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僕、試す。

 領主の館の前で門番に到着したことを告げる。門番は聞いてはいたようなのですぐに館内に連絡を入れる。1分くらい後に狼のメイドさんがきて案内される。少し早かったのか長引いているのかヴィルバンの仕事が終わっていないようなので応接間で待たされる。出されたお茶をちびちびしながら待つ。思ったより時間がかかるので手持ちにあった神涙滴の欠片をうねうね変形させながら暇つぶしがてらに訓練する。細く長く東京タワーみたいな骨組みを作っていた所でドアが開いてヴィルバンとヒレンが入ってくる。

 

「またせたねって、余り恐ろしい遊びはやめてくれるかな。」

 

 狐の顔は恐縮してたのか全くわからないが、入ってくるなり顔を手で覆ってる当たり変なことはしないでくれと言わんばかりである。ヒレンは興味があるのか透明に輝く電波塔を見ながら軽く拍手をしている。拍手はあるのか。

 

「またそこらの貴族に見せたら体ごと狙われそうなオブジェだね。神涙滴だよね、これ。」

 

 ヴィルバンはソファーにどかっと座って、テーブルの電波塔を指して聞いてくる。

 

「この間なにか作った時の余りかな。なんとなく懐に片付けたやつだと思う。いる?」

 

 いくらでも、とは言わないけど世界的に見たらアホみたいな量が倉庫から出てくるのでこのくらいなら大したことがない量である。

 

「いや、やめとく。もし見つかって追求されるのが怖い。ものすごくめんどくさい。」

 

 ヴィルバンは顔をそむけて心の底から嫌そうに手を振っている。ヒレンは地味に残念そうだ。暇つぶしをする必要もなくなったので電波塔はさっと収納してしまう。ヒレンがあっみたいな名残惜しそうな顔をしたのが印象的だった。やっぱB型ってああいう美術的というか技術的な構造物が好きなのかね。

 

「もう少ししたら食堂で簡単な食事会でも行おう。今、準備中らしいのでね。」

 

 ヴィルバンはソファーで姿勢を正しながら言う。

 

「それじゃあ、先日の続きで少し質問だけ聞いておこうかな。」

 

 僕は何があったかと考えながら尋ねる。

 

「前も言ったとおり、私の知る限りの範囲内で教えてあげよう。ただし盤面内のことについては君のほうが優れていると思うけどね。」

 

「今が二年目相当ならもう少し先まで言ったということでしょ?得るものがあると思うよ。」

 

 ヴィルバンは軽く笑いながら手を振っている。

 

「じゃあ、せっかくだから報酬はどんなものがあったの?」

 

「その辺は神様も言ってたとおりだよ。活躍ポイントみたいなのがあってソレの範囲内ならなんでも。たぶん私達が思いつく程度のものなら何でも叶えてくれるよ。上位存在に手を出すのはそれ相応のポイントがかかるけどチャレンジだけはしてくれるみたいだよ。私は選ばなかたけど。」

 

 僕はふーんとうなずきながらチェイス様は本当に嘘は言ってないんだなとだけ感じた。

 

「ちなみに兵数の最大はどのくらいだった?」

 

「兵数か・・・純粋に戦闘を行う意図で集めたのはミーバで8000くらい。現地民で5000くらいだったかな。それに兵站維持と拠点管理で200くらいかな。」

 

 意外と少ない。というより現地民を巻き込んだのか。8000くらいだったら3ヶ月しないうちに集まりそうだけど。装備の問題か?

 

「装備品はどうでした?」

 

「一部のリーダーにはぎりぎりミスリル防具だったかな。指揮官って都合もあって武器は一般兵に毛が生えた程度だったよ。私自体も全ミスリルで魔戦士だったかな。一般兵は現地民の末端は鋼鉄だったかもね。ミーバは呪鉄ぐらいは使ってたけど。良くてもファンテ革、星鉄くらいかな。」

 

 よくわからない物質が出てきたので聞いてみると、鋼鉄の2倍くらい硬さがあるくらいの物質らしい。ミスリルだと最低4倍くらいなので本当に鉄を脱却したころといった具合である。

 

「調べると最高級品はわかりやすいからね。上位陣は可能な限り購入するんだけど末期頃にやっと倉庫から取れるようになって。でもそこから装備にするのが大変でさ。揃える頃には時間切れって所。」

 

 おや、現物を手に入れたら倉庫から取り出せるようになるのは異質か?

