封じられた魂13「人の王」
一日一章投稿しています。
本編始動し始めました。
今回は私なりの解釈で「クトゥルフ神話」に触れていきたいです。
日本も色々な神様がいますが、外国にも然りで、好きな神話です。
一章を少し短めにしながらですが、「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」
記憶の舞姫程度は長編になるかもしれません。
前後作で、「封じられた魂・契約の代償」へと続きますが、
そうするととても長編になります。
皆様の反応が励みになりますので、応援よろしくお願いします。
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人によって祭り上げられた元は人の子であった偽りの神々。
ーー神子の氏族は、常に人間に寄り添うわけではない。
漆黒の髪と闇色の瞳、呪術を生業にする夜の民、ラーディオヌが氏族。そして人に最も好意的で、神である証である呪術の能力すら放棄した、ラーディアが氏族。二つの氏族が人の子の争い事に関与せず、人々の安寧を願うのは、広大なアルス大陸による自然の恩恵があるからだ。
神とはいっても、良い神もいれば、一方では人に災いをもたらす邪神もあって、圧倒的な力の前に人は無力だった。
人は貴族と呼んで、神子を恐れた。
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アルス大陸の東のくんだりにある都は、漁業と貿易で栄えた活気に満ち、黄的といった。
市場には豊かな海産物が並び、朝早くから競りが始まり、男達の猛々しい声が上がる。
黄的の民を収めるのは、人の国の王プルセイオン・ルイ・デリュウスである。彼は、気立のいい美しい王妃と、二
人の王子と王女に恵まれ、民からの人望も厚かった。
ルイ国には十三代目の王が君臨していた。
幸せの絶頂にいるかに見える力のあるプルセイオン王だが、ここ最近その表情に翳りがあった。
今日も王妃は優しく、子供達は自分の言いつけを守って、すくすくと育っている。国土は潤い、民は自分に感謝する。ほんの数日前まで、自分の人生には一点の翳りもなかった。
気にしていたことといえば、飽食から食べ過ぎてしまって、妻からは少し体重を減らさなければいけないと言われていることだけだった。
「あら王様、ずいぶんスッキリされてきましたわね。運動でもされまして?」
最初はそんなふうに、王宮で給仕をする女達から声をかけられた。
上背があり、筋骨隆々とした自分の体には脂肪がのって、100キロまで測れる体重計は回りきって計測できない。そんな自分の見た目が、少し変わってきたのが始まりだった。
言われてみれば体が軽かった。
特に何かした覚えはないが、プルセイオン王は嬉しくなって、久しぶりに体重計の上に乗った。
86キロのところで針が止まった。
おや、本当に痩せている。
そういえば王妃との夜の営みにも、邪魔をしていた下っ腹が引っ込んで、若々しくなったような気すらしていた。
100キロ以上は正確に測れない体重計だったが、知らぬ間に15キロ以上は痩せていた計算になる。
食事の量はいつも通り、好きなものを好きなだけ食べているが、どうした事だろう?
不思議には思ったものの、願ったり叶ったりだった。
プルセイオン王の唯一悩んでいることと言えば、食べすぎによる巨漢であることだったのだから、好ましい変化だった。
体調が悪いわけではないので、気にすることはない。
「王妃、服を新調しなければ、溺れてしまうようだ」
プルセイオン王は言った。
「そうですわね。二重顎がなくなってすっかり凛々しくなられましたわ」
王妃も笑う。
体が重くて、しばらくは動くのが面倒になっていたけれど、この頃のプルセイオン王は乗馬で海まで駆けて行くぐらいに活発になっていた。
「ようございましたこと」
「ああ」
だらしなく太っていた自分の脂肪が一気に消えて、悪い気はしなかった。
神は自分に、人が羨むような十分な恵みをお与えになってくれているのだとプルセイオン王は歓喜して、神に祈った。
「封じられた魂13」:2020年9月26日




