションをクールダウンさせてY型二匹に拠点周囲2マスあけた外周に高さ3mの石壁の建築を指示する。残りの4匹の混合チームに魔導構成所の建築を指示する。僕も訓練がてらに付き合う。偵察にいかせたC型4体が戻ってきたので周辺マップを更新。二匹には街道にそって探索を1時間指示。残りの二匹は反対側の平原の索敵を続けさせる。振り返ると壁ができているが拠点に入れないことに気がつく。
「あ、扉ないわ。」
思わず呟くと近くのY型が『指示場所に作れる』と看板を掲げてから建築作業に戻る。格好良く正面にともおもったけど日和って角の方の壁を指示すると壁建築班がやったのか木枠の扉ができる。作り変えたっていうか変形したみたいなでき方だったな。とりあえず安心してあとで裏口も作っておこうと思いながら自分も建築に戻る。増えたミーバに木材倉庫1、石材倉庫2の建築を指示してM型に採石を指示する。魔導構成所が完成し中身を確認する。床下には謎の魔法陣が描かれ外周の所々に緑色の液体がはいった瓶が6つ置かれている。よし、見なかったことにしよう。僕は扉を閉めて魔導構成所のシステムを確認する。今できることは指定したミーバを食料500で創造できるだけのようだ。創造速度は拠点より1割ほど早い。地味だが悪くない。ここでY型を中心に増やしつつ拠点でも増やす。上限がなければ限界まで増やすだけだ。その前に食料を2000下回らないようにミーバ創造を少しだけ絞って待望の戦士訓練所の建築を開始する。畑や伐採作業をしているM型C型を新しくできたY型に置き換える。C型は周辺索敵に出しマップの開放と資源探しに勤しませる。M型は建築をメインにするが戦士を付与して常備兵にしたいところだ。
2時間後
木10000布5000石20250金属2000魔石0燃料5000食料2290財貨0
最下級拠点1 畑16 麻畑1
木材倉庫3 石材倉庫4 食料倉庫1 金属倉庫1
細工所1 木工所1 石材所1 金属加工所1 魔導構成所1
戦士訓練所1
M型36 C型34 Y型46
日も落ちてきた所で戦士訓練所が完成する。
戦士訓練所
急襲斥候兵 布40 金属20 食料20
【短剣、革鎧、探索ツール】【短剣Ⅱ体術Ⅱ隠密Ⅱ捜索Ⅱ必殺Ⅰ】
HP+20 ATK+10|15 SPR+10 MV+2
軽装兵 金属60 食料20
【長剣 スケイル 円盾】【剣Ⅱ軽盾Ⅱ軽弓Ⅱ重撃Ⅰ】
HP+40 ATK+20|+10 DEF+5
重装兵 金属100 食料20
【長槍 プレート 大盾】【剣Ⅱ槍Ⅱ重盾Ⅱ防護Ⅰ】
HP+100 ATK+10 DEF+10 MDEF+5
指定した同意者に任意の職を付与する。
(意外と安いな。)
そう思いながらM型の数を確認する。一匹一匹に適用するってことは。
(深刻な金属不足!)
金属の収集が課題だなと思いつつ最低限の警備兵としてM型10匹を軽装兵にする。
M型 グループなし 軽装兵
STR:13 VIT:10 DEX:12 INT:8 WIZ:9 MND:6 LUK:10
MV:10 ACT:1|2 Load:136
HP:60 MP:17 ATK:44+8|33 MATK:14 DEF:9+8+3 MDEF:2 SPR:21
スキル:玉砕、剛力、剣Ⅱ、軽盾Ⅱ、軽弓Ⅱ、重撃Ⅰ
装備:鉄剣、スケイル、円盾
五匹ずつグループ分けして警備A、警備Bと割り振る。職を割り振って建築作業能力がなくなるわけではないけど装備を持っている分確実にLoadの余裕が減るのは理解できる。装備を外しても数値的に弱くはないがスキルの補正がさらに入るので装備するにこしたことはない。暗くなると自分は外作業ができないし、そもそもだいぶ眠い。警備AとBに夜中の周辺警備と拠点のまわりに20×20で石壁の作成を指示する。寝ている間に何もかも溢れそうだけど畑チームの二つに食料倉庫4つを追加建築して終わったら畑に戻る指示をする。余った建築組は木材倉庫4、石材倉庫6、布倉庫1の建築を指示してその後は採石を指示する。もう溢れるのはしょうがないや。M型を一匹つれて食事をお願いする。その間に体を洗ってさっぱりする。が着替えが無いことに気がつく。なんか汗臭い服を着るのも抵抗感があるが無いのもはしょうがなく。食事を食べている間にM型に細工所で下着と服の作成を指示する。凝ったデザインも出来るようだがそもそもわからないので平民服とか適当に選んで指示しておいた。食事を終えて金属採掘について本を確認しているところで下着と服を持ってM型が帰ってくる。もう一度軽く体を洗って着替える。
(おー、悪くない。思ったより着心地もいいな。)
中世ファンタジーにありそうな『いかにも』街人の服ののような服をいろいろな角度から眺める。布の消費は300くらいか。M型に同じものをもう3セット作ってもらう。気分の悪さが無くなったこともあり急激な眠気に襲われてふらふらとベッドに移動し、寝た。
ミーバを使って開発、ミーバを強化して更に活動範囲を広げる。そんなシステムです。基本ノーヒントで投げ込まれるので最初からよくわからない生物に頼るより自力でなんとかしようと思ってしまうのが強者の思考で、どうにも出来ないので引きこもるのが弱者の思考。強者は淡々と生き延びてしまい発達が遅れ、弱者は10日たたず餓死するのが盤面の最序盤です。早々に死んだものにはアドバイスを与え発展を促し、強者との差を埋めてからが序盤の本番・・・になるはずなんですが。