僕、考える
※今後の調整のためステータス由来の防御力を下方修正。1/2 → 1/5
「お、おうー」
雑草生い茂る原っぱとも言い難い森の境目。周囲を見回しても見えるのは草と木。まれに石。そして三色のミーバ達が僕を見つめている。たぶん。目が無いからよくわからないけどキョロキョロするような動きがないからおそらく僕を見ている気がする。小鳥の声を聞きながらしばらくぼーっと周りを見ているとミーバが伸び上がるように動きつつ『どうする?』と看板を掲げる。
「どうしようかねぇ。」
僕は何気なくつぶやくとミーバは『家建てよう』と掲げる。
「家を建てる?」
僕はミーバの提案にどうするのかと思案した所、頭の中に【最下級拠点建築:木材500石300作業量1000建築制限1】と浮かび上がる。
「これはなに?」
と、思わず呟きながら建築するとイメージする。視界範囲に水色の大きな正方形が現れまた驚く。視線を動かすと正方形も動く。慣れ親しんだようなその動きに建築場所を指定するのものなのだと理解する。と気がついてキャンセルをイメージすると正方形は消える。
「ちょっと周りを見てみようか。ついてきて。」
ミーバ達は『はいっ』と看板を掲げて、歩く僕の後ろについてくる。うねうねしながらついてくる姿は一瞬気持ち悪く思うも各自のペースで緩急をつけながらついてくる姿は楽しくもあり、愛嬌がと言われたチェイス様の言もわからなくは無いと思った。森とは反対側に10分くらいとぼとぼ歩いていたが草、岩、木ばかりで大きな変化もなくすぐに疲れてくる。
「割とひどい。人の住んでる気配すら感じられない。」
もしかしたら誰かに助けてもらえるんじゃないかと淡い希望を抱いて歩いてみたものの原っぱしか無いという絶望感だけが心にのしかかる。仕方なくミーバ達に振り返って戻ろうかと呟くと『はいっ』と看板を掲げる。そんな姿にまた癒やされながら周囲をキョロキョロしながら森の方へ戻り始める。出発地点より少し進んだくらいの所で意を決して拠点を建てようと考える。建築することをイメージすると先程の最下級拠点以外にもいくつか建築可能なものが頭に浮かび上がる。最下級拠点、野菜畑、麻畑、木工所、石材所、金属加工所、細工所、最下級倉庫、木柵、土塀。
「これ、もしかしてリアルタイムストラテジーか。」
後々そんな簡単なくくりでできるものではないと気がつくことになるが、僕はこの時何をすればよいかわからないと思っていたところに一つの指針を得たのだった。僕はその時そう信じて色々確認しながら作業するという明確な方向性を考えていた。
「所持素材は・・と」
手持ちの素材はいくつあるのかとイメージすると、
木0布0石0金属0魔石0燃料0食料0財貨0。
「なんもも持ってねぇー。」
僕は思わず絶叫しながらどんなハードモードよと原っぱに膝と手をついて打ちひしがれる。そうするとY型ミーバが『持ってる』と掲げている。僕は勢いよくY型に振り向く。
「どのくらい?」
恐る恐る聞いてみると『木500布500石500食料500』と看板が出てくる。
「良かった。いきなり当てもなく採集するはめになるのかと・・・」
そうすると少し余裕が出てくる。資源の事を考えるともう少し森に近いほうがいいのかと考えて森に近寄る。他の資源のことも考えて大きめの岩と森の間に拠点を建てることにする。最下級拠点をイメージし建てる場所を確定すると今度は作業員を指定しなけれないけないとイメージが湧いてくる。最初だから全員でやればいいかなとイメージするが自分に建築技術がないと警告がある。そりゃそうだと思うと突然別のイメージが流れ込んでくる。
ーブックオープン:技術【木造建築】がありません。構築しますか?ー
思わずYesとイメージすると
ー読込・・・構築中・・・10000ー
