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僕、探す。

 そうやって素材に悩みながら魔導銃を触りつつ、考えつかれたら訓練し、煮詰まったら素材の研究と進めているとミルグレイス市から使者が訪れる。

 

『毎朝7時までに商店で卸していた肉を1000kg納めよ』

 

 1000kgか個人じゃ考えない量だけど意外と少ない気がしなくはない。僕は朱鷺の方をちらっと見て大丈夫そうか確認をする。朱鷺は少し考えるような素振りを見せてからうなずいてみせた。

 

「それではこちらも輸送の準備がありますので、翌々朝からということでよろしいでしょうか。」

 

 別に明日からでも問題なさそうだけど現実的そうな話で伝えてみる。使者の人は事前に聞いていた開始日の範囲内だったのか問題ないと答えて念を押すように言い捨てて帰っていった。く、タダ肉たかろうとしといてひどい言い草だ。朱鷺もだいぶ苛ついている。使者を見送ってから『なまもの』の前に『本日最終日』と立看板を立てて『市当局との交渉と流通を鑑みて』と追記してその場を去る。追記したのはちょっとした嫌がらせのつもりでもある。『なまもの』と屋台のゴーレムに販売を24時までと設定してその場を去る。

 

「あのギルド長にしては控えめな量でしたね。」

 

 そうなの?と朱鷺を見る。

 

「両都市の購入量がどのくらいの比率だったかはわかりませんが、通達前の出荷量は1万kgぐらいですからね。」

 

 獣人がやたら食ってたとしてもミルグレイス市に流れてたのは4000kgくらいなのか?そう考えると少なく見えるな。

 

「出荷量を絞って希少感を煽るつもりなのか、値上げして売るので様子見なのか。なんにせよ私腹を肥やすのに小汚い事を考えているでしょう。」

 

 朱鷺は嫌そうかと思えば含み笑いをしながら気持ち楽しそうに話す。

 

「朱鷺は何か感づいてるの?」

 

「ヴィルバン殿が何を考えているかすべてはわかりませんが、答えの一部はあの方が言っていたでしょう。」

 

 僕はそう聞いて首をかしげるがすぐに思い立った。

 

「ここの流通に依存するといずれ市内の流通が事情が破綻するって話か。」

 

 僕の発言に朱鷺がうなずく。

 

「腐ったギルド長ですが、流通破綻についてはさすがに気がついているでしょうが。肉自体は彼らの責任(・・・・・)で流通するわけですからね。食料消費が減りましたし、いっそのこともっと肉の品質を希少に引き上げてもいいかもしれませんね。」

 

 よほどあのデブが嫌いなのか朱鷺が微妙に黒い。

 

「財貨の用途もイマイチ不明だし販売所は一旦止めてもいいかなぁ。」

 

「黒曜石品は少数出てましたがそれほど困る人はいないでしょうね。」

 

 朱鷺とぼちぼち話しながら拠点に戻りそれぞれの作業に戻る。頑丈そうな馬車を作り、親切心で氷を載せて冷蔵車にする。氷は食料庫から出てきた。暑くなってきたらかき氷でも作れそうだ。

 

 構築された石材と魔法石を叩き燃やし、冷やし魔導銃の素材に選ばれたのは氷石だった。素材としては石の中でも軽め、硬さは水晶くらい、無駄に高い温度耐性。M型軽装兵に叩かせても4,5回耐えられる耐衝撃性。壊れるときは強化ガラスのように細々壊れる妙な安心感。神聖石よりは高いが銃一本当たりの必要量は800程度と生産量からすれば妥協できる範囲内。

 

 冷式魔導銃  Matk+60/850 射程300m CT90 MP3   石800 金属100 魔石20

 冷式魔導軽銃 Matk+25/600 射程110m   CT50 MP1  石700 金属80 魔石18

 冷式魔導長銃 Matk+130/1650 射程670m CT170 MP7  石890 金属150 魔石30

 

 魔法陣の改変と大型化により出力をアップ。銃自体は1割程度大型化したが鉄主体に比べて1/3程度の重量に抑えられている。石万歳。全部手作業だと加工性の悪さから生産性が著しく落ちるが、拠点で量産するには素材を投入してワンタッチ生産。ものの数分で1本出てくる。威力上限から鑑みればしばらく問題なく使えそうだ。実用かどうかは置いとくとして。あとは魔術弾をいくつか開発しておけばといったところかな。魔導銃はこれで一旦区切りをつける。

 

-魔導銃兵、魔導銃騎兵が追加されました。-

 

