表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
107/172

僕、悩まされる。

 金糸雀の模擬戦が終わった後しばらくの沈黙。僕が考えているだけで回りは気を遣っているのか見守るだけ。そもそも僕がアーツを考慮しなかっただけで、何故回りのみんなまで考慮しなかったのが少し気になってくる。

 

「ご主人様?」

 

 金糸雀がやや疑問形で声を掛けてくる。

 

「今回はご主人様の要望のまま私が用意されましたが・・・」

 

 金糸雀は自らに手を当てて語る。

 

「通常持った能力だけで処理できるならそれが最も効率が良く、アーツのような限定的、非効率的なものは必要ないのです。ですのでご主人様の疑問は至って無駄なお考えです。」

 

 にこやかに笑いながら思考の一部を指摘してくる。アーツが非効率?

 

「瞬間的に能力を向上させる、現状を強引に解決するにはまとまったエネルギーが必要になります。その状況にならなければ用をなさない棒を持ち歩き続けたり、五回で済むことを一回で終わらせるために十倍の消費をすることは決して良いとは言えないでしょう。ご主人様は元の能力と対応力が高すぎた故にそもそも必要がなかったのですよ。」

 

 金糸雀の言いたいことは理解出来た。時間効率だけは良くなるかもしれないが手持ちだけで解決できるなら確かにアーツは必要なかったのかもしれない。

 

「時間があれば問題解決できる本の選定者はアーツに頼らない傾向もありますしね。」

 

 金糸雀はそう言って話を締めた。しかし、ふと思い出したかのように顔を上げる。

 

「そう言えば進化体の保持上限に達しましたので、今後準備は出来ますが新規の発生は入れ替わりとなりますのでご注意ください。」

 

 金糸雀が話し終わると皆の視線が集中する。金糸雀は視線がそろって恥ずかしいのか身をくねらせる。

 

「どういうことですか。そもそも上限が設定されるなんて。しかもそれを伝えてくる?」

 

 菫が理解不能と言わんばかりに金糸雀を問い詰める。

 

「私も現界と同時にすり込まれた情報なのでそれ以外説明しようが無く・・・」

 

 金糸雀は困りましたと言わんばかりに眉をひそめて話しを返す。実際伝えてくるならシステムメッセージでも良さそうなものだけど、進化体に直接話を付随させるのはどういうことだろうと菫の話を聞いて初めて疑問に思う。疑問を確認しようと金糸雀に声を掛けようとすると周囲の気配が急に無くなる。皆の動き、風の流れ、自然界の営み、そのすべてが瞬間的に停止した。僕自信もそれ以上の体の動きを許されず視線からの情報は得られても視線自体を動かすことは出来ない。

 

『特例条項にて割り込みを失礼するよ。』

 

 視界の隅に緩やかなローブを纏う男神が現れる。存在すべてが神と認識させられる。チェイス神と同じ類いの疑いようのない状況でそう思わさせられる。

 

『今回の決定は君への過剰な戦力強化を抑制するのが目的である。というのは建前なのだが、少し君からの世界変化量が高すぎてね。このペースで行くと終了までに世界を支えられない可能性がある。その為の措置だと思って欲しい。』

 

 男神は視界の隅から隅を緩やかに歩きながら諭すように語りかける。

 

『今から君が流入を抑制すると言い張っても、出来ることをしないのと出来ないことをしようとすることには遙かに差があることは君自身が理解できると思っている。従ってこの措置に変更は無い。代わりに君の持つ本への規制を若干緩やかにする措置がとられる。そしてこれは決定事項であり拒否することはできない。それでは健闘を期待する。』

 

 男神の言うことは決定事項だから反論は受け付けないという完全に一方的な通告だった。これだから運営はと思わず毒づく。

 

『不満はごもっともだが君も体験したことが無いわけじゃなさそうだ。理不尽をかみしめたまえ。個人的には期待しているよ。』

 

 男神は爽やかに笑いながら光を散らしながら消えていく。せめて・・・

 

