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僕、研究する。

 ヴィルバンとの会談が終わって街をブラブラする。鍛冶屋、道具屋、食事処その他諸々。知識やネタになりそうなものを探すためだ。どういった生活で成り立っているかなどを知っておきたかった。ファンタジーらしく冒険者稼業とか城仕えとかあるのかと思えば、民衆は各職の発展や研鑽を目的に互助組織としてギルドを作って職の保護をしている。ギルド間でいがみ合ったりしているところもあるが、競争相手程度のもので全体的に友好関係であることが感じられる。

 

「普通だ。なんかこう、思い描いていた異世界と違う。」

 

 僕は得も言われぬ思いに苦悩するが、朱鷺はあまり理解してくれないようだ。

 

「製造ギルドが、流通や商業ギルドと喧嘩しても得することなんてないでしょうし。」

 

 正論だ。製造ギルドが直接売ってもいいじゃないかと思うのだが、そういう事例はまったくないわけでもないのだが製造側もいちいちわがままな注文を持ってこられて仕事のじゃまをされても困るのだろう。量産して販路を持つ集団に卸す。普通だ。そんな中でも魔法ギルド、錬金ギルド、創薬ギルド、魔道具ギルドのたぐいはファンタジー色豊かなものだ。地球にはない純魔法が関わっているのだから最もな話ではあるのだが。ギルドの所属すれば深い所まで教えてくれるようだが、所属するつもりがないならほんの派手な触り部分しか教えてくれない。ただその触り部分だけでもヒントがあるギルドもいくつかあった。錬金ギルドでは物質変換と言うよりは既存の金属を魔法金属に変える作業や研究をしていること。創薬ギルドは魔法効果を発揮する薬剤を作っていること。魔道具ギルドは魔石を使った生活道具、戦闘道具の生産開発。そして物体に対する魔力、魔法付与という概念が存在すること。ギルドの所属しないと作業内容は教えてもらえないが存在するという取っ掛かりがあれば僕にはどうとでもなる。

 

-スキル【魔法陣作成】【魔導変換】【魔法物質化】【魔石加工】【魔石付与】【魔力付与】を構築しますか-

 

 ゴチになりますっ。

 

 魔道具ギルドで銃器のような物が並んでいたのだが許可がないと売れないものらしい。無作法ながらも領主の館に行き門番に手紙を渡しヴィルバンに届けてもらう。しばらくして簡易許可証を発行してもらって、無事魔道具ギルドで魔導銃なるものを何種類か購入する。

 

「魔法があってもこういうものには頼ってるんだね。」

 

 僕は銃で空に照準をつけて構えながら呟く。

 

「自分の実力の上下に関わらず一定の魔法効果が得られるのが一つの特徴のようですね。」

 

 朱鷺も今入ってきた知識を頭のなかで思い起こしながら答える。正直こういう知識の入り方も変ちゃ変だ。本の性なのだろうけど。それそのものの存在を知るとそれの簡単な知識がさっと想起される。作りたい、と思って時間さえかければ設計図すら構築される。

 

「汎用弾に関しては個人の影響を大きく受けるようですが・・・銃の強度で限界値がありますね。魔法本職が仕えば暴発の危険があるそうです。」

 

「一点物としては改造の余地ありかね。」

 

 僕は構えた感じに満足して銃をしまう。魔力の節約と思って弓を考えていたけど実銃かMP消費次第では魔導銃に切り替えたほうがいいかもな。魔導銃にかんしては通常弾の装填がいらないのもメリットだし、魔法弾として事前にMPを消費しておくことができるのも大きい。

 

 最後に小さいながらも狩猟ギルドなるものも発見した。都市周辺の動物や魔獣を狩って肉や毛皮を集める仕事のようだ。収入の割に危険度が高いので世界の中でも荒事にしか自信のない乱暴者が所属する底辺系不人気ギルドらしい。話してみると人材確保のためか優しめなのだが、顔も体格も声のデカさも恐怖しか沸き起こらない。負のスパイラルに陥ってますね。その他希少金属の節約、強化のための合金の存在や、回復剤、阻害剤としての薬草の存在を知識として詰め込んで拠点へと戻る。