 魔導銃兵は銃、守勢魔術、回復術を持ち、魔導銃騎兵は銃、攻勢魔術、回復術を持つ。銃兵に比べて身体系能力が低いせいで耐久力に欠け、魔導銃と魔法の為に精神系能力が高い。信長みたいに弾幕張ったら面白そうだけど、世界的な戦術ってどうなってるんだろう。牽制としては面白そうなのでC型で魔導銃騎兵を作るようにお願いしておく。魔術師に持たせようかと思ったがとっさに魔法が使えないことに気がついて、自分も訓練でやってたので弓使いながら出来ないじゃんと自分のメイン武器に悩むことになる。

 

 翌日、魔法と武器の問題に気がついて調査を進めた結果、魔力増幅機能を付加するのに刻印をしたり魔石を使う必要があったりして武器としての強度が落ちやすい。かつ打ち合って壊れたら目も当てられないので前線に出ながら魔法を使うケースは少ない模様。魔力の通りが良い金属が高価なため一般的には木材を使う傾向が強い。という事情を鑑みて、打ち合わない、そこそこ大きくなるもの、かといって邪魔になりにくい。魔法陣を刻む必要があるので装飾品のように小さな物は向いていない。といった事情で選んだのが腕防具である。手首から先の部分は毛皮と防具としてのみ残すが前腕部分を魔法の発動体として改造する。発動体はどれを通して魔法を使うかだけなのでいくつつけても構わないが概ね無駄なので沢山は持たない。防御機能が高くできれば両腕につけてもいいが通常は片方だけでいいと思う。

 

 冷式魔法増幅腕防具 DEF+20 Matk+110 熱変化系魔法の効果+3%  布100 石500 金属30

 

 結局選ばれたのは氷石。魔法に関しては聖樹琥珀も捨てがたかったが熱に弱いのがマイナス点だった。竜鱗石は頑丈だが魔法増幅の点で氷石に劣る。そして高い。魔法が絡むと氷石が意外とバランスがいい石である。これらを魔法を使う職全般に配備する。正直この氷石で全身防具作ってもいい気がしてきた。と思うくらいには硬い。そして自分用の一点物として龍眼石を使う。

 

 龍眼魔法増幅腕防具 DEF+80 MDEF+97 Matk+346 布130 石32000 金属150

 

 革防具よりは流石に重くなったが強化されたSTRの前にはそれほど重く感じない。流石に最高峰の魔法石だけに素人が作っても半端ない性能だ。こうやって装備を作っていると初期に素材があまり気味なのがよく分かる。今は千単位の軍だけど、これが万、十万体となるとこの程度の装備を配備するだけでも五十万、五百万という素材が必要になる。将来的に更に装備コストが上がることを考えるとさらに増幅することが見える。全員竜眼石装備とか有りえんわ確かに。このブレーサーの完成を一番喜んだのは朱鷺である。

 

「ご主人さまが強くなるのは喜ばしいことです。」

 

 散々言われていたことではあるがまずは僕の命を優先してほしいということらしい。武器が一段落ついて防具に移ろうかと思ったのだけど、金属種は増えているけど布、毛皮についてはほとんど強化されていないことに気がつく。本で構築してもいいが、街で現物があればそのほうが早かろうとまずはそちらを見てみてそれらを超える素材を構築しようという方向で進めることになった。午後はブレーサーをつけて訓練に当てる。自分用で作るだけなら龍鱗石で防具にしてもいい気がするなぁとは思ったが朱鷺が乗り気なので保留にしておく。ナーサル市の予定だが今から行っても捜索時間が取りづらいので今から出発は置いておき、明日にヴィルバンに会えるか書状だけ送っておく。午後に乗っていく馬車を作ろうとおもたが公式訪問でもないので騎馬に乗ればいいのではないかという考えに至り、騎馬訓練所で乗騎を出してみる。何が出るのかドキドキしたが乗るだけのものなら選べるようだ。流石にカニには乗れる気がしない。デューリ、レッチ、ファイ、アトモス。名前だけじゃよくわからん。デューリは二足歩行の恐竜。オルニトミムスみたいなやつだ。早いが乗りづらい模様。レッチはダチョウだ。案の定早いが乗りづらいとなっている。ファイはふさふさな馬だ。早めで比較的乗りやすい。アトモスは四足のトカゲ。遅めだが安定感抜群だ。オルニトミムスにも興味はあるが馬でいいよ、馬で。それでもだいぶ乗れなくて騎馬兵の指導の元午後は騎乗訓練に勤しむことになる。よくよく考えたら最初から騎兵になっておけばよかったと思ったのは後の祭りである。ヴィルバンからはせっかくだから夕食でもどうかと折り返しが有り、夜半にはなるが折返し承諾の書状だけ返しておく。端書きにお土産不要と書いてあるところにくすっときたが、ここは何か持っていくのが礼儀だろうかと飲みはしないが日本酒を持っていってみることにする。

