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封じられた魂  作者: 一桃亜季
43/55

契約の代償4「痛み」

一日一章投稿しています。


ー偽りの神々シリーズー

1「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫

2「敗れた夢の先は、三角関係から始めます。」星巡りの夢

3「封じられた魂」

      本編進行中です。


順番に続いています。

応援よろしくお願いします。

       ※


「アセスが魔道に落ちたなんて信じないけど、でももし本当だとしても、アセスは兄を殺さない。それに、ーーアセスは落ちない。」

 魔と契約したとしても、落ちるという言い方はアセスには相応しくなかった。


「貴方との婚約まで解消したのに?」

 ナンスに言われて、心がズキっと痛んだけれど、唐突にアセスが自分を拒絶した理由にアセスらしさを感じることができた。


 不器用に優しい。

 自意識過剰かもしれない。けれどアセスがいて、兄がいて、自分がいる関係性に、裏切ると言う気配は皆無だった。その中で生まれた複雑さも心の機微も、全てが混沌としていても清らかだった。


 相手のことを気遣いこそしても、正々堂々と面と向かいたいと、三人の気質が言っていた。だからアセスは、魔と契約した時にきっとこう思ったはず。

 サナレスに託すと。


 純粋すぎる駆け引きは、もううんざりだった。

 貴方は卑怯に、サナレスに手を下せる人ではないはずだ。


「ナンスはアセスの味方だよね?」

 だからこそ自分と同じように真実を求めて、ここに来た。


 教会の硬い床の地べたに座って、リンフィーナとナンスはひっそりと気配を隠している。

「アセス殿の側近だから」

 ナンスは少し誇らしそうに言うので、リンフィーナは安心してくしゃくしゃの笑顔になった。


「だったらアセスを守ってて。アセスはね、絶対に他の人とは違うから。魔とかそんなのと何かあっても、きっと大丈夫だから」

 リンフィーナは自分をも洗脳するように、強い言葉で約束する。

「私が、アセスを落とさない」

 絶望的な状態でも、折れてはいけなかった。


 人の意識は繋がっている。

 全員で諦めてしまったら、そこで終わりだ。限りなく細い糸でも、繋いで行くのは自分で、それが彼らから与えられた愛情への恩返しだ。

 信じる強さを与えられた自分は、どんな状態でも弱音を口にしたくはなかった。


「アセスはーー」

 彼の生活の何を聞いていいのかわからない。


 精霊ジルダーラを自分の眷属にしてくれたアセスが、今何を考えているのかわからなかった。

 いつまでも膝を抱えてばかりいられない。


「アセス様は、ラーディア一族との、ーー貴方との婚儀を断ったから、一族から新たな婚約話を承諾したよ」

「そう」

 気丈に振る舞ってはいても、聞かされた内容はリンフィーナの胸に刺さる。


「ラーディアとの友好関係を保つために、第二皇妃の娘、フェリシア・アルス・ラーディアが次の候補に選ばれた」

 一度ラーディアとラーディオヌが交わした、婚儀によって交わるといった意味合いは深い。サナレス無き今とされるこの世で、次の約束は水面下で進められる。


「義姉様なのね」

 お会いする機会すら、ほとんどなかった姉の顔は、リンフィーナには朧げだ。けれどアセスが自分以外の人と婚儀を進めると耳にして、打ちのめされないではいられなかった。


 無事に生きていてくれさえすればいいーー。

 心底そう思うのに、ジリジリと胸が焦げる。

 失恋の痛みはひどいものだった。

「契約の代償4」2020年10月11日

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