俺、決行する。
紺が打ちひしがれて膝をついている間に半歩前に出て反転する。急な動作だったが紺は反応せずそのままの状態でいる。このまま大人しくしていてくれればと思うが、そうもいかないだろう。紺はまだ希望が残っていると思っているはずだ。俺は朱鷺の剣を手に取り力を込める。敵意を感じ取り紺が顔を上げる絶望に影を落としながらも口角が上がり狂喜を醸し出し始める。
「まだ・・・ここで主殿を討てば・・・最後に褒めて頂けますよね・・・」
「それが出来ればな。」
俺は朱鷺を振るうが紺は後ろに飛び上がって回避する。
「まだ、紺にはこれがありますからなっ。」
そのまま前のめりに体勢を落しながら手刀を振り上げる。馬鹿正直に正面から来るとは思えないが俺は軽く後ろに下がりながら石柱を立てて紺の動きを制限する。
「朱鷺、出番だ。」
剣を宙に放り投げ呼びかける。声に応えて朱鷺が顕現し剣を手に取る。紺の前に朱鷺が立ちはだかり体を使って動きを牽制する。朱鷺はオールラウンダーではあるが軽戦士とあって力よりも速度が重視されている。そのくせ朱鷺の思いと俺の当時の安全性という思いもあって若干護衛寄りという、ある意味戦士としては中途半端な存在である。積極的に敵を倒すには時間がかかるがそれだけだ。同レベルから格上に対しては高い制圧力を持つ。身を削りながら果敢に戦うユウとは軽戦士としての質が明らかに違う。俺は桔梗に目配せしてから戦場を歩いて離れる。紺が怒りの表情を向けるが俺は無視する。
「逃げるな。朱鷺のコアを破壊するぞ。」
「できるもんならな。」
紺が脅してくるが、出来ないのは百も承知だ。心情的にではない、相性差で紺は朱鷺を倒せない。桔梗が戦場としての空間を広めに障壁で覆う。
「これでよかったでしょうか・・・?」
俺から受け取れる情報がが変っているのか、桔梗は少し自信無さそうに駆け寄りながら尋ねてくる。
「ああ、問題ないよ。これでチェックだ。ま、数手詰めだけどな。」
俺の落ち着いた声を聞いたのか紺が激情に駆られて朱鷺に向かう。
「そう慌てなくても・・・そう興奮されては勝つものも勝てませんよ。」
詰め寄る紺に対し、朱鷺は微笑みながら自らも体を前に詰めて肩をぶつける。
「朱鷺は・・・大丈夫ですの?」
状況が落ち着いてしまった雰囲気を嗅ぎ取って大人しくしていた鶸が不安そうに駆け寄ってくる。
「問題ないよ。菫が相手ならともかく【審判】が無くなった今、限定空間内なら朱鷺は絶対に紺に負けない。」
鶸は俺の絶対という言葉に少し驚きを見せる。未知のスキルの可能性を考慮するなら絶対は無いと考えるはずが、絶対であると答えたことがある意味不思議な事であったからだろう。菫が護衛も兼ねてか戻ってくる。菫も状況を任せたのが不思議なのだろう。
「紺は・・・というよりチェイスにいじられたミーバといえど進化体になった時点で成長傾向は変らない、というのは見えていた。後付けでいくらでも奪える可能性がある紺だけがその例外になり得るはずだったが・・・紺はそれを選ばなかった。紺がチェイスを心を忖度していたのもあるだろうが、審判を頻繁に使うのは天上の監視もあって難しいんだろう。」
話に興味を持ってトウ、ユウ、クロも近寄ってくる。紺が引き朱鷺が詰め寄る。紺が手を振りかざせば朱鷺は間合いを更に詰めて拳を叩き込む。紺は拳の勢いに乗って後ろに引きながら手を振り抜く。朱鷺は当然それが分っているかのように後ろに下がる。朱鷺は少し考えるような仕草を見せて剣を鞘に収めて拳を構えて紺を挑発する。紺は苛つくかのように前にでてくるが、朱鷺は紺の振りかぶる手を取り背負い投げのように紺を振り回して地面に叩きつける。
