封じられた魂17「異変」
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ー偽りの神々シリーズー
「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫
「敗れた夢の先は、三角関係から始めます。」星巡りの夢
「封じられた魂」
順番に続いています。
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黄的の王プルセイオンが異変に気がついたのは、数日後のことだった。
「王様、少し減量しすぎではございませんの?」
王妃が心配そうに眉根を寄せた。
確かに更に体が軽くなったような気がする。
だが、減量なんてしていないので、痩せていく理由がわからなかった。
一週間ほど前に体重計に乗った時は85キロだったはずだ。今はいったい何キロになったのだろうと怪訝に思い、プルセイオン王はそろっと体重計に乗った。
針が示す数字は75キロ。
一週間で、10キロ落ちた。
こんなことはあり得るはずがない。
自分の身長であれば、少し痩せすぎなぐらいだ。
変わらず健康に不調は感じられなかった。食べたいものを食べている。体が軽くなった分は多少は行動範囲は広がったが、それでも過度な運動をしているわけではないのに、自然と体重が減っていった。
やはり自分はどこか病気なのだろうか。
プルセイオン王は秘密裏に医師を呼び、自分の体を診断させた。
「どうだ?」
「いえ、特に悪いところはございません」
心なしかほっとした。
けれどこれほど急激に体重が減るなんて、あることだろうか?
「王は健康に不安がおありなのですか?」
脈を見ながら、年老いた医師は聞いた。
「いや……。健康に不安があるわけじゃないんだ」
ーーただ一週間で10キロも体重が落ちることなんてあるのだろうか。減量をしているわけでもなく。
「ここのところ急に体重が減ってしまったからな。少し診ておいてもらおうと思っただけだ」
一国の王が体調不良であると言うことは、その国自体に不安を招きかねず、医師に言うことも憚られた。
「ちなみに、人が体重を落とす限界の数字って、どれほどのものだ? 例えば一週間に減量できる体重は?」
医師は束の間考えて、良識的なことを言った。
「そうですね。2から3キロといったところでしょうか。5キロも落とせば体力は衰えましょう」
同じような見解だと、プルセイオン王は納得したが、それではいったい自分の体重の変化はどうしたことか。体重計が壊れているのだろうか。特に体力の衰えは感じていない。
それどころか生気がみなぎって、視力すら回復したようだ。年齢と共に衰えて、近くにあるものが見えにくくなっていたが、はっきりと見えるようになった。何より不思議なのが、夜になって明かりをつけなくても、宮殿内を歩き回れた。
痩せて骨張ってきてはいるが、生命力は以前よりも増しているようで、夜毎王妃を抱いても物足らず、女給を見てもムラムラと体が反応する。
神子は何百年も年を取らないと聞く。
もしかすると自分の体も神子の域に達して、若返っているのだろうか?
不安と、期待と、疑問が大きく膨らんでいった。
「問題ないのならいいーー」
プルセイオン王は医師を下がらせた。
この調子であれば、王妃がまた新たな家族を産んでくれるだろうと、プルセイオン王はほくそ笑んだ。どこかに生まれていた陰りは、楽しみを代わりにして打ち消すことで、いとも簡単に払拭することができる。
「王妃、今晩も子作りしよう」
少し疲労の影が見える王妃に対して、プルセイオン王は手を差し出した。
「ーーええ。我が王様」
王妃はその手をとる。
幸せだった。
「封じられた魂17」:2020年9月29日




