僕、再建する。
三章のタイトルは「かたきをめざして」です。
拠点の敗北から六日目。資源に関してはよほど困らず初期に近くに木材があればよいという考えで防備を固めやすい森の入り口近くにある平らな地に狙いを定める。若干目立つものの小高い丘の上で森の端となる場所に目をつけて拠点建築にかかる。Y型が各種素材を一千前後、二十体で二万程度保持していたので中級拠点を建てるには困らなかった。半分くらい消費してしまったが拠点が立ってしまえばさほど困るものでもない。そこでふと考えて拠点ステータスを確認すると中級拠点と下級拠点で別れて管理されていることがわかる。
「あー・・・拠点は更新するものかと思ってたけど複数立てられるんだな。」
そう思って最下級拠点も建ててみようと思ったが建築マーカーの表示がエラーのままになる。建てようとすると拠点が近すぎると表示される。丘陵を降りて試してみたが結構な距離を離れないと拠点が建てられないことがわかる。
「んー、攻め込む時の仮拠点として使えればいいかな。防衛拠点としてもありかな。」
ミーバを移動先で生産できることで本拠点まで戻らなくても兵の補充ができる可能性はありがたい。建築物を調べてみると中級になったことで各種兵舎施設が二個建てられる事がわかる。やはり攻め込む先に拠点を作ることが前提とした建築制限数と制限距離になっていることが伺える。取り敢えずは以前と同じように拠点周辺を構築すればいいのはわかるが以前の下級拠点が建ちっぱなしなのは都合が悪い。すぐさまあちらに行くことになればいいがそうでない場合は不利益といえなくもない。いっそのことヴィルバンが占拠してくれて所有権が変わったほうがありがたいのだが。Y型に畑の増築と兵士勢に大型倉庫の建築を指示しながら本を調べる。中級拠点からの機能なのか遠隔で各種建物を破棄できることがわかる。取り敢えず建っていても問題ないかもしれないが確認の意味も含めて下級拠点の放棄を実行する。拠点からのリンクがなくなるせいか下級拠点周辺の施設も放棄扱いになってしまう。すでに略奪されているだろうし問題ないかと割り切る。中立のほうが他の選定者に見つかった時に困らなくて良さそうという考えもあった。その他、権利譲渡、交換が増えており選定者向けの機能が増えていることが分かった。その後中級拠点でミーバを生み出しつつ、魔導構成所を建ててY型を追加構築する。何にするにしもてまずミーバの数が物を言う。食料を増やしつつ各種施設を建築し夕方になる前に一次生産区域になりそうな範囲を石壁で覆う。森から見て拠点の反対側の丘陵下に露天掘りの為Y型を一五体派遣し石材、金属回収を始める。地域次第で差はありそうな気もするけど本によれば一定以下の地下には金属が含有しやすくなるとなっているので掘らないという選択肢は無い。
木3000布8200石1000金属1200魔石2000燃料10000食料3700財貨3200
中級拠点1 畑5 麻畑1
木材大型2 布大型2 石材大型4 金属大型2 食料大型2 財貨大型1
細工所1 木工所1 石材所1 金属加工所1 魔導構成所2
戦士訓練所1 弓兵訓練所1 騎馬訓練所1 魔術師養成所1
M型14 C型8 Y型46 B型7
軽装騎兵M8 急襲斥候兵C2 魔術師C3 銃兵B5。
当面は露天掘りを全力で行い金属の安定供給に務める。立て直すにしてもまず金属が大量にいることになるので全力で行う。基礎となる形ができたところでこの日は終わる。
翌日、軽槍騎兵に地図作成のため周辺周回を行わせる。なんらかの集落を見つけたら戻ってくるようにし、最長でも二日で戻ってくるように指示する。増えたミーバは二体一組で畑の増産をすすめる。僕は時折指示をしつつ魔法の訓練に勤しむ。戦士であろうが魔術師であろうが疲労と負荷の問題から最大MPの増加が必須だということは今回の戦いでよく分かったからだ。肉体訓練をするにも疲労の上限が高いほうがいい。その日は畑を四十にまで増加させて耕作道具を配って終了する。