「忖度?」
トウが声を出す。
「場を面白くしよう、盛り上げようとしている傾向が特に強く見られた。チェイスは盤面全体の戦力を極端にしないように調整しながら最後まで天上の楽しみを減らさないように努めていた・・・と思う。だから俺を妨害したり、他にてこ入れしたりしてたんでは無いかと思う。紺とチェイスの間にどれだけのやりとりがあったかは分らないが、紺はその影響を強く受けてしまったと思う。チェイスが見切りを付けたにも関わらず、紺がその意図を読み取れないほどに。」
障壁の中では俺以外にとっては不思議な光景が広がっているように見えたろう。【審判】と【絶断】の二つがそろってこそ紺はやっかいな相手だった。【審判】だけなら触らせなければいい。干渉範囲が接触、そして執行にワンクッション置いてしまうのが【審判】の難点だ。【絶断】は斬りたいものを断つスキルだ。【審判】より範囲は広く取れるが、切るという動作、そしてその時切るべきモノしか斬れない。紺が間合いを詰めれば朱鷺も合わせて間合いを潰す。そして振り上げる手を止める。離れてもつかず離れず。だた紺の方が脚が早いのでどうしても差は開くが障壁で制限された空間によってその差を無限に広げることは出来ない。間合いが離れた所で紺が刃物を投げても朱鷺はそれを回避するか収納から何か袋を投げつけて受け止める。
「【審判】が自由に執行できるという点が紺と戦うにおいて最も面倒な課題だったが、【絶断】無ければそれはそれでやりようがあった。偶々はまったというのは否めないが結果的に【審判】が機能不全になったことで朱鷺が対紺にぴったりはまったという感じかな?」
「私達にはある程度貴方の感情が流れてきますが、そちらの方々にはわからないのでは?」
鶸が微妙な目線を俺に向ける。いつの間にか足下にひっついている萌黄をあやしながら俺は頭を掻く。
「接触即死と切断即死がある相手に対して接触即死が無くなればどうすればいいか、その答えの一つがアレだ。」
俺は戦うにおいて問題だったことを挙げながら戦場を指さす。朱鷺は丁寧に紺の手刀の振り上げを自らの軌道に入られる前に掴み、止める。飛び道具に対しては袋を投げつけて止める。回収も忘れない。
「切りたいモノを切る・・・切りたいと思ったモノしか斬れない。そして斬られなければ斬れない・・・ということですのね。」
クロが疑問点を解消する。
「そうだ。【絶断】は斬る行為だけでありとあらゆるモノを斬れるが、斬りつけている物自体の切れ味を増やしているわけでは無い。ゲーム的に言うと攻撃するときに好きなキラー系を付与しているといった所だけど・・・この表現は分りづらいか。」
「いや、何となく分った。だがあらゆる物を斬ると思ったときはどうするんだ。」
ユウは尋ねる。
「その時は世界ごと斬れるから何が起こったかすぐ分る。ただ実際にはその指定はできないと見ている。それなりに大きなカテゴリで指定できるとは思うのだけど、複数の切断指定が出来ない。ただし『指定の敵を斬る』とした場合は装備品ごと斬れるてるな。」
俺はユウの考えを補足してやる。
「んー?今紺は朱鷺を斬ろうとしているんだろうけど、朱鷺と袋を両方斬れないってこと?」
萌黄が無い頭で考えている。
「大体そうだろうな。世界を斬っている場合は回避するし、紺自体も斬った世界に侵入することは出来ない。紺の動きを制限しかねないからむやみには出来ないだろうし・・・自爆覚悟で破壊し尽くすのも無理だろう。そっちは天上から待ったがかかるよ。」
「そもそも朱鷺は何を投げているですの?」
