僕、期待する。
今回短めでちょっと半端です。私事ながら大雪に見舞われ雪かきに時間を取られすぎたので申し訳ないところ。
「で、そう言われた手前頼みづらいことでもあるんだが。ゴブリン長老会の連中が幻光草と夢幻茸を探してるんだが心当たりが無いかね。なんか伝統の儀式に必要だとかで。今期は森が荒れてるせいか見つからないんだと。」
ベゥガが切り出してくる。伝統面倒くさいな。
「僕もまだ見かけてはないかな。森を調査中だからそれっぽいものを持ってきてもらえるように手配しておくよ。報酬は・・・倉庫に入れてから考えるよ。どんな価値かもよくわからんしね。」
実際には見て分かるかも怪しいので本で構築をかけておく。二つとも十万近いカウンターがでる。思いの外希少な植物のようだ。村で適度に指導や時間つぶしをした後、一旦元の拠点に戻るので次に来るのはしばらく後だとベゥガに伝えて仮拠点に戻る。仮拠点のミーバ達に資源採集と倉庫拡張を指示しその日は寝る。
翌朝日が昇る前に起き出して萌黄と兵を連れて元拠点へ足早に戻る。特に隠れる必要もないので最短ルートを使う。途中森ゴブリンの姿を見かけるが村にいたものに比べると随分警戒感を持って見られる。あの村と集落で随分温度差があるように感じる。例の気配の元はこいつらなのだろうか。夕方前には本拠点にたどり着き桔梗に歓迎される。精一杯あやしてから仕事に戻させる。その後僕は軽く訓練して拠点に入る。
木423000布362000石541000金属376000魔石17454燃料300000食料557700財貨97200
中級拠点1 畑81 麻畑81
木材大型10 布大型8 石材大型14 金属大型10 食料大型12 燃料大型6 魔石大型2 財貨大型4
細工所1 木工所1 石材所1 金属加工所1 魔導構成所2
戦士訓練所1 弓兵訓練所1 騎馬訓練所1 魔術師養成所1
教会1 鍛錬所1 学問所1 溶鉱炉1
錬金術研究所1 軍事研究所1 魔法研究所1
M型722 C型1012 Y型1346 B型257
軽装兵M310 急襲斥候兵C400 重装兵Y400 長弓兵M50
軽装騎兵M312
魔術師C300 医療術師C111 B113 戦術師C200
銃兵B114
生産専業Y926 研究班B30
木21000布12000石11000金属400魔石5燃料0食料14500財貨1520
最下級拠点1 畑10 麻畑6
木材頑強2 布頑強2 石材頑強1 食料頑強2
M型15 C型14 Y型16 B型5
M型とY型から二割くらい銃騎兵に回すか。兵種強化もⅣがそろそろ終わりそうなところ。
「毎日300。1万に乗るのは二十日後か・・・」
一地方都市と戦うのですら三千超。周辺都市を含めれば六千とも一万にもなる。それに加えて強者がいれば人数差など物ともしない。
「やっぱり進化ミーバを増やすか・・・僕自身が強くなるかか・・・。」
今の所ミーバが強くなる速度が早すぎて一分野以外で追いつける気がしない。かといって身体系精神系両方上げておかないと危険極まりない。そもそも僕自体は強者相手に追いすがれるくらいは強くならないとこの先困るわけなのだが。先日のあの騎士にたどり着くまでどれだけかかるやら。現状の確認と将来の希望の見えないまま僕はふてくされて寝る。
翌朝、萌黄に周辺警備をまかせつつ拠点内の確認を行う。桔梗のご機嫌伺いもあるが、隣にいるだけでなんか浮足立ってそうなので大丈夫な気はする。我慢強い子だが我慢しすぎると爆発しそうな気がするので注意はしたい。昼に差し掛かる頃に菫が戻ってくる。僕の顔を見てダッシュで駆け寄ってくる。
「おかえり。調査はどうだった?」
僕は受け止めて二周りほど勢いのまま振り回してから下ろす。
「周辺に二つ森ゴブリン集落があります。二十人規模ですので特に問題にする必要はないかと。あとは獣の集団がいくつか。」
旗を建てるにはそのゴブリンを避けるかどうにかするかか。ベゥガのように抱え込んでもいいけど世話する気にもなれないしな。
「一応恭順するか使者を立てるか。逆らわないなら干渉しないし抵抗するなら殲滅で。萌黄に任せよう。」
おそらくシステム的に傘下に収めておけば旗は建てられるはず。その確認も含めてそうしておく。最も従う気があればだが。昼過ぎて戻ってきた萌黄に説明をして菫に大体の位置を説明させる。萌黄は楽しそうに森へ駆けていった。武具を検討してもいいが今は集中的に訓練をする。
-知識『幻光草』の構築が完了しました。-
忘れた頃に思い出させるように知識構築が終わる。何気ない告知に訓練の手が止まる。
「どうかしましたか?」