 

 翌朝、馬に朱鷺と二人乗りで走る。頑張って走らせる。途中で騎乗レベルが上がって少しだけ早くなる。街に着く頃には強行も覚える。たぶん騎兵になっていれば最初から持っていけた気がするが、深く考えないことにする。街の装備を扱っている店で丈夫な糸や革について問い合わせる。バンシーヘア、スパイダーシルク、オーク革、ハウンド革など紹介されるが流石に材料は売れないということなので適当にそれらの防具を買いつつ卸業者を紹介してもらう。

 

「やっぱ動物より魔獣のほうが革が硬いのかね。」

 

「よほど体に特徴がないとそうでしょうね。」

 

 硬すぎても加工が大変なようだがそれなりの加工法があるらしい。

 

-スキル【皮革加工】【魔獣皮革加工】、強化魔法【獣皮変形】が該当しました。-

 

 あって損は無かろうと構築を始める。朱鷺とあれこれよそ見しながら紹介してくれた卸業者にたどり着く。無人というわけでもないのだろうが店先には誰もいないし、商品もない。看板的には流通ギルドのようだが。

 

「ごめんくださーい。どなたかいらっしゃいますかー。」

 

 返事もない。留守か?人気を探しながら店先に入ろうとすると足元になにか刺さる。短剣よりも小さいその刃物は棒手裏剣に見えなくもない。朱鷺も驚き身構えて天井の方を見る。そこには天井の暗がりにぶら下がってこちらを見つめる大きな影が見える。

 

はぁくぅちゅぅ(白昼)どぉぅどぅ(堂々)ぬぅすぅっとぉたぁ(盗人たぁ)、|どぉぃぅこぉとかぁなぁ《どういうことかな》?」


 一瞬何を言っているかわからないほどスローに話す。理解するのに時間がかかりすぎて目が点になりながらその人物を見据える。朱鷺は僕をかばうように前に出る。その人物は長い手で顎を人撫でして少しというには長めに首をひねり、天井の梁につかまっていた手を離して地面に降りる。というか落ちた。ように見えるぐらいぐちゃっという感じに落ちた。首を上げ体を上げ猫背になりながら立ち上がる。立ち上がるのも介助したほうがいいのかと思うくらいにはゆっくり起き上がる。色々人を不安にさせる人だな。のそのそっとその姿を光の中に見せたその人物は、ナマケモノだった。

 

ぬぅすぅっとぉ(盗人)|じゃぁぁなぁぃなぁらぁ《じゃないなら》、なぁんだぁ(なんだ)?」

 

 聞いてる端から頭から抜けそうな言葉で喋りながらどすんどすんと僕らに近づいてくる。そのあまりの遅さにも助けられて頭の整理が完了し用事を告げる。

 

「防具屋のハッセンさんの紹介でこちらに布か革を見せていただけないかと思いまして。」

 

 にじり寄る恐怖というかなんともいえない感情と戦いながら一息で言う。ナマケモノ獣人は手を顎に当てて首をかしげ考えている。強盗だったらこのまま殴り倒せそうな人なんだけどと考えていたら、朱鷺に急に押されて後ろに倒れる。朱鷺もそのままひねるようにしてバックステップしている。彼の長い右だり手と長い爪がありえない速度で突き出され、元いた僕らの位置を空振りする。

 

「ん??|やぁっぱぁりぃぬぅすぅっとぉかぁ《やっぱり盗人か》?」

 

 座ったような目をして手を突き出したままこちらを見る。やばい冷や汗ものだ。朱鷺も少しだけ驚いてさらに強く警戒している。ナマケモノはゆっくり手を引き朱鷺をじっと見る。緊張感漂う静寂の中僅かだったであろうがどのくらい時間が経ったかも考えられない時が過ぎたころ奥の方からどたどた足音がする。

 

「ネーセルさん何してんですかぁ。あ、お客さんですか?」

 

 この微妙な緊張状態でも相手を客と思ってしまう当たりはこの状況は日常茶飯事か。取り敢えず僕はこくこくうなずいておく。

 

「まーたいつものやつですかぁ?」

 

 とやってきたパンダ柄のたぬきが気さくに声をかけてじっと見る。ネーセルと呼ばれたナマケモノもそちらをじっと見る。一息した頃にパンダたぬきがこちらに振り返って満面の笑みを浮かべる。

 

「たぶんお客さんなんですよね?安心確実サタガット物流へようこそ。本日はどのようなご用件で?」

 