 

「概ねいい感じだったな。領主の思惑を除けば。」

 

「こちらの存在を利用してミルグレイス市に何か仕掛ける気なのでしょうね。」

 

 拠点で食事を取りながらぼそっと呟き、朱鷺が感想を添える。

 

「まあ、あの人もそれが仕事なんだろうし、ある程度なら利用されるのもやぶさかではないのだけど。あとは盤面の情報がもう少し貰えればよかったな。」

 

「ご主人さまの発展速度があちらのも予想外のようですから、ご主人さまに時間を与えるのは良しとしないのではないでしょうか。」

 

「そこは懸念材料ではあるね。こっちはなにかする気はないのだけど。なにかされる可能性は残せないってことかね。」

 

 僕はめんどくさいと考えながら最後のひと口を食べきって食事を終わらせる。

 

 翌日から朱鷺を通常業務に戻し、僕は銃の検証を行う。生産用のY型は飽和気味なので畑や採掘を広げつつも魔導構成所は魔石の生産をメインに切り替える。買ってきた魔導銃と制作済みのカービン銃を持ち出して訓練所に行く。

 

 魔導銃  Matk+25/580 射程150m CT90 MP3  

 魔導軽銃 Matk+10/360 射程80m   CT50 MP1

 魔導長銃 Matk+45/790 射程240m CT170 MP6

 

 カービン銃 ATK270 射程200m

 マスケット銃 ATK330 射程80m

 

 魔導銃はMatk依存だがカービン銃は固定値。カービン銃はすでに僕でも使用限界ぎりぎりのレベルでミーバ達を基準にすると今ひとつの威力だ。魔導銃のCTは個人のSPRに依存するようで、1ターン相当と思われる約1分でどれだけ連射できるかはステ次第となる。カービン銃については装填できる弾が一発のみ。再装填は別途スキル依存といった感じ。がんばっても魔導銃より早くなる気はしない。たぶん開発レベルが一致してないんだろうなぁ。射程は長めでどっこいどっこい。ただし、魔導銃は射程を迎えるとさっと消えるが、カービン銃は当然弾は残る。おそらく威力保証距離みたいなものだと思われる。ちなみに弓は頑張って引っ張るとすごい飛ぶ。短弓、長弓で同じ力のつもりでも射程が変わる不思議アイテムである。直線に飛ばすと思いの外早く矢が地面に刺さるので遠くの一点を狙うのはそれなりに大変である。がスキルのおかげかだいたいこのくらいっていう感覚がわかるようになる。あとカービン銃がうるさいのは当然だけど、魔導銃もそれなりに大きな音がなる。発行する玉が飛んでいくのにどこぞのビームライフルみたいな音がする。ノリノリで午前中に試し打ちと検証をだらだら進めた。

 

-スキル【銃Ⅰ】を獲得-

 

 取り扱いがしやすくなった感じがして飛躍的に命中率が上昇する。スキルってなんなんですかね。軽く追加で撃って感触を確かめてから、一旦やめてご飯を食べに戻る。僕が拠点に戻る頃に監視されてるのかと思うくらに朱鷺が駆けつけてきて甲斐甲斐しく世話をされる。銃の開発も進めるけど、魔導銃の改良も考慮して作成法の構築を始める。結構複雑なのか明日の早朝までかかりそうだ。午後は魔法と体術の訓練に当てる。寝る前にふと思い出したかのように20万の石材を消費して陽光石を生成する。15cm位の光る石塊がごとりと落ちる。夜中だと少し眩しく感じる。10kgくらいあるのかそこそこ重い。漬物石ってこんなもんだったろうか。一旦石材倉庫に戻す。神涙滴を10万分取り出してみる。10cmちょっとくらいの透明な石塊が出てくる。5kgより軽い?ガラスより透明度が高いのか不安になるくらい透明度が高く、触ると形があるのに見た目では存在感を感じさせない。さしあたって陽光石を追加で10万分取り出し、さらに毛皮を取り出して光を隠して寝る。

 