翌日食糧増産を進める為に畑に追加で一人ずつ配置し畑一に対してミーバを三体にしていく。森の近くに倉庫と壁をつくり物見櫓を建てて伐採の護衛と警戒に当てる。銃兵二体を配置しミーバ十体を目処に伐採作業を行う。その後余剰ミーバはすべて露天掘り採掘へ。そろそろ鍛錬所を建てないと余剰資源がひどいことになると思いつつも当面は大型倉庫で対応する。なにせ金属がないと建築もできないので仕方がない。
翌日、採掘組が増えてきた性もあってか金属が安定供給され始め、鍛錬所、学問所、教会と建築をすすめる。夕方前に建築された教会に入る。以前建てたものと全く変わらない構造が少しだけ胸にくる。本来一言質問で聞いても解決が難しいと感じてはいるが聞かずにはいられないその質問を行う。
『形態変化ミーバの復活はできるか。』
教会に一瞬の沈黙が訪れる。
『ミーバを人の死とすれば不可。ミーバが死んでいないなら可。』
思ったより微妙な哲学的な内容で返ってきた。できるかできないかもわからない。やはり詳細は上に上がった時聞いたほうが良さそうだ。ただまるっきり不可能と言われるよりは希望が持てたように思える。少し心を落ち着けて形態変化を行う。光が溢れ収束する。青いワンピースをまとった少女が三体そこに控えかしずく。
「C型改めまして、蒼朱A型となり麾下に加わります。」
「C型改めまして、蒼橙E型として配下に入ります。」
「C型改めまして、蒼紺B型としてお使え致します。」
護衛時代からいたと思われるC型組が形態変化した。生き残りも加味したらそうなるしかないか。そこそこの付き合い量がいるようだし、騎兵も銃兵も変化すると思えるほど付き合った覚えは無いように思える。A型は朱鷺と同じだけど、それ以外は知らない型と思える。E型はちらちらこちらを見ており思いの外落ち着きがない。A型はそれを少し気にしているようだけど、B型は微塵も動かない。以前朱鷺に聞いた時と同じようにそれなりに性格差がでているようだ。彼女らの逡巡は一旦置いておいて名前を決めてやらないと。朱鷺を踏襲してそのまま古い色をあてることにして。
「A型の君は菫。E型は萌黄。B型は桔梗とする。よろしく頼むよ。」
「「はい。」」
「はっ。」
三人がさっと立ち上がり僕を見据える。菫はなんかほんわか、萌黄は見た目相応に楽しそう、桔梗はきりっとして真面目そうだな。
菫 護衛 急襲斥候兵Ⅲ
STR:370 VIT:326 DEX:483
INT:344 WIZ:351 MND:319 LUK:18
MV:25 ACT:1.6|3 Load:1116 SPR:864
HP:712 MP:695 ATK:641+92|715 MATK:663 DEF:161+28 MDEF:134+19
スキル:機先、精査、希薄
短剣Ⅴ、体術Ⅴ、隠密Ⅴ、捜索Ⅴ、必殺Ⅴ
貫通撃Ⅴ、貫通射撃Ⅳ、障破撃Ⅴ、障破射撃Ⅳ
装備:冷石短剣、剣歯蛇レザー
機先:優位性を持っている相手にダメージ+80%、状態付与+30%。
相手が自分に対して行動する前のダメージ+20%。
精査:視界範囲+150%。隠蔽防御+50%。範囲内の簡易情報を得る。
希薄:隠蔽+40%。自分を認識するための能力を誤認させる。
萌黄 護衛 急襲斥候兵Ⅲ
STR:354 VIT:357 DEX:422
INT:342 WIZ:341 MND:351 LUK:44
MV:22 ACT:1.5|3 Load:1115 SPR:803
HP:774 MP:683 ATK:595+92|644 MATK:693 DEF:155+28 MDEF:138+19
スキル:先制、索敵、危機感知、活殺
短剣Ⅴ、体術Ⅴ、隠密Ⅴ、捜索Ⅴ、必殺Ⅴ
貫通撃Ⅴ、障破撃Ⅴ
装備:冷石短剣、剣歯蛇レザー
危機感知:自己の認識しうる危機を察知する。
活殺:ダメージを与えた際その起こりうる結果を操作できる。
桔梗 護衛 魔術師Ⅲ
STR:302 VIT:264 DEX:512
INT:492 WIZ:485 MND:465 LUK:5
MV:18 ACT:1.6|3 Load:918 SPR:997
HP:558 MP:1067 ATK:558|663 MATK:1017+110 DEF:155+10 MDEF:220+19