1万の数字のカウントダウンが始まる。1秒毎に1ずつ減る。1万秒・・・3時間くらいか?これが選択した本の効果なのかこの世界のシステムなのか疑問に思いつつも今はどうしようもないことだと理解してミーバに建築を指示する。ミーバ達は『了解』と掲げて建築予定地に向けて走り出す。予定地の端に突然木材と石材の山が出来る。各色ミーバ達は資材のを取り込み石を組み始める。みるみるうちに資材は減り、建物ができあがっていく。資材を取る。柱が立つ、壁ができる、屋根ができる。
「お・・・おー」
と驚いているうちにちょっとした平屋が完成してしまう。え?3分くらいしかたってないよね、たぶん。ミーバ達は『できたっ』と嬉しそうに看板を掲げて僕の元に戻ってくる。僕は衝撃をうけて信じられない思いで平屋の扉を開ける。開けた先には三和土があり段差先には広い空間があり通路が続く。行く先の扉を開けると洗面所、トイレ、風呂。シャワーはなかったけどなぜか蛇口は冷温ある。リビング、キッチン、寝室。そしてなにもない部屋が二つ。
「でかくね?」
中を見てちょっと放心しながら外に出てくると伸びをしたり触手を振り回したりしているミーバ達が見える。その姿がなんとも面白くて放心状態から戻る。気を取り直して建築項目を再確認する。
野菜畑、麻畑:木200石50
木工所、石材所、金属加工所、細工所:木300石300
最下級倉庫:木200、石200
木柵:木5布2
土塀:木30石30
魔導構成所:木材2000布2000石1500
「なんか新しいの増えてる。やっぱり最初は木材と石が必要か・・・」
そう思ってミーバを見る。イメージされる資源は木0/5000布500/5000石200/5000金属0/5000魔石0/5000燃料0/5000食料500/5000財貨0と先ほどと変わった表記になる。ミーバが持っていた資源は拠点に入れられた判断できる。そして貯蓄上限が合わせて表示される。拠点に入る限界値なのだろうと判断して、倉庫の用途もある程度予想がついてくる。ただそう考えるだけで倉庫が指定した資源を5000貯蓄できるものだとイメージが湧いてくる。各加工所について考えると専属資源の1000貯蓄でき資源を消費して物品を作り出せることがわかる。加えて細工所に関しては服や装飾に加えて木や石を燃料に変換出来ることもわかる。柵は幅1m高さ1m厚さ10cmの格子、土塀は幅1m高さ3mの壁厚みは30cmとわかる。魔導構成所は指定したミーバを作れる施設のようだけど建設コストがえらい高くみえる。とりあえず全ミーバに木材を集めるように指示をすると近場にあった木ではなく森側に走っていく。距離重視なのか効率重視なのか他に理由があるかもわからず様子を見守る。どんな作業かみていると皆で木をばしばしと懸命に叩いている。
(集めようとしてるんだろうけどほんとに集めてるのか不安になる光景だなぁ。)
一分ほどしてC型が木の側を離れて拠点に近づく。拠点に触るとまた森に走っていく。資源を確認すると木が70増えている。
(すくなっ。)
さらに一分後くらいにM型が木を離れて拠点に近づく。C型と同じように拠点に触れてからまた森に戻る。木が122増える。すぐにC型がまたやってきて木が70増える。
(そういえば次何を建てよう。そういえばミーバは食べないけど、僕はなんか食べないといけないよね。)
そんな事を思うと小腹が空いてくる。自分はなにか食べる必要がありそうだ。
(野菜畑かなぁ。いやいや、今畑作ってもすぐ食べられないじゃん。)
せわしなく行き来するC型とM型を眺めつつそんなことを考える。
(あれ?Y型は何をしてるんだ?)
と注視するも他のミーバと同じように木を叩いてる。同じ作業をしているのに帰ってこない。
(なんでY型だけ?)