『本来なら名乗りを上げるものだが、その名乗りすら今の君には有効な手段となってしまっていてね。教えてあげられないので勘弁して欲しい。』

 

 僕の思考すらも先読みして男神は釘を刺し姿を消す。世界は元に戻った。不自然な感覚はすべて消え、世界に気配と音が戻る。時間が戻ってきた。

 

「如何しましたか?」

 

 僕の挙動が少しおかしく見えたのか桔梗が声を掛けてくる。その口調からすると神に話しかけられたのは僕だけなのだろうと理解出来た。

 

「いや、説明してくれた親切な神がいたんで状況は理解した。菫、金糸雀は問題無い。」

 

 菫が僕を見て一拍おいた後ほっと一息ついた。やはりチェイスからの干渉を疑っていたようだ。菫からするとこれ以上不安のタネを増やしたくないと言った所だろう。ただ巧妙に隠していて実はということもあり得なくもないので予断は許さないが、実際そこまで疑ってかかっても仕方が無い。鈴だってなんだかんだ意識を奪われている時以外は協力的なわけだし。

 

「何を疑われていたかは分かりませんが理解していただけたようで何よりです。」

 

 金糸雀はぽんっと手で空気を鳴らして安心した声を出す。楽観的というか緊張感がないというか掴みづらい。

 

「取りあえずはアーツに関する話をお願いしようかな。」

 

 恐らくその情報を広く深く所持しているであろう金糸雀に質問する。そうで無ければデモンストレーションした後にそう説明した意味もあるまい。

 

「魔法に対する対応技術になりますので、最低限の前提として純魔力系以外の攻撃系スキルが必要です。殆どの方は条件を満たしていると思いますが魔術師などは無理な場合が多いです。」

 

 金糸雀は一礼して解説を始める。鶸は体術があるが桔梗はその手のスキルを持っていないので無理そうだ。鈴も攻撃は行えないという話なので無理だと思われる。

 

「あとは自由です。」

 

 理解出来るかと思えばものすごくざっくり終了した。知りたいことは何も分からない。

 

「詳細とか身に付け方とかないの?」

 

 僕は肩を落してから聞き直す。

 

「強いて言えば『魔法に対する技術』という位置づけですが魔力を使ってはならないという制限はありません。持ちうるスキルと可能な技術をつなぎ合わせて本来できないことを再現するという感じでしょうか。」

 

 金糸雀は少し悩むように言葉を紡いだ。

 

「例えばですが。」

 

 金糸雀は鞭を取り出し《Snake whip》を宣言し動かす。鞭が地面を蛇のように動き僕の足に絡む。菫が反応するが敵対する気配を見せていないので自制して押さえている。

 

「自走させるのに蛇の動きが便利でしたので二度ほどうまく動いたものを再現しています。足首に絡むものも直接打ち込んだものを再現しているだけです。」

 

 金糸雀は解説しながら動きを再現する。よく見れば鞭の動く様子は全く同じパターンの繰り返しであり、足首への絡み方も概ね同じと言える。

 

「このように実際に行ったことのある作業を組み合わせて使うのが基本的な構造になります。ただその動きの流れが実際にそうできるかどうかは全く関係がないとも言えます。ですがこの方式ですと再現不可能なことは出来ませんので宙を這わせたり、蛇のように水の上を走ることもできません。」

 

 僕はなるほどと思いながら聞いているが、菫達は原理自体は分かっているようで各々の感情の元に百面相して牽制し合っている。

 

「振り下ろすという動作を複数重ねることで一度にたくさん斬ったかのようにすることももちろん可能ですが、動作の稼働時間が重ねれば重ねるほど負荷の上がり方は高くなります。対価の事を考えれば多くても十を越えないようにした方がよろしいかと。ご主人様でしたら同じコストでより良い結果が導けると思います。」

 

 金糸雀は注意点として初心者が陥りやすい不効率を提示する。多くの行動を一度に重ねる、同じ行動を続けること、一度に長い間動作を繋げること。一度に重ねるとコストが重く、強力でも同じ動作を続ければ一度の防御で済んでしまうこと、長い動作を続けると対象以外から隙になりがちなこと。

