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僕、なお進む。

 右翼方面に進行方向を定めミーバ兵を整列させる。騎士の損害は一割とそこそこだがミーバ兵の損害は実数はともかく割合は低い。竜の目で確認できるクラファル王国軍の人数は二十万弱とこちらと同数程度であると見られる。さすがに短期間にレイスタン王国軍を降伏させるには数が少なすぎるように見えるのでまだ伏せている兵がいると考えた方が良さそうだ。エグシルも同じ考えではあるようだが、もしヴィルバンが率いているとするとその限りでは無い。なにせ部下一人でも侵入して脅しかけるには十分な戦力を持っているだろうから。取り敢えずは正面の軍をなんとかする必要があるだろうがどこまでヴィルバン、ヒレンに対抗するために僕らを温存できるかが一つの鍵であるように思えた。エグシル号令の元、重装騎兵、軽騎兵が魚鱗の形で突撃していく。その後を軽装兵と斥候兵が追い、さらにエグシル、鶸と重装兵、弓兵、魔術師、医療術士と続く。僕らの周辺には十体の重装兵と魔術師、治療術士だけが残っている。全部連れて行けばいいのにと誤差みたいな兵達をあやしつつ歩いて前進する。

 

「我らはいかがしますか。」

 

 騎士隊の隊長が後方からついてきながら確認をしてくる。連れて行ってもいいが正直手柄より被害が多いことが予想され僕としてはエドモンドの援軍に回ってほしいと提案する。民兵相手とはいえ戦果をあげた騎士隊の士気が高いこともあって多少不満があるようだ。事実上戦力外と言われているように聞こえたことも一つの不満のようだが。

 

「君らが名誉と奉公を重んじる気持ちはわからなくもないんだけど、ここから先は僕の戦いにもなるし・・・次の機会の為に聞いてくれないかな。」

 

 僕はそんなつもりもなかったがずいぶん困ったような顔をしていたらしい。

 

「国の恩人にそこまで言われては仕方がありませんな。」

 

「隊長も子供には形無しですな。」

 

 隊長が折れると後ろの騎士達が笑いながら揶揄する。さすがにこの世界に降りたって五年。すでに二十歳を超えている身だが未だに軍の中で僕を子供よわばりするのはもはや鉄板だ。あまり身長が伸びなかったことと、この世界の平均身長が高すぎることから僕の扱いはもっぱら子供と同じである。大本では強者であり偉い人という認識はあるようだが、気さくな貴族連中となると扱いが軽い。

 

「では第五軍騎士隊にはエドモンド本軍に救援として帰属し以後はその指示に従うように。」

 

 僕が命令指示を発するとそこは騎士らしく敬礼をとる。隊長は指示を飛ばし騎士達は霜巨人と吹雪の戦況を横目にみながら移動体勢を取り始める。

 

「ご武運を。我が国のためにも瀕死まででお願いしますよ。」

 

 隊長は笑顔でそういってきびすを返した。僕は何も答えられなかったが軽く手を上げるだけで答えた。

 

「焼けますわねぇ。私も昔みたいに構ってほしいですえ。」

 

 金糸雀が後ろからしがみついてそう言う。昔ってミーバ時代の話か。桔梗が対抗するように正面から肩を押しつけ金糸雀をにらむように見る。何か一色触発の緊張状態に一瞬気配が変った後、金糸雀が口元を押さえて笑いながら離れる。

 

「さぁ主様まいりましょう。」

 

 金糸雀がそういってステップを踏み先に進む。

 

「金糸雀・・・」

 

 僕は金糸雀を目で追う。金糸雀は影のある笑いをこちらに向けてまた進行方向を見る。

 

「ご主人様・・・」

 

