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封じられた魂  作者: 一桃亜季
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契約の代償12「倍返し」

一日一章投稿しています。


ー偽りの神々シリーズー

1「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫

2「敗れた夢の先は、三角関係から始めます。」星巡りの夢

3「封じられた魂」「契約の代償」

      本編進行中です。


順番に続いています。

応援よろしくお願いします。

        ※


『反撃するときは徹底的に。

 特に力に圧倒的な個体差がある場合は、周りにあるものをすべて武器だと思え。』

 サナレスの教えは自分の中で一冊の経典になって根付いている。


 万が一森で熊に遭遇したら、鼻を殴って撃退するのだと言われていた。


 だから他人の急所もここだろうと、手に巻き付けた鎖で思いっきり顔面中心を殴った。

 セワラの体が後ろに倒れるくらいの威力があった。けれどここで攻撃の手は緩めない。

すかさずもう一発、倒れていく彼の後頭部を膝蹴りした。

 

 やったかな?

 後頭部の方は金属を使わなかったので死にはしないと思うが、セワラは寝台から半分落ちかかった格好で伸びていた。


 サナレスからは護身術と称して、近接格闘術も教えられたのだ。

 薬を嗅がされたり、同じ王族という義兄に対して遠慮しないでいいなら、報復は可能だった。

 けれど問題は、この悪趣味な足枷と手枷の鍵が必要だ。


 この手の自己顕示欲が強いタイプって、貴重品を何処に置くかな?

 リンフィーナは薄暗い部屋の中を見渡した。

 殺風景で、生活感のない部屋だった。おそらくは神殿内から出ていないとは思うのだが、不確かで、鍵が見つからない状態でセワラが目を覚ましたら厄介なことになる。

 薬を嗅がされて完全に意識を失ったので、ここが何処かわからなかった。


 自分に力を示すために、案外身に付けていたりするかもしれない。

 ――身に付けていてくれないと、逃げ出せなくて困る!

 あせってリンフィーナは近寄りたくもない義兄の衣服をまさぐった。

 ない、どこにも無い。


 セワラが起きたら、プライドの塊のような彼は、報復しようとしてくるに決まっていた。

 アセスに振られてしまったけれど、こんな男に陵辱されるぐらいなら、いっそセワラを今のうちに殺した方がいいのだろうかーー?

 物騒なことを考えたけれど、祈るような気持ちで鍵を探した。できれば殺人なんてしたくない。


 当分目が覚めないように、とりあえずもう一発殴っておこうと張り倒し、リンフィーナは今度は自分が馬乗りになって鍵を探した。

 そしてようやく、セワラの首に銀の鎖を見つけて、リンフィーナは引っ張り出した。

 それは鍵のように見えて、リンフィーナは歓喜にガッツポーズをとる。


 鍵穴に差し込むと、ガチャリと鈍い音と共に足枷が外れた。ちゃちな作りのため、両手両足の手枷は、一つの鍵で全てが開く。


 足枷を開くとき、食い込んだ棘を抜く痛みに、リンフィーナは片目をつぶった。


 同じ人なのに、この男は女を何だと思っているのだろうと腹が立った。危うくアキレス腱が傷ついて、走れなくなるところだった。傷の程度を確認しながら、受けた損傷に眉根を寄せる。

 自分意外にも被害にあった女の人がいるのかもしれないと思うと心が痛み、リンフィーナは血が滲む足をさすりながら、足枷をセワラにはめてやった。


 これで意識が戻っても、当分は動くことができないほどの時間を稼ぐことができるだろう。

 鍵はしっかりと自分の手で握りしめ、持ち去るつもりで、悪い笑みを浮かべる。


 神の教えにもある反対をやってやる。

 右の頬を打たれたら、左の頬を差し出しなさい。

 神様の言葉なんて自分は知らない。自分を神と思ったことは生まれてこのかた、一度もなかった。

 慈悲なんて高みの見物ができるほど、今の自分には余裕がなかった。


「倍返しだ」

 リンフィーナはセワラを踏みつけて、その場を去った。

『封じられた魂12」:2020年10月14日


主人公の粗野ぶりーーラフさ加減によって、最近文体が変わってきているような気がします。


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