 翌日起き抜けにミルグレイス市に手紙書くのを忘れていたのを思い出して急いで露骨に弱気な文章で肉を原価で売る旨の文面を買いて送る。あのデブのことだからすぐに返事がくるだろうということで送り出すミーバには返事の受け取りまであちらで待機してもらう。寝る前に作った石を持って石材所にこもる。薄く伸ばして強度を確認したり紐みたいにして叩いてみたり。魔術師ミーバに頼んで焼いてみたり、低温にしみたり、振動させてみたり。思いつく限りで強度実験をしてみる。2,3mm程度ではどちらも折れるがそこを超えて折れにくいのは神涙滴。厚みが出てくると衝撃を通しにくいのは陽光石で密度も陽光石のほうが高い。両者とも霜が降りて白くなるほど冷やしても特に特性は変わらず、現状ではそこそこ冷たい程度では低温耐性のは測れなかった。逆にすごい温度で熱してみたところ神涙滴は透過性がなくなって赤くなり折れやすくなるが、陽光石は輝きが強くなりこそすれ石自体に強度の変化はみられなかった。魔力を流すと神涙滴はひんやりとした感じになりさらに固くなる。陽光石は光が強くなる。光が強くなっても特に熱を帯びる感じはなく眩しいだけである。

 

「刃物にするなら神涙滴のほうが向いてるかなぁ。」

 

 昼ご飯をつまみながら朝方からしていた実験の総評をぶつぶつ考える。朱鷺はそれを眺めてニコニコしているが何か楽しいのだろうか。逆に何か変なものが着いてたりしないか気になる。昼を過ぎた頃にミルグレイス市から返信が届くと卸元に交渉するから仲介しろと指示が来るがそもそも僕が卸元でいもしない動物の肉を卸しているのでなんともし難い。牧場主が気難しくて自分としか取引しないことをでっち上げて記載し、さも話しあったかのように明日の朝に届けるようにミーバに手紙だけ渡しておく。ミルグレイス市の処理が終わってから再び午前の続きをするために石材所にこもる。琥珀の時のように神涙滴と陽光石を織り交ぜながら板にしてみたが当然うまくくっつかず剥離、分解しやすいので混ぜる方向はやめておく。神涙滴を半分に分けて棒状にして薄く伸ばす。柄と鍔も伸ばしてつくる。木を削って柄を作ってみたが、強く振って的に叩きつけると木が割れる。現状出せる硬い木でも結果が変わらないので魔獣の革を組紐のようにして柄に巻きつけて保護の代わりにする。楕円の棒のようにしていた部分を薄く伸ばすようにして刃を作る。薄くすると非常に欠けやすくなってどうするか悩んだが、少し前に構築が完了した【魔力付与】で形状維持強度を強化できることが分かり三回に分けてMPを全力で付与して強度をあげる。そうした結果、刃が欠けなくなり合わせて形状変更魔法の影響が著しく悪くなる。

 

「おもむろに強化したけど、形状変更も難しくなるのか。修理くらいなら問題なさそうだけど。」

 

 150cmほどの透明な剣を格好つけて振り回しながらその結果について考察する。

 

 神涙滴の剣 ATK+373 Matk+134  形状変化抵抗Ⅷ

 

 んー、実験のつもりで作ったけどえげつない剣になってしまった。一部の特殊な剣士が持つ武器の視認性が悪くて間合いが分かりづらい近接特攻の剣みたいになっている。重量も鉄に比べて密度が相当低いせいか大きめになってしまったにも関わらず1kgにも満たない。こちらは武器に重量があることに意味があったりもするので良し悪しだが、振り安さという面では大きく優れている。抜身のままというのも問題なので、余った神涙滴を薄く筒状にして剣の鞘になるように形状を調整する。さらにその周りを樫の木でコーティングするように加工して鞘として完成させる。無骨過ぎて寂しいので花の模様をいくつか浮かせて仕上げる。分かっているけどセンスもなくピンとこない仕上がりになってしまった。

 

「本当に作ってしまわれるとは・・・」

 

 朱鷺を呼んで剣を見せる。軽く振り回しているが僕の時と勢いも音も違う。

 

「軽いのも結構ですが打ち合いには厳しいかもしれませんね。重量に関しては通常と逆に『重量増加』の魔法を付与しておくのもありかと。まだまだ許容量に余裕はあるでしょうし。最もこれほど鋭さがあれば大抵のものは破壊できそうですが。」