 心配そうに見上げる桔梗の頭をなでて、大丈夫だと言い聞かせる。自分にも。先陣を切った蘇芳で敵陣が乱れるかと思ったが空を飛んだため多少の動揺しかない。そして紺も先頭では無く中程に入ってから暴れたため敵先陣には影響があまりない。多少は士気が落ちたかもしれないが敵先陣の相手は完全にエグシルに任された。それでも先陣以後の心配が減っただけでもエグシルとしては大分楽ができるだろう。紺は計算したかもしれないが蘇芳は英雄まっしぐらなだけだ。それでも蘇芳が破軍を押さえられるならそれに越したことは無い。距離がそこそこ近いこともあってか両軍から遠隔攻撃での応酬は無い。魔法ぐらいはと思ったが両軍とも何かに警戒するような緊張さを保ったまま先頭の重装騎兵が激突した。一般的な騎士相手ならミーバ兵の突撃で瓦解するような相手ばかりだったが、ほぼ五分五分。こちらが少し勝っているくらいの戦果となった。上位の騎士でさらに破軍の強化が乗っているとはいえ少し予想外の結果だった。すり抜けるように進みお互いが駆逐され、脇によけたものだけが迂回して再合流する。エグシルは迂回したものに弓と魔法で追撃指示をしたようだが思ったより戦果は挙がっていない。対して敵軍は何もせずに経過を見守っている。突撃でお互いの先陣がぶつかり合った後一万四千の騎兵は八千まで減少。大きな被害を被った。敵は一万五千前後だろうかほぼ同じだったはずだが、追撃もあってか六千強まで減少している。エグシルは左右に散った騎兵を中、後陣の間の左右に再配置し中陣を押し進める。こちらが軽装兵中心なのに対して相手は軽装と重装の中間といったようなやや重装よりの構成にその後ろには軽装の兵、おそらくは強化術士であろう存在が見て取れる。ただ未だに派手な爆発が上がっており紺の対応に苦慮していると思われる。内部で起こされている妨害行為の対応しているようで前面に配置された重装兵は明らかに薄い。エグシルは後陣から爆発系魔法を展開させ敵前面の隊列に穴を開ける。間髪入れずに軽装兵を突撃させ穴を閉じさせないように強引に進ませる。軽装兵を奥に進ませながら軽装騎兵を再度中陣両端に突撃させる。中央軽装兵の被害は決して低くは無いがそれ以上の被害を騎兵が与える。敵は軽装兵をすりつぶす事に終始し、むしろ騎兵は放置するかのように対応する。騎兵は中陣を駆け抜けそのまま後陣に迫る。自軍の後陣も中陣の軽装兵への支援射撃が行われている。尤も軽装兵のスキル玉砕により魔法なのかどうかもわからないくらいにはむちゃくちゃな事になっている。敵の狙いは効率よく軽装兵を除去することにあるようだ。中陣は玉砕により両者ともほぼ壊滅。自軍の斥候兵が残っているだけまだましといえる状態だが、倒した総数はほぼ同等といえる状況だ。エグシルは中陣の残兵と後陣を伴ってさらに前へ進軍する。引いていた敵の騎兵が遊撃よろしく後陣のさらに後ろである僕に迫る。ここまで来ないと確認できないのもおかしい話だと思うが、奸計の能力と予測を立てる。

 

「どっからきた?」

 

「私もよくわからないですね。足跡からするとかなり大回りしたことぐらいしか。」

 

 僕の疑問にヨルが申し訳なさそうに答える。

 

「焼き払えば問題なくってよっ。桔梗さんっ。」

 

 クロが叫び、桔梗が無言で合わせる。クロが広範囲熱系魔法を打ち出し、桔梗が超重縮で足止めを図る。攻撃を受けると敵は蜃気楼のようにぶれて消える。騎兵はその魔法域を迂回するようにさらにやってくる。クロの口角が上がる。

 

「幻影かなにかですか?それなら回避できないようにするまでっ。」

 

 思った以上に短気なクロが騙されたことを恥じるかのように顔をゆがめ手を振り上げて粉を巻く。

 

「クロ、それは・・・」

 

 神谷さんがやりすぎと止める前に術式は発動する。

 

《質量欠損》

 