スキル:先制、索敵、血操魔
攻勢魔術Ⅴ、守勢魔術Ⅴ、強化術Ⅲ、治療術Ⅲ、瞑想Ⅴ
条件発動Ⅲ、詠唱短縮Ⅲ、消費軽減Ⅱ、貫通術Ⅴ、障破術Ⅴ
装備:冷式魔法増幅腕防具、天上綿のローブ
血操魔:任意の【負荷】を同値の【魔術傷】に変換する。任意の【魔術傷】を同値の【負荷】に変換する。
魔術傷:HP致死判定の中に魔術傷の値を加える。魔術傷は日にVIT/10を自然治癒する。
「さて、装備とかを与えてやれればよかったんだけどすぐには難しいので、当面は拠点内の管理をお願いしたい。」
菫は偵察、暗殺系かな。狼の時から頑張ってくれてたんだろうけど、同期である萌黄との差はかなり気になる。接し方の差なのか聞けば答えてくれるかもしれないが触ると危険な気がする。尖ったステータスもなく数値も高くなく、職業スキル上近接だけどどの職についてもパッとしない。桔梗は純魔法使いとなった。変化の過程で今認知されている系統の魔法は全部つかえるようになっているが元々使えない系統は低い。負荷を軽減するスキルを得ているが正直緊急時以外は使わせたくない。むしろ緊急時以外にうまく利用するスキルかもしれないが。利用の仕方は考えておかないといけない。朱鷺のこともあって同じA型の菫のほうが対応しやすいかと思い菫を拠点につれていって話を聞く。危機感知を当てにして萌黄には拠点周辺の警備をまかせ、桔梗には生産管理を任せる。萌黄は少し不満を漏らしているが菫の放った威圧的な雰囲気に飲まれ慌てて出かけていき、桔梗は疑問を挟むこと無く指示通り動き始める。
僕は拠点のテーブルに座って菫と向かい合う。菫にも座るように促すが頑なに座らない。僕が落ち着かないからと言い含めるとゆっくりと座る。この子はこの子で不安になるくらい頑固だな。
「さて何から聞いたほうがいいか悩むな。」
「なんでも。ただし・・・おわかりではあると思いますが私達がお答え出来る範囲はご主人さまが知りえる範囲の中だけです。」
菫は少し悲しそうな顔をして答える。
「私達は朱鷺にはなり得ず代わりになることは出来ません。そして朱鷺を取り戻す機会はもう最後まで無いと思ってください。」
菫の言葉に僕は睨むようにその顔を見る。菫はまた悲しそうな顔をしながら言葉を続ける。
「魔法の中に特定条件下における復活の魔法がありますが、身体の殆どが残っていれば治癒Ⅵ【死者蘇生】があります。更に高位の治癒Ⅸ【死者再生】であれば体の一欠片からでも復活が出来ます。」
僕はうなずきながら菫の言葉を聞く。この時点で朱鷺の復活が絶望的であることはなんとなく察する。菫は僕がその条件を噛みしめるのを少し待ってから心苦しそうに話を続けた。
「これらは『人』に対する魔法であるためもう一つの前提条件として『魂』という生物としての生前の情報を持つものが無事である必要があります。そして我々ミーバにはそれがありません。それが先日の問い合わせの答えの一つです。」
僕はその話に一瞬絶望したが、すぐに不可とされた答えの詳細であることを理解して落ち着きを取り戻そうとする。菫はこちらを心配そうに見ているが、僕は大丈夫と手を出しそれを見てホッとしたようににこやかな顔になる。そしてまたすっと真面目な顔になり話し始める。
「そして朱鷺に似たものをミーバとして再現するという方法もほぼ不可能だと思います。A型への派生条件としてお互いの思慕と庇護ということになりますが、ご主人さまが強くなられましたのでこの先よほどサボられるようなことがなければミーバからの保護対象になり得ないということになります。初期に発生しその性質から早い段階で脱落していくのが我々A型の定めというべき傾向になります。ご卒業おめでとうございます。私が事実上最後のA型となります。」
菫は少しだけ寂しそうに朱鷺への迂回路と自らの運命を口にした。僕は朱鷺を作り直すという発想はまだなかったが、先回りして似たものを生み出すものも無理だ告げられたことにショックを覚える。ぐちゃぐちゃになった頭の情報と感情が駆け巡り正常な思考が失われる。それらは徐々に整理され落ち着く頃には外は真っ暗になっていた。顔をあげると菫は陰りのある微笑みで僕をじっと見ていた。僕は大きくため息をつき向き直る。
