第二回神々の円卓
2/6投稿分後編。
チェイスは彼を見送ってその様子をしばらく眺める。二度も死ぬと先行きの不安から行動が控えめになって萎縮するものだが彼にはその心配はなさそうだ。あまりにも変わらず活動するのでこのまま初日のように死んでしまうのではないかと不安になるが、真面目にやると言っていた以上おそらくそれはないだろう。チェイスはもうすでに始まっている円卓へと移動する。
「またせたね。問題児を見送っていたものでね。」
「またあいつ死んでんのか。」
チェイスが詫びを入れながら登場し、ラゴウが下品な笑い声で迎える。フレーレは不快そうにそれを眺め、ヴィルドはそれを気にかける余裕がないほど焦燥している。
「で、最下位が司会進行だったな。・・・ヴィルドかよ。」
ラゴウが全員が揃った後進行役を示す矢がヴィルドに刺さったのを見て少しだけ意外そうに眺める。ヴィルドは大きくため息をついて顔を上げる。
「そうですよ。現在の順位はそちらに示すとおりです。」
ラゴウ 377000
フレーレ 64000
チェイス 45000
ヴィルド 39000
ラゴウは偉そうにふんぞり返っている。フレーレはその数値が意外なようでチェイスを見るがチェイスは分かっていながらも首を振る。ヴィルドはだるそうにため息をついて話を続ける。
「現状世界への影響力は五%未満ではありますが当初の予定より大きな影響力が見受けられます。まあ頑張ってる人がいるんでしょうね。現在の簡易検査では不正な介入、動作は見つかっていません。」
ヴィルドはそう宣言する。
「チェイスが事後承諾で知識干渉した件はどうなんだよ。」
ラゴウがつけられそうなものにケチだけつけるように言う。
「そちらに関しては盤面の勝利条件には遠く、選定者をスムーズに復帰させる処置としては最良ではないが悪くはないと判断されました。」
ヴィルドがその異議を却下する。ラゴウもあわよくばみたいなノリで発言しただけなのでどうでもよさそうに引き下がった。そもそもこの場にいる誰もがチェイスがそんなどうでもいいところで尻尾を出すとは思っていない。ただの牽制にすぎないのだ。
「私としてはつい先程通達禁止事項に抵触したほうが気になりますが。」
フレーレが異議を出す。チェイスはあれは君かとしかめっ面を向ける。ラゴウは楽しそうに見ている。ヴィルドはチェイスを見る。
「時期尚早すぎるとは思っていたけど、彼が意識的に確認してきたことと、二度目の死亡で彼としては半分を迎えていたことを考慮して情報を渡した。ペナルティとして情報価値以上の対価は支払われている。」
チェイスはどうでも良さそうに答え周りを見る。
「少し軽率にも見えますが・・・いかがかな?」
ヴィルドは棒を取り出し指先でバランスをとり天秤の用に両端に皿を造る。ゆらゆらした天秤は即座に片側に傾いて止まる。
「大多数の神々は問題ないと判断しました。よってこれ以上の罰は無しということで。」
ラゴウは残念そうだが、当のフレーレはどうでもよさそうだ。
「以後点数指標については解禁で詳細については伏せたままでよろしいですね。」
ヴィルドは確認をとり全員がうなずく。
「他に異議がなければここまでで。」
ヴィルドはだるそうに言って終了宣言を出す。チェイスはフレーレに目線を飛ばし、フレーレは無視するように移動する。チェイスはそれを追いかける。
「そう無視するなよ。」
チェイスは煽るような猫なで声でフレーレを止める。
「気持ち悪いから止めてもらえる?」
フレーレは尻尾で床を叩きながら振り返る。
「で、なんの暗躍なの?あの順位をみておかしいと思わないの?」
フレーレは睨みながらチェイスに尋ねる。
「おっとあそこまでは私の意図は何も絡んでないんだ。私だって問い詰めたくらいだし。仕掛けるのはこれからだよ。」
チェイスは両手を上げて軽口で答える。フレーレは怪訝そうにチェイスを見る。
「例の子が物分りがよくてね。場合によっては君をトップに押し上げられるくらいは出来るんだよ。少なくとも今の順位はそれが出来る証左だよ。」
チェイスは悪戯を仕掛けるように説明する。フレーレは更に眉をひそめるように見る。
「わざわざそんな事をしてどうなるのよ。」
フレーレは怪しい勧誘をどうするか考えているようだ。
「知っての通り私は今回の権利については君ほど執着はしてないんだ。ただラゴウには渡したくないね。これまでの苦労が水の泡になりそうだし。」
チェイスが意味もなくこそこそ話し始める。フレーレはそう言われて考える。チェイスは他の者を嵌めるがわざと必要なことを言わないだけで意味が逆になるような嘘はつかない。今回もその類であることはフレーレも理解はしている。
「対価はなんだ。」
フレーレはそれらを飲み込んだ上で言う。
「別件の例の資源をもうちょこっとだけ回してほしいなぁ。」
チェイスはそういう。フレーレは少し悩む。対価が思ったより軽かったからだ。
「まだ成功するわけじゃないからね。そういう風に指示するだけだよ。私の苦労は少ないから今は激安なんだ。」
チェイスはおどけてそういう。それならばとフレーレは了承する。
「ではそういうことでよろしく。」
チェイスはそう言い残してその場からフェードアウトする。フレーレは言うだけ言って去っていく道化者にイライラして尻尾をばたつかせる。ただ交渉事が成功するかどうかはおいておいてもラゴウをトップにしたくないという意図だけは同じなのだと確認できただけでもよしとすることにした。フレーレも手札の内一つはまともに機能していない為このままでは随分苦しいのだ。一つのカードがハマればどうにでもなりそうなのだが。もしそれで彼のカードを打ち砕いてもそれはそれで問題ないとする。なにせ今回失うものはそれほど多くないのだから。短くなりそうな同盟関係を感じながらフレーレもその場から姿を消した。
次回はそれぞれの半年へと続きます。