 

 スキルだけ持って付与してたから基礎知識がまったくなく知らない単語が出てくる。でも朱鷺が知ってるってことは本でわかるってことだよね。失策。魔力や魔法を付与する際にその物体に定着できる魔力の総量を許容量と言っているらしい。物質そのものに大きく依存するが、形状やそれに付与する内容によっても無視できない変化をするようだ。装飾過多な装備が作られたりするのは、その許容量を増やすために宝石や魔石を組み込むことが顧客の要求を満たすのに必要だったりするからで、一部の見栄もあるがそれ以上の効果もあるということらしい。

 

「それにしても本当に綺麗に作られましたね。ご主人さまは元々職人だったのでしょうか。」

 

 朱鷺はベタ褒めであるが、槌で叩くわけでもなく、粘土をこねるわけでもなく、焼入れすらなく魔法を使えば想像通りに形が変わるので重要だったのはイメージであり、役に立ったのは漫画と厨ニ心である。おそらく金属武器ではこううまくはならないだろう。気恥ずかしくなって剣を持って石材所に戻る。剣に重量増加を付与する前に本で剣にかける魔法を調べる。形状変化抵抗はむしろ特殊な部類で通常は単純に物体強化を使うようだ。物体強化は必要魔力量が少なく限定的な要素を強化できる。一般的には硬度という形になる模様。それに対して形状変化抵抗はかけられた時の形を保持する要素が働くといった感じで全体的に強くなる。ただ必要魔力量は多くなり目的次第では許容量の無駄になりやすい。今回は許容量が潤沢っぽいのでこのままにしておく。ちなみによくあるファンタジーにありがちな鋭さひいては攻撃力を直接上昇させるような付与はなかった。でも魔法にはあるので理解に苦しむところだ。そもそも魔法の原理もわからないので途中から深く考えるのはやめた。とりあえず武器にかける定番の魔法として『先鋭』。強化術Ⅱながら安価な消費と高いパフォーマンスを得られる。当時手持ちの武器を見て『先鋭』しょぼいと思っていたが元武器がここまで威力が上がるとランク4の自分が使っても4倍になるというのは破格の性能と言える。将来的には10倍になるかとおもうとそら恐ろしい魔法である。ただし『先鋭』を魔法付与すると武器ATK2倍で消費7になるという。(運営)のバランス調整が入っている模様。後々朱鷺に聞いてみると近接職が毎振り当たるかもわからない攻撃に『先鋭』を使っていると早い段階で負荷が溜まりすぎて倒れるらしい。また単純な話、攻撃力が十万あっても防御力100に傷一つつかないという世界の非物理的な現実があり(実際にはそれによって瞬間的に防具が破壊されることもあるが)、初手は相手の防御を崩す、下げる手段のほうが好まれるらしい。

 

「最も莫大な攻撃力があることで防御が1でも欠ければ危険になるという圧力自体は大事ですが。」

 

 続いて『重量増加』強化術Ⅲである『重量軽減』の逆に当たる魔法である。増加は必ずしもペナルティではないらしく攻勢ではなく強化の分類になる。この分類も神様の胸先三寸だったんだろうなぁ。軽減はランク当たり10%軽くなる。10になったら重さがなくなるのだろうか。物によっては勝手に空に飛んでいってしまいそう。増加はランク倍になる。今だと4倍にできるわけか。もう少し重くしたかったが同じ大きさの鉄剣としては少し重めにはなるかな。通常は所持者が任意に入切するようだけど手持ちのスキル条件発動を駆使して自動化する。すなわち『手に持っている時、刃が何かに接触している間』重量が4倍になる。自信をもって朱鷺に渡す。剣を抜く時に少し首をかしげたが、後は気にせず振り回す。試し斬りに持ってきた鎧だの盾だのを豆腐のように切り裂いている。最もアレを使えば僕でも出来たのだが刻み方が半端ない。曰くゴミみたいに小さくして素材を分別すればおけば倉庫に直接しまって素材にしてしまえるのだそうだ。エコねっ。

 