疑問に思いつつも様子を見続けると叩いていた木が倒れながら虚空に消える。それと同時に全員が拠点に移動して拠点の前で停止する。
(戻ってきたけどなんで止まった?)
考えがまとまらないままY型が帰ってきたので資源を確認すると木5000/5000となっている。
(はい?何が起こった?木材はちきれたし。もしかして倉庫がいっぱいになると採集が止まるのか?)
ミーバを見ると『終わったっ』と『満載』と看板をくるくるしている。なんか器用だな。
そう思いながらY型をしばらくみるとぼんやりと文字が浮かんでくる。見えづらいとしばらく凝視するとだんだん文字がはっきりしてくる。
Y型ミーバ グループなし 職なし 装備なし
STR:8 VIT:14 DEX8 INT:9 WIZ:10 MND:11 LUK:7
MV:7 ACT:0.8|3 Load:280
HP:48 MP:19 ATK:10|10 MATK:19 DEF:9 MDEF:2 SPR:18
スキル:荷運び、頑健
Y型のステータスらしきものが見える。
(ステータスあるんだ。微妙に細かいし。荷運びはチェイス様がなんか言ってた気もするけど。)
そうやって意識すると
☆荷運び:Load+200。所持資源重量1/10。
過積載ペナルティを150%まで無効化する。
スキルの内容もわかる。そう思ってもう一つのスキルを意識する。
☆頑健:HP+20、DEF+5
耐久系の輸送ポジかな。ほかのヤツも確認するか。
M型
STR:13 VIT:10 DEX:12 INT:8 WIZ:9 MND:6 LUK:10
MV:10 ACT:1|2 Load:136
HP:20 MP:17 ATK:24|23 MATK:14 DEF:4 MDEF:3 SPR:21
スキル:玉砕、剛力
☆玉砕:HPが0以下になった時VIT×0.5mの範囲に敵が残っている場合、範囲内
に基本ATK*10倍のダメージを与える。
配下ミーバがこの効果によってHPが0以下になった場合、そのユニット
も前記の条件で爆発する。この爆発では連鎖爆発しない。
☆剛力:ATK+5、Load+50
C型
STR:10 VIT:8 DEX:16 INT:11 WIZ:11 MND:10 LUK:5
MV:15 ACT:1.4|1 Load:78
HP:16 MP:22 ATK:18|21 MATK:22 DEF:4 MDEF:4 SPR:27
スキル:先制、索敵
☆先制:まだ行動していない対象への効果+50%
☆索敵:視界範囲+100%、隠蔽防御+30%
数字の意味はどうかな。
STR:腕力。ATK、Load
VIT:頑丈さ。HP、Load、DEF
DEX:器用さ。ATK、DEF
INT:知識。MP、MATK
WIZ:判断力。MP、MDEF
MND:精神力。MATK、MDEF
LUK:運。乱数が自分に都合が良いように動きやすくなる。
MV:移動速度
ACT:行動速度
HP:生命点。VIT*2
MP:魔法力。INT+WIZ
ATK:近距離STR+DEX1/2 遠距離STR1/2+DEX
MATK:INT+MID
DEF:VIT1/5+DEX1/5。物理ダメージをDEF%軽減
MDEF:WIZ1/5+MND1/5。魔力ダメージをDEF%軽減
SPR:DEX+WIZ。対面した相手への行動優位性。
Load:最大積載量。50+STR*2+VIT
90%を超えるとMV、ACT、ATK、DEF、ASPD3割減。
100%を超えると6割、150%を超えると8割、200%を超えると10割。
チェイス様は細かい質問には答えなかったので、この辺の効果が確認できるのは『本』の性能なのかなと考える。
(出来るできないはミーバに聞けとも言われてたな。)