 

「僕らは倉庫に納品するとそれが素材の数だけ複製できる感じなんだけど、そうじゃなかった?」

 

「いやいや、使うために買ってるのに倉庫に入れないでしょ。もっと早く気がついてればもっと楽できたのにねー。」

 

 ヴィルバンは笑うだけ笑って重いため息をつく。

 

「そもそも倉庫に入れた後無意識だと思うけど買った分だけだそうとするじゃない。ソレ以上出てくるって誰が思うよ。」

 

 ヴィルバンはなんかやけになってテーブルを叩いている。確かに何気なく毛皮とか増幅させてたけどそういうもんか。

 

「そう考えると本ってやばいわ。時間あればめちゃくちゃ有利だわ。」

 

 僕はソファーによりかかりながら天井を見る。

 

「本ってなんだ。」

 

 ヴィルバンはつぶやきに疑問をぶつけてくる。

 

「スタート時に特典として貰わなかったのかな?剣、杖、杯、本から選べって言われて知りたいことが多かったから本を選んだんだ。」

 

「あー、それは私達には無かったヤツだね。素材とミーバと現地情報だけだった。」

 

 ヴィルバンのときには無かった特典のようだ。聞いた限りの特典内容をヴィルバンに話す。

 

「その選択肢だと本はなかなか選べないね。正直、剣もって殴りに行ったほうが早いと思う。」

 

 ヴィルバンでもそう思うのか。獣人とか力こそパワーみたいな感じっぽいしな。僕は非力なんだ。

 

「三日もしたら隣の人とぶつかるくらいだからね。ひどい島だったよ。」

 

 その島も気になるね。

 

「よくよく考えたら君は本島にいるのか。それで五十年か。なんか納得だわ。」

 

「どういうこと?」

 

「私達が戦ったアストレイン島はコーサスト王国が収める島だった。私達が介入したことで内乱になってしまったのは少しだけ悪いと思ってるけどね。長いところでも馬で七日くらいの広さしかなかったよ。ここ本島なんてその20倍以上だからね。下手すると誰にも見つからず終わる人もいるんじゃないかと思うくらい。」

 

「うぇ?敵を探すのも大変な状況かぁ。なんてひどい。」

 

 ただでさえ200mも離れるとミーバからの情報は直接入ってこないのに自分で探すのは致命的なほど難しいのか。

 

「まあ確かに悩ましいところだね。細かいルールがどうなってるのかわからないけど。ただ選定者はこの世界に対してすごく歪な行動を取ることが多い。私達だって当時は各貴族の間で噂になって比較的早い段階から調略合戦だったよ。つまりは各国で起こったことを噂を集めるだけでそれとなく当たりをつけられると思うよ。」

 

 ヴィルバンは楽しそうにそう語ってきた。確かに一理ある。現地民と協力するのも大事なんだな。僕自体は手持ちだけでなんとかする気だったし。そう考えているとドアが開き白熊な執事が入ってきて食事ができたことを告げる。

 

「それじゃあ、食事といこうか。君の持ってきた肉が含まれてるのは簡便してもらいたい。なんだかんだで今の旬の商品だからね。」

 

 ヴィルバンの言葉に乾いた笑いを浮かべながら僕は食堂に案内される。無駄に広い食堂に長いテーブル。僕らだけで使うには大きすぎやしませんかね。

 

「余り遠いと話すのも大変だからそこに座ってくれ。」

 

 ヴィルバンは自分から一席だけ離れた場所を指示して座るように促す。ヒレンは僕の反対側のヴィルバンの反対側に座る。ヒレンが着席したので朱鷺にも座るように促す。

 

「朱鷺さんも食べられないわけではないだろうから、今後の参考に食べていってくれたまえ。」

 