俺が説明すると鶸が眉をひそめて袋に疑問を持つ。
「袋は中身を悟られない為だろうけど・・・たぶん食材の詰め合わせじゃないかな?あとおやつ・・・」
俺は苦笑しながら予想を口にする。全員の目が点のようになっているのも理解は出来る。ただそれほど紺はたいしたものを投げつけていないのだ。普段ならもっと多彩なものを投げつけるだろうが、【絶断】に固執するあまり攻撃の幅が著しく減っている。相手を小馬鹿にしながら戦うのが紺の本来のスタイルで、そして紺は元々の仕様が敵を倒すことに向いていない。体術とアーツを駆使してようやく倒せるかどうかなのだから。
「複数の食材を詰めてると思う。野菜と肉と、もしかしたら食器とかまな板も入ってるかもな。」
「確かに軽そうなカミソリでは貫通でき無さそうですね・・・意外にも意外ですが。それで【絶断】の仕様である斬りたい物しか斬れない・・ですか。」
トウが説明を受けて納得する。朱鷺を斬ろうとカミソリを投げても野菜や肉にざっくり刺さって袋は貫通できまい。その中にある物が予測できたところで複数のカテゴリを指定出来ない以上不壊鉛のカミソリでも袋を貫通するのは容易ではないし、貫通しても朱鷺に勢いがそがれて当てるのは難しいだろう。
「接近して対応しているのは紺の手刀を振り切る前に止める為ですね。」
菫がそれを口に出して納得したところで対紺は概ね終わりだ。斬った所しか斬れない【絶断】は斬られる前に止めてしまうと機能しきらない。手刀で何か斬れたとしても腕で斬るヤツはいないだろう。少なくともシステム的にはそう判定されている。手の甲、足の甲、あとは触手の先端部くらいか。ある程度スピードが乗って力が乗り切る部分にしか切断できるという判定は無い。蘇芳あたりなら丸太で大木が斬れるかもしれないが、紺にそんな力は無い。無いはずだ。
「魔法を受け止めたみたいにワイヤーで斬られるとまずいのでは?」
桔梗が口に出す。
「あれも曲芸みたいなもんだろうけど、ワイヤーで斬るにも物に当てて引く必要がある。それをしないということは紺も朱鷺に対応されるのが見えてるからだろう。もしくはここぞに取っている可能性はあるけど、実際のところ肉をばら撒くだけで対応できるだろうね。」
俺が口に出すと、桔梗はあっと口を開ける。朱鷺が普段使わないのに食材を収納に入れてるという発想が皆には無いのだろうが、彼女は今でも俺の世話役のつもりなのだ。初期の頃は装備品だけで所持品を埋めることなんてそうそう無かったからな。かいがいしく世話されていた頃が懐かしいわ。
「どちらが実際に強いのかと言われたら、最初から敵対している、突然遭遇する、仲違いする、戦闘の開始状況や個々の戦闘スタイルもあって一概にどちらが、というのは比較しづらいのはある。細かいシステム的な話になると、M型とC型でありながら朱鷺と紺は行動処理速度も行動回数も同じだ。紺はC型にありがちな潜伏からの必殺が信条のはずだが、朱鷺がまず隠れることを許していない。この時点で紺の主要な潜伏系のスキルが機能していない。朱鷺は近接戦闘能力が紺より高いことを生かしてカウンター寄りの対応をしている。相手の攻撃を逐一潰しながら、相手が手詰まりになったところで体術カウンターを行う。投げが中心だな。倒すとその後の行動に制限がかけられるからだろうけど。ここから起き上がって攻撃、逃げるにしても朱鷺の読みから抜け出すのは難しいだろう。紺が朱鷺に対して相性がいいのは魔法くらいだが、紺はその魔法自体も本人の特性上高い攻撃力を持たない。朱鷺を倒す前に紺は倒れることになるだろう。距離を離して隠れられたり、俺達を足手まといにするなら話は変るけど、その為に戦場を限定させてもいる。まぁこの広間全部を使われても全員で飽和攻撃すれば、となるけどそうすると犠牲がでたり逃げられる可能性があったからな。逆にこうしたほうが安定だった。」