ミーバに向かって食事が作れるか確認してみると、『松は食料1000』『竹は食料100』『梅は食料10』とミーバが看板を掲げる。どうも食料値を消費して僕のご飯を作ってくれそうな気配が感じられる。単作業っぽいと思いつつC型に竹の作成をお願いすると、C型は『了解』と看板を掲げて拠点の中に入っていく。資源を確認するとすでに食料が400になっているのが確認出来る。
(ま、普通は指示時に消費ですよね。ミーバは食べないみたいだけど、僕の為に食料値の維持は必須かなぁ。)
そう思いながらどのくらい時間がかかるのかと思っていると、C型が出てきて『できた』と掲げている。拠点に入るとテーブルにはご飯、味噌汁、焼き魚、サラダが置いてある。10分くらいなのにしっかりしてきたものが出てきて嬉しい。そこまでお腹は空いてないけどせっかくなので食べる。
(うめぇー。)
卒のない味に満足して食べ終わる。空の食器をどこに置こうかと見回して席を立つとテーブルから食器類が消えてしまう。
(片付け必要なしとか、いたせりつくせりだね。)
満腹感を満喫しながら外にでるとミーバ達が不思議な踊りか体操のようにうねうねしている。
(畑かな。)
畑の作成を意識すると例によって建設範囲が見える。拠点の真横に範囲を指定して全員を建設員に指定して作成させる。ミーバが拠点に移動し指定した場所に資材を置き、地面をバタバタ叩き始める。1分もしないうちに畑は完成しミーバ達は触手を畑にむかってうねうねと伸ばし始める。初めは何をしているか理解できなかったが、すぐに畑から芽が出始め伸び小麦のような穂が出来る。それが垂れるとミーバ達は畑の端から畑を叩き始め、木を叩いていかたかのように拠点に移動すると食料が70,122と増える。程なくして食料が1400になると畑の穂は消えてミーバ達は怪しい儀式を始める。
(思いの外早いな。とするとミーバが明らかに足りないよね。)
そう意識すると拠点に『ミーバ生成:食料400』という文字が透けて見える。
(ゲームのユニット作成と同じ感じかな。上限が有るかないかだけど。とりあえずはミーバでいいよね。)
拠点に向かってミーバ作成を3体分指示する。ユニット作成上限について意識するけど返答らしきものが返ってこないのでまさかないのか考える。1分くらいすると拠点の入り口の前にM型が1体魔法陣から出てくる。
(なんか無駄にかっこいい・・・)
僕はそんな感想をいだきながら新しく出てきたM型に畑の作成を指示する。拠点の裏に畑を作り始めるが流石にすぐにはできないようだ。作っている間に拠点の前に魔法陣がでてきてC型が出現する。
(Y型のほうが嬉しかった気もするけど、順番かランダムか判断難しいな。)
出てきたC型には新しい畑作成の手伝いをさせる。すぐに畑は完成し新たなM型、C型は畑で儀式を始める。隣の畑では収穫も始まっている。ちらほら眺めていると拠点の前にM型が現れる。
(ランダムかー。確率は均等だといいけど。)
ちょっぴり残念に思いながら最初の畑の反対側に畑を作るように指示して、最初の畑のM型をそちらの支援に回す。二番目の畑の収穫が終わり再度儀式を始めている。得られた食料で更にミーバを3体作成指示する。待望のY型がでたので4個目の畑の作成を指示する。ふと思いたって立ち上がり最初の畑の隅っこを踏んでみると担当のミーバが抗議の看板を上げる。
(あー・・・ゲームと違って影響はあるんだなぁ。)
ごめんな、とミーバに謝りつつ拠点の入り口前に座って考える。
(畑を踏んじゃだめっぽいからそれなりに移動経路も作っとかないと動きが阻害されかねないな。レイアウトを少し意識しないとだめだな。)