 それから次々出てくる食事に僕らは舌鼓を打った。そういう傾向にあるのか僕らの食事に対してヴィルバン達の食事の量は倍くらいあったのに気にもとめずに食べきっていたのはちょっとおかしいと思う。食事の話となると僕が気に入った様子を見せると朱鷺がどんなものか確認したりだの食べ物中心の話で盛り上がった。結構盛り上がって時間も遅くなってきたのでヴィルバンは客室を用意してくれた。確かに今から帰ると真っ暗でどうなるかわからない。その言葉に甘えて一泊していくことにする。そしてふと思い出してお土産として持ってきた日本酒を手渡す。

 

「気にしなくてもいいって伝えてたのに律儀な。でも前ほど無意味に高級品じゃなさそうで助かるよ。飲んだことがない酒だし楽しみにさせてもらおう。」

 

 別れ際にヴィルバンがそういって目を細める。

 

「あ、そうだ。最後に一つだけ。財貨って何に使いました?」

 

 僕は使い道のない資源について聞いてみる。

 

「そうか、確かに君は一人で開発を進めてたんだったね。だからこそ気が付かなかったんだろうけど。」

 

 ヴィルバンは納得してもったいぶるように窓の外を見つめる。

 

「財貨は選定者と現地民を結びつける素材だよ。人を動かし、物や情報を集める、自分だけじゃ出来ないことをするための素材だ。」

 

 ヴィルバンは踵を返して去り始める。

 

「君ぐらいの開発力があったら確かに困らなかったかもしれないけど、これから先さらに大きくしようと思ったら必ず必要になると思うよ。」

 

 ヴィルバンは手を振りながらよい夢をと言ってそのまま去っていく。

 

「現地民のための素材か・・・なるほど。」

 

 集めるだけではさほど意味がなく現地に戻す時に意味が出てくるか。ミーバはともかく現地民はただでは動いてくれんわな。この都市でごく自然にしていた事ではあるけど言われて納得した。

 

「んじゃ、今日はおとなしく寝るかな。」

 

 僕は背伸びして部屋に入る。朱鷺も気にせず部屋に入ってくる。

 

「安全に見えるかもしれませんが彼らとて絶対ではありません。見張りは必要です。」

 

 朱鷺が力いっぱい主張してくる。なんか見られてると眠りづらいのだけど・・・僕はちらちらと朱鷺の視線を感じながらもぞもぞしていたが、そのうち眠気に負けて夢の中に沈んだ。

 

 翌朝起きるとベッドの傍らには朱鷺が立っている。

 

「ご主人さま、おはようございます。」

 

「あ、ああ。おはよう」

 

 ずっと見られてたのか・・・僕は反応に困りつつ返事を返して着替える。正直じっと見られると恥ずかしいんですけどねっ。しばらくして朝食に呼ばれてもうしわくなく頂いてから館を出る。

 

「じゃあ、また何かあったらね。」

 

 ヴィルバンは笑顔らしい表情をしながら軽く手を降って見送りしてくる。ヒレンは後ろに控えているだけで非常に読みづらい。僕らは礼をして街を出て帰路につく。途中で馬車や獣とすれ違ったりするも特に何もなく拠点にたどり着く。拠点に着くとB型が細長い銃を渡しに来る。

 

「お、完成しましたかー。」

 

 ロングライフル ATK490 射程1300m CT1.2

 

 ぱっと鑑定するとロングライフルとなっている。おー、興味津々でいろんな角度から眺める。小さいながらもマガジンが着いている。B型によると発射間隔が短くなりすぎて収納入れ替えの思考制御が大変になったのと、連射機構の問題でタイミングが悪い時に収納装填すると詰まり、暴発してしまったかららしい。五発か十発マガジンごと入れ替えるほうが最終的な不具合は減ったとのこと。とりあえず受け取った五発マガジンで試し打ちする。訓練場の的に向かって構える、狙って引き金を絞る。続く爆音が五回。最初の一発はまともに飛んだが反動が思ったより強く驚いて抑えきれずに残りはあらぬ方に飛んでいく。

 

「あー、びっくりした。思ったより反動が大きい。分かってれば抑えられそうだけど。」

 

 僕は大きく息を吐き心を落ち着ける。朱鷺などはよほどうるさかったのか耳を抑えている。

 

「もうちょっと音を抑えられるといいね。サイレンサーってどういう原理なんだろう。あとは火薬の調整とか?」

 