 

「長い動作を続けたい時は、若干遅くはなりますが選択式にしておく事が大事です。」

 

 一例として長い《Snake Whip》だが、足に絡むまでが一連の動作であり、そこから更に絡んで拘束を強くする、先端で攻撃を加える、投げる、首を絞める、解放するの単動作が選んで利用できるようになっているとのこと。

 

「もちろん絡んだ後アーツを放棄しても問題ありませんが、その場合絡みの維持は自分で行いますし、派手に投げ飛ばしたりするのは難しく引き寄せるくらいしかできませんね。」

 

 金糸雀は足に絡んだ後アーツを解放し鞭に掛けている力を抜く。実際に絡みきっていない鞭は自らの弾性に任せてすぐに緩んでしまう。魔法のように結果を維持する力が無ければ通常の法則に戻ると言うことのようだ。

 

「これが基本形になりましてもう一つあり得ない現象を引き起こせる特殊なものがあります。先ほど戦いで利用した《Hard shell》、《Curse reflect wound》と《Sacrifaice Blood》ですね。」

 

 金糸雀が続けて解説を行う。

 

「《Sword dance》は?」

 

 かなり派手なものだったがあれは特殊なものではないのか。

 

「《Sword dance》は干渉範囲内における手持ちの武器で一時間以内に行われた投擲動作を再現するものです。《Hard shell》で時間がかかったのは・・・一生懸命投げてたからです。」

 

 タネを明かされればなるほどと思わなくも無い。割と仕込みが大変なもののようだ。

 

「本来は戦闘行動を再利用するためのアーツですね。状況次第では武器が破損していたりしてうまくいかないことも多いでしょうが。頑丈なものを用意いただけたので役立ちそうではありますね。」

 

 割と出来たら良いな的なもののようで、あそこまで密集していないと強い効果も望めず期待値の上下差が激しいようだ。

 

「話を戻しますと、この特殊なものは魔法のように自分では出来ないことを引き起こすことが出来ます。」

 

 金糸雀のざっくりした解説は疑問しか出てこない。

 

「いや、今までのいらんよね。」

 

「実はそうなんですぅ。」

 

 僕の突っ込みに金糸雀が申し訳なさそうに手を合せて拝むように詫びる。

 

「半分くらいは冗談ですが。状況をかなり限定しないとコストが非常に重くなります。同じ事を魔法で行うことと比較すると百倍くらいかかります。」

 

 さすがにデメリットもありますよね。尤もそれはコストに重点が置かれているようだ。

 

「《Sacrifaice Blood》は受けたダメージを何かに移し替えるアーツです。これをそのまま行おうとすると二十万くらい負荷がかかります。」

 

 えげつない効果ではあるがそのコストもえげつない。

 

「このコストを使用条件を厳しく設定していくことで下げていきます。まず攻撃を受けた瞬間一秒以内にします。これで十九万くらいですね。」

 

 減らんなー。

 

「対象を最後に自らが所持していた物品に限定します。これで二万弱ほどになります。これが一番大きいですね。」

 

 『何か』がある意味何でもとなるので視界内の敵に移せることを考えたらこれは酷いと確かに思う。移し替える対象を自らの所持品にというのは大きな限定要素といえるだろう。ただそれでも二万だ。最初の条件だと瀕死になるまでのダメージを好きな何かに移し替えられるとも取れる。盤面という競技の中でそんな技を使われれば興ざめも良いところだろう。

 

「ちなみに疑問であるように何かしらの生命体に移し替える場合だと殆ど減りません。十七万くらいですね。」

 

 僕の疑問を読み取ったかのように金糸雀は補足を挟む。

 

「次に距離を限定して一mから二mの間としています。一万四千くらいです。通常は視界内になりますので割と限定的だとは思うのですが利用しやすいという意味ではこのくらいに制限するのがベターでした。距離制限に関しては対象なども加味されますので一概にどの距離がお得かはシステム次第といったところです。ちなみに接触だと殆ど減りません。」