 今の流れでどういう解決に至ったのか解説求む。ネーセルは改めて朱鷺をじっと見ている。僕は立ち上がりながら裾を払って礼をする。

 

「防具屋のハッセンさんの紹介で布や革を見せてもらえないかとうかがったんですが・・・」

 

 と、ちらっとネーセルを見る。パンダたぬきも納得したように大きくうなずきながらネーセルを見たあとこちらに振り返る。

 

「さようでしたか。私、倉庫番のカラフルと言います。ネーセルさんだと何かと大変でしょうから私がご用件を承りましょう。」

 

 正直めっちゃ助かる。ネーセルは朱鷺を穴が開くほど見つめているようだが首をかしげるように口を開く。

 

「|ぉまぁぇわぁヒぃレぇンさぁまぁのぉ《お前はヒレン様の》しぃんるぅぃかぁ(親類か)?」

 

 朱鷺ははっとしながらもすぐに落ち着きを取り戻す。

 

「私はあの方とは親類ではありませんが、同類ではあります。」

 

 ネーセルはその言葉を聞いてゆっくり大きくうなずいて、カラフルの肩に手を置いて顔を向ける。カラフルも納得したように首を振る。ネーセルはこちらに手を振るような仕草をしてその場から消えた、と思ったら天井の梁に捕まってごろ寝している、ように見える。すごい瞬発力だな。緩急が激しぎて目が追いつかん。

 

「お客様、もしかしてヒレン様の関係者ですか?」

 

 カラフルがおずおずと聞いてくる。

 

「いや、あなた方獣人の・・・失礼な言い方かもしれませんが動物違いくらいの差と思っていただければ。基本的には赤の他人です。」

 

 僕の答えにカラフルは得心言ったかのようにうなずく。

 

「なるほどそういうことでしたか。なんにせよネーセルさんは協力してやれとのことでしたので手前共でできることなら何でもおっしゃってください。」

 

 あの流れでどうそうなったのかまったくわからんのですが。

 

「まぁ、初見の方はそう思われますよね(・・・・・・・・・)。ネーセル店長はあの通り口下手なものですから・・・私達従業員はほぼほぼ読心を所持しております。ネーセルさんはあれでも色々考えているんですよ?口が追いついてませんが。」

 

 カラフル氏はカラカラと笑いながら答えるがさらっとすごいこと言いましたよね。

 

「ですので余計なことは考えないほうがよいですよ?他種の方は読み辛いとはとはいえ我々商人としては不特定多数を相手にしておりますので・・・ある程度の部分で思考が読めれば・・ね?」

 

 カラフル氏は一瞬威圧するような目をしてこちらを見たあとすぐに顔を崩す。

 

「布と革でございましたな。いくつか在庫を見繕いますので少々お待ちを。」

 

 怖ぇ。何この魔窟。従業員ほぼほぼサトリとか。朱鷺も警戒を解いて一息ついて上でじっとしているネーセルを見ている。

 

「実力的にはそこまで・・とは思っていましたが、無警戒な状態でしたら・・・持っていかれたかもしれませんね。」

 

 朱鷺さんでも状況次第ではやられかねない人ですか。それなりに強くなったつもりだったけど、この世界ほんとうに平均値高すぎじゃないですかね。そんな恐怖を覚えながら待っているとカラフル氏が走ってきて奥に通される。大きなテーブルの上にはいくつかのサンプルが置いているのが見られる。

 

「こちらは防具としての布製品としては定番のスパイダーシルクですね。レッサー品からグレーター品まで取り揃えております。筋力の少ないひとから鎧の裏地まで幅広い用途がございますね。」

 

 4種類の白い布地が並べられている。グレーターのほうが光沢が良く高級感が見られ伸ばすのに力がいる。布としては柔らかい感じはするけど驚くほど伸びて刃物を受け止めるのだとか。

 

「頑丈なだけならクジラのひげ、グレアパンサーのひげなどは加工しやすく軽量、軟式のフレームとしても人気ですね。」

 

 太めの春雨みたいなものをみょいんみょいん揺らしながら感触を楽しむ。よく、わか、らん。その後つらつらつらつらと素材の説明をされ僕も可能な限り素材の強度や性質を確かめる。

 

「じゃあ、申し訳ありませんがこちらもいろいろ試してみたいので各種布3kg、革7kgずつくらい頂けますか?」

 

 選ぶのがめんどくさくなってきてざっくりもらう。カラフル氏は驚くような顔をして恐縮そうに尋ねる。

 

「結構な額になりますが大丈夫ですか?」

 