 そもそも音って振動だと思うけど火薬でなんとかなるんだろうか。

 

「サイレンサーで音が小さくなるかもしれませんが、魔法で対処したほうが早いと思います。」

 

 朱鷺がしかめっ面で助言をしてくる。

 

「MP節約のために銃にしたのに魔法に頼るのもねぇ。」

 

 僕は銃を構えて狙うふりをして答える。

 

「その都度使うというより先日武器にした頂いたように魔法付与してしまうほうが良いでしょうね。」

 

 銃の魔道具化か。量産性が落ちるのが難点かなぁ。

 

「事前の弾薬準備の手間も考えると魔導銃に一本化したほうがよろしいかと思いますが。」

 

 それを言われたらどうしようもない。なんというか浪漫なんだけどなぁ。魔法世界で物理無双したいっ。朱鷺はしょうがないですねぇといったため息をついてそれ以上は言わずに何か思案をはじめた。その後魔法で音を沈めながら一時間ほど試射にふける。加熱、摩耗、反動など潰す課題は多かったがほとんどのことが「魔法で」という解決になってしまったのは、薄々感づいてはいたものの悲しい事実だった。諸々相談した結果、長身、大口径化して狙撃特化にし加熱、反動などの問題点は魔法付与で排除する方針にして少数生産で補助的運用に留めることになった。僕個人に関しては主武器になる予定ではあるが。翌日には非実用品が出来上がる。

 

 試作スナイパーライフル ATK980 射程2400m CT1.1

 

 一発ならともかく僕では反動を抑えることもできず、朱鷺でも立射で反動を抑えるのはかなり必死なようで銃口がぶれる。何より二十連射もするころには銃身が壊れる。欠陥品であり運用には耐えない。昨日から開発を進めていた制音小道具、反動反転、定熱維持の魔法付与を行って撃ってみる。無音の爆発と発光。慌てる朱鷺。四散するライフル。破片が左手に突き刺さり肉が飛ぶ。予想外の痛みで叫ぶが声は響かず。B型医療術師が急いで回復術を使う事態となった。

 

「あー、痛かった。びっくりしたわ。」

 

 僕はちょっと涙ぐみながら治った左手をさする。朱鷺は今にも泣き出しそうな顔で僕を睨みつける。僕はごまかすように朱鷺の頭を撫でながら謝る。B型と検証した結果反動反転で銃身と薬莢が耐えられなかったのだろうという結果だった。反動消去のほうがコストが重いのと、威力が上がるかもとか思って反射にしたのが問題だったようだ。最も耐えられないなら耐えられる素材にすればいい。そして最近出番が多い氷石の出番となる。

 

 冷魔式スナイパーライフル ATK1105 射程2600 CT1.1  布100 石700 金属400 魔石20

 

 反動反転付与を行うことで威力固定ながらも攻撃力はついに4桁の大台に乗り込む。氷石は温度耐性が高いので定熱維持は一旦保留。

 

「ふははははは。」

 

 僕はあまりの撃ち安さに狂ったように連射する。的はすでに木っ端微塵。この威力で一分55発程度の連射力。そろそろ石壁が壊れて穴が開きそうである。

 

「はー、ここまでくると馬鹿にできるものではありませんね。装備のゆるい民兵は手も足もでないでしょう。」

 

 朱鷺は素直に称賛する。そう。言葉の中に含まれる通り防御が100に満たない90程度でも秒殺レベルなのだが、100を超えているまたは手持ちの貫通射撃で超えられない防御を持っているエリート層には全く無力なのである。下手な鎧なら数分で消し飛ぶとは思うが、相手がずっと当たってくれるならという前提も含まれる。そして朱鷺クラスのステータスになれば鎧がなくても貫通しないときている。

 

「徹甲弾で防御貫通できるかはまた実験かな。一旦はこれでいいでしょ。」

 