拠点の正面方向には畑を作らない方針を決めて畑9枚を目標に現状を続けることにする。そう決めた頃には目の前にC型が現れたので4番目の畑の作成補助に回して、元々4番畑にいたY型を近くに岩に採集に向かわせる。
(あの岩がなくなったら石採集どうしよう。あまり周りにないんだよね・・・)
おそらく5000は取れるだろうと楽観して、更に出てきたM型には4番畑の支援に回す。岩に向かわせたY型には500とったら一旦拠点に入れるように指示する。
そして1時間後。
木2100布500石4400金属0魔石0燃料0食料0財貨0
最下級拠点1 畑9 木材倉庫1 石材倉庫1 食料倉庫1
M型8 C型6 Y型5
□□ □
拠□ □倉
□□ □
倉庫と拠点の保管が別扱いの可能性も考えたが現時点ではつながっていることはわかった。ミーバと同じで距離が離れると個別保管になる可能性はあるので油断はできない。というかこのペースでミーバ増えるのに最長50年て・・・どんだけこの大陸広いんだろう、と考えていたこの頃の僕は完全に頭がゲームに支配されていたのだと思う。次はミーバを増やして素材を集めつつ次の施設を建てようかと計画する。
30分後
木1300布500石9250金属1000魔石0燃料0食料200財貨0
最下級拠点1 畑11 麻畑2 木材倉庫1 石材倉庫1 食料倉庫1
M型15 C型14 Y型13
■□□ □□
拠□ □倉
■□□ □□
ミーバをフル稼働で生産し、麻畑と畑を2枚増やす。岩場は10000収穫したあたりで消失した。岩場からはついでに金属も採集された。麻畑にMとC、畑にMとYを配置してC型4体に森前に作った木材倉庫の付近で木材集めをさせる。残りの8体には拠点から蛇行するように8方向に索敵を指示してマップ開放を目的にする。Y型3体には順次建築を指示する第一麻畑の近くに細工所、木材倉庫の近くに木工所、石材倉庫の近くに石材所と金属加工所。
↑森
■□□ □□
拠□ □倉
細■□□ □□
偵察にいったC型には2時間進んで戻ってくるように指示しておく。彼らが僕から200m離れれば帰ってくるまで情報が更新されないから、ある程度で戻ってきてもらわないと困る。
1時間後。
木6000布5000石9250金属1000魔石0燃料2500食料200財貨0
最下級拠点1 畑11 麻畑2
木材倉庫1 石材倉庫1 食料倉庫1
細工所1 木工所1 石材所1
M型20 C型20 Y型17
伐採のペースが遅めとはいえ時間がかかればさすがに倉庫からあふれるので、最初にできた細工所で木を燃料に変換する。木2に対して燃料1。何に使うかすこぶる不明だが倉庫があふれるよりましだろうと作るだけ作っておく。建設チームはY型5体で金属加工所を建設中。増えたM型とC型を畑に割り振り、麻畑組は解散して浮いたY型2体と共に伐採を指示する。木工所で馬防柵、鋤、棍棒、長棒、盾、弓矢など木材を主原料とする製品が作れることを確認。細工所では布の服、鎖帷子、革鎧、研磨、装飾品、燃料作成など布や飾りを中心としたもの。布がメインだが石や金属も意外と消費する。石材所は思ったより出来ることがなく、タイル、溝、壺、磁器食器など建築、装飾や補強といった物が多い。
(攻撃装備ばかりと思ったら生活用品とか色々作れるな。インテリアとか装飾とかも凝れるのかもな。誰が見るのか知らないけど。革製品が布素材で作れるのが面白いな。)
制作リストを眺めてざっくりどんなものが作れるか確認しつつ、次の建築計画を考えていると。
ー技術【木造建築】の構築が完了しました。ー
頭の中のメッセージと共に倉庫や製作所の建築方法とやり方が思い浮かぶ。
(おおー、これは。なんか新鮮な感覚。)