俺の解説に萌黄以外は納得したようだ。剣技も体術も朱鷺の方が紺より高く、そもそも紺が近接乱打戦を得てとしていない。経験の差も明らかだ。朱鷺が紺の意思を読み紺の得意な戦場にさせない。それだけで朱鷺が負けない理由に足りる。初手で紺が離れて隠れられる事だけが唯一の負け筋だったが、紺が冷静さを欠いたことでそれも無くなった。紺が負傷していたことも含めてHPの差もある。朱鷺の稼働時間が一つの懸念ではあったが紺が負傷していたことでそれも無くなった。
「そろそろ詰めますよ。」
朱鷺が微笑みながら紺を追いかける。紺が苦しげな顔をしながら逃げて刃を投げる。朱鷺が読み切るかのようにその軌道から外れながら間合いを詰め紺の手首を掴む。引き寄せ崩し腕をひねり上げ逆関節に極める。
「貴方の言うとおり・・・手札の数が戦いを勝利に導く。」
腕を折り機能不全にさせまいと紺が触手で抵抗する。
「そう手の数が。」
朱鷺がそれを自らの触手で妨害しつつもう一本の触手で帯剣し肩口から紺の腕を切り落とす。割とえげつない。残った腕は満足に動かず、そしてもう片腕を完全に失う。
「まだ抵抗しますか?」
腕を遠くに投げ捨てながら朱鷺が勧告する。紺はふらふらと立ち上がり抵抗の意思を見せる。
「残念です。何がそこまで貴方を駆り立てたのか。」
朱鷺は理解出来ないと頭を振る。
「お前に・・・何が分るっ!」
紺が激情に任せて襲いかかる。
「わからないからこそ・・・ですね。」
朱鷺は弱々しく振り上げられる手を掴み、引きつけ、容赦なく投げて地面に叩きつける。
「ただ私達も貴方と同じ想いのはずなのです。ご主人様を害する者に容赦するいわれは無い。」
朱鷺は投げつけたその手をそのままに、触手で剣を振り紺の首を飛ばした。そこから更に念を入れるかのように胸の中心を貫く。何かしらの術で欺されるたかもという懸念もあったのだろうが、魔石を回収してやる事もないという朱鷺なりの意地が見えもした。
-支配下進化体『紺』が死亡しました。-
システム的にはまだ仲間扱いだったんだなとログを見て侘しく思う。ログを見て桔梗に手を挙げて見せて戦いが終了したことを告げる。桔梗もそれを察して戦場を覆っていた障壁を解除する。
「ご主人様終わりましたよ。」
朱鷺が笑顔で走り込んできて報告する。
「ご苦労だったな。」
朱鷺を撫でてやりながら笑顔で答えてやる。だが朱鷺は喜びを表現しつつも表情は真面目なままだ。
「まだ救えるとお思いでしたか?」
朱鷺は確認を込めてか、それとも整理をさせるためか声を上げた。
「紺は菫に代わる情報収集専門ユニットとして希望した奴だった。手元に置いておく時間は確かに短かったし・・・たらればばかりになるな。何にせよ俺は紺にシステムの寵愛以上に喜びを与えてやれなかったんだろうな。」
俺は朱鷺を見た。
「救えたかどうかで言えば、今の段階ではもう無理、手遅れだったろう。裏切ることを前提にするのではなく、裏切られない過程にすべきだったんだろうな。」
朱鷺にはそう答えた。最初から警戒されそれでも良しとし、癒着が確定しても良しとし。そこに愛は無かったと思われても仕方なかったのかも知れない。利用するだけの関係だったとも言えるだろう。
「それでも・・・こういう結果にならないで欲しいとは思って行動していたつもりなんだけどなぁ。」
そう言って俺は天井を見た。