 銃自体はこれでよしとして、後は射程を活かす為に2km先を見ることができるスコープか魔法が必要になる。スコープはB型研究班にまわして、魔法は本で構築する。強化術Ⅲ【視覚強化】を構築。遠くを見るだけでなく、暗がりにも対応できるすぐれものである。防御術Ⅴ【周囲捜査】も負荷が高いが構築しておく。二kmまで捜査すると時間と消費が大変だが、物陰など見えづらい所にも対応でき隙間があれば建物の中も調べられる。スキルと併用すれば魔法で隠れている者も検知できる。次は朱鷺にひたすら心配されている防具に手をつける。一昨日にナーサル市で手に入れた革製品の強度や性質を実際に触ったり本で調べながらどれにするか考察する。

 

「日本にいたときは武器は興味で調べたけど、防具って考えたことなかったなぁ。」

 

 防弾チョッキくらいは存在を知っているが、どんな中身かはよくわからない。防刃ベストとかもあった気がするけど。SFみたいにパワードスーツがあるわけでもなくいまいちピンこない。現代兵器の威力に対して守れる防具の取り回しが悪すぎるという感じがする。逆にこの世界は防御が硬すぎる。しかも単純威力では防御をどうやっても貫通できないときている。核兵器の爆発の中を無傷で立っていられるとか想像もできないし、試したくもない。

 

「革製品は軽量で動きやすいといった物が多いですが硬いものは硬いですね。金属は革と比較すると重く硬いですが鎖状にするなどして柔軟さを出すこともできますし、必ずしも金属だと動きが鈍るということでもありません。真銀は革ほどでないにしろかなり軽い金属ですよ。そもそも筋力増加に伴って装備の重量自体は余り気にならなくなると思いますが。」

 

 軽戦士が多い関係で見送られていたが重装兵も増えたことも有り、特別思いつく防具のあり方もなかったので金属の構築も進めるとする。と思って構築準備をすると全部見るのがいやになるほどリストに並ぶ。現代の合金が多いのだが炭化なんたらの合金がこれでもかと出てくる。適切に使える自信がまったくないのでこの世界由来の魔法金属にしぼることにする。以前知らされた真銀(ミスリル)生金(オリハルコン)不壊鉛(アダマンタイト)に加えて幻銅(ヒヒイロカネ)流星鉄(ガルヴォルン)地獄土(ヘルソイル)を構築。どうせ性質はわからないので目についたものを選んで構築を進める。ついでに気になったので防弾、防刃チョッキも構築してみる。


「取り敢えず革防具のほうを進めようか。」

 

 ローブやシャツ、裏地に関してはスパイダーシルク関連が鉄板。グレーターは比較的安く汎用性が高い。尖った要素もなく癖もない。ただ熱、火に弱い。普段遣いなら問題ないがいずれ戦闘や戦争になることを考えると不安感が残る。ヘルスパイダーとかいう恐ろしげな蜘蛛の糸は熱や火に強いが少々硬い。ヤスリかと思う表面は直接肌にふれるにはそこそこ痛い。防御100前提なら悪くないかと思ったが、朱鷺曰く常に攻撃されているようなものなのでそれとなく肌触り的に不快感は感じるようだ。細い竹ひごかと思うかのような弾力性で加工が難しい。正直加工性に関しては一度作れば無視できる案件なので僕らにはあまり関係ないが。手持ちの素材で解決出来ないかと思って本で探すと天上綿花、奈落蚕、龍の髭が当たる。龍の髭は買い物の中にあったがあの人の腕もある髭で服が作れる気がしないのだが。その実髭も布ではなく現在は財貨勘定である。天上綿花、奈落蚕は知識は得られるが現物は手に入らない。それぞれの製品の形であるセレスティアルコットン、インファーナルシルクという製品の形で構築する。髭はドラゴニッククロスとして構築できるのだが現物が手元にあるので一旦加工法を模索する。最も模索するも何も本で調べるか構築するだけなのだが。幸いスキル構築枠は空いているので問題はなかったが、【髭加工】とかいう正直想像に困るスキルが出てきて乾いた笑いが止まらない。

 

「獣や魚が大型化すると髭を加工する機会は意外とありますよ。」

 

 朱鷺の言葉になんとなく納得するがカルチャーショックを感じる。構築に少し時間がかかるのである程度革装備を試作してから残りは訓練に当てる。

 