「素晴らしいと出来なのですが、条件発動付与をできる人が少ないのもありますがそうしないのにもそれなりに理由がありまして。」

 

 この手のことはオーダーメイドが普通なので通常すり合わせがされるのだが、作り手と使い手で使用感の齟齬が問題になるらしいということと、様々な状況で自動化の問題がでるらしい。自分が競り負けている時に重量が5倍になってそのまま潰される、重量変化のタイミング次第で衝撃の反動を殺しきれずに弾かれすぎる、岩や地面に刺さったら抜けなくなった等。そういった少数の不具合から武器はおろか命を失うという悲劇があり、所持者の任意切り替えが一番問題が少ないということになったらしい。死に直結するとなると少ない不具合でも無視はしづらい。

 

「この剣は元々が軽すぎるくらいで4倍でも通常使用の範囲内ですので問題は思いますが。先ほどは鞘から抜く時に急に重くなって少しだけ戸惑ってしまいましたね。」

 

 ダメ出しほどではないがやはり素人考えだったようだ。武器を持っている間身体強化や、常時障壁を張るようなことも使用者の負荷が高くなりすぎて自動的に行うのには問題があるようである。飛び道具の代わりに魔法を飛ばす武器なども作れるが、前衛がそもそもMatkが低かったりスキルの関係で防御を抜けなかったり、そこまですべて組み込むと結局負荷がかかりすぎるだの主流ではない模様。属性剣みたいなことが切り替えでできるなら用途別に需要がある模様。ここまで高攻撃力になってくると加算される属性値よりもそのまま叩き切ったほうが早いらしいが。トロルもヒドラも実力が剥離してくるとみじん切りにするものらしい。朱鷺と付与談義をしているうちに暗くなってきたのでその日はそこで閉める。

 

 翌日、剣とにらめっこしながら何をつけるか悩んでいたが、結局使うのは朱鷺になるのだからと本人に聞いてみることにする。

 

「これで十分だとおもいますが・・・」

 

 く、欲がない。容量には余裕があるのだから後々付与しても問題ないだろうという主張。確かに試しで作ったはずなのに今究極系として完成させる必要はまるでなかった。おずおずと引き下がり石材所でごろごろ転がりながら悩む。朱鷺も近接職である以上何かと負荷が問題になる。あれこれつけても使い切れないのである。消費軽減を合わせて付与できるにしても減ることには変わりない。と悩んでいるうちに思いついたのがバッテリーである。魔力一時的に外部に保存できれば使用量が増やせるのではないかと。と思って調べると現状あるものは保存効率が悪いということから研究はされているものの主流ではないといった感じ。強化術Ⅴ【魔力蓄積】。元々は術者の魔力量を一時的に増幅させる魔法のようだ。持続時間が時間単位で、10消費するごとに体の中にランク分の蓄積箱ができる。その後増加した負荷は回復しないといけないわけだ。しかも大量の負荷が残ったまま効果が切れるとぶっ倒れる。場合によってはそのまま餓死だ(※1)。武器に付与すると手放した瞬間倒れる未来がみえる。そういったことから利用が限定的で難しいようだ。世界のシステム的に持っている魔力を消費するというより、老廃物を保持できる上限値といった形になっているのでいざ魔法やアイテムが無くなった時のリスクが大きいようだ。逆に倒れてもいいなら装備を短いサイクルで使い回せるともいえるが・・・人権無視甚だ無い。たぶん人権て考え自体が無いと思うが。なおアイテムに魔力蓄積を付与しようとすると許容量が大きすぎて蓄積量が大きく出来ず、物質、形状を模索しているところで頓挫という形。ゴーレム等に使う魔石はどうなのかとも思ったがあちらは自然性のものを利用している形で個人で内包しているものと違うという説と非生物には負荷の効果がないという説があるだけではっきりしていない。現状魔石を通して魔法を使うことは出来ない。

 

「こっちの線はなしかな。」

 