 

 自分の所持品が対象だからそれはそうだろうとも思う。

 

「所持品を再考いたしまして所持品を短剣に限定。事前に指定した物品と数であること。数は二十までで物品の再指定には五十時間の間が必要です。指定品とほぼ同一のものがあれば四時間に一本再組み込みが可能です。さらに移し替えた対象は必ず破壊されること。この辺で二千五百くらいです。」

 

 二十回までつかえるが再使用にはそれなりにかかる。それならやっすい短剣で良かったと思うがそれもすぐに解決する。

 

「短剣の基本価値がある程度以上であることも条件に組み込んで、ようやく一千二百と運用可能範囲内に持ち込みました。」

 

 金糸雀は割と簡単に作れるが世界的に価値の高い石である神聖石を選択したのはそういう理由からのようだ。後々聞いた話だが金糸雀はやはり短剣愛好家になっており犠牲になる短剣にはそれなりの申し訳なさがあるようだ。この辺もコストに組み込まれているのだろうかとも思ったものだ。

 

「さすがにまだ常用するのには問題があるので使用時の装備制限を組み込みました。」

 

 その辺から重装兵らしからぬ装備になってしまったようだ。重装とはいったい。

 

「負荷を回復スキル等に影響されない『呪労』にすることで使用コストは三十七となっております。」

 

 金糸雀の苦労したであろう流れを聞いておもわず拍手した。ただ最後の下りを聞いて菫がうなずきながらも眉をひそめている。


「ご主人様は『呪労』に関する取り扱いにはご注意ください。」

 

 金糸雀は菫の様子を見てから話し始めた。

 

「『呪労』は特殊な疲労形態になります。元々疲労する方に関してはあまり負担では無く、疲労しない我々であるからこそ負担が大きいといえます。寝るとすぐ回復しちゃうんですよね。でもミーバは寝ないからこそ負担が高めに設定されています。ですがそれらに注目して多用すると魔法でも、瞑想でも回復しづらく選定者の方々には比較的不効率な負担とも言えます。」

 

 金糸雀の話を聞いて菫はほっと一息ついていた。なにか懸念事項がなくなったようだ。金糸雀の話を聞く限りでは確かに選定者に準ずる者が使うにはデメリットの方が目立ちそうだ。

 

「気をつけるよ。」

 

 金糸雀は僕が納得したことで花が咲いたような笑顔で答えた。

 

「構築にも時間がかかりますのである程度どのようなものにするか決めてからでないと時間ばかり浪費することになると思います。他人から受け取ることも出来ますが、今のように個人によってコストが変りますので安易に受け取っても使いづらいケースも多いです。」

 

 金糸雀は菫に目配せする。菫が理解したかのように金糸雀に歩み寄る。

 

「私が一番無駄がなさそうですね。」

 

「比較対象としてはよろしいのではないかと。」

 

 菫が不敵に笑い、金糸雀がクスリと笑い飛ばす。二者の間にどういう思いが交錯したのか僕は妙な寒気を感じた。

 

「それではお手を・・・《Sacrifaice Blood》を継承します。」

 

 わずかな輝きが組まれた手の間で起こり、十秒ほどして金糸雀が動き手を放す。

 

「如何ですか?」

 

 金糸雀が尋ねる。菫は目をつむり視線を下げる。

 

「コストは四百七十程ですね。使えなくもないですが。」

 

「私が思ったよりは上がりましたね。」

 

 菫が目を開き微妙な顔をする。金糸雀も困ったなといった感じの表情だ。菫は再び目を閉じる。

 

「使用回数を五回にして五十三ほどになりましたね。こんなものでしょう。」

 

 菫が適度な状態に落とし込んだことで金糸雀が拍手する。

 

「ある程度目的に沿ったものなら継承して改変した方が早く出来るとは思います。ですが私から渡せそうなものはもう無いとは思いますので参考程度に。」

 