 組み上げられた術式のまま粉塵が消え内包するエネルギーを解放する。エネルギーは術式に制御され七つの扇を生成し騎士が迫る空間に暴力をまき散らす。鎧を砕き、蒸発させ、耐えた乗騎と騎士もまとめて吹き飛ばした。平原は見晴らしのいい荒野と化した。クロは得意げに鼻を鳴らしているが確かにやり過ぎだとは思う。荒野横目にクロを見ていると視界の隅で金糸雀が音も無く動く。滑らかに自然と一体となって一瞬それだとは気がつかないほどに。金糸雀は左腕を上げ円盾を掲げる。それと同時に甲高い音が響き、金糸雀は勢いよく円盾を動かし飛んできた攻撃を受け流す。その攻撃は地面を叩き土塊をあたりにまき散らす。

 

「何!?」

 

 僕は土塊がいろんなものにぶつかりチリチリと音を立てる中叫ぶ。空から落ちてきたような攻撃者は地面に埋まった長剣をそのまま翻し僕に斬りかかる。その攻撃を金糸雀が上方に受け流す。両者ともに体が開き隙が見えたかと思えば金糸雀は右手で短剣を投げつける。襲撃者はその短剣を後ろに倒れ込むようにしながら蹴り上げる。

 

《Gravity Bomb》

 

 金糸雀が投げた短剣は襲撃者のつま先に触れた途端真下に落ちる。襲撃者の足は短剣を吹き飛ばせないまま諸共地面に叩きつけられる。金糸雀が鞭で追い打ちをかけようとするが襲撃者は素早く横に転がっておりそのまま飛び上がるように起き上がる。

 

「まったく・・・蘇芳は何をしてはるのやら・・・」

 

 金糸雀は小声で愚痴りながら僕と襲撃者の間に立つ。その言葉でその目の前に立っているぼろを着た者が何者かを理解する。

 

「破軍・・・?」

 

「いかにも。軍にありて軍を打ち破る個、通称破軍とは我の事よ。」

 

 長剣を手で叩きながら偉そうに自己紹介を始める。

 

「支援者の手でかつて無い軍を支えておってな、ちと融通が効かん。支援者は露払いなどと言うておったが・・・別に我が終わらせてしまってもかまわんだろ?」

 

 その動きがコマ送りのように分け身を作りながらごく自然に剣を突き立てる。誰もが虚を突かれたように見ている中、金糸雀だけがそれに反応し円盾で剣をたたき落とす。

 

「いやいや、うまくいかん。その幼女抜かねばおぬしは殺せぬかのう。」

 

 今、攻撃されたのかと認識するまでに時間がかかった。動きは見えているのに頭が攻撃されたと認識していない。金糸雀がいなければ二度は死んでいたと冷や汗を垂らす。

 

「面倒なことを・・・」

 

 金糸雀が顔をしかめてつぶやき、いつの間にか手にした水晶を割る。

 

「ただの手品どすから、ご主人様は気にしなくてもええどすよ。理解するまでに終わりますよって・・・」

 

 金糸雀はクスクス笑いながら盾を構えている。

 

「手品とは言ってくれるな。どちらにせよお主は刈り取らねばなっ。」

 

 破軍が動いたと思ったら金糸雀がすでに盾で弾いている。

 

「手数が足りるかな?」

 

 破軍はその場から動いていないように見えるが剣は伸びるように斬りかかって来る。金属の剣が蛇のようにうねり時に光を残して消え、再び逆側から現れそして消える。何をされているか理解できないまま金糸雀はその攻撃をすべて弾いている。金糸雀には攻撃が見えているのか、周りの皆もどこで手を出していいか判断できずに見守るだけだ。

 

「おー、すべてしのぎおったわ。我も未知の世界であるのにまだまだ上がおるか。」

 

 破軍が感心したように声を上げ一度引く。金糸雀は心底面倒だと言わんばかりにため息をつく。

 

「幻惑のようなスキルもありんすが・・・タネの大本は行動回数。SPRが飛び抜けてるだけですえ。」

 

 金糸雀が小声で回答を出す。それだけにしてはちょっと納得いかないと思いつつもその答えを聞いてどうなっているのかを思考する。

 

「気にしんでもよろしゅう。相手にするのはご主人様ではなく・・・この阿呆ですから。」

 

「はははははは・・・呼ばれて参上っ。」

 

 金糸雀と破軍の間に空から赤い軌跡が降り立つ。高笑いしながら重量のある音と共に蘇芳が降り立つ。

 

