表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
封じられた魂  作者: 一桃亜季
41/55

契約の代償2「再会」

一日一章投稿しています。


ー偽りの神々シリーズー

1「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫

2「敗れた夢の先は、三角関係から始めます。」星巡りの夢

3「封じられた魂」

      本編進行中です。


順番に続いています。

応援よろしくお願いします。

         ※


 ラーディア神殿は、リンフィーナにとって近くて遠い場所だ。

 兄サナレスが住まう場所として親近感を持ってはいても、それ以外の人は全て、銀髪の自分を拒絶しているような、印象しか持っていない。


 だから二度目の生誕祭で、神殿内にリンフィーナの居室をもらっても、そこに寝泊まりすることはなかった。

 行くのは怖い。

 町娘風の衣装を揃え、馬を手配して駆け出したものの、サナレスが居ない神殿に、ーーいや王都ダイナグラムに入るのでさえ、リンフィーナにとっては敷居が高いことだった。


 しっかりしなさい!

 リンフィーナは自分の頬をパンパンと思い切り叩く。

 なんだかわからないけれど弱気になっている兄の意識を感じた。こんな時こそ、自分だけでもしゃんとして信じて待たなければ、兄に合わせる顔がない。


『アセスとの未来を進むがいい。結婚するまで残り数ヶ月になっている。ーーそれまで私がいない環境で、ちゃんと前に進むんだ。きっと帰ってくるから』

 サナレスは約束した。


 サナレスはアセスに真向かって、自分の気持ちを確かめろと言った。

 帰ってくると、誓ってくれた。

 ちょっと失敗してしまったけど、ーーアセスから振られてしまったけれど、リンフィーナの心は決まった。


 兄サナレスが、(過去だけれど)誰かわからない女性を心に決めたように、報われなくっても自分もアセスだけを見て年月を重ねよう。


 護衛役のラディにも内緒で、水月の宮を飛び出してきた。自分の不在を知って、ラディは今頃慌てふためいていることだろう。


 でも、いいのだ。

 ラディはサナレスがナオズの谷に落とされたことを、リンフィーナに伝えなかった。気分を害するには十分な理由だった。


 リンフィーナはラーディア一族のダイナグラムに入って、サナレスがよく使っていた馬を預けるところで、馬を降りた。

 王家の馬は目立つので、お忍びをしたいときはこうするのだと、すでに悪い手本を目にしてきている。


 リンフィーナの訪問先は、ダイナグラムの貴族街、自分に呪術を教えてくれたラァ・アルス・ラーディアの元だった。領地内に何店舗か呪術具を取り扱うラァの居住区は、不思議なことに貴族街の外れにある。


 名前にアルス家を名乗るということは、王族直系の血筋のはずなのだが、彼女がどのような立場の人なのか、リンフィーナは知らされていなかった。

 ただ、リンフィーナに呪術を教えてくれる師匠である。


 彼女の住まうところは、ダイナグラム内でも貧困層が暮らしており、人の子の出入りも激しいため、あまり治安のいいところとは言えなかった。

 だからなるべく目立たないように、粗末な格好をして来るのはお決まりになっている。


 ラァ様の遠見の力ならば、もっとはっきりとサナレスの消息を知ることができる。

 昨夜思いの外、精霊ジルダーラのような高位の精霊を召喚してしまったので、未熟な自分の力で思わず得られた情報が中途半端だった。


 ごめんって何?

 ナオズの谷でサナレスの部隊が襲撃されたって、どういうこと?

 重ね合わせた情報からは不吉な考えが思い浮かんでしまい、居ても立っても居られなかった。


「ラァ様にお願いして、サナレスの行方を探してもらおう」

 そして兄の後を追いかけてもいい。

 サナレスを黙って行かせてしまったから、こんなにも不安になっている。最初からちゃんと捕まえて、行かないでと説得するか、それが無理なら自分も同行すればよかったのだ。


 迂闊さを叱咤するのは、いつも事が起こってからだった。


 リンフィーナは裏路地から、ラァの家に向かっていた。

 すると、三人の柄のよくない男が、少女一人を取り囲んでいる現場に出くわしてしまった。


 追い剥ぎだろうか? まさか誘拐?

 不穏な様子を目撃して、リンフィーナは頭を抱える。


 急いでいるのに。こっちは一刻も早く、ラァ様に会いたいのに。

 ぶつぶつと文句を呟いたが、おかしな正義感から見てしまったものを見過ごせない性格だった。


 リンフィーナは短剣を抜いた。

「ちょっと何しているの?」

 少女は殴られたようで、腹を押さえて蹲っていた。


 ラディが、最近人の子の娘が誘拐される事件が頻発していて、近衛兵も忙しく見回りを強化していると言っていたことを思い出した。

 危険なことを承知しながらも、飛び込まずにはいられないリンフィーナは、男三人に剣を構える。


「リンフィーナ!?」

 蹲っていた少女が顔を上げた。

 名前を呼ばれて驚くと、見知った顔がそこにあった。


 少女ではなく、少年。

 これまで何度も関わった事がある。ラーディオヌ一族の少年ナンスだった。


「まさかあなた、また宝石泥棒でもしに来たの?」

 だから店員に袋にされているところなのだろうか?

 過去の記憶から、彼の手癖の悪さを知っているので、リンフィーナは抜いた剣をどうしようか戸惑ってしまう。

 そうだったら自業自得なんだけど。


「違うっ!」

 ナンスは叫んだ。


 リンフィーナの参入で、ナンスを取り囲んでいた男達の意識が削がれた。その隙をついて、ナンスは男達の足の下をすり抜け、自分のところへ駆け寄ってきた。


「逃げよう」

 そしてリンフィーナの手を引いて全速力で走り出した。

 なんだかわからないけれど、関わっていいこともなさそうなので、リンフィーナもナンスについて必死で走った。

 

「契約の代償2」:2020年10月11日


昨日から、「ラーディオヌの秘宝」出したり、引っ込めたり。

読んで頂いた方がいらっしゃったら、誠に申し訳ございません。


主人公が三人いると、時系列がややこしくなり、大筋が進む合間にどう出して良いのやら、と思案してしまって、投稿しては削除、とかやってます。

「ラーディオヌの秘宝」はR15チェックした方がいい作品。

そんなのを今朝は本名で投稿してしまったし。(苦笑)速攻消しました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