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封じられた魂  作者: 一桃亜季
17/55

封じられた魂17「異変」

一日一章投稿しています。

ー偽りの神々シリーズー

「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫

「敗れた夢の先は、三角関係から始めます。」星巡りの夢

「封じられた魂」


順番に続いています。

応援よろしくお願いします。

        ※


 黄的の王プルセイオンが異変に気がついたのは、数日後のことだった。


「王様、少し減量しすぎではございませんの?」

 王妃が心配そうに眉根を寄せた。

 確かに更に体が軽くなったような気がする。


 だが、減量なんてしていないので、痩せていく理由がわからなかった。

 一週間ほど前に体重計に乗った時は85キロだったはずだ。今はいったい何キロになったのだろうと怪訝に思い、プルセイオン王はそろっと体重計に乗った。


 針が示す数字は75キロ。

 一週間で、10キロ落ちた。


 こんなことはあり得るはずがない。

 自分の身長であれば、少し痩せすぎなぐらいだ。


 変わらず健康に不調は感じられなかった。食べたいものを食べている。体が軽くなった分は多少は行動範囲は広がったが、それでも過度な運動をしているわけではないのに、自然と体重が減っていった。


 やはり自分はどこか病気なのだろうか。

 プルセイオン王は秘密裏に医師を呼び、自分の体を診断させた。


「どうだ?」

「いえ、特に悪いところはございません」

 心なしかほっとした。

 けれどこれほど急激に体重が減るなんて、あることだろうか?


「王は健康に不安がおありなのですか?」

 脈を見ながら、年老いた医師は聞いた。


「いや……。健康に不安があるわけじゃないんだ」

 ーーただ一週間で10キロも体重が落ちることなんてあるのだろうか。減量をしているわけでもなく。


「ここのところ急に体重が減ってしまったからな。少し診ておいてもらおうと思っただけだ」

 一国の王が体調不良であると言うことは、その国自体に不安を招きかねず、医師に言うことも憚られた。


「ちなみに、人が体重を落とす限界の数字って、どれほどのものだ? 例えば一週間に減量できる体重は?」

 医師は束の間考えて、良識的なことを言った。

「そうですね。2から3キロといったところでしょうか。5キロも落とせば体力は衰えましょう」


 同じような見解だと、プルセイオン王は納得したが、それではいったい自分の体重の変化はどうしたことか。体重計が壊れているのだろうか。特に体力の衰えは感じていない。


 それどころか生気がみなぎって、視力すら回復したようだ。年齢と共に衰えて、近くにあるものが見えにくくなっていたが、はっきりと見えるようになった。何より不思議なのが、夜になって明かりをつけなくても、宮殿内を歩き回れた。


 痩せて骨張ってきてはいるが、生命力は以前よりも増しているようで、夜毎王妃を抱いても物足らず、女給を見てもムラムラと体が反応する。


 神子は何百年も年を取らないと聞く。

 もしかすると自分の体も神子の域に達して、若返っているのだろうか?


 不安と、期待と、疑問が大きく膨らんでいった。


「問題ないのならいいーー」

 プルセイオン王は医師を下がらせた。


 この調子であれば、王妃がまた新たな家族を産んでくれるだろうと、プルセイオン王はほくそ笑んだ。どこかに生まれていた陰りは、楽しみを代わりにして打ち消すことで、いとも簡単に払拭することができる。


「王妃、今晩も子作りしよう」

 少し疲労の影が見える王妃に対して、プルセイオン王は手を差し出した。


「ーーええ。我が王様」

 王妃はその手をとる。

 幸せだった。

「封じられた魂17」:2020年9月29日

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