「朱鷺は替えの効くものじゃない。作り直してもそれは朱鷺であるとも思えない。そして君らに朱鷺を重ねることもない。」
僕はぶっきらぼうに菫に言い放つ。菫はそれに満足したように微笑み頭を下げた。菫がそこに何を見ていたかはわからないがなんとなく彼女の頭を撫でた。菫の頭から若干の抵抗が返ってきたがすぐに抵抗は治まりされるがままになっていた。
「さて晩飯でももらおうか。」
僕が菫にそう言うと。
「上手には作れませんがよろしいですか?」
菫はなんか気恥ずかしそうに身を捩る。僕は構わないと言って手をふる。菫は作業に行き、僕はテーブルで待つ。二十分くらいかだいぶかかるなーと思い始めた頃に菫は料理を持ってきた。見た目も味も朱鷺のようにうまいわけではなかったが久しぶりに食べる落ち着いた料理に舌鼓をうち、菫に礼をいって頭を撫でてやる。申し訳無さそうにしてた菫は撫でられる内ににやけ初めて気持ちのいい笑顔で目を細めて僕の方を見ていた。
翌日の朝、また菫に食事を頼み、食べ終わった後拠点から出て次の方針を考える。僕が外に出てきたことを知ってか萌黄が走り込んでくる。菫が横にいるのを見て何事か機嫌悪そうにしている。
「わたしもお世話したいー。」
萌黄は元気よく主張した。僕は妙な勢いにたじろぎ、菫は大きくため息をつく。両者の身長はさほど変わらないが僅かながら萌黄のほうが低い。しかしその差以上に身長差を感じる。
「ご主人さま、萌黄は危機感知というスキルの関係で要人護衛には向いております。ただ見つけて倒すだけの私よりはずっと護衛には向いております。よろしければそちらのほうで考慮いただければ。・・・性格は少し難しいかもれませんが。」
菫はなんとも心苦しそうに萌黄を推すが朱鷺の行動を鑑みれば菫もできれば側にいたい口なのは分かる。仲間思いというよりも自己を殺し、全体的に僕の役に立とうとしていることが伺える。対して萌黄は自己のみで完結し僕に一直線という風に見える。僕は萌黄を見て菫を見る。萌黄は期待感一杯の目で僕を見つめ、菫はなんとも仕方がないという体で萌黄を見ている。僕は萌黄の方を見ながらステータスを睨んでいるが、萌黄は自分を見ていると思っているのか大げさな動作で恥ずかしがっている。見たときからも感じていたが萌黄は何をするにも中途半端なステータスなのだ。護衛をするなら重装兵か魔術師なのだろうけど、転向するにもメリットを見いだせない。危機センサーとしておいておいて他者に守ってもらうというのも萌黄が不機嫌になりそうだしと職をどうするか悩ましいと思いながら菫を見る。そんな行為でも萌黄はぷんぷんと擬音がでそうな感じに怒り出す。見た目そのままの少女といった行為に微笑ましいと思いながらもこれが続くと思うと少しげんなりする。先程菫が言っていた忠告が早くも表面化してきた。菫がにこやかな顔のまま周囲に威圧を放ち始めると萌黄はぴっと反射的に直立不動になる。
「はぁそうですね。守りを固めて引き受けるということなら重装兵のが無難かと思われます。ご主人さま自体が守勢魔術も使えますし、一瞬の隙を埋めてくれる重装兵は有用性が高いと思われます。」
菫はちらっと萌黄を見て、萌黄はなによと言わんばかりに菫を見る。菫はやはりため息をついて続ける。
「ただ我慢が足りない、たまらず動くという性格から余り待ちの護衛が向いていないと言うかなんと言いますか。」
大体ぶっちゃけてますけど菫の言いたいことを理解して僕は手を上げて止める。萌黄はそんなことないもーんと主張しているが、とてもそうは思えないぞ、萌黄。
「魔術師にするとそういうところでは融通が聞きやすくなりますが、今度は調節と持久力的な面が不安になりますね。」
あ、うん。所構わず魔法撃ちそうですよね。この子。あとステータス的にMPが低い。特化している桔梗から見るのも可愛そうだが四割くらい低い。魔術師で護衛するなら桔梗のほうがましともいえる。桔梗はその分体が弱いが。
「広範囲魔法で味方を巻き込みそうなのがまた不安というか。」