相手をしていた菫が手を止めて歩いてくる。
「いや、ベゥガに頼まれた物の知識構築が終わってね。」
そう言って知識項目を眺める。
幻光草:高い岩山に生息する。光を吸収し暗がりでは光を放つ。幻覚作用有り。白色と黒色で作用が違う。
岩山?僕は周囲を見回した後脳内マップを確認する。周辺のすべてが確認出来ているわけではないが直線距離で二日の範囲には山もなく肥沃な大地で岩場らしいところもない。少し気になるな。
「面白い植物ですね。宗教関連ではよく使われそうなものですね。」
「そうか。そんなもんかね。」
菫はあまり気にしていない。この世界では普通のことなのだろうか。現代人的には幻覚作用というのは少し抵抗感がある。もう一つの結果も似たようなことになりそうだが。あまり気にしても仕方が無さそうなので訓練に戻る。
翌日朝頃には夢幻茸の構築も完了する。
夢幻茸:暗い洞窟に生息する。強い光や刺激を受けると胞子をばらまく。胞子には酩酊、昏睡作用があり倒れた生物を苗床にする。
思いの外怖いきのこだった。渡すのも一苦労なのだが困ったものだな。密閉した箱を準備してその箱の中にきのこを取り出す。こういうことが出来る選定者のシステムは非常に便利だ。小さめの箱に木くずと共に五個を詰める。財貨四十二か。思ったより高い。幻光草は取り出すと黒い花だ。一本財貨一二。伝統ってよくわからんけど市井価格的にはかなり高い部類ではある。近場に生息していなさそうなのに伝統的に使っているのが気になる。外から購入するにもこの周辺のゴブリンが用意できそうな価格でもない。きのこと花を収納にしまって少し考える。
「菫。最初に見つけた森ゴブリンの集落の様子を見てきてくれるか?」
菫は少し首を傾げたが、元気よく返事をして走っていった。入れ替わるようにして萌黄が戻ってくる。
「ご主人さま終わったよー。」
萌黄が僕にダイブしてくるのを受け止めて頭を撫でておく。
「で結果は?」
落ち着いた萌黄に尋ねる。できればまず報告してほしいところではあるが。
「両方とも恭順してきたよ。」
おや予想外。
「逆らおうとするるから従うまで偉い人ふっとばしてきた。」
おぅ暴力的だった。まあ恭順してくれるならいいけど。ちょっと可愛そうになったのであとで食糧支援でもしてやるか。重装兵のY型二体にに建築資材と食料を持たせて萌黄と一緒に移動する。脳内マップを参照しながら領旗塔を建てる。範囲内に領域が重なっていれば領域が接続されていると判定される模様。ただ移動先まで資材を持っていくのが少し面倒だな。行った先で倉庫を三種建てるかY型を引き連れていくか悩ましいところ。森のほうに二本目の旗を建てて、萌黄を案内に森ゴブリンの集落まで近寄る。視界に収めて隠れてから萌黄とY型に食料を届けさせる。干渉しないと言っていたが食料の支援は喜ばれたようだ。もうひとつの集落にも同じように配って拠点に戻る。菫が戻ってきていてうろうろしていたがこちらをみつけて駆け寄ってくる。
「戻られましたか。例の集落ですが。ベゥガ拠点の者と待遇差が大きいので不満がでているようですね。ご主人様のテコ入れも一役買っているようですが。上層部らしいもの達はご主人様が人間なのが気に入らないようですが。」
種族に根付いた意識なのだろうか。人間ということで嫌われているならよほどでないと改善は難しい気がするが。直接関与するわけじゃなさそうだから当面は様子見かな。ただ伝統の儀式とやらは少し理由が違う気がする。一応ベゥガに素材を渡して様子をみるか。
翌日桔梗とY型を連れてベゥガの拠点へ行く。菫も萌黄も前に出てくるタイプなので引っ込みがちの桔梗をひっぱってきたのだが、一対一になると随分ベタ甘えである。やっぱり溜め込みそうで怖い。
「なんか先日見た時と比べて随分雰囲気が違うな。」
ベゥガにまでツッコまれる始末である。
「先日頼まれてた素材を見つけたので持ってきたんだが。」
僕はその場の流れをぶち切って切り出す。ベゥガも興味がありそうに前のめりになる。木箱をそっとテーブルに出し花を4本出す。
「報酬は財貨二百相当の何かでいい。ただこの辺で簡単に取れるものじゃない。彼らは何かの意図を持ってこれらを欲しがっている気配がある。」
ベゥガは財貨二百と聞いてピンと来ないようだ。そこそこの期間周辺で狩りをしているベゥガからすると二百は安くもないが出せない価値でもないと僕は考えている。そもそも物々交換をしている以上現地と交流があっても財貨をあまり使わないだろう。