 後は負荷の回復を早める方向だが、こちらも魔力を使って回復を早めるのは本末転倒という感じで自分でやる分には瞑想したほうが気苦労がない分だけましといった所。一番ましそうなのが複数人で負荷を分散する形。他人の負荷を受け取る回復術があるのでそれを利用して負荷を均等または受け取りきって負荷の回復が早いものが処理するか複数人の人海戦術で回復させるか。こちらは回復術を使える者が複数人必要なので現実的ではないといった事情が見られる。ミーバ達には意外といいかもしれない。ただ『負荷吸収』が回復術Ⅴという簡単にはいかない条件があるが。いろいろ悩んだ末に現在解決できる案件ではないと相手の能力を落とす為の装備破壊の方向で進め、物体に対するダメージが増加する『破砕』を魔法付与して暫定完成ということにする。鞘にも神涙滴を使ったことを思い出し試験的、非常用な気持ちで半円障壁Ⅳ、下級傷治療Ⅳ、異常状態遅延Ⅳを魔法付与しておく。

 

「ありがとうございます。ただ私よりもご主人さまの強化をしてほしいのですが。」

 

 朱鷺は喜んでいるが僕の装備も気になって仕方がないらしい。余った素材で何か考えるか。最も余ったものは倉庫に投げ込むので、素材に関しては余るという概念はないのだが。

 

 昼休憩の後、攻勢魔術を得るために魔術師になり的に向かってきりきり『火矢』を撃つ。一時間と少し訓練したところで攻勢魔術Ⅰを習得したのですぐに戦術師に戻す。

 

-基本術種をすべて習得したので魔導戦士、魔導師、魔導騎兵を追加しました。-

 

 攻勢魔術、防御術、強化術、回復術すべてを使用できるような職だがスキルランクが軒並み低い。器用貧乏甚だしく特定の用途ができるまでお蔵入りであろう。その後も弓、魔導銃、各種魔法と体術と訓練してその日を終了する。

 

 翌日、朝ご飯中にふと疑問に思って訓練場に行く。カービン銃を撃つ。収納にしまう。弾を込めたつもりになる。出す。撃てる。

 

「おー。」

 

 ちょっと感動する。周りのミーバもちょっと喜んでる。たぶん意味は分かってない。珍しくB型が自己主張するかのように銃を借りたがる。四本の触手でしっかり構えて撃つ。いい構えだなぁ。撃つ。外れた。撃つ。え?リロードどこいった。その後途切れること無く十発を撃ち。銃を返上してくる。

 

「どうやってたの?」

 

 僕は疑問符いっぱいで尋ねる。掲げた看板には『弾薬を直接銃身に出せばいいのに』。あー、なるほど。そもそも設計段階で故障率を理由に弾倉が排除されたらしい。身内で使う分には接触範囲内に任意に弾を出せるので不要と判断したようだ。研究担当のB型らしい助言だった。く、僕の今までの苦労は。時間が飛んでるうちに作られたものだから仕方ないということにしておいた。B型にライフリングと機関銃の自動給弾と排莢の仕組みを伝えて銃を新調してもらうようにお願いしてみる。同型間ネットワークで伝えられ研究班の結果待ちになる。うまく行けば魔導銃にはないアドバンテージなるかもしれない。元々メインで戦うつもりはないし、MP消耗対策で考えていたことなので一旦は置いておく。そして思い出したかのように構築された魔導銃の設計法を本で確認する。鉄に魔法陣を刻んで魔力を流すことで魔力弾として発射する。なんで銃みたいな形になったかもよくわからんな。後々気になって調べてみたら元々は実銃のように玉を飛ばしていたのだが制御の関係で魔力弾飛ばしたほうが簡単安全設計が楽という事になったらしい。今も銃の形なのはその名残ということらしい。杖でも、剣でもいいじゃんと思うのだが、目線にそって狙える機構をつけたり新しく考えるのが手間なだけのようだ。威力を高めようとすれば魔法陣が大型化しその分銃身がながくなる、または太くなる。重くて取り回しが悪くなり、材料費も消費MPも増える。威力が上がりすぎると素材が持たずに暴発する。一点物にして希少素材を使うならその個人に特化した装備を作ったほうが強いということから、量産品としては中堅の補助装備、もしくは低時間訓練でも使える下級兵装備というのが世界での位置づけのようだ。好みで一点物を使ってるものもいるだろうがごく少数派の模様。

 