菫がまた大きくため息をつく。
「そんなことないもんっ。そもそも当たっても大丈夫だもん。」
萌黄が大声で否定する。ただその言葉の中に不可解な言葉が交じる。僕はふと考えて効果に具体性のない活殺スキルの関係を考える。僕はしゃがみこんで不機嫌な萌黄を撫でつつ尋ねる。
「当たったら痛いしひどければ死ぬだろう。萌黄はそれをどうにか出来るのかい?」
「痛いのは無理だけど死ぬのは大丈夫。」
萌黄は機嫌が反転したかのように笑顔で答える。そうこう問答していてもしょうがないので実験することにする。修練場に場所を移して生まれたばかりの不幸なM型が着いてきている。許せ。
「じゃあ、萌黄やってみてもらえる?」
「はいっ。」
元気よく手を上げてM型にステップを踏み、うろたえるM型の横から逆手に持った冷石短剣を背後に突き刺す。ピギィーとなんとも言えないM型の悲痛な声が上がった後萌黄はすっと短剣を抜く。抜いた後には最初から刺さっていなかったかのように刺し傷もなくM型もピンピンしている。おーぅ。見ているだけだと手品か何かで大混乱しそうなスキルだな。その後の実験と萌黄の拙い説明を交えて検証すると、【活殺】スキルが直接与えたダメージと異常状態の確率を極小化あるいは極大化、または任意の状態まで追い込むことができることが分かる。
「これ・・・地味に恐ろしいスキルじゃね?」
僕は得意げに笑みを浮かべる萌黄を前に菫と話し合う。菫もなんとも言えない微妙な顔をしながらうなずく。このスキル名前の通り活殺自在だが、その効果の範囲がひどすぎ、与えたダメージを0にする、HPが0になるまで半分になるまで等数値まで指定してダメージを切り捨てるようにしたり、何かしらの偶然要素でのダメージ変化すら排除、極大化する。また骨折をする等可能性で与える要素があるなら最大で二倍までその確率を増大。または起こりうる状態も選択的に変化出来る。萌黄が松明で人を炙ると、熱いが皮膚が焼けること無く突然皮下に火傷を与えることすら可能なのである。ただ、その触覚的要素は排除できないようで痛い、熱いなどは感じてしまう。人によってはショック死とかはあるかもしれないが、おそらくそれすらも排除可能そうではある。投げた短剣などにも効果があるが刺さったままだと三秒後に状態が復元される。血流が阻害されていようが時間内ならそれが無かったかのように治癒され元に復元されている。効果を与えるのは萌黄である必要があるが、丁寧に抜きさえできれば他人でも復元される。萌黄なら抜く時雑に扱ってもその結果を操作できるので問題ないようだが。そして大枠として生物として扱われていなければ効果がない。壁や木は復元出来なかった。ミーバは生物として扱われているのか効果はあるが、ゴーレムのようなものになるとどうなるかわからない。また既存の傷口の上からなぞっても傷口の状態が戻るだけで治療に応用するのは難しそうだった。せいぜい体の上から針を刺して無傷で体内の寄生虫を殺すとかそんな具合だ。細菌やウィルスも斬ることができれば大丈夫だろうが極小物体をすべて切り刻むのは現実的ではない。
「ひどい拷問スキルですね。」
菫のつぶやきに僕と萌黄がびしっと固まるが取り敢えず二人で笑ってごまかし聞かなかったことにした。そして活殺の効果範囲が長距離に及ぶかという調査も兼ねて萌黄を銃兵に変更する。コストはかかるが狙撃銃はさほど無駄にならないので必要経費と割り切る。ついでに少し時間を使って双眼鏡を作り出し菫と萌黄を連れて丘陵を歩く。ついでに持ってきた魔導銃を近場で見かけた動物に撃ってみたが、撃たれた衝撃におろおろしながら元気よく逃げていった。双眼鏡でみた丘陵の向こう側の平野に人型のものが四体みられる。小汚い格好をした痩せこけた体をした者が空の背負子を担いで歩いている。槍や弓を持っている所をみると狩りにいくのだろうか。
「ゴブリン・・なのかね。」
僕は双眼鏡を覗きながら聞く。
「地理的に森ゴブリンでしょうかね。平野まで出てきているのがよくわかりませんが。」