「紺とクロの違いはなんだったのでしょうね。」
菫はチェイスに従い続けた者と抗った者を挙げた。
「愛の差・・・というのはおこがましくはありますが、注がれた愛情の差とも言えるのでは無いでしょうか。」
奥の通路から神谷さんと藤が現れる。クロは神谷さんに駆け寄り腕を絡め取る。クロってあんな性格だったろうかと思うくらいにはべったりな感じだ。心細い、不安という要素も見え隠れする。
「紺は役割上チェイスからの指示も恩恵も多かったようですし、反面クロは指示が少なく頻繁に連絡が来たりはしていなかったようですし。」
監視役でありながら報告し成果を得ることも、そして指示もほとんど無かったという。
「クロを支配していたのは喜びよりも恐怖。捨てられるかもしれないという恐怖こそがクロへの枷だったようです。」
神谷さんがクロを優しく撫でながら言う。紺にはすでに代えがたい喜びがあり、クロにはそれを失う恐怖の方が多く、少しでもそれを与えてくれる神谷さんがいるほうが良いと判断したのか。
「取り敢えず神の干渉が無くなったのは行幸ですね。」
藤が周囲の惨状を見ながら言う。
「干渉が零になった訳じゃ無いぞ。」
「それでもここ最近の頻繁な干渉に比べれば些細なことでしょう。」
教会を通せば正規の干渉はできるし、天井側からもなにかしら出来ることがあるだろう。
「状況を見た限りでは敵対する神に粗相が見つかった様子ですから、なお手は出しづらいでしょう。」
藤は手で口を隠しながら楽しそうに笑う。
「神谷様の力で様々な問題が解決しましたし、あとは指定と器の問題だけですね。」
藤は喜ばしいと笑顔である。
「まぁ【杖】があるからエネルギー問題はすぐ解決するよな。残り二つに関しては・・・まぁ当てがある。」
俺は大きなため息をついて藤に言う。
「ほう、それは素晴らしい。検討を始めましょう。」
藤は前のめりになりながら興味を示す。
「この場ではちょっと何なんで・・・待たせてるヤツもいるし一旦戻ろう。」
俺は悩みを抱えたまま立ち上がり出発を促す。
「んー、私がここ離れるのも・・・まぁ孫の貴方ならこのまま解決しそうですし、私も心を決めましょう。」
藤は一瞬の悩みの後俺達についてくることに決めたらしい。
「私も混ぜてもらえるんでしょうね。」
鶸が魔法に関する話だった為か興味を持つ。
「んー、ちょっと難しいかもな。」
俺は苦笑いして鶸に答える。鶸はどうしてと言わんばかりに表情を険しくする。
「上に秘密にするための処置をすると主人との繋がりが切れるんだと。どういう感覚なのかはクロに聞いてみれば良いと思うが、話から予想するとあまり気分がいいものじゃなさそうだ。」
そう聞いて鶸が大いに悩み始め、そして大きなため息をついた。
「取り敢えず保留にいたしますわ。」
鶸は問題を先送りし、そしてパタパタとクロの元へ走った。
「さて・・・戻ったら終活を始めるぞ。終わるために行動を始めよう。」
急にピースがそろい一矢を放つめどがついた。世界に神を呼びその心に楔を撃つ。その後、盤面を速やかに終わらせる為の仕込みも行なわなければならない。
「少し・・・大分か。忙しくなるぞ。」
「今更ですわね。」
「「ご主人様の意のままに。」」
「萌黄もがんばるよっ。」
神谷さんも始まるんだとぼそっとつぶやき、藤が首をかしげる。俺は紺の死体を一瞥し、そして足早に外に向かう。
「出るならこちらの方がはようございますよ。」
藤がパンと手を叩き別の通路が現れる。締まらんなぁと思いながら俺はきびすを返してその道を進んだ。先延ばされていた盤面の終わりが急速に進み始める。