 翌日【髭加工】の出番がやってくる。専用工具を使って素材に沿って薄く削り取る。そんな作業で細い糸のようにする。用途次第で太さを変えたりするようなのでいくつか種類を作る。そうやって作業をしているとなんだかカニカマを食べたくなってくる。糸をミーバに渡して布にする。倉庫に入れて量産成立。そのうち別の用途もあると思って髭糸の束を倉庫に入れる。財貨勘定だった。布にしないと布在庫にはならないか。倉庫のアバウトさには助けられてはいるが、明確な基準が見えにくいのも確かである。以前も獣一体分の毛皮をいれると財貨になるが切れ端だと布になるという、素材として同じように見える物でですら用途違いで別れてくるのである。愚痴。目標であるドラゴニッククロスが出来たところで防具加工再開と思ったが、再開した瞬間にドラゴニッククロスが裁断できないという悲劇が発生して頓挫する。

 

「頑丈なのはいいけど布としては欠陥品だな。」

 

 編んでいるので頑張れば針を通せないわけじゃないのだが一刺し一刺し苦労しすぎて加工が進まない。特殊な加工スキルがあるのかと思ったがない。製品があるという話は聞くのに加工法がないのはおかしいと散々悩むが、悩んだ時間が無駄だったというぐらいには本で解決される。

 

「加工法は同じでも道具が特殊な場合か。」

 

 魔鋏と言うべき魔剣のような魔力を付与された道具が世界にはあるようだった。ゲーマーとしていかに戦闘に意識が偏っていたと反省する。必要量も少ないしと陽光石を使って裁縫道具を作る。最初は神涙滴にしようと思ったのだが透明な道具は落とすと見つけるのが大変すぎた。有り余る容量に必要過分な付与を施し世界の裁縫業者が呆れて羨む道具が完成した。朱鷺も若干呆れたように見ているが、手頃な金属が無いんだから仕方がないだろう。

 

「はははは、切れる切れるわ。」

 

 髭布もたやすく切れる鋏は調子に乗りすぎて鉄板も僕の指も切り裂いた。朱鷺にめっちゃ怒られた。

 

 龍布のローブ DEF+32 MDEF+38 布35800 金属200

 龍布のシャツ DEF+12 MDEF+8  布11600

 龍布のジャケット DEF+24 MDEF+18  布17200 金属200

 龍布のズボン  DEF+24 MDEF+18 布14800 金属200

 龍布のコート DEF+37 MDEF+30  布43500 金属200

 

 防御性能はそこそこに見えてもシャツやコートなどは防具次第で重ね着可能なので総合防御力は相当に高い。思いの外布の消費量も多かったが。量産品に関しては後から構築される素材に期待しよう。僕はシャツ、ジャケット、コートと装備してDEF+73と大幅アップ。朱鷺は激しい動きの邪魔になるコートは遠慮してきた。ジャケットの上から使える大きめの防具を希望してくる。既存の技術のまま龍鱗をつかってスケイルメイルにして朱鷺に与える。

 

 龍鱗鎧  DEF+43 MDEF+40 布67200 石1000

 

 ミーバ時期の名残りなのか足を束縛されるのを嫌うのでスカートタイプになっている。原料の都合で布の需要が爆上がりなので麻畑と倉庫の拡充も行うことになった。

 

 後日構築された素材を使い天上綿で布装備を作り、コストがかさむものの流星鉄で金属防具を作り一旦装備造りは終了することになる。

 

 天上綿のローブ DEF+19 MDEF+10 布1700 金属100

 天上綿のシャツ DEF+7 MDEF+3  布900

 天上綿のジャケット DEF+12 MDEF+4  布1300 金属100

 天上綿のズボン  DEF+12 MDEF+4  布1100 金属100

 天上綿のコート DEF+22 MDEF+8 布2000 金属100

 

 剣歯蛇レザー DEF+27 MDEF+19 布3700 金属350

 流星鉄のスケイル DEF+34 MDEF+15 布500 金属5200

 流星鉄のプレート DEF+47 MDEF+19 布500 金属7700

 

 流星鉄円盾 DEF+14 MDEF+8  布300 金属2700

 流星鉄大盾 DEF+22 MDEF+10  布400 金属3800


 冷石短剣 ATK+92  石700 布150 木100

 冷石剣 ATK+97  石900 布200 木200

 冷石槍 ATK+97  石870 布200 木300

 