「どのくらいかわかりませんが即金で大金貨50枚くらいは払えますよ。足りなければ後日か物納も込となりますが。」

 

 流石に前回の反省も踏まえて各種小銭と肉の売上で得た金貨を用意してきた。財貨で50000相当。正直持ち歩くのもどうかと思うが異空間収納でスられる心配もなく素材の相場もわからなかったのでこれでもかというくらい持ってきたのだ。

 

「いえいえ、大金貨2枚もあればお釣りがでますので大丈夫です。しょ、少々お待ちを。」

 

 こちらの予想外の財力に流石のカラフル氏も慌てている。一矢報いた感じで気分がいい。カラフル氏が何かを抱えて戻ってくる。

 

「在庫が少なく紹介するのもなんだと思っておりましたが・・・」

 

 そう言ってカラフル氏が出してきたのは拳ぐらいの太さのもやしのようなものと、爬虫類にしては綺麗に剥がれている巨大な鱗3枚。後者は竜鱗なんだろうけど。

 

「こちらは空を舞う長蛇と言われる龍の髭でございます。採集者は赤と申しておりましたがおそらくは緑の龍のものと思われます。龍としては下位と言われますが龍自体が希少な存在ですので。こちらの鱗は外洋大海を漂う超巨大魚バハムートの・・・幼体の鱗でございます。」

 

 なんかすごいの出てきた。ていうかバハムートって竜じゃなくて魚なの?しかも数はともかく育って増えるんだ。じっくり見てみるとぼんやり文字が浮き出てきて『壮龍の髭』『三齢バハムートの鱗』と読める。

 

「壮龍に・・・三齢?どのくらいの段階かはよくわかりませんが、カラフルさんの言うことが正しいんでしょうね。」

 

 カラフル氏がまた驚くようにこちらを見る。意図はないがどうにもこの世界では標準的でない能力がありすぎる。気軽に使うとさらわれそうだな。

 

「まさか詳細鑑定がおできになるとは・・・おみそれしました。」

 

 カラフル氏からの敬意が無駄に上がった。正直買わなくても登録さえできれば用済みなのだけど彼らの誠意も込で買っておくか。いずれまたお世話になるかもしれないし。

 

「おいくらで?」

 

 カラフル氏がはっとして我に返って、襟を正して落ち着きを取り戻す。

 

「材料としては半端なのですが希少なこともありまして大金貨10・・・いや9枚でお譲りしましょう。」

 

 正直価値など全くわからないので合わせて大金貨11枚を手品のようにテーブルに並べる。カラフル氏は礼をとりながら金貨を数えて品物を差し出す。それを朱鷺がさっと収納する。

 

「いや、ありがとうございます。何にするにも半端なものでしたのでなかなか売れず、在庫処分のような形で申し訳ないのですがハハハ。」

 

 カラフル氏が乾いた笑いを浮かべている。

 

「いえいえ、私もよい取引が出来たと思います。」

 

 僕は素直にそう答えておく。急に来た割には満足行く結果だった。

 

「それで初見のお客様には非常に申し訳ないのですが・・・」

 

 カラフル氏が申し訳無さそうに揉み手をしてくる。なんか微妙な雰囲気が漂う。

 

「私共でも真贋が怪しい商品がいくつかありまして、お客様に見ていただければなぁ・・・と。もちろんこちらの真偽に関わらずお礼は致しますので。鑑定書がだせませんので正規料金とはいきませんが。」

 

 はーん。正規鑑定では高いのでやりたくはないが、信用のためにも自分たちで納得する判断材料が欲しいといったところか。この先に期待して受けておくか。と、軽い気持ちで受けたものの数品で終わるかと思ったら、後から後から追加されて全部で70品目近くを鑑定させられることになった。商魂たくましいけどめんどくさいわ。いい加減飽きてきたところでどすどすとネーセル氏が現れカラフル氏の頭を掴んで宙吊りにした。ぷらーんと吊るされて乾いた笑いをしているカラフル氏が非常に印象的だった。購入商品の補填になるほどでもないが金貨7枚を鑑定代として支払われて、受け取りの署名をしてサタガット物流を後にした。

 

「なかなか愉快な店だったな。」

 

「倉庫も大きく、商品も多かったのでネーセルは優秀なのでしょうね。」

 

 あの口調と動きでどうやってあそこまでのし上がったのか気になるところではあるな。親からの相続だったにしても、あのレベルで維持できるほどには能力があるということだろう。その後ついでに金属製品を眺めつついくつかの素材を探し当てる。そうして日が傾き始めるころに領主邸に向かった。

もう少しスローペースで強化、開発が進みます。

バハムートに関してはだいたいTSRのせい。

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