「探したぜ、お前が蘇芳の相手だな。」

 

 蘇芳が大剣を片手で破軍に突きつけながら呼びかける。破軍はいまいち理解できないと首をかしげる。

 

「お前が我の?馬鹿も休み休み言え。」

 

 緩やかに踏み出す破軍。その瞬間に蘇芳の大剣が弾かれ、蘇芳の体が開く。そして鈍色の剣閃が蘇芳に突き刺さる。蘇芳が力強く押されたたらを踏み後ろによれよれと下がる。蘇芳が間抜けた声で状況を確認しようと前を見ればさらに剣閃が蘇芳を突く。

 

「いってぇ」

 

 蘇芳が剣に押されてのけぞる。蘇芳に実際に痛みは無いはずだがそのダメージを痛みと認識して声に出している。

 

「蘇芳無理するな。」

 

 僕は声をかけるがのけぞった頭を動かし顔をこちらに向ける。驚きの顔は笑みに変り勢いよく前のめりに体を戻す。破軍が再び踏み込む。蘇芳が大剣を持つ手に力を込める。破軍の剣が再び蘇芳を突く。

 

「場所がわかってりゃ」

 

 蘇芳の手がぶれる。力による単純な超初速。

 

「何度もは当たらんよぅ。」

 

 蘇芳はそう言ったが破軍の剣はしっかり蘇芳に当たっている。だが蘇芳の巨大な剣も破軍に当たり、破軍の体はバットに打たれたボールのように飛んでいく。

 

「いたたたた。おっかしいなぁ。」

 

 蘇芳は納得いかないように突かれた鎧の穴をなでながらつぶやく。

 

「ま、いっか。ここからが本番だぜっ。」

 

 蘇芳は気を取り直したようにゲートルを召喚し乗る。狂ったような速度で走る

 

「この馬鹿力が・・・」

 

 えぐりとられた荒野に吹き飛ばされ転がった破軍が起き上がると、その目の前には蘇芳がいる。

 

「やっほーい。」

 

 蘇芳が楽しそうに声を上げながら大剣を振る。起き上がろうとしている破軍はその攻撃を受けるのはさすがに危険と判断し、そのまま飛び上がって剣の軌跡から逃れる。空振りした剣の音と風がその攻撃に恐ろしい力が込められていることを示している。蘇芳が駆け抜け反転し再び破軍に向かう。着地した破軍は蘇芳に向き直り剣を構える。突撃してくる蘇芳に向かって剣を振る。蘇芳の動きが急減速する。

 

「は?」

 

 破軍の攻撃は蘇芳の遙か手前でからぶる。それほどの速度の急落であった。そして蘇芳が再加速。ゲートルの足が狂ったように動き一瞬で最高速に達する。破軍はそれに反応し剣を引き戻し、動作を小さく突撃に力を上乗せさせるように突き刺す。

 

「あれはそういう理屈が効く虫じゃないよねぇ・・・」

 

 僕は同情するように声を漏らす。クロがうんうんと首を縦に振って頷いている。ゲートルは主人の認識で反応したかのように真横に直角にその位置をずらした。再び破軍が驚きの表情を見せる。

 

「どーっせいっ。」

 

 蘇芳がアッパースイングで剣を振り上げ破軍を捉える。金属の甲高い音と共に破軍の体が宙に舞う。破軍の鎧に軽くへこみがついているのが見えるがダメージにはほど遠いようだ。破軍の体が恐ろしい速度で空に上がっていく。

 

「サモン・・・フライシェル。」

 

 蘇芳は空飛ぶ貝殻を呼び出し垂直に上昇していく。ゲートルと違い徐々に加速し破軍に迫る。上昇際に武器を弓に変え引き絞る。破軍はその狙いを知り剣を構えて防ぐ。重い金属音が響き渡る。破軍の体はさらに打ち上げられる。打ち上げられている破軍を蘇芳が追いかける。破軍は空中でなすすべ無く打ち上げられるままだ。空中移動の手段を持っていないのだろうか。さすがに全く無いと言うことはレベル的にもなさそうなのだが。蘇芳はそれを予測しているかどうかもわからないが破軍に追いつくまでにもう一射矢を放つ。再び破軍はその矢を受け止め鈍い音を響かせる。緩やかになっていた上昇速度が今一度微加速する。蘇芳が再び大剣に持ち替え更に上昇して破軍と交錯する。