 魔獣合成弓  ATK+88  布400 木200 財貨150

 魔獣合成長弓 ATK+107  布500 木300 財貨220

 強化回はここまで。次回から種火をつけながらの戦争回に以降します。

 通常装備に財貨は使いませんが、弓を作るのに魔獣の骨を使ったので財貨が含まれています。


 M型

 STR:184[↑57] VIT:171[↑48] DEX:160[↑46]

 INT:131[↑38] WIZ:143[↑42] MND:123[↑35] LUK:10

 MV:10 ACT:1|2 Load:589 SPR:303

 HP:352 MP:274 ATK:269|251 MATK:254 DEF:66 MDEF:53

 スキル:玉砕、剛力

 

 C型

 STR:159[↑46] VIT:141[↑40] DEX:202[↑58]

 INT:166[↑48] WIZ:174[↑50] MND:160[↑44] LUK:5

 MV:15 ACT:1.4|1 Load:509 SPR:376

 HP:282 MP:340 ATK:260|281 MATK:326 DEF:68 MDEF:66

 スキル:先制、索敵

 

 Y型

 STR:144[↑43] VIT:191[↑58] DEX:154[↑40] 

 INT:142[↑42] WIZ:171[↑42] MND:174[↑45] LUK:7

 MV:7 ACT:0.8|3 Load:729 SPR:325

 HP:402 MP:313 ATK:221|226 MATK:316 DEF:69 MDEF:69

 スキル:荷運び、頑健

 

 B型

 STR:128[↑41] VIT:126[↑40] DEX:165[↑49] 

 INT:187[↑58] WIZ:186[↑57] MND:185[↑56] LUK:16

 MV:5 ACT:0.7|4 Load:432 SPR:351

 HP:252 MP:373 ATK:210|229 MATK:372 DEF:58 MDEF:74

 スキル:並列作業、集中

 

 朱鷺 護衛 軽装兵Ⅲ

 STR:421[↑151] VIT:386[↑140] DEX:391[↑138] 

 INT:305[↑100] WIZ:324[↑106] MND:293[↑105] LUK:50

 MV:12 ACT:1.4|4 Load:1328 SPR:715

 HP:892 MP:629 ATK:676+15|631 MATK:598+373 DEF:155+79+14 MDEF:123+66+8

 スキル:散華、剛力、料理Ⅴ

     剣Ⅴ、軽盾Ⅴ、軽弓Ⅴ、重撃Ⅳ、体術Ⅳ、貫通撃Ⅴ、貫通射撃Ⅳ

 装備:神涙滴の剣、冷石剣、龍鱗鎧、龍布のシャツ、龍布のジャケット、流星鉄円盾、冷石短剣、魔獣合成弓

 

 紺野遊一郎 グループなし 戦術師Ⅲ 

 STR:139[↑3] VIT:175[↑2] DEX:180[↑12]

 INT:110[↑44] WIZ:88[↑24] MND:81[↑20] LUK:11

 MV:7 ACT:1.2|1 Load:492 SPR:261

 HP:440 MP:302 ATK:244+97|245/1105 MATK:254+346 DEF:76+100 MDEF:33+75

 スキル:木造建築、貴石研磨、装飾品作成、皮革加工、魔獣皮革加工、髭加工

     騎乗Ⅲ、強行Ⅱ

     魔法陣作成、魔導変換、魔法物質化、魔石加工、魔石付与、魔力付与

     弓Ⅱ、銃Ⅲ、体術Ⅱ、貫通撃Ⅰ、貫通射撃Ⅲ

     攻勢魔術Ⅱ、守勢魔術Ⅲ、強化術Ⅲ、回復術Ⅱ

     条件発動Ⅱ、並列発動Ⅱ、詠唱短縮Ⅲ、消費軽減Ⅱ、貫通術Ⅲ

    (剣Ⅱ、軽盾Ⅲ、守勢魔術Ⅲ、強化術Ⅳ、回復術Ⅲ)

 装備:冷石剣、冷魔式狙撃銃、龍眼魔法増幅腕防具、龍布防具、剣歯蛇レザー

 特典アビリティ:本

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