菫は目を凝らしながらなんとか見えている特徴で推察する。萌黄は頑張って目を細めているが点なの?点よねとつぶやいている辺り見えていないのだろう。安心していいぞ僕も双眼鏡がないと見えないからな。菫のほうが異常なんだ。双眼鏡を貸そうとするとちょっとだけ興味がありそうだったが、変なプライドが邪魔したのか、ふんっと言って断られた。射程の中で隠れられそうなのが森だけで、彼らの縄張りであろうということと迂回して回り込むには時間が掛かりそうということから平野からゆっくりと隠れながら近づく。あ、隠密Ⅰゲット。射程に収まった少し小高い藪の中に入り伏せ撃ちで構え、僕らはしゃがんで成果を見守る。
「やっぱり森ゴブリンね。」
萌黄がなんか偉そうに言う。はいはいわかってるよと流し、ダメージを与えないように射撃することを指示する。
「いっきまーす。」
若干小声で萌黄の明るい声が飛ぶ。一射。ボンッ。森ゴブリンの頭が爆散する。慌てる森ゴブリン達。僕達も結果にびっくりだ。
「あれ?おっかしいなぁ。」
萌黄は疑問そうに首をかしげてから二射目。ボンッ。森ゴブリンの胸部が吹き飛び右手と頭が宙に舞う。散々な絵面に僕は辟易するが、森ゴブリン達はもうパニック状態である。
「ちゃんとスキル発動してる?今度は瀕死HP1に押さえてみて。」
僕はある可能性を考慮して萌黄に指示する。
「はーい。よい・・しょっと。」
萌黄の軽い言葉と共に三射目が飛ぶ。バシュッ。森ゴブリンの脇腹が消し飛び独楽のように回りながらぶっ倒れる。ぴくっぴくっと反応がみられるがアレだけ脇腹をえぐられたら生きていても長くはないだろう。
「よーし、これならどうだ。」
萌黄は何か目的が変わっているような気がするのだが陽気に四射目を撃った。すべてを投げ出して森に逃げようとしていた森ゴブリンの右太ももが消し飛び、森ゴブリンの叫び声が響く。
「あ、今度は大丈夫でしたよ。」
萌黄の無邪気が逆に恐ろしくなってくるが、概ね効果は把握できた。おそらくだが極大化に限度があったように極小化にも限度があり、今回のように余りに致死性が高すぎて極小しても設定した結果に出来ない場合は効果を発揮できないのではないかということ。あのゴブリン達がどのくらいの強さかわからなかったが見た目通りの貧弱さで狙撃銃の威力が高すぎたのが原因でないかと考える。双眼鏡越しに鑑定が発揮するか試してみると、少し時間はかかるが段々見えてくる。
HP1/64 右足欠損
右足欠損までは回避できなかったがHPは残っており出血もしていない。おそらく推察通りの結果であろうと思われる。僕は二人に撤収を促し隠れながら拠点に戻る。
「あのまま残しておくのも可愛そうじゃない?」
萌黄は少し心配そうに僕に尋ねる。
「もしかしたら運良く生き残れるかもしれないし・・・」
僕は躊躇しながらも放置することにした。萌黄はふーんと少しだけ何か考えたようだがその後はいつも通りににこにこしながら進み始めた。その結果がどうなるかも知らずに。
菫はおっとりお姉さんのふりをしている甘えん坊。
萌黄はベタベタしたい小学生。
桔梗はずっと我慢する子だけど甘えたい。
新たなる進化体と共に次の目標を目指します。
紺野遊一郎 グループなし 戦術師Ⅲ
STR:226[↑87] VIT:270[↑95] DEX:285[↑105]
INT:263[↑153] WIZ:285[↑187] MND:280[↑199] LUK:11
MV:9 ACT:1.3|1 Load:772 SPR:576
HP:630 MP:642 ATK:383+97|393/1105 MATK:606+346 DEF:121+100 MDEF:128+75
スキル:木造建築、貴石研磨、装飾品作成、皮革加工、魔獣皮革加工、髭加工
騎乗Ⅳ、強行Ⅳ、隠密Ⅱ
魔法陣作成、魔導変換、魔法物質化、魔石加工、魔石付与、魔力付与
弓Ⅱ、銃Ⅳ、体術Ⅲ、貫通撃Ⅰ、貫通射撃Ⅳ
攻勢魔術Ⅱ、守勢魔術Ⅳ、強化術Ⅳ、回復術Ⅲ
条件発動Ⅱ、並列発動Ⅱ、詠唱短縮Ⅲ、消費軽減Ⅲ、貫通術Ⅲ
(剣Ⅱ、軽盾Ⅲ、守勢魔術Ⅲ、強化術Ⅳ、回復術Ⅲ)
装備:冷石剣、冷魔式狙撃銃、龍眼魔法増幅腕防具、龍布防具、剣歯蛇レザー
特典アビリティ:本