 

「なめるなっ。」

 

 破軍が攻撃に合わせて反撃する。意図としては大剣を弾きながら反撃するつもりだったのだろうが空中で足場も無い中では蘇芳の攻撃を弾くほどの力は生まれず、しかし蘇芳もその攻撃をいなそうともせずにその身に受けてしまう。破軍はその剣が当たった反動で蘇芳の攻撃から逃げようとするがさすがに無理そうな話だった。

 

「どーん。」

 

 蘇芳の一撃が再び破軍の体を空に打ち上げる。ただ破軍を固定するものが無いためかダメージ自体もそれほど高くはなさそうだ。破軍がわずかに焦ったような顔をしているがそろそろ裸眼で見るのは大変な高度になっている。

 

「いつまで上げるのかしら・・・ね。」

 

 クロが目を細めながら所在を確認しようとしているがたぶんもう見失っている。桔梗は相手の位置の確認の為に視力強化の魔法で追いかけている。神谷さんも見上げているがおそらく追いかけてはいない。トウは周囲の警戒に努め、戦い自体に興味がなさそうだ。金糸雀も戦い自体に興味はなさそうで、あらぬ方向を見つめている。空から重い金属音が響く。蘇芳が矢を放ったであろう事がうかがえる。そしてまた重い金属音。そこまで響かず矢ではない音であることだけが理解できる。そして蘇芳が剣を破軍に打ち据えたまま上空から落ちてくる。その背中には岩のようなものを背負い、破軍はその落下の勢いから逃れようと剣を動かそうとしているが勢いに抵抗できずにいる。

 

「あれは・・・まずいんじゃないでしょうか。」

 

 神谷さんが落ちてくる様子を見てつぶやく。

 

「蘇芳ならどうなっても問題おまへんよ。その後のフォローさえしてあげれば。」

 

 金糸雀がつまらなそうに答える。

 

「どんなに素早う戦えようと、蘇芳のペースに巻き込まれたら逃げられまへん。」

 

 逃げることを諦めた破軍は片手で武器を支えながら逆の手で蘇芳の鎧に新たな剣を突き立てる。落下の衝撃で破軍はダメージを受けるだろうがその衝撃と地面の支えによりその剣は蘇芳を貫くだろう。どうみても相打ちの形である。

 

「もう少し自分を大事にしてくれればいいんだけど。」

 

 僕は終わったと感じながら呆れてつぶやく。神谷さんが不安そうに僕を見るが僕は蘇芳の能力を覚えているため気にもとめない。そう蘇芳は条件を満たさない限り死なないのだから。破軍は知らないからこそ相打ちを選んだ。知っていれば激突寸前に逃げられる可能性を選んだはずだ。二人の体は地面に激突。破軍の剣は蘇芳を貫く。衝撃による攻撃は容易に蘇芳を貫く。

 

「この命は主人の敵を討ち滅ぼさんがために。」

 

 受けたダメージは応報により相手への攻撃に加算され、命剣はダメージのすべてを威力に変える。破軍を支える大地が破軍の命を奪う壁へと変る。蘇芳の剣が破軍の剣を断ち切り、鎧を押しつぶす。

 

「こんな馬鹿な生き物が・・・」

 

「蘇芳は馬鹿じゃ無い。考えてる。」

 

 大剣の勢いはそのまま破軍を両断し戦いを終わらせた。

 

「桔梗を回復は頼んだよ。半分か・・・死なない程度まで戻してあげて。」

 

 桔梗は頷いて駆け寄る。神谷さんも行こうとするがそれを僕は止める。事前に話していたとおりだ。神谷さんも思い出しぐっとこらえてその身を押しとどめる。

 

「本当にこれで大丈夫なのでしょうか。」

 

「それしか無いから仕方が無い。」

 

 僕はしょうがないんだと言い聞かせながら再び戦場を見つめる。

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