「だいたい思いついたことは歴史が通った後、で今やってることは逆行しているか確認作業みたいなものか。」

 

 だが素材の問題だけとなればこちらには吐いて捨てるほどの石材がある。『鉄よりに固い、魔力抵抗が高い』というざっくりとした条件で本に検索をかける。すごい数の宝石が鉄より硬く検索の羅列に引っかかる。全部拾っていては検証も知識構築にも時間がかかりすぎるので、『鑑賞目的でない』という条件をつけて再度検索。正長石、炭化ケイ素、神聖石、氷石、腐毒石、聖樹琥珀、竜鱗石。氷石、腐毒石、聖樹琥珀、竜鱗石は知識構築待ち。

 

「炭化ケイ素って自然にあんの?」

 

 解説によると隕石に含有していることがあるというレベルで自然にあるらしい。硬いってイメージはあるんだけど。1000単位で取り出してみるとかなり小さい。石材としての価値はだいぶ高いようだ。すでに知識として存在しているらしい神聖石を取り出してみる。1000単位で取り出すと炭化ケイ素の10倍以上でてくるが、そこらにあるケイ素的な石に比べると1/10くらいか。白くて淡く輝くことから神聖石と名付けられていてお偉い神殿などで重宝されるらしい。そういった需要のためか単価が高めだがそこそこ丈夫な石といった所。鉄で引っ掻いても傷つかないけど、鉄ハンマーで全力で叩くと割れる。いろんな石で実験して分かったことだけど、石は限界を超えると凹む前に割れる傾向にある。つまり鉄より硬いというのは表面的に硬いと判断されていて必ずしも壊れにくいというものではないようだ。

 

「用途に合わせて素材を選ぶ必要があるってことかー。」

 

 色々やって疲れて石材所でごろごろする。竜眼石のような高級魔石ほどではないにしろ炭化ケイ素も結構な石材を使う。今のところ傷つけることは出来ても破壊には至っていないので良い石なのだが。やはり量産するにはもう少し材料を抑えたい。これ以上は魔法石の構築待ちかな。入り口から朱鷺がちょこちょこ顔を出している。手招きすると勢いよく隣に座るがちょっと心配そうだ。

 

「お昼結構過ぎましたがいかがなさいますか?」

 

 時間を見ると14時になろうとしている。意識すると小腹が空いてくる。

 

「それじゃお願いできるか?」

 

 僕は朱鷺の頭を撫でながらお願いする。朱鷺は笑顔で答えて拠点に向かう。僕もゆっくり立ち上がりながら追いかける。ここしばらくは平和な日々。

 淡々と日常回。比較的スロー。身近な先輩の脅威を感じてちょっと軍備強化を図りたい心情。


※1.[負荷]がMPを超えると[意識喪失]になり思考不能になって倒れ、[負荷]、[心労]の自然回復が停止する。自力ではほぼ復帰が不可能なのでいずれ餓死という流れになる

 

 紺野遊一郎 グループなし 戦術師Ⅲ 

 STR:136[↑4] VIT:173[↑2] DEX:168[↑8]

 INT:66[↑24] WIZ:64[↑26] MND:61[↑22] LUK:11

 MV:7 ACT:1.2|1 Load:484 SPR:194

 HP:436 MP:234 ATK:235+11|232+14 MATK:192+14 DEF:68+5+2 MDEF:25

 スキル:木造建築、貴石研磨、装飾品作成

     魔法陣作成、魔導変換、魔法物質化、魔石加工、魔石付与、魔力付与

     弓Ⅱ、銃Ⅱ、体術Ⅱ、貫通撃Ⅰ、貫通射撃Ⅱ

     攻勢魔術Ⅰ、守勢魔術Ⅱ、強化術Ⅲ、回復術Ⅱ

     条件発動Ⅱ、並列発動Ⅰ、詠唱短縮Ⅱ、消費軽減Ⅱ、貫通術Ⅲ

    (剣Ⅱ、軽盾Ⅲ、守勢魔術Ⅲ、強化術Ⅳ、回復術Ⅲ)

 装備:鋼鉄細工剣、革鎧、小盾、木合成小弓

 特典アビリティ:本

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