「選定者にとって財貨って単位が小さく見えてよく分かりにくいと思うけど、財貨1で金貨1枚。そこそこの町で慎ましく生きていくなら10年以上の食費をまかなえるくらいと思ってくれればどのくらいかわかるかね。ベゥガくらい食べても七年はいけると思うよ。それが二百。」
僕はベゥガが一番わかりやすそうな食費で例える。実際には半額の市価ではあるけど売り方によってはそのくらいでも売れるものだろう。一般価値については倉庫に入れたらバレるものだけどそこまで剥離してないので問題ないと思う。ベゥガは少し唸っている。
「ベゥガがどのくらいあの森ゴブリンに肩入れしてるかはしらないけどぽんとくれてやるにはちょっと高いものだね。どうするかは任せるよ。あ、あと肝心なことだけど、そのきのこ衝撃とか光とかでひどい害をばらまくから密閉してあるんだけど渡すときは気をつけてね。」
ベゥガがちょっとびくっとした。
「何、胞子を吸い込むとそのまま寝込んできのこになるだけだよ。」
「十分おっかねぇよ。」
ベゥガはテーブルを叩こうとしてきのこの箱に気がついてやめた。実は僕もどの程度の衝撃で暴発するかは知らない。ベゥガは危険を感じて木箱と花を収納した。
「まあ今回は受け取らせてもらう。少し相談してから渡すよ。財貨二百だったな。」
ベゥガは立ち上がってしばらくして宝石や骨格、貨幣や古銭を持ってきて、僕はそれらを財貨二百として受け取った。軽く村の連中と交流をしてから仮拠点に移動する。
「あの者達などそのまま滅ぼしてしまえばよろしいのに。」
桔梗が道すがら物騒なことを言い始める。
「まあできなくもないけど・・・桔梗はどうしてそう思う。」
僕は負のオーラを放つ桔梗を見る。
「ご主人様があれをほど手を焼いておりますのに感謝が足りませんわ。その上ちょくちょく敵意まで向けてきて。非常にイライラします。」
最初からではあるが桔梗は彼らが一貫して気に入らないようだ。服従か死かみたいな極端な考えな気はする。
「ベゥガはだいぶ感謝してると思うけど。ゴブリンのほうは仕方がないだろう。本来この世界では顔を見れば殴り合う関係なんだろうし。」
桔梗はなにか食い下がろうとしたがそれ以上言うこともなく僕の腕に絡みついた。思うところがあるのだろうけど僕は取り敢えずはそのままにしておくことにした。仮拠点から脳内マップを参考にしながら旗を建てにいく。一つ二つと本拠点に近づくように建てる。
「あと二十本くらいか?意外と遠いな。」
面積的には広いと思ったが直線距離をつなごうとすると非常に手間がかかる。効果が強力なだけに本来の使い方では無いのかもしれない。今回は実験と思ってやっておこう。建ててれば倉庫みたいに進化版がでるかもしれないし。全部で四本建てて仮拠点で一泊する。
翌日本拠点に戻り状況を確認。Y型一五体と菫を伴って仮拠点とつなぐ作業に行く。その日丸々費やして仮拠点まで領旗塔をつなげる。システムで閲覧する限りは何も変わらないが仮拠点から保有量を超える資源を取り出せることは確認できた。菫とY型が拍手で称える。
「まあ便利は便利だな。思わず繋げたけど意味があるかというと無いな。」
繋げることが目的であって自己満足みたいなものなので仕方がない。仮拠点で一泊して翌日戻る。
三日後。結局傘下の森ゴブリンの生活支援や武器の支援を行ったり、例の森ゴブリンを監視しながら過ごす。
「例の集落に物資が運び込まれたようです。それはもう阿鼻叫喚の地獄絵図でした。」
悪い顔をして笑う菫が黒くて仕方がない。他の支援物資と共に手紙ときのこの箱を渡したようだが若いゴブリンは手紙を読むこと無くきのこの箱に手を出し箱を開けたとたん周囲に胞子をばらまいたそうだ。倒れるゴブリン、何事かと駆けつけるゴブリンも倒れ、箱の周りに一二体のゴブリンが積み上がったという。様子を聞いた族長が駆けつけ、何かしら指示をしなんとか箱を封印して事を収めたらしい。倒れたゴブリン達は集落のハズレにある小屋に連れて行かれたがどうなったかは確認していないらしい。あの集落あのまま全滅しないだろうな・・・
二日後。外回りをしていた萌黄が慌てて戻ってくる。萌黄にしては珍しいと思いながら迎える。
「ご主人様。草原の向こうで騎士が一人走ってた。」
まさかまだ探されているとは思わなかった。迎え撃つにも国を相手取れるほど兵も揃っていない。騎士を殺してもこっちが怪しいと言っているようなものだし、なんとかやり過ごしたいところではある。菫に手紙を持たせてベゥガに警告を回す。今のベゥガ達ではかなり無理な相手達だ。配下のゴブリン達の舵取りをお願いしたいところだ。最低でもミーバが見つかるのはまずい。そうやってばたばたしながら端に見え始めた脅威をどうするか考えるのだった。
森ゴブリンの企みとはっ