 金糸雀はニコッと笑いを作って話を締めた。あとは各自が何を想定して組み上げるかという段階になる。死を回避するという点では《Sacrifaice Blood》は良いアーツと言えるが、回数制限がやはりネックでもある。正体不明の攻撃をいかにやり過ごすかが問題で、解決するまでに対処できるか、そもそも対処できなかったらどうするかという問題も残る。先制で倒しきるか、今まで通り隙をうかがうか。、まず方針を定めなければならないと考える。蘇芳と金糸雀が参入してから更に二日。開発ばかりに携わるわけにもいかず、再編した軍を各地に送り出す。

 

「当面はいけるところまで進めるか。」

 

「士気的にもそれがよろしいかと。」

 

 地図を見ながらエドモンドと侵攻場所を決める。ミーバ兵に随伴させるだけなのに、先陣で揉めて無駄に一日。そして攻略は半日程度。一部騎士達の無駄な負傷はあったものの犠牲も無く陥落。また場所を変えて侵攻、そしてまた侵攻。敵兵はそれほど強くも無くミーバ兵ならさほど問題無く攻略できる。ただ勝利続きで気が大きくなった貴族達がミーバ抜きで動くと言い始め、また揉める。あまりのめんどくささに僕も折れ、エドモンド主導で再編された軍が動き始める。

 

「功を焦らなければよいのですがね。」

 

「死ぬまで無理でしょ。」

 

 エドモンドの過ぎた悩みを僕は一蹴する。犠牲を最小限にしたいという僕の思いは大きく無視され一部方面では勝利するも一割を失うという良ろしくない結果にもなった。しかし管理する貴族自体には功績が残り、自分の体は痛まないからといって気だけが大きくなっていく。余程の愚図以外は戦闘に勝利を重ね、侵攻はどんどん進んでいく。陣地は作っては壊され、補給が遠くなり軍拠点としての砦を前に押し出す形で建築。端から見れば快進撃以外の何物でも無い。景気よく進軍を進め旧レイスタン王国国境付近までクラファル軍を追い返すまで進んでしまった。正直予想よりかなり進軍してしまっている。

 

「抵抗が弱い。誘われているようにも感じますが。」

 

 エドモンドは自軍が勝利に酔いすぎていることも懸念し敵軍の罠を疑う。

 

「侵攻が速すぎて近隣からの情報では分からないね。あまり深く踏み込ませたくはないのだけど。」

 

 相手の手を読めないまま侵攻していることにエドモンドと共に軍議を重ねる。対立貴族ほど更に進軍しようと勇ましい意見が目立ち、有効派閥ですらそれに乗じようという動きが見られる。ここから先は侵攻すると自分たちの土地になってしまう。隣国は滅びクラファル王国に吸収されているからだ。飛び地を得ることに利点がなく僕としては侵攻をためらうのだが手柄優先の貴族達はむしろこれからだと鼻息が荒い。予定を崩されたが明確な反撃も少なく時間だけは作られる。おかげで補給に不安はないのだが。侵攻を足踏みして不満が高まる中、紺が戻ってくる。

 

「クラファル王国軍というか総司令であるヴィルバンが軍を管理しておらんである。副司令どころか各貴族軍に防衛の指示だけが出ていて完全放置であるよ。」

 

 紺も正直困ったという感じに手を上げる。敵軍に意図が読めない。というよりも敵としているヴィルバンが意図を送っていない状態だった。相手もこちらと同じで手柄を必要としている貴族だけが真面目に戦おうとしている状態のようだ。

 

「ならば進むしか無かろう。いずれ攻めてくるのなら攻める気が無くなるほど打ち倒すしかあるまい。」

 

 エドモンドすらも国防の為に敵戦力を削るべきだと主張し始める。いやいやそれ自体がもう罠じゃんよ。僕は元気な味方に囲まれて頭を抱える。皆の士気が無駄に高い中、敵にいる数人の英雄戦力だけで盤面がひっくり返ることを忘れ去られているという事実に。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