降って湧いてきたような知識とおそらくそれが出来そうだという確信も得る。改めて『本』に意識を向けると任意の方向性の知識と技術知識を得ることが出来るように調整ができることがわかる。知りたいこと『本』に確認して本に蓄積されていなければ別途時間をかけて優先的に得られる仕様のようだ。何もしなくても満遍なく知識と技術が進んでいく。
(最初から研究所持ってるみたいな感じだな。意図的に操作してやれば優位が得られそうだ。)
製作所類の傾向からして金属加工所では金属武具や部品が作れることを考えるとそれを超える技術のほうがいいかと思い、その先にありそうな技術を考える。かといって進みすぎても施設がなければ作れないとも考えて無難に火薬の製造を意識する。
ーブックオープン:知識【硝石】知識【火薬】技術【錬金術】知識【下級爆薬】技術【化学】がありません。構築しますか?ー
(お、おぅ。)
自分の半端な知識の迂闊さを呪いながら『本』のヘルプにで各項目を確認する。素材知識があると関連製作所でその素材を作り出せること、原料の知識が揃うと別の素材が作れる場合もあるが、火薬のような複合素材は製造技術がないと作り出せなかったりするようだ。なお技術は自分で作る場合に限りミーバは作れるだけの知識があれば技術はすでに持っている扱いのようだ。ミーバすげー。自分がわりと暇になりそうな気がしなくもないが技術的なものは後回しでも問題ないと思い、当面は知識構築に勤しむことにして【硝石】3000【火薬】18000【下級爆薬】37000の構築を始める。一つの実験でもあったが【硝石】のカウントダウンだけが始まり【火薬】【下級爆薬】はカウントが進まない。
(前提がないと無理なやつかな。または一つずつしかタイムラインがないか。)
試しに知識【硝石】の構築を中止してみたが【火薬】も【下級爆薬】も進まない。基礎知識がないと進まないタイプだと認識して【硝石】の構築を再開する。
(素材知識ぐらいは自力で獲得したいね。街とかに図書館とかないかなあ。)
そうやって眺めているうちに金属加工所の建築が完了しミーバ達が看板を掲げて喜ぶ。魔導構成所を建てようとリストを開くと新たな施設が増えている。
石壁 木10石60
鉄柵 石10金属15
鉄壁 石70金属110
戦士訓練所 木2000石1000金属3000食料1000
弓兵訓練所 木3000石1000金属1000食料2000
騎馬訓練所 木2000石1000金属2000食料3000
(職業付加施設か。セオリーから考えると防衛を揃えて戦士訓練所か騎馬訓練所が望ましいけどY型の優先増加も捨てがたいなぁ。)
4,5分悩んでからマップがだいぶ広そうだという雑な考えから魔導構成所の建築を先にすることにする。そもそも金属が足りないと気がつくまでに少しかかった。細工所の反対側の畑の横に建築指示をしせっかくなので自分も手伝う。時折手を止めながら進行カウンターを確認するがびっくりするほど変化がない。
(うわ、すっげー役立たずだ、これ。)
ステータスが低いせいなのか建築支援するにもいてもいなくてもいいレベルである。片手のM型くらいか。ふと気になって自分のステータスが確認できるか意識する。
紺野遊一郎 グループなし 職なし 装備なし
STR:5 VIT:4 DEX8 INT:14 WIZ:10 MND:15 LUK:11
MV:4 ACT:1|1 Load:64
HP:8 MP:24 ATK:9|10 MATK:29 DEF:2 MDEF:5 SPR:18
スキル:木造建築
特典アビリティ:本
うそ、私弱すぎ!?ミーバがこの世界でどのくらい強いかわからないがどのミーバと戦っても勝てる気がしない。そもそも自分に戦闘能力も防御能力も無く、襲われたら即死という状況に気がつく。ステータスを伸ばす方法が無いかと本に確認すると訓練で伸ばせることがわかる。とりあえず生き残るならVITが必要と思い訓練方法を確認すると、肉体的な行動を長く続けるか傷を治療することで増加することがわかる。薪割り、ランニングなどの例が挙げられている。STRも気になるがまず生き残ることを優先しようと拠点の周りのランニングを始める。どのくらいで上がるか確認も含めてだったのだが十分ほど走り回った所でVITが1加算され5になる。
(思ったより簡単に上がったな。だんだん増加しづらくなるとは思うけど。)
と思って追加で20分走ってVITが8になった所でそもそも僕の体力が無くなった。だいぶ前にせめてもうあと+1と思って走り始めてたのが失敗だった。拠点の三和土でぶっ倒れている僕のまわりを追加で発生したミーバ達が心配するように覗き込んでいる。あまりに呼吸が辛くて何も指示できずに20分ほどそのまま倒れ続ける。呼吸が落ち着いた所で気だるい体鞭打って起こす。
(やりすぎは良くない。僕が動けなくなったら開発が止まってしまう。怪我と病気も注意しないとな。)
反省しながら背伸びをして外に出る。ふと今何時なんだろうと思い、そもそもこの世界の時間はどうなっているのかと本に確認する。一日は24時間。太陽らしいものは24時間を正確にこの世界を一周している。個人的に確認するには時間は地球と同じように確認できるが、この世界の時間表現は1時間単位で感覚的に半というくらいに大雑把なようだ。一月30日が10ヶ月で1年。ゲームの50年という区切りはこの世界基準のようなので地球的には41年くらいとなる。
(それでも長いよね。定年間際だよ?)
そして昼過ぎから始まったのか現在は18時前くらいだ。陽の光は遠いおぼろげに見える山の影に差し掛かろうとしている。遠すぎて山自体がみえないのだが光が山裾のように欠けているのでおそらくそうなんだろうと考える。
(平面世界か・・・)
なんとなく黄昏ながら影に消えていく光と夕焼けを眺めていた。このゲームに投げ込まれて初日をどうにかやっていけたかなともう一度背伸びをする。寝ている間の資源回収もあるし倉庫も増やそうかと暗くなるまでの計画を建てようと考えた時、森の方からがさがさと音が聞こえ始める。地を蹴るような音が増え、更にその数を増していく。森の切れ目から見えるその姿を見て僕は恐怖で身をすくめる。
ーー盤面と言われ、見知ったゲームだと思い込み行動した。ふと自分のステータスを見たときの弱さと違和感。ーー
そして森から飛び出してくる多数の狼達。狼ってこんな大きさだけかととぼけた疑問をいだきながら見る周辺のミーバ達が切り裂かれ食いちぎられる光景。『ミ゛ー』と謎の奇声を上げながら抵抗しているも虚しく餌食となり巻き起こる爆発、そして連鎖爆発。その光景に何が起こったか理解するまえに土煙から飛び出てくる僕の目の前に飛び込んでくる狼の大きな口。
ーー僕はこの『ゲーム』をプレイヤー同士の戦いであると思っていた。ーー
狼の口は的確に僕の喉元を捉え牙を食い込ませる。新たに発生した裂傷63出血Ⅵという異常状態は僕の意識を一瞬で失わせる。
ーーだけどこの『世界』の最大の敵はーー
消えゆく意識の中薄っすらと視える視界の中で狼が僕の喉を食いちぎり、きれいな夕焼けの大地に鮮血が飛び散る。裂傷138出血Ⅹ欠損即死。
ーーこの世界に住んでいる生き物達なのだと僕はこの時初めて理解した。ーー
(言われんでもわかるわっ。完全にオーバーキル・・・)
意識が消えた後、意識が戻り時自分の死体を見ながら上空に上がっていく。地面の拠点が見えなくなる頃視界そのものが真っ暗になる。こうして僕の初日は幕を閉じた。
まず一死。
リアルタイムストラテジーゲームをイメージした開拓ゲームをベースにした話になります。
楽しんでいただければ